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06「戦いへの準備」
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「次の計画が決まった」
屋敷に戻ったシルヴェリオはさっそく動きだす。
「それはよろしゅうございました」
ヴァレンテは嬉しそうに言った。どうやら自分好みの展開になると想像しているようだ。それはないと、先にくぎを刺さねばならない。
「籠城は最後の手段とする。しかし武は磨かねばならないな」
シルヴェリオは学院での出来事などを、残念顔の執事に説明した。そして自分も冒険者としてダンジョンに潜ると話す。
「つまりそのサークル活動を叩き潰してしまえばよいのですね?」
「!」
「なーに。造作もない。我が配下の徒党で荒らしてやりましょう。彼らの獲物を目の前で総取りしてやるのですよ。くっくっく……」
「いや、それは……」
「落胆する学生たちの姿が目に浮かびますなあ」
ヴァレンテは嬉しそうに言った。これが自分好みの展開なのだろう。
まさに悪魔のような所業。いや、神の鉄槌に等しい絶望が甘ちゃん学生たちを襲うであろう。その中に愛しの人がいるか、プッー、クスクスの別展開になるのか? シルヴェリオは想像した。
(フランチェスカは女子友と抱き合いながら泣きじゃくるだろう。そこに私が登場して……)
「いけません! それは愚策ですわ」
イデアはぴしゃりと言った。男二人の意見全否定! これが有能メイドの役どころである。
「ほう。ではどうすれば?」
「同じ日にダンジョンに潜り、どのような活動するか見守ってみましょう。具体的な対策はそれからでもよろしいかと思います」
「無難な作戦ですなあ」
「お坊ちゃま。まずは穏便に……」
「最初は偵察程度だ。なにより今の私の力がどれほどか見極めねばならん。イデア。私と組むパーティーのメンバーを集めてくれ」
「かしこまりました。いつものメンバーでよろしいですね? 最高クラスのパーティーとなります」
「うむ、けっこう。私の装備が必要だ。ヴァレンテ。ここでそろうか?」
「十分でございましょう」
シルヴェリオと執事は屋敷の武器庫に移動する。十分なスペースに大量の装備品が並んでいた。
「ふむ。たいしたものだな……」
まるで有事を想定した戦力の備蓄だ。剣、槍、盾、弓矢。そして様々な防具類。そんな中なあっても一番奥に飾られる一品が、いやおうなしに目に入る。赤いビロードが張られた壁に祭壇のような棚。シルヴェリオは引き寄せられるようにそこに向かう。
「この剣は何だ?」
それは高貴を体現したような彩りに輝いていた。
「聖剣でございます」
「名は?」
「はてさて。それは力を手に入れてこそ、分かろうというも」
聖剣など噂話の範疇であるが、確かに装飾は名に恥じない。見た目も必用だ。
シルヴェリオは手に取って抜き、そして剣肌を眺める。フランチェスカのうなじのように、なめらかであった。
「ん?」
そこに赤いドレスの女性が映り込む。シルヴェリオは振り向くが、武器庫の壁と扉が見えるだけであった。再び剣をのぞくが、もうそこに女は映っていない。
「……」
「いかがされましたか?」
「いや、なるほど。名前は聞けばよいか。これにしよう。服装だが……」
「昔から冒険者にあこがれる貴族の学生はおりました。彼らは一般冒険者のような格好をして正体を隠していましたね。今も同じだと聞いております」
「ならそうしようか。地味な格好が良い。やはり目立ちたくないしな」
それらしい服装に着替えて装備を身に付けると冒険者らしくなった。問題は今後どう動くかだ。ダンジョンに潜るまではいい。
「冒険者のシルヴェリオとしてどうすべきかだな…相手の動きが分かれば作戦もたてやすいのだが……」
「探らせる方法はございますが」
情報収集が行き過ぎては、防諜活動になりかねない。貴族の間では互いの疑心暗鬼を避けるため、そのような策は巡らさないと暗黙の了解があった。
「ほどほどにな。場合によっては禍根を残す」
「かしこまりました」
やりすぎは禁物だ。露見しては婚約話が完全に潰れる可能性もある。全てがぶち壊しになりかねない。
(ここは、慎重にいくべきだろう。失敗は許されない)
屋敷に戻ったシルヴェリオはさっそく動きだす。
「それはよろしゅうございました」
ヴァレンテは嬉しそうに言った。どうやら自分好みの展開になると想像しているようだ。それはないと、先にくぎを刺さねばならない。
「籠城は最後の手段とする。しかし武は磨かねばならないな」
シルヴェリオは学院での出来事などを、残念顔の執事に説明した。そして自分も冒険者としてダンジョンに潜ると話す。
「つまりそのサークル活動を叩き潰してしまえばよいのですね?」
「!」
「なーに。造作もない。我が配下の徒党で荒らしてやりましょう。彼らの獲物を目の前で総取りしてやるのですよ。くっくっく……」
「いや、それは……」
「落胆する学生たちの姿が目に浮かびますなあ」
ヴァレンテは嬉しそうに言った。これが自分好みの展開なのだろう。
まさに悪魔のような所業。いや、神の鉄槌に等しい絶望が甘ちゃん学生たちを襲うであろう。その中に愛しの人がいるか、プッー、クスクスの別展開になるのか? シルヴェリオは想像した。
(フランチェスカは女子友と抱き合いながら泣きじゃくるだろう。そこに私が登場して……)
「いけません! それは愚策ですわ」
イデアはぴしゃりと言った。男二人の意見全否定! これが有能メイドの役どころである。
「ほう。ではどうすれば?」
「同じ日にダンジョンに潜り、どのような活動するか見守ってみましょう。具体的な対策はそれからでもよろしいかと思います」
「無難な作戦ですなあ」
「お坊ちゃま。まずは穏便に……」
「最初は偵察程度だ。なにより今の私の力がどれほどか見極めねばならん。イデア。私と組むパーティーのメンバーを集めてくれ」
「かしこまりました。いつものメンバーでよろしいですね? 最高クラスのパーティーとなります」
「うむ、けっこう。私の装備が必要だ。ヴァレンテ。ここでそろうか?」
「十分でございましょう」
シルヴェリオと執事は屋敷の武器庫に移動する。十分なスペースに大量の装備品が並んでいた。
「ふむ。たいしたものだな……」
まるで有事を想定した戦力の備蓄だ。剣、槍、盾、弓矢。そして様々な防具類。そんな中なあっても一番奥に飾られる一品が、いやおうなしに目に入る。赤いビロードが張られた壁に祭壇のような棚。シルヴェリオは引き寄せられるようにそこに向かう。
「この剣は何だ?」
それは高貴を体現したような彩りに輝いていた。
「聖剣でございます」
「名は?」
「はてさて。それは力を手に入れてこそ、分かろうというも」
聖剣など噂話の範疇であるが、確かに装飾は名に恥じない。見た目も必用だ。
シルヴェリオは手に取って抜き、そして剣肌を眺める。フランチェスカのうなじのように、なめらかであった。
「ん?」
そこに赤いドレスの女性が映り込む。シルヴェリオは振り向くが、武器庫の壁と扉が見えるだけであった。再び剣をのぞくが、もうそこに女は映っていない。
「……」
「いかがされましたか?」
「いや、なるほど。名前は聞けばよいか。これにしよう。服装だが……」
「昔から冒険者にあこがれる貴族の学生はおりました。彼らは一般冒険者のような格好をして正体を隠していましたね。今も同じだと聞いております」
「ならそうしようか。地味な格好が良い。やはり目立ちたくないしな」
それらしい服装に着替えて装備を身に付けると冒険者らしくなった。問題は今後どう動くかだ。ダンジョンに潜るまではいい。
「冒険者のシルヴェリオとしてどうすべきかだな…相手の動きが分かれば作戦もたてやすいのだが……」
「探らせる方法はございますが」
情報収集が行き過ぎては、防諜活動になりかねない。貴族の間では互いの疑心暗鬼を避けるため、そのような策は巡らさないと暗黙の了解があった。
「ほどほどにな。場合によっては禍根を残す」
「かしこまりました」
やりすぎは禁物だ。露見しては婚約話が完全に潰れる可能性もある。全てがぶち壊しになりかねない。
(ここは、慎重にいくべきだろう。失敗は許されない)
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