第4王子は中途半端だから探偵することにした

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第4回活動報告:不正融資を取り締まれ

個人投資家(その1)

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(6) 個人投資家

俺、スミスとガブリエルは、個人投資家のディーンに会いに行った。
俺たちがディーンに連絡したら、面談を直ぐに了承してくれた。きっと、レンソイス不動産に対する恨みがあるのだろう。
俺たちの調査に協力してくれそうだ。

ディーンは、50代の男性で、製造業の上場企業で部長として働いているらしい。給与も一般的な人よりも多く、高収入のエリートサラリーマンと言えるだろう。
ディーンの話では、始まりは不動産会社からの電話だったらしい。

「最初は、レンソイス不動産のリードという営業担当者から、『不動産投資にお薦めの物件がある』と電話がありました。当時は、不動産に一度投資してみたいと思っていたので、話を聞いて担当者のリードが進めてくる物件を購入しました。購入目的は、不動産所得と給与所得の損益通算でした。」とディーンは言った。

不動産会社が収益性の低い物件を売る時によく営業で使う手だ、と俺は思ったがそこには触れなかった。ディーンが傷つくかもしれないからだ。

「不動産所得のマイナスを使って、給与所得の税額を下げるということですね。」と俺は言った。

「そうです。投資不動産の収益と借入金の支払利息はほぼ同額で、減価償却費によって不動産所得がマイナスになるので、トータルの課税所得を引き下げることができます。」

「たしか、1部屋が2,000万JDでしたね。耐用年数が40年とすると、1年あたり50万JD(2,000万JD÷40年)の減価償却費ですか。」

「大体それくらいです。私の給与所得が1,200万JDで、諸々控除した後の課税所得が900万JDでした。当時は、10部屋くらい取得して、課税所得から500万JDを控除しようと考えました。」

「そうすると、総額2億JDですか。大きいですね。」

「今思えば、そんな高額の不動産投資と借入金をするなんて、バカなことをしたと思います。でも、その当時は税金を減らせたのが嬉しくて、買えるだけ不動産を購入しようと思っていました。」

「2億JDの物件の購入する際にいくら借入しましたか?」

「借入金は1億5,000万JDです。」

「ちなみに、返済期間は何年でしたか?」

「返済期間は20年でした。年間750万JDの元本返済です。私の給与で払えるはずありませんよね。」

「最初から2億JDも投資したのですか?」

「いえ。初めは1部屋だけでした。最初は全て自己資金で投資したので、借入はしていません。」

「さすがに最初から2億JDも投資しませんよね。」

「その物件を保有してから、確定申告で不動産所得と給与所得を損益通算して、税金が戻ってきました。嬉しかったのを覚えています。
最初の投資から1年経過した頃だったと思います。レンソイス不動産のリードが、『保有件数を増やせばもっと節税できるから、追加でLシリーズを買ったらどうでしょう?』と提案してきました。損益通算で気をよくしていた私は、2部屋購入しました。その後も、毎年数件ずつ追加していって、最終的には10部屋を保有していました。」

「段階的に増やしていったのですね。ところで、『レンソイス不動産がローン申請書類で虚偽の情報を書いて銀行に提出している』という情報を入手しています。実際に書類の偽造はありましたか?」と俺はディーンに質問した。

「偽造はありました。最初から偽造していたわけではありません。7件目までは私の所得金額をローン申請書類にそのまま記載していました。8件目を取得する際に、今の所得水準だとローン審査に落ちるかもしれない、とリードに言われました。7件のLシリーズの取得で1億JDの借入がありましたから。その際にリードから、ローン申請書類に記載する年収を3,000万JDにすることを提案されました。」

「それでは、10件中3件が虚偽情報でローン審査書類を提出したという状況ですね。
それにしても、ローン審査時には収入証明を一緒に提出すると思います。源泉徴収票はどうしたのですか?」

「リードは、業者に連絡すれば手配してくれると言って、連絡先を伝えてきました。そこに電話したら、翌日、年収3,000万JDの源泉徴収票が自宅に届きました。」

「書類の偽造をした業者の担当者は分かりますか?」

「担当者はジョンと名乗っていましたが、本名かどうかは分かりません。携帯電話の番号だけリードから伝えられたので、住所も会社名も分かりません。『レンソイス不動産からの紹介で』と言ったら、ジョンは電話口で直ぐに私の源泉徴収票の作成に取り掛かかりました。特に雑談や質問する暇はありませんでした。」
ディーンはそう言って、ジョンの携帯電話の番号のメモを俺たちに見せた。

「この携帯番号ですか。」と俺はメモをガブリエルに渡した。
ガブリエルはその番号に電話を掛けた。

「もう使われていない番号のようです。解約したのでしょうね。総務省に戻った後、契約情報を調べてみます。」とガブリエルは言った。

「そうしよう。それにしても、虚偽の情報でローン審査書類を作成することや、源泉徴収票を偽造するのは犯罪だと思わなかったのですか?」と俺はディーンに聞いた。

「良くないことだとは思いましたが、リードが『みんなやっている』と言っていたので、みんな偽造しているのであれば問題ないと考えたと思います。」

「そういう感覚ですか。まぁ、今となっては、銀行の借入も完済していますから、書類偽造による損害賠償などは発生しないでしょう。」

「それを聞いて安心しました。」

「ところで、前段が長くなってしまいましたが、譲渡担保と不動産売却に至った流れを教えてもらえますか?」と俺はディーンに本題を聞くことにした。
長々と喋ってしまったが、幾つか有益な情報を得られたから、まあいいだろう。

<続く>
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