新創生戦記「休学ニートのチートでハーレムな異世界ファンタジー」

川嶋マサヒロ

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第十七話「西地区の戦い」

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 翌日の昼近く、シンジとレイチェルの部屋に昨日のメンバーが集まった。

「結局、追加の剣士は集まりませんでしたが、作戦は決行との事です」

 レイチェルがすまなそうに説明する。

「まあ、やるだけやってみるか、アランちょっと後ろを向いていてくれ、今日は話を聞いていてもらいたい」

 昨夜と同じくレイチェルはベッドに横になりベテランの聖女と同調する。状況は昨日とたいして変わりはなかった。
 森の奥に張った警戒線から一キロメートルほど先に問題の屋敷が有り、屋敷の周囲は百メートルほど木が無く草地で開けているそうだ。

「屋敷の中に入ります。あっ、三人床に倒れています」

「えっ、三人は無事でしたか、よかった」

 アランが声を上げ、いつもは西地区で共に戦っている仲間の無事を喜んだ。

「昨日と同じで建物の中にはもう魔人は居ないねえ、全て退治したようだよ」

 ベテランの聖女もレイチェルと同時に、屋敷の中を探る。問題は地下室の中だ。

「さてと、お嬢さん、地下を見ようかね、二人で同時に行こうか、私にしっかり同調して、危なければすぐ逃げるから遅れないようにね、状況は皆に説明してあげて」

「はい……、今、扉から中に入りました。階段があります。下りました。廊下が続いています。幅は二メートルありません、十メートルほど奥に鉄格子の扉があって開いています」

 レイチェルの表情が歪み、息が荒くなる。

「行きます。部屋は幅十メートルくらい、奥行きも同じで天井は三メートル……、部屋一杯に何かが居ます。魔です」

「そろそろ戻って来いよ、レイチェル」

「もうちょっと……、突起物が所々に有ります。伸びました。触手のような感じで、こちらに向かってきます!」

「引くわよっ、遅れないでね」

「はいっ、あっ、外に出ました。屋敷の前です。触手は追って来ません……」

「これくらいでどうかね?」

 聖女がシンジに方へ首を捻って聞く。

「充分です。二人とも御苦労だったね、これから二人で屋敷に行くから、引き続き俺たちを追いかけてくれ、防御はしなくてもいいよ」


 シンジとアランは二人で森に入った。後ろには警備要員が数人続く。

「中に入ってすぐの部屋に戦士が三人倒れているから、まずは彼らの救出だ」

「はいっ」

 二人が屋敷の中に入ると、大広間に三人の戦士たちが倒れていた。二人で外に運びだし、待機していた警備の人間が担架に乗せて運ぶ、シンジたちはもう一度屋敷の中に入った。
 大広間の右に問題の地下への入口が有り、鉄の扉が少し開いていた。

「行きましょう、シンジさん、僕だって少しは戦えますよ」

「この扉の先が階段で、地下に続いているとは思わなかったんだな……、外に出よう」

 アランの話には取り合わずシンジは呟いた。

「えっ? 地下には行かないのですか?」

 シンジは外に出て、アランも不満げにシンジの後に続く、救出された戦士たちは運ばれている最中で、数人のスタッフが遠巻きにこちらを見ていた。

「地下に入りましょう! 相手の正体ぐらいは確認しないと……」

 屋敷から五十メートルほど離れた所でシンジは立ち止まった。

「地下には入らないよ」

「逃げるんですか? 僕は剣士ですがランクAです。敵の姿も見ないで逃げる訳にはいきません、せめて一太刀でも……」

「いいから、いいから、アラン、下がってろ、十メートル以上な……」

「十メートル?」

「早く、怪我するぞ!」

 アランが困惑した表情で後ろに下がる。

 シンジは剣を抜き大上段に構え、屋敷に向かって振り下ろす。放たれた三つの巨大な剣圧が空間に三日月形の歪みを見せ、周囲の空気を巻き込みながら拡大して敷に突き刺さった。
 三つの亀裂が入った屋敷が崩れかかり、シンジがもう一度同じ攻撃を繰り返すと、屋敷は完全に崩れ落ち瓦礫の山と化した。

 一呼吸置いて、もう一度シンジは同じ攻撃をやや下向きに繰り出す。台地が震えシンジの周辺の地面に亀裂が走った。足元から発生した三本の地割れが、建物の地下付近に伸び激突する。
 地下の構造物がはじけ飛び、活火山の噴火を思わせるように石材が吹き上がる。シンジがまた攻撃を繰り返すと、黒い異様な触手が、砕けた石材と混ざり合いながら、何本も地表に飛び出した。

 駄目押しの一撃を更に加えると、地下の大きな黒い魔の塊、触手の本体が押し出され、徐々に姿を見せ始めた。
 シンジの口元がゆるむ、謎の怪物が地上に姿を現したのだ。

「こいつが問題の怪物か、こんなデカブツがバラバラなったら処理が大変だな」

 魔の塊なら消滅させるのは容易だ。シンジは三十メートルほどまで接近して剣の力を最大近くまで上げ、最後のひと振りを魔の怪物に喰らわせた。
 黒い塊に三条の光の線が引かれ、その線が火花を散らしながら次第に広がる。火花は大量の魔雑魚が消滅する時の光だ。
 光が巨大な塊を包み込み次第に小さくなっていく、触手の先まで光に包まれ、幾つかの小さい魔雑魚が地面にこぼれ落ちるのが見える。
 縮小して小さくなった光が、最後の輝きを発して消滅する。

 戦闘の推移を見守っていた警備要員たちが歓声を上げた。

「ふう……、多少魔雑魚が残ってしまったな、アラン、後の処理は頼むよ」

「えっ、でもまだ、さっきみたいな怪物がいたら……」

「気配をよく読め、残りは魔雑魚だけさ」

 昨日、戦士事務所で会ったこの案件の担当者が、破顔して握手を求めてきた。昨日の死にそうな顔とは別人だ。

「いやあ、助かりましたよ、一時はどうなる事かと、本当に助かりました」

 アランが剣を鞘に納めながら戻って来た。

「シンジさん、魔雑魚は少し残っていただけでした。全て処理しました」

「よし、帰ろうか」

 二人は歩きながら話す。アランは複雑な表情をしていた。

「あんな攻撃があるとは思い付きませんでした……」

「アランは最初、地下に入ろうとしただろ?」

「はい……」

「戦士たちが一階に倒れていたのは分かっていた。敵が地下にいるにも関わらずだ。恐らく彼らは地下であの怪物と出会い、戦ったが不利と感じて一旦一階に引いたが、たぶんあの触手のようなのが追って来て倒された。つまり地下での戦いは不利だと彼らは教えてくれた訳だな」

「はい……」

「俺たちはいつも森で戦っているから、つい同じ気分で室内でも戦えると思ってしまうんだ」

「シンジさんは地下で戦った事はあるのですか?」

「無いよ、だからその戦いは避けたんだ」

 アランは少し考え込んだ。

「だけど僕の剣ではあんな攻撃は出来ません、地下室ごと吹き飛ばすなんて……」

「その時は俺を呼べばいいんだ、そのために組合が俺たちを管理しているんだから」

 森を抜けるとこちらに、レイチェルが走って来るのが見えた。

「シンジっ!」

 二人が抱き合うと周りに居た関係者が、口笛を吹いて冷やかした。

「シンジ、あの怪物は……」

「ああ、見えたのか? 俺には最後の叫びが聞こえたよ」
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