︎︎

jyouyama

文字の大きさ
1 / 3

しおりを挟む
彼にとってはなんてことない部屋が、空気が、私にとってはきらきらぴかぴか、光ってみえた。カーテンではなくてブラインドをつけて、夜日が沈んでいくのを感じ、朝は眩しい光で目を覚ます。強い光の刺激で目は細まる。少しずつ光に慣れて瞼をゆっくりと離し、起き上がると私がいるベッドの横で仕事の支度をしている彼の姿。きらきらぴかぴか、強い光は彼かもしれない。そんなことを思いながら立ちあがると彼が振り向き「あ、起きた?おはよう、」と優しい、そう、焼きたてのサブレクッキーみたいにほろっとした口調でそう言った。「おはよ、今日は何時に家出るの?」「あと10分後には。」「そっか、」そう言うと私は浮腫んだ脚を動かして洗面所に向かった。鏡の前にはブリーチして傷んだぼさぼさの髪の毛とまたも浮腫みまくっている目やにの付いたまだ眠くて目もまともにひらかれていない冴えない顔。できれば髪の毛もさらさらに梳かして、せめて洗顔した最小限の清潔感を保った上で彼とは話したいものだが、そうもいかないのが私だ。トイレを済まし、水で顔を洗い歯ブラシに歯磨き粉をつけ部屋に戻った。またベッドに腰かけ歯を磨きながら仕事の支度をしている彼をぼんやりとみる。化粧水を塗って日焼け止めとBBクリームを塗ってパウダーぽんぽんして…大変だなぁと思う。彼は美意識が高く、男性にしてはスキンケアや服装にこだわりをもっている。私にはよく分からない成分配合について長々と語る時があるが、私はそれを楽しそうに話している彼をずっと見ている。話は全く入ってこない。あ、トラムキサムサン、は覚えた。虎向きサムさん、誰だろう。虎に強いひと?そんなことを考えていたら彼がケアグッズを片付けていた。急いで洗面所に向かい口の中の泡を吐き出す。すると後ろから彼がやってきて某整髪料を巧みに使いこなし、最後の仕上げをはじめた。「今日は遅くなるかも、帰ってきたらTSUTAYAでも行く?」「いいね、行こ。」彼の飼い犬のぷぅちゃんを撫でながらそんな会話をする。彼が髪を整え終え、キッチンに行ってサプリを飲んでいる間に私は口をゆすぎ髪を梳かして纏める。2人玄関に向かい靴を履いた彼と抱きしめ合いキスをする。たった半日でも彼がいない時間はとても長く感じてしまうから半日分のハグとキス。彼は笑いながら毎回受け入れてくれる。そろそろ行かなきゃね、と言って遅刻するわけにもいかないので私も観念して彼から離れる。「早く帰ってきてね」「がんばる笑行ってくるね」「気をつけて、行ってらっしゃい」鍵をかけ、水を飲みにキッチンへ行く。ぷぅちゃんはそそくさと自分の定位置に戻り丸まっていた。水を片手に部屋に戻ると彼の部屋着や私がぐちゃぐちゃにしたベッドの布団、昨日したカードゲームが散らばっている。少しだけ片付けてテレビとPS4の電源をつけ、前TSUTAYAで借りたまだ見ていなかったDVDをみる。綺麗で、でもどこかが削がれるような作品だった。私は語彙力も表現力もないからそれとしか言いようがないのが悲しい。気分を変えようとネトフリで好きな俳優Tが出ている映画をみた。めんどくさい役柄が多いけれどそれが似合う。俳優Tを好きになったのは彼と付き合いだしてから。理由は彼とTがそれとなく似ている気がするから。よく見たら多分似てないし友達に言っても???という反応しかされないからもう言わないけれど。でも彼の働いているカフェのお客様からTに似てるね!と言われたこともあるらしいので多分ちょっと似ているのだろう。本人は嫌がってるけれど私は好きだよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

初体験の話

東雲
恋愛
筋金入りの年上好きな私の 誰にも言えない17歳の初体験の話。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...