新創生戦記「休学ニートのチートでハーレムな異世界ファンタジー」

川嶋マサヒロ

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第十話「派手な聖女」

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 翌朝、シンジが指定された時間に戦士組合を訪ねると、昨日話をしたスタッフの男性がカウンターの奥から出迎えてくれた。

「聖女様はあちらの部屋で待っておられますから、どうぞ」

 シンジは同じ一階の別室に案内された。

「こちら、聖女のユーカ様です」

「ユーカです」

 その聖女は名乗って少し頭を下げた。
 腰まであるウェーブのかかった黒髪には紫とピンクのメッシュ、赤く染め胸元が開いた革の上着、黒革のパンツに花の刺繍、足元はセミロングの軍靴のようなブーツ、白いマントの後ろにはボタンで赤いフードが取り付けられていた。
 そして腰の左には装飾を施された短めの剣、胸元と耳にはアクセサリーが光っていた。
 シンジは一瞬、目を見開き、その聖女を凝視してから、挨拶を返す。

「シンジです」

「彼女にはこの街の結界を維持していただくために、時々来ていただいているのですよ」


 二人で戦士組合の裏庭に移動する。シンジが空を見上げるとあの白い竜が大空を舞っていた。こちらに向かってゆっくりと降下して来る。

「これが竜騎兵か、すごいな……、行き先は?」

 聖女は一度上着を脱ぎ長い髪を服の中に入れ、マントを外す。

「此処から北へ百キロ弱ね、だいたい一時間ぐらいかかるわ」

 二人は竜の背に載せられた鞍に上がった。

「ここと、ここに捕まってね」

 シンジは鐙 あぶみ に足を掛け、バイクの二人乗りのように前後の取っ手をつかむ。ユーカが手綱を握った。

「さあ、行くわよ!」

 翼を羽ばたかせると、白い竜は最初はゆっくりと浮き上がり、その後、瞬く間に上昇して水平飛行に移った。高度二百メートル程を北へと飛ぶ。

「おい、ユーカ!」

 シンジは猛烈な風の中で叫んだ。

「えっ? 何? 聞こえないわ! 話があるなら着いてからにして!」

 ユーカと呼ばれた派手な聖女は後ろを向いて怒鳴った。

 白い竜騎兵は目的地に着いたのか何度が森の上空を旋回し、小さな空き地に降り立った。

「さあ、着いたわ、降りて」

 草地に降りたシンジは竜騎兵を見上げる。

「こいつは生き物なのか? 人間の言う事を聞くのか?」

「動物ではないの、この世界に来ている、人の意識だけの集合体ね、魔人の逆、あっちは悪意の集合体」

「いや、それより何時まで知らんぷりなんだい? 佐伯さん」

「この世界ではユーカって呼んで」

ユーカも竜騎兵から飛び降りた。

「俺を見ても驚かなかった」

「ええ、あなたがこちらに来た時、だいたい分かっていたから」

「優秀な聖女様はそんな事も分かるのか?」

「いえ、見知った人がこちらに来ているのが分かるって位よ、誰かまでは分からないわ、この街での仕事は前からの予定よ」

「そうか、それにしても……」

「受付で話を聞いてから先に結界で、あなたを見させてもらったのよ、それでシンジだって分かった」

 二人は森の奥へ進みながら話す。

「いや、出来過ぎだ、偶然にしては出来過ぎだよ」

 ユーカはシンジの会社の秘書課に勤務している。現実世界での知り合いが偶然この世界で出会う確率がどれ程のものなのか、シンジは考えた。

「その話は後、ほら魔人よ」

ユーカが指差した先に普通サイズの魔人が一体、こちらを向いて立っていた。

「まさか親父の差し金か、いや、まさかなあ……」

 シンジは歩きながら納得がいかないようにブツブツと独り言を呟く、右手で剣を抜くと魔人は魔雑魚も残さず消し飛び、ユーカが驚きながら駆け寄って来た。

「何それ? 魔法なの?」

「いや、どうなのかな、久し振りの魔人で三人の聖女も張り切ったのかな?」

 シンジは剣を手に入れた経緯と能力を簡単に説明した。

「ふーん、その三人の聖女たちは、魔法の力に目覚めていたのかもね」

「この力は魔法なのか? それで戦士を説得して、戦うのを止めた……か……」

 シンジは呟いた。剣で戦うこの世界に、もし魔法に目覚めた聖女が三人も復活したら……、かつて魔法が剣に封印された時のように、何か争いが起きるかもしれない。

「他に魔人は何体いる?」

「一体よ、来たわね……」

ユーカの視線の先、三メートルはある魔人がこちらに向かって歩いて来る。

「デカいね、あいつが本命か……、ふん」

 ユーカも剣を抜いた。シンジは自分の戦力を分析する。飛行能力は無い、剣三本、飛び道具は剣圧が三つある。

「ここにいて、ユーカ!」

「ちょっ、ちょっと!」

 シンジは走り出し、剣を交差させ何度か振るうと、魔人の体から魔雑魚が幾つも飛び散った。魔人は両腕で防御しながら走り、シンジに向かって突進して来る。
 互いに接近し、魔人は長く鋭い爪を持つ右腕を振りかぶり、シンジが振り上げた剣を大地に向かって切りつけると、飛び出した剣の力に押されてシンジの体は中に浮き、魔人の爪は空を切った。
 シンジは体を半回転させる間に剣を振るうと魔人の首は胴体から離れ、もう一度、地上に降り立つ間に剣を切り返し、その頭部をたたき割った。

 その様を見ていたユーカは思わず口笛を吹く。

「やるじゃないの!」

 倒れた胴体に対してシンジは何度も剣を振るい魔雑魚を完全に消滅させた。

「これで終わりか、遠くまで来たのにあっけない仕事だったな」

「ええ、この街は百キロ以上で魔人を処理する方針なの、いつもは私と剣士二人の三人で対処しているわ」

剣士とは準戦士いみたいなもので、戦士の補助などを行う要員のようだ。

「彼らの仕事を奪っちゃったかな?」

「その剣士二人は近隣の村に急な仕事で出張中、あなたが居なければこの仕事は次回に持ち越す予定だったけど、組合は今日処理したかったみたい、気にしないで」

「さて、帰ろう、今夜はこの街に泊まるんだろ、話もあるし、会って欲しい人もいるんだ」

「会って欲しい人?」

 二人はまた一時間かけて竜騎兵で戦士組合への帰途につく、遠くにメンヒスの街が見えてきた。

「いやあ、この竜騎兵は凄いっ、これがあれば何処にだって行けそうだ!」

「だから聞こえないのっ! 話は着いてからにして!」

 ユーカはまた後ろを向いて怒鳴った。竜騎兵は上空を旋回し、戦士組合の裏庭に降り立つ、心配そうにレイチェル、エミリー、リリィの三人がこちらを見ていた。


 五人はこの街のユーカの行き付けの酒場に入った。

「聖女が三人とはシンジはずいぶんと贅沢な戦士様ですね」

「そうかな? 三年前にも俺には三人のアシスタントがいたよ、一人は聖母だったな」

「それはあなたの、その時の年齢的な事情と、たぶん魔人の脅威が大きい地域だからだと思うわ」

「確かに、毎日近場で魔人狩りをやっていたよ、ここはのんびりしたもんだ」

 シンジは続いて簡単な経緯と共に三人をユーカに紹介した。三人には今日一緒に仕事をした聖女、それと現実世界でも知り合いだと説明した。

「ユーカに色々聞きたい事がある。まずいったい何時からこの世界に来ているんだい?」

「三年前ね、他には?」

「この三人は聖女になれそうか?」

 ユーカはレイチェルとエミリー、リリィを順番に見つめた。

「力も才能も有ると思う、ちょっとした力の使い方はすぐ憶えられるわ、要は本人の意思、どれだけ想像できるかね」

「そうだよな、戦士だって本人の意思が力の源だ」

 三人が不思議そうな顔をして首を捻っている。

「どうしたの?」

「今、体の中を一瞬何かが通り抜けました、なんて言うか……」

「私の中を少しだけ触って行きました……」

 レイチェルに続きエミリーも珍しく話し、リリィも頷いている。

「驚いた、ほんの少し、一瞬だけ弱い結界を張ったのよ、これを感じるなんて本当に才能があるわ、シンジにもやったけど感じた?」

「いや、全然だ、俺は聖女志望じゃないし問題無い、男だし」


 店を出てホテルまでの道を歩く、ユーカも同じホテルだった。組合が仕事で来る戦士や聖女の為に何部屋か常時確保しているらしい、受付の紳士とも顔馴染みのようで気さくに話をしている。

「それじゃあ、私は上の部屋だから、明日はよろしくね」

 階段を上がって行くユーカを見ながら、シンジは三人娘の治療を頼もうかと思ったが止めにした。一瞬の結界では分からなかった程度なのだし、今夜、自分が試して上手く行かなければ、その時に改めて相談すれば良い。

 部屋に入るとエミリーがベッドに座り、二人はシャワーを使っているようだ。レイチェルが備え付けのガウン姿で出てくると、入れ違いにエミリーが入って行く、この世界で入浴する必要は無かった。翌朝になれば服の汚れなども含めて全て元に戻るのだから、純粋な気分転換の問題で食事と同じだった。

「シンジも使って下さいね」

「そうだね、風呂付の部屋なんて初めてだよ」

 シンジがシャワーを使い、ガウンを着て脱衣室から出ると、部屋の明かりは落とされ、レイチェルはベッドに座り、二人はもう一つのベッドの中に潜り込んでいた。

「シンジ、二人を……」

「分かった」

 ガウンを脱ぎ、毛布を捲ると二人は裸で目を閉じて丸くなっていた。

「なんだか悪さをしてるみたいだよなあ……」

 手前に居るエミリーを持ちあげて強引に間に割って入ると、二人はすすり泣き始めた。

「おっ、おい泣くな、レイチェル、助けてくれっ」

「エミリー、リリィ、いつも私に抱きつくようにしてみて」

 二人は躊躇 ためら いながらもシンジにすがりつく、目を閉じるとレイチェルと同じ二つの白い光が見えた。そしてその中にある影、これが魔かとシンジは思った。

「あっ……」

「ううっ……」

 二人は小さな呻き声を上げて涙を流し、シンジの胸を濡らす。寝息を立て始めた二人はしばらくすると消え去った。

「ふう、なんとか上手くはいったのかな?」

「大丈夫だと思います」

「レイチェル、来いよ」

「はい……、あっ」

 シンジはレイチェルの腰を強引に引き寄せ、自分の体の上に乗せて抱き締める。柔肌の滑らかなおうとつがシンジの全身に密着し、静寂の中、彼女の心臓の鼓動だけをしばらく感じた。

「俺は戦いの中、戦士としての自分の為だけに、君たちを聖女として利用するかもしれないんだぞ……」

「それでも構いません、今夜このままでいられれば……」
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