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95、噛み合わない
しおりを挟むティアナとマリヤにお礼を言って見送り、私は今後どうすべきか考えてみた。
まずは火事の件がどうなっているかを確認。それから、レオナルドと話をする。
最優先するのはこの二つだろうか。
いや、それより先に、ニチカと話をしよう。
ニチカはたぶん悪人じゃないし、私も転生者だと打ち明けてニチカの知るゲームの情報を教えてもらおう。
そうと決まれば善は急げ、とニチカが寮のどの部屋にいるのかアンナに調べてもらったのだが、戻ってきたアンナからはニチカは寮に住んでいないという答えが帰ってきた。
ひょ? ゲームでは、ニチカって寮に入ってなかったっけ?
特待生は寮費がタダだから、入っていると思ったのに。
じゃあ、夏に訪ねたあの家に住んでいるのか。うーん。それじゃあ今日は話を聞けないなぁ。
思わず肩を落とした私だったが、それなら先にレオナルドから話を聞こうと考え直してアンナにもう一度寮監の元へ行ってクララ・ナラーの部屋を調べてもらい、それから部屋を出た。私が直接男子寮に赴いてレオナルドを呼び出す訳にはいかないので、クララに間に入ってもらうしかない。
クララの部屋を訪ねるために二年生のフロアーに足を踏み入れると、ちょうど手前の部屋から出てきた女生徒と目があった。
「あら、レイシール様」
「レベッカ様、ごきげんよう」
遠足の際に知り合ったレベッカだった。
そういえば、彼女はリリーナと同じクラスだった。
「あのぅ、最近クラスでのリリーナ様のご様子はいかがでしょう?」
尋ねると、レベッカはきょとん、とした。
「リリーナ様……ですか? 申し訳ございません。同じクラスですが、お話ししたことがないもので」
レベッカはそう言って眉を下げた。一瞬納得しかけたが、ふと違和感を覚えて私は眉をひそめた。
「レベッカ様、あの……私とニチカさんのことで、リリーナ様が何かおっしゃっていたと……」
例の髪留めについて、私がニチカに命じて盗ませたと主張するリリーナをレベッカは窘めてくれていたはずだ。
「レイシール様と、特待生の方のことですか? リリーナ様からお二人の話題を聞いたことはないように思いますけれど……」
なんだろう。話が噛み合わない。
「私がニチカさんに命じて、髪留めを盗ませたという噂ですけれど」
「あんなもの、誰も信じていません! お気になさらないでください、すぐに消えますわ。あんな荒唐無稽な噂など」
「ええ。ありがとうございます……その噂を、レベッカ様はどなたからお聞きになりましたか?」
レベッカは思案するように首を傾げた。
「さあ……どなたから聞いたのかは忘れてしまいましたが……あまりにくだらない噂なのであまり気にとめていませんでしたわ」
レベッカはそう言ってぱちぱち目を瞬いた。
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