第4王子は中途半端だから探偵することにした

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第7回活動報告:通貨危機を回避しろ

家族会議(その1)

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(4)家族会議

ジャービス王国の通貨危機を防ぐため、チャールズが国王と他の兄弟を招集して家族会議が開催された。

ジャービス王国では王族(国王とその息子4人)が政府主要機関を兼ねており、王族の家族の会議で重要事項が決定される。その会議の出席者が国王とその息子4人なので、その会議は陰で『家族会議』と呼ばれている。
ただ、家族会議で決定した事項を実行するためには国会承認が必要だ。国会で大体半分くらい否認されているから、この会議がジャービス王国の全てを決定しているわけではない。
でも、ジャービス王国の基本的な方針を決定する可能性があるので、それなりに重要な会議だ。

家族会議がスタートし、チャールズがジャービス王国の通貨危機に関する懸念を説明し始めた。

パンデミックを原因とした主要各国の利上げ、それに伴うジャービス・ドル安の発生、そしてそこにヘッジファンドが付け込んできた。何らかの対策を採らないと、ジャービス王国は通貨危機に瀕する可能性がある。

チャールズの質問を聞いた国王がまず質問した。

「通貨危機は・・・、国家の情勢が不安定な時に発生するんじゃないのか?」

たしかに、国王の言いたいことは分かる。
通貨危機は紛争などのネガティブな情報を基にして、投資家が大量に通貨を売却することから発生するイメージを持っている人が多い。

でも、実際は違う。

例えば、1997年にアジア通貨危機が発生し、タイ、マレーシア、インドネシア、韓国などが大きな打撃を受けた。
この通貨危機の原因はヘッジファンドの空売りが主な原因といわれている。ヘッジファンドは弱そうな国を見つけて、その国のネガティブな情報を拡散し、通貨を空売りして攻撃する。
空売り投資家が流している情報の中には、フェイクニュースに近いようなものもあるだろう。でも、その情報が『嘘でない情報』であり、対象通貨が値下がりすれば、他の投資家は「その情報は本当ではないか・・・」と信じるようになる。
近年起こっている戦争と同じ情報戦だ。

チャールズは国王の質問に答えた。

「必ずしもそうではありません。ヘッジファンドは弱そうな国を狙ってきます。実際にその国の情勢が悪くなくても、投資家に『その通貨を売却した方がいい』と思わせられればいいのです。」

「どういうことだ?」

「明らかに間違っている情報は誰も信じません。例えば、ワクチンの中にマイクロチップが入っている噂が世界中に広まりました。でも、誰も信じませんでした。誰が聞いても『マイクロチップがワクチンに入っているわけがない!』と思うからです。」

「そうだな。」

「でも、噂が『ワクチンの中に発ガン作用のある物質が含まれている』だったらどうでしょう?全員ではなくても、一部には信じる人がいるでしょう。」

「確かに、私も信じるかもしれないな・・・。」

「それと同じです。ジャービス王国に関するネガティブな情報が実(まこと)しやかに拡散されれば、その情報を信じる投資家が出てきます。ヘッジファンドが空売りしてジャービス・ドルが安くなれば、ますます信じる投資家は増えるでしょう。」

「そういうことか。やっかいだな・・・。」

「イメージすると、こんな感じです。」

そう言うとチャールズは国王と他の兄弟に資料を渡した(図表7-2)。

【図表7-2:通貨を巡る国家とファンドの攻防】
 


※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。

「今回のケースはどのような情報が流れたかは分かりませんが、他の先進諸国が利上げしたことによって、ジャービス・ドルが下がりやすい状況にありました。それを好機と考えたヘッジファンドがジャービス・ドルを大量に空売りしました。」とチャールズは説明した。

「今の段階は上から2番目くらいかな?」と国王が聞いた。

「そうですね。上から2番目と3番目の間くらいでしょうか。まだ、ジャービス・ドルの買い手はいます。」

「徐々に段階が下に下がってくると、ジャービス王国とヘッジファンドの攻防が始まる。」

「そういう事態を想定しておかなければいけません。」

「ところで、ジャービス王国がヘッジファンドとの通貨攻防に負けるたらどうなるんだ?」

国王はこういうことに疎い。

「ジャービス・ドルはさらに安くなっていきます。輸入品の仕入価格はますます高くなり、ジャービス王国が発行している外貨建国債の償還も困難になるかもしれません。」とチャールズは言った。

<続く>
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