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106、誰?
しおりを挟むニチカとの話し合いはいろいろとわかったこともあったけれど、同時に謎も深まった。
ニチカは電脳世界であっても法が適用され、人倫にもとる振る舞いをすれば転送データが一時凍結されると言っていた。
それなのに、リリーナが逮捕される気配はない。
何やってんだよ。運営、仕事しろ。
まだ全然どうすればいいのかわからないけれど、とにかく一つずつ情報を集めて、謎を解いて、リリーナの持つ「オプション」に対抗する術を探すしかないのか。
ニチカの家を後にして、普段の倍に増えた護衛に送られて寮に帰った私は、夜中になってこっそり部屋を抜け出した。
二年生のフロアに忍び込み、目的の部屋の扉をノックする。
「ようこそ、ホーカイド様」
扉を開けたクララが、にっこりと笑った。
「お待ちしておりました」
通された部屋の中には、レオナルド・ヒョーゴンが待ちかまえていた。
「ガウェインからだいたいの話は聞いたらしいな」
レオナルドは探るような目を私に向けてきた。
私が頷くと、レオナルドは目を閉じて静かに息を吐いた。
「信じられないだろうが、俺達「西」の者はリリーナ一人にめちゃくちゃにされている」
私は、少し気になっていたことをレオナルドに尋ねてみた。
「ヒョーゴン様は、どうして私にその話を?」
最初にレオナルドに接触したのは私の方だが、あの時は私はリリーナのことなんか知らなかったし、レオナルドにとって私は単なる後輩であって仲間でもなんでもない。それなのに、ちょこちょこ情報をくれたり協力を求めてきたりするのは何故だろう。
「俺はずっとリリーナを見張っていたからな。あの魔女が、何故か「レイシール・ホーカイド」を警戒しているのに気付いた」
「警戒?」
「そうだ。お前が入学してきてから、四大公爵家の嫡男に近づくのを止めて遠くからお前の一挙一動を睨みつけているだけになった」
うーん。おそらく、お兄様やジェンスと言った私付近の凍死要員が生き残っているから怪しまれたんだろうな。
「理由はわからないが、お前のおかげでリリーナの行動が静まっていたからな。お前はこちらに引き入れた方がいいと思った」
「レオナルド様はガキ大将なので、子分を集めないと動けないのですよ」
クララが茶化すように言った。
この二人、付き合ってんのかな?
そう思っていたのが顔に出ていたのか、クララが笑って否定した。「私、彼氏いますもん!」とのこと。
えー? 誰ー?
気になるのににこやかに話を逸らされてしまった。誰よ? 誰が奈良県の心を奪ったのよ?
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