新創生戦記「休学ニートのチートでハーレムな異世界ファンタジー」

川嶋マサヒロ

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第七話「昼寝のような一夜」

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 道中はのんびりしたもので、幾人かの旅人が歩く街道を四人で隣村を目指した。途中の村には、まだ午後の早い時間到着、次の街を目指す事も出来たが、女の子たちの体力はまだ完全に回復しておらず、ゆっくり移動しようとシンジは決めていた。
 この小さな村には宿屋が無いので、時々来る旅人用に宿泊用に部屋が用意してあると、テオムの村のマスターから聞いていた。彼が書いてくれた紹介状代わりのメモを持って小さな酒場を訪ねる。

「へえ、懐かしいな、奴にも最近会っていないんだ。元気だったかい?」

 シンジが色々世話になったと伝えると、ここのマスターは酒場の隣の小さな家に案内してくれた。十二畳ほどのワンルームのツインに、ソファーや家具か幾つか置いてある。

「この部屋しかないんだが、構わないかい?」

「充分です。ありがとうございます」

 レイチェルが頭を下げた。四人で同室になるが仕方が無い、シンジは魔人や魔雑魚が出ているなら退治するとマスターに申し出た。

「この辺りはもう魔人は出ないなあ、森の奥に魔雑魚が発生したので、処理しなければと村の皆で話し合っていたが……」

「場所が近ければ、これから始末しに行くけれど」

「それが近くて、困っているんだよ」

 シンジはマスターから場所を聞き簡単な地図を描いてもらう、村から森へ少しだけ奥に入った場所だった。

「助かるよ、以前飛び散った魔雑魚を浴びてしまった奴がいてな、ここにはロクな武器も無いし」

 レイチェルが同行すると申し出る。シンジは少し考えたが場所も近いし、問題は無いと思い同意した。エミリーとリリィは留守番だ。
 二人は地図を頼りに森の中の道を進み、目印の木から森の奥に分け入る。

「見つけた、これが魔雑魚さ」

サッカーボール大が一つと、小さめな黒い塊が三つ、浮かんでいた。

「これは何なのですか?」

「そうだね、現実に存在する人の悪意とか、憎悪なんかがこの異世界に来て実体化している。とでも言えばいいのかなあ、はっきり言って、よくわからない存在でもあるね」

「これが悪意ですか?」

「うん、これが集まって人形ひとがたの魔人になって人間を襲う、下がってて」

 シンジは剣を抜き魔雑魚に突き刺すとそれは白く光り消え去った。

「それなりの剣を、それなりの人間が使えば退治は簡単さ、これを素手で触ったり、欠片が体に着いたら大変だ、体の中に魔が入る」

「どうなるのですか?」

「今、君たちが味わっている苦痛と同じような目に遭う」

「そうですか……」

「おかしな話なんだよ、人を介して魔に侵されるなんて聞いた事がないんだ。俺が知らないだけかもしれないけど……、さあ、帰ろうか」

「はい」

 二人で酒場に戻り、ここのマスターに魔雑魚を処理したと伝えた。

「助かったよ、こんな小さな村には戦士や剣士も忙しくて、なかなか来てくれないんだ」

「テオムの村のマスターとは知り合いなのですか?」

 シンジとレイチェルの前に冷えた小瓶のビールが差し出された。

「ああ、昔、騎士になろうってなあ、二人がかりでやっと普通の魔人を倒すのがせいぜい、結局は下っ端の剣士止まりだったよ」

 レイチェルはビール瓶の栓を握り、そのまま捻って開ける。シンジは一瞬驚いたが、すぐにスクリューキャップだと理解する。シンジもそれにならって栓を開けた。

「以外に簡単に開くんだなあ……」

 レイチェルがそれを見て微笑み、シンジは肩をすくめる。

「俺だって魔雑魚ぐらいなら、今持っている普通以下の剣でも処理出来るさ、ただ今はおかしな魔雑魚もいてな……」

「おかしい?」

「何度か刺すと普通は消えるけど、時々弾けるやつがいるんだよ、以前はそん魔雑魚はいなかった、もちろんあんたのような戦士用の剣を使えばそんな事はないんだが……」

「弾ける、ですか?」

「周りにいたやつが弾けた小さな魔をくらってな、汚染されたんだ、たいした量じゃないから死ぬ事はないけど」

「まるで地雷ですね」

「ああ、だから魔雑魚処理はいつも俺一人でやるんだ、幸い女房が元優秀な聖女でね、魔が入った時は裸で抱き合って眠っているよ」

 マスターとシンジは笑い、レイチェルは顔を赤らめる。二人は礼を言って店を辞退し部屋に戻った。

「さっき瓶の栓を素手で開けた時はちょっとびっくりしたよ、ビールなんてよく飲むの?」

「いえ、家族と庭でバーベキューなどやる時に父に付き合って少し飲むくらいです」

「ふーーん……」

 レイチェルは沈んだ表情になる。横で話を聞いていたエミリーとリリィも同様だった。毎晩こんな中世まがいの世界に放り込まれて、ひどい目に合っている事を家族にさえ話せず苦悩しているに違いない。

 シンジはソファーでも良いと申し出たが、娘たちは一つで充分だと言い、シンジは一人でベッドに横になった。セミダブルほどのサイズはある。

「こちらを向かないで下さいね」

 レイチェルはそう言うと服を脱ぎ二人が横になるベッドに滑り込む、三人は一つのベッドで毛布をかぶり抱き合った。

 シンジが天井を見上げながらぼんやりしていると、暫らくしてエミリーとリリィのすすり泣く声が聞こえた。

「大丈夫、泣かないで、さあ、もっと私に寄って……」

 レイチェルは二人を抱きしめながら魔を受け止めているようだ。天井を見つめていたシンジは目を閉じ隣のベッドの気配を伺う、二人の泣き声が聞こえなくなり、しばらくたったので、横のベッドを見ると二人はもう現実の世界に帰っていて、レイチェルは一人体を丸めて震えている。
 この時、彼女たちの中に魔か何かが入り込んでいるとシンジは確信した。

「つらいのか、大丈夫?」

 シンジはレイチェルに声をかける。

「だ……大丈夫……です。あの子たち……、こうしないと眠れなくて……」

 震える声を絞り出すレイチェルにシンジはため息をつく、立ちあがり着ていた服を脱いだ。

「そっちに行くから、怖がらないでくれよ」

 シンジはベッドの中に入りレイチェルの肩に手をかけた。

「聖女見習いにも及ばないのに他人の魔を受けるなんて無茶なんだよ、俺なら耐性も有るから……、こっちを向けって」

 シンジが両肩を掴んで強引にこちらを向かせると、顔はこわばり青い瞳からは涙があふれていた。レイチェルは手で涙を拭きながら笑顔を作る。

「無理するなよ、俺は君に倒れられたら困るんだ」

 シンジはそのままレイチェルを抱きしめ体の向きを変えて、彼女の体を自分の上に乗せた。二人の足が絡み合い、レイチェルの顔がシンジの胸に埋まった。

「耐性も無いのに一度に魔を受けると精神が破壊されかねない、分散すれば現実に戻った時に消えるんだ」

「御免なさい……」

「俺にとっては昼寝しているのとたいして変わらないから、気にしないで」

「最初の日に抱きしめてもらって……、本当はまたお願い出来ないものかと毎日、迷っていました……」

 レイチェルがシンジの手を握って来たのでシンジも強く握り返す。そのまま二人は眠りに落ち、現実の世界に戻って行った。


 翌日のレイチェルは見違えるような輝きを放ち、シンジがドキリとするほどの笑顔を振りまく、エミリーとリリィの二人も調子が良さそうだった。

 四人は次の街を目指した。
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