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第4回活動報告:不正融資を取り締まれ
譲渡担保
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(5) 譲渡担保
俺たちは1日がかりで、Lシリーズの登記簿謄本をかき集めた。
会社のホームページから過去に販売したLシリーズの所在地を特定し、物件の謄本を取得する。
Lシリーズは区分所有権建物だ。例えば、1つの建物に100部屋あれば、100個の登記簿謄本が存在する。
レンソイス不動産はLシリーズを1,000部屋販売していたため、土地と建物を合わせると、登記簿謄本が1,000以上必要になる。気が遠くなる作業だ。
内部調査部のメンバーだけでは手が足りなかったので、総務省の職員も5人手伝ってもらった。
こうして集めた登記簿謄本を、ルイーズとスミスがデータ化した。
まとめた登記簿謄本のデータを見ると、多い人で10部屋保有している。Lシリーズの販売単価は1部屋当たり約2,000万JDだ。2億JDもLシリーズを買っている個人投資家がいるのに俺は少し驚いた。
ほとんどの物件に抵当権が設定されていた。個人投資家は銀行からの借入金で物件を取得しているようだ。
借入先は、ほぼロワール銀行からだった。レンソイス不動産と業務提携しているのだろう。
なお、個人投資家がLシリーズを購入した物件のうち、10%くらいは抵当権が抹消されている。これらは、Lファイナンスという会社に所有権移転登記が行われていた。
所有権移転の原因は、譲渡担保となっていることから、純粋な不動産売買ではなさそうだ。
他の物件と違っているため、ポールも見たことがないようだ。
「部長、譲渡担保の記載がある登記簿謄本をはじめ見たのですが、この譲渡担保は抵当権とは別物なのですか?」とポールは俺に聞いてきた。
「抵当権も譲渡担保も、不動産を担保にするのは同じだよ。抵当権は、借入金の返済ができない場合、貸し手は担保実行手続きをしないと担保物件を売却できない。直ぐに売却できないんだ。でも、譲渡担保は所有権が貸し手にあるから、借入金の返済ができない場合は、担保物件を直ぐに売却できる。」
「抵当権よりも譲渡担保の方が優れている、ということですか?」
「それは何とも言えないね。譲渡担保は所有権移転をするから、登記費用などが高い。抵当権の方が安い。だから、普通は担保設定する時は、抵当権にする。」
「へー。譲渡担保の方が処分しやすいけど、コストが高いのか。知らなかった。」とポールは言った。
「それで、この譲渡担保は何のためだと思う?」とルイーズが俺に聞いてくる。
「うーん、目的がよく分からないな。ロワール銀行の抵当権が抹消されているから、借入金はLファイナンスが肩代わりしたのだろう。譲渡担保にしたということは、Lファイナンスは直ぐに売却したいと思っている。」
「そうね。銀行に返済できなくなって、ノンバンクから借入したのは分かる。」
「問題はその後だよね。」と俺は当然のことを言う。
「さっきから、そう言っているじゃない。」
ルイーズは少しイライラしてきた。
「そうだ。登記簿謄本の中で、譲渡担保の後、担保物件を売却しているものはなかった?」
「20件ある。個人投資家の数としては、5人。譲渡担保の後、別の個人投資家に売却されている。ロワール銀行の抵当権が設定されているから、購入資金は借入金で賄ったのだと思う。」とルイーズは答えた。
「じゃあ、担保実行されて売却された個人投資家に会って、話を聞いてみよう。何があったか聞けば、今回の取引を理解するヒントになると思う。」と俺はメンバーに提案した。
「嫌がられませんか?」とスミスが遠慮がちに言った。
「レンソイス不動産のことを恨んでいるはずだから、きっと調査に協力してくれると思う。」と俺は言った。
きっと、個人投資家に話を聞けば、レンソイス不動産、マラニ印刷、ロワール銀行、Lファイナンスの一連の取引の流れが掴めるはずだ。
そうして、俺たちは、不幸な個人投資家のディーンに会いに行くことにした。
俺たちは1日がかりで、Lシリーズの登記簿謄本をかき集めた。
会社のホームページから過去に販売したLシリーズの所在地を特定し、物件の謄本を取得する。
Lシリーズは区分所有権建物だ。例えば、1つの建物に100部屋あれば、100個の登記簿謄本が存在する。
レンソイス不動産はLシリーズを1,000部屋販売していたため、土地と建物を合わせると、登記簿謄本が1,000以上必要になる。気が遠くなる作業だ。
内部調査部のメンバーだけでは手が足りなかったので、総務省の職員も5人手伝ってもらった。
こうして集めた登記簿謄本を、ルイーズとスミスがデータ化した。
まとめた登記簿謄本のデータを見ると、多い人で10部屋保有している。Lシリーズの販売単価は1部屋当たり約2,000万JDだ。2億JDもLシリーズを買っている個人投資家がいるのに俺は少し驚いた。
ほとんどの物件に抵当権が設定されていた。個人投資家は銀行からの借入金で物件を取得しているようだ。
借入先は、ほぼロワール銀行からだった。レンソイス不動産と業務提携しているのだろう。
なお、個人投資家がLシリーズを購入した物件のうち、10%くらいは抵当権が抹消されている。これらは、Lファイナンスという会社に所有権移転登記が行われていた。
所有権移転の原因は、譲渡担保となっていることから、純粋な不動産売買ではなさそうだ。
他の物件と違っているため、ポールも見たことがないようだ。
「部長、譲渡担保の記載がある登記簿謄本をはじめ見たのですが、この譲渡担保は抵当権とは別物なのですか?」とポールは俺に聞いてきた。
「抵当権も譲渡担保も、不動産を担保にするのは同じだよ。抵当権は、借入金の返済ができない場合、貸し手は担保実行手続きをしないと担保物件を売却できない。直ぐに売却できないんだ。でも、譲渡担保は所有権が貸し手にあるから、借入金の返済ができない場合は、担保物件を直ぐに売却できる。」
「抵当権よりも譲渡担保の方が優れている、ということですか?」
「それは何とも言えないね。譲渡担保は所有権移転をするから、登記費用などが高い。抵当権の方が安い。だから、普通は担保設定する時は、抵当権にする。」
「へー。譲渡担保の方が処分しやすいけど、コストが高いのか。知らなかった。」とポールは言った。
「それで、この譲渡担保は何のためだと思う?」とルイーズが俺に聞いてくる。
「うーん、目的がよく分からないな。ロワール銀行の抵当権が抹消されているから、借入金はLファイナンスが肩代わりしたのだろう。譲渡担保にしたということは、Lファイナンスは直ぐに売却したいと思っている。」
「そうね。銀行に返済できなくなって、ノンバンクから借入したのは分かる。」
「問題はその後だよね。」と俺は当然のことを言う。
「さっきから、そう言っているじゃない。」
ルイーズは少しイライラしてきた。
「そうだ。登記簿謄本の中で、譲渡担保の後、担保物件を売却しているものはなかった?」
「20件ある。個人投資家の数としては、5人。譲渡担保の後、別の個人投資家に売却されている。ロワール銀行の抵当権が設定されているから、購入資金は借入金で賄ったのだと思う。」とルイーズは答えた。
「じゃあ、担保実行されて売却された個人投資家に会って、話を聞いてみよう。何があったか聞けば、今回の取引を理解するヒントになると思う。」と俺はメンバーに提案した。
「嫌がられませんか?」とスミスが遠慮がちに言った。
「レンソイス不動産のことを恨んでいるはずだから、きっと調査に協力してくれると思う。」と俺は言った。
きっと、個人投資家に話を聞けば、レンソイス不動産、マラニ印刷、ロワール銀行、Lファイナンスの一連の取引の流れが掴めるはずだ。
そうして、俺たちは、不幸な個人投資家のディーンに会いに行くことにした。
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