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第四話「三人の将来聖女」
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翌朝、二人は山荘に赴いた。少女が今来た道の反対を指差す。
「私はあちらから、連れて来られたのだと思います」
「そうか、行ってみよう」
二人で草藪の中を捜すと小さな道が見つかった。ここが村を通らないルートになっているようだ。
「何か気が付いた事は無い? 何でもいいからさ」
「私は頭に袋を被せられていて……、荷馬車の様な物に乗せられていました。下ろされて、そこからたぶんこの道を歩かされて、この山荘に連れて来られたのだと思います」
「街道に繋がっている道なんだな、奴らの会話は何か覚えていない?」
「私たちはいつも一階にいたのですが、彼らはあまり話をしません、会議だと言って時々何人かが二階に上がって行きました。私たちが二階に連れていかれる時は、好き勝手にされる時で……、その時も彼らは行為以外の事は……話したりは……」
少女は話しながら顔面蒼白となり、足元がふらつき始めた。
「もういいから、それ以上は話さないで……」
シンジは彼女の腰に手を回して体を支える。あいつらはかなり用心深かったようだ。二人で別ルートの道を進むと街道に出た。
野盗たちは村とは反対の方向からやって来て、この道から廃山荘へ向かっていたようだ。連れ出されたもう一人の少女も、村とは反対の方向へ連れて行かれたに違いない、シンジは追跡を諦めた。
「村に戻ろうか」
「はい」
二人で酒場に戻りマスターに別ルートの道が有った事を伝えた。
「なるほどな、村の中であいつらの姿は見かけなかった。夜に行き来してるかと思っていたが……」
マスターは地図を出しカウンターの上に広げた。
「この村はテオム、ここだな、この先の街はメンヒス、中規模の街だ」
「あいつらはそっちの方角から来た訳か、その先にはアーディー、この街は大きいの?」
「大きな街だな、第二都とも呼ばれているよ、皇都に次ぐ規模だ」
「そこに行ってみるか……」
シンジは頭の中で考えをまとめ、少女に確認を求めた。
「なあ、二人に意見を聞いてくれるか? 俺はこのアーディーに行って腰を落ち着けようと思う」
「はい、あの二人、三人だけの時は、少しは話しをしてくれます」
それからの数日間、四人はこの村に滞在し昼間は村の近所にある海や近くの泉を見て回り、夜は四人で話し合った。そしてアーディーに行く事で意見が一致した。
相変わらず銀髪の少女は最初会った時に一言発しただけで、栗色の髪の少女もただ頷くだけだった。シンジはもう一度一人で山荘に行ってみたが、変わらず人の気配は無い、あいつらは全員駆逐できたようだ。
村を離れる日の朝、村人たちはマスターの店の前でシンジたちを見送ってくれた。
「それじゃあ、マスター、皆さん、お世話になったね」
「いや、こちらこそだ、あの野盗どもを退治してくれただけでも大助かりだ」
「あの剣を使いこなしたのか、ホラ吹きじゃなかった訳だな、役に立ってよかったよ」
酒場のマスターと武器屋の親父さんに続き、村人たちも口々に礼を言う。
「そうそう、俺たちじゃあ、あいつらに太刀打ち出来なかった」
「いつ、この村が襲われてもおかしくなかったよ」
マスターが手を差し出し、シンジが握り返す。二人は堅く握手を交わした。
「俺も若いころは戦士に憧れていてなあ、今じゃあしがない酒場のマスターだが……、シンジなら本当に騎士にだってなれるさ」
「ここで受けた恩は、そうだな、途中の街や村で魔人や野盗を退治して返す事にするよ」
「おおっ、そうしてくれ」
四人は皆と別れて街道を歩き始めた。
「シンジは本当にひどい人なのですね」
「ひどい、俺が? それはないなあ、なぜ?」
「未だに私たちの名前さえ聞こうとしません、皆とか、なあとか、君とかばかりでは失礼かと思います」
シンジは苦笑した。自分は以前、この世界に来た時、結局最後まで名乗る事もなかったし、名前を聞かれもしなかったし、別段疑問にも思わなかった。
もし聞かれていれば、名前なんてどうでもいい事と返したかもしれない。
「何を笑っているのですか?」
「いや、名前か、君の言うように大切な事だな……、ねえ、君たちの名前はなんて言うのかな?」
「私はレイチェルです」
レイチェルは金色の髪を右手でかき上げ、風になびかせながら笑顔で答えた。隣を歩いている銀髪の少女が続く。
「私はエミリーです。それとこの娘はーー」
「リリィです……」
栗色の髪の少女が呟いたので皆、驚いた。
「リリィ、話せるのですか?」
「少しだけなら……」
「そう、良かったわ、本当に良かった……、ねえ、シンジ」
「ああ、レイチェル」
シンジはまたこの世界に来たらあの魔王を倒してやろうかと考えていたが、今はもうどうでもよくなってきた感じだった。
今は何か運命のような物に流されながら、気ままに戦ってのんびり過ごし、この世界を楽しんでみるのも悪くないと思っていた。
「シンジ、また笑っているのですね」
「レイチェル、それとエミリー、リリィ、皆といるとなんだか楽しいよ」
「私はあちらから、連れて来られたのだと思います」
「そうか、行ってみよう」
二人で草藪の中を捜すと小さな道が見つかった。ここが村を通らないルートになっているようだ。
「何か気が付いた事は無い? 何でもいいからさ」
「私は頭に袋を被せられていて……、荷馬車の様な物に乗せられていました。下ろされて、そこからたぶんこの道を歩かされて、この山荘に連れて来られたのだと思います」
「街道に繋がっている道なんだな、奴らの会話は何か覚えていない?」
「私たちはいつも一階にいたのですが、彼らはあまり話をしません、会議だと言って時々何人かが二階に上がって行きました。私たちが二階に連れていかれる時は、好き勝手にされる時で……、その時も彼らは行為以外の事は……話したりは……」
少女は話しながら顔面蒼白となり、足元がふらつき始めた。
「もういいから、それ以上は話さないで……」
シンジは彼女の腰に手を回して体を支える。あいつらはかなり用心深かったようだ。二人で別ルートの道を進むと街道に出た。
野盗たちは村とは反対の方向からやって来て、この道から廃山荘へ向かっていたようだ。連れ出されたもう一人の少女も、村とは反対の方向へ連れて行かれたに違いない、シンジは追跡を諦めた。
「村に戻ろうか」
「はい」
二人で酒場に戻りマスターに別ルートの道が有った事を伝えた。
「なるほどな、村の中であいつらの姿は見かけなかった。夜に行き来してるかと思っていたが……」
マスターは地図を出しカウンターの上に広げた。
「この村はテオム、ここだな、この先の街はメンヒス、中規模の街だ」
「あいつらはそっちの方角から来た訳か、その先にはアーディー、この街は大きいの?」
「大きな街だな、第二都とも呼ばれているよ、皇都に次ぐ規模だ」
「そこに行ってみるか……」
シンジは頭の中で考えをまとめ、少女に確認を求めた。
「なあ、二人に意見を聞いてくれるか? 俺はこのアーディーに行って腰を落ち着けようと思う」
「はい、あの二人、三人だけの時は、少しは話しをしてくれます」
それからの数日間、四人はこの村に滞在し昼間は村の近所にある海や近くの泉を見て回り、夜は四人で話し合った。そしてアーディーに行く事で意見が一致した。
相変わらず銀髪の少女は最初会った時に一言発しただけで、栗色の髪の少女もただ頷くだけだった。シンジはもう一度一人で山荘に行ってみたが、変わらず人の気配は無い、あいつらは全員駆逐できたようだ。
村を離れる日の朝、村人たちはマスターの店の前でシンジたちを見送ってくれた。
「それじゃあ、マスター、皆さん、お世話になったね」
「いや、こちらこそだ、あの野盗どもを退治してくれただけでも大助かりだ」
「あの剣を使いこなしたのか、ホラ吹きじゃなかった訳だな、役に立ってよかったよ」
酒場のマスターと武器屋の親父さんに続き、村人たちも口々に礼を言う。
「そうそう、俺たちじゃあ、あいつらに太刀打ち出来なかった」
「いつ、この村が襲われてもおかしくなかったよ」
マスターが手を差し出し、シンジが握り返す。二人は堅く握手を交わした。
「俺も若いころは戦士に憧れていてなあ、今じゃあしがない酒場のマスターだが……、シンジなら本当に騎士にだってなれるさ」
「ここで受けた恩は、そうだな、途中の街や村で魔人や野盗を退治して返す事にするよ」
「おおっ、そうしてくれ」
四人は皆と別れて街道を歩き始めた。
「シンジは本当にひどい人なのですね」
「ひどい、俺が? それはないなあ、なぜ?」
「未だに私たちの名前さえ聞こうとしません、皆とか、なあとか、君とかばかりでは失礼かと思います」
シンジは苦笑した。自分は以前、この世界に来た時、結局最後まで名乗る事もなかったし、名前を聞かれもしなかったし、別段疑問にも思わなかった。
もし聞かれていれば、名前なんてどうでもいい事と返したかもしれない。
「何を笑っているのですか?」
「いや、名前か、君の言うように大切な事だな……、ねえ、君たちの名前はなんて言うのかな?」
「私はレイチェルです」
レイチェルは金色の髪を右手でかき上げ、風になびかせながら笑顔で答えた。隣を歩いている銀髪の少女が続く。
「私はエミリーです。それとこの娘はーー」
「リリィです……」
栗色の髪の少女が呟いたので皆、驚いた。
「リリィ、話せるのですか?」
「少しだけなら……」
「そう、良かったわ、本当に良かった……、ねえ、シンジ」
「ああ、レイチェル」
シンジはまたこの世界に来たらあの魔王を倒してやろうかと考えていたが、今はもうどうでもよくなってきた感じだった。
今は何か運命のような物に流されながら、気ままに戦ってのんびり過ごし、この世界を楽しんでみるのも悪くないと思っていた。
「シンジ、また笑っているのですね」
「レイチェル、それとエミリー、リリィ、皆といるとなんだか楽しいよ」
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