新創生戦記「休学ニートのチートでハーレムな異世界ファンタジー」

川嶋マサヒロ

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第八話「初めての街」

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 午後になって四人は最初の街、メンヒスに着いた。中規模の街と聞いていたが、小さな街と村しか知らないシンジにとって随分大きく見えた。

「さて、先ずは宿だな、なるべく賑やかな場所がいいね、中心部までもう少し歩こう、大丈夫かな?」

「はい、大丈夫です」

 レイチェルが他の二人を見て答える。エミリーとリリィも頷く、街の通りを歩きながらシンジはどのような店が有るかを確認した。
 とりあえず人数分のフード付きのローブが欲しかった。それと地図、以前この世界に来た時は戦いの事ばかりで地理には全く興味が無かったので、この世界にどのような街が有るかさえシンジには分かっていなかった。
 中央広場らしき場所に着くと、【戦士組合】の看板が目に付く、その建物の隣が小綺麗なホテルだった。

「あのホテルに行ってみようか」

 四人で中に入る。最初は敷居が高いと思っていたが、受付にいる初老の紳士は親切に対応してくれた。

「ただ、あいにく部屋は一階のツインしか空いておりません、それで良ろしければ……」

 シンジは三人の顔色を伺うと、目が問題無しと語っていた。

「けっこうです」

「ありがとうございます。それにしても……」

 紳士は壁に掛けられている部屋のキーを取りながら話を続けた。

「素晴らしい剣をお持ちですなあ、私の若い頃に流行っていたのですよ、一本の剣でどこまで切っ先を増やせるか、などね」

「すごい、分かるものなのですか……、剣を見ますか?」

「ご冗談を、無闇に他人に剣を預けてはいけません、私はあなたを狙う刺客かもしれませんよ?」

 シンジはキーを受け取りながら答えた。

「大丈夫です、その時は素手で攻撃を受け流して、剣を取り返しますから」

「はっはっはっ、これは失礼いたしました」

 初老の紳士は笑った。

 部屋は一階の奥に有り、二つあるベッドはダブルサイズ、シャワーにバスタブまであり、窓を開けると小さな庭が見えた。

「綺麗な部屋で良かった、皆は休んでてくれ、俺は買い物と情報集めに出掛けてくるから」

「私も同行いたします」

 レイチェルが声を上げた。

「休んでれば? 多分退屈な話ばかりだよ」

「大丈夫です。私もこの世界の事を勉強しなければ……」

「まあ、近場を回るだけたしな、エミリーとリリィは留守番ね」

 二人は頷いた。

 シンジとレイチェルがホテルの受付に行き、最近のこの世界に来たばかりなので、事情を聞きに隣の戦士組合に行くと告げると、老紳士はメモにペンを走らせた。
 シンジはそれを見ていたが、ペンの動きをは不規則としか見えない、書かれている文章は日本語で、シンジの紹介文が書かれていた。

 礼を言ってホテルを出たシンジは、レイチェルにそのメモを見せる。

「これ、何語に見える?」

「英語ですが……」

「そうか、俺には日本語に見えるよ」

「えっ、そうなのですか?」

「ここは不思議な世界さ、先ずは戦士組合とやらだ」

 戦士組合の扉を開けると、数人のスタッフが働いている姿が見えた。シンジたち二人は受付らしきカウンターに行きメモを見せる。

「お隣さんの紹介ですね、どのような御要件でしょうか?」

 対応してくれた若い男性スタッフに、シンジは三年前小さな街での仕事をしていた事と、ここ数日の出来事を要約して説明した。

「つまり、戦士組合のシステムや制度について、お知りになりたいのですね」

 スタッフの説明によれば、魔雑魚、魔人等、発見の報は戦士組合に集まり、そこから登録されている戦士、剣士に仕事として割り振られる。仕事の内容によってポイントが組合から発行されるとの事だった。

「昔居た小さな街では通報があれば魔人を倒すだけの毎日で、ポイントなんて無かった。、大きな街では複数の依頼を複数の戦士や剣士でここなす訳か」

「はい、依頼はあの掲示板に張り出されています。希望の案件が有ればお持ち下さい」

「仕事を片付ければ内容に合ったポイント、報酬が貰えるのか……、しかし金が無いこの世界でそのポイントに価値は有るのかな? 大概の物は自分で創造したり、貰ったりできるのに」

「例えばポイントがあれば住居などの紹介も出来ます。より強い武器などもご紹介致します」

「なるほど……」

「ああ、それから隣のホテル、オーナーは昔なかなかの戦士だったのですよ、いつも受付に居る人です。彼はポイントであのホテルを手に入れたのです」

「あの人は戦士だったのか……」

 シンジはついでに街の概要なども聞いた。地図やその他の物も手に入るようだ。礼を言ってシンジは席を立った。

「小さな依頼ばかりですが受けてくれれば助かります。めぼしい戦士や剣士はほとんど皇都に引き抜かれてしまって人出が足りませんから」

「掲示板を見てみますよ」

 シンジとレイチェルは掲示板に向かった。

「魔雑魚退治ばかりだね、野盗退治や奴隷絡みの案件は無しか」

 レイチェルがシンジの服をつかみ握りしめる。

「街に出ようか、行こう」

 シンジはレイチェルの手を握り組合を出る。奴隷に反応したようだった。

「気分が悪いなら戻ろうか?」

「ううん、大丈夫です」

 レイチェルは殊更に笑顔を作って首を横に振った。組合で聞いたマーケットを目指して二人で歩く。

「なかなか賑やかな街だね」

 幅の広い道路の両脇に幾つもの店が並び、大勢の客たちが品定めや、店主との交渉をしていた。
 雑貨屋に入り地図を探す。幸い世界全体と主要な街の拡大版、各地域の短い紹介文など描かれた地図があった。レイチェルは小物や雑貨に興味津々だ。

「欲しい物があるなら交渉してみたら?」

「今度、三人で来た時に楽しみは取っておきます。お金が要らないなんて不思議な買い物ですね」

 地図を手に入れて二人は店を出る。次は洋服だ。色とりどりの菓子や果物の屋台を見ながら二人は歩く、衣料品店が目に付き中に入った。

「フード付きのローブが人数分欲しいんだ」

 シンジは革の上着を羽織っていたが、三人は最初の村でもらったワンピース姿だった。シンジは森の中での使用を考えてモスグリーン、三人用にはレイチェルの提案でそれぞれの髪の毛の色、薄い黄色、白、薄い茶色を選ぶ、黄と茶はパステルカラーだった。

 帰り道、酒場の前で客同士の何やら揉め事らしい騒ぎに遭遇する。怒鳴り声が聞こえ、他の客が仲裁に入っているのが見えた。

「まったく、昼間からご苦労だなあ、ん?」

 レイチェルが真っ青な顔色でまたシンジの服を握り締めている。魔ではなくて監禁されていた時のフラッシュバックかとシンジは思った。

「大丈夫か?」

 口元に手を当て、レイチェルは膝が折れ座り込んでしまった。シンジもしゃがみ込み寄り添うとレイチェルはシンジに抱きつき胸に顔を埋める。

「ごめんなさい、少しこのままでいさせて下さい……」

 気丈に振る舞ってはいるが、三人の中でこの娘が一番参っているのではないか、とシンジは思った。

「すみません、もう大丈夫です」

 少しは落ち着いたようだが、まだ酒場前の揉め事は続いていた。

「他の道を行こう」

 シンジはレイチェルの手を引いて路地を歩く、ホテルが近づく頃には、レイチェルは普通に戻っていた。

「あの二人は私と一緒でないと眠れないのです。私では二人を少し楽にしてあげる事しか出来ないようです……」

 入りこんだ魔が抜けないのか、今のレイチェルではあの二人の症状を一時的に緩和するのが精一杯のようだった。何とかしなければ……、とシンジは思った。


 戦士組合の建物が見えた時、シンジは空に奇妙な白い飛行物体を見つけた

「あれは……、鳥? いや、竜なのか?」

 白い竜は高度を落とし組合建物の裏に降りて行った。

「あんな生き物までいるのですね」

「ああ、初めて見たよ」

 レイチェルはシンジの手を握しり締めた。

「大丈夫、心配無いよ、あれは正義の味方だそうだから」

 三年前、皇都での戦いでもう一人のシンジが白い竜を見ている。特別な力を持つ聖女が白い竜を操っていたとの記述をシンジは思いだした。
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