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第二十一話「騎士と聖女の思い出」
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いつものように戦士組合の掲示板に立つと、中心に張られている依頼メモが目に着いた。他のメモは端に寄せられ明らかにそのメモだけが浮いていたからだ。
「チームメンバーの募集か、大型を含む魔人三体の討伐、戦士級の剣士と聖女を数名募集……、場所は東の領地の先、山岳部付近、報酬は相談か……」
シンジは掲示板からそのメモを取ると受付に持って行った。
「この依頼を受けるよ」
今やお馴染みになった受付嬢のクレアは、差し出されたメモ突き返して言った。
「これはチームメンバーの募集なの、受付はするからメモはまだ張っておいて」
「いや、俺が全て受ける。聖女はいつもの三人を連れていくよ」
「シンジが強いのは知っているけど、あの三人はまだ見習いクラスだしねえ、とりあえず上と相談してみるけど、依頼主の領主に対する対応もあって今回はチーム、つまり大人数を送りたい訳」
「組合の都合か、そんなに力のある領主なのかい? 雑魚を大勢送っても戦士組合の評判が落ちるだけだと思うけどね」
「そう言わないで、とにかく都合が有るのでまだこのメモは張っておいて、それから右上に張ってある依頼を受けて、北の農地で魔雑魚が大量発生したのよ、二カ所あるやつね」
「わかった、わかった」
シンジはメモを掲示板に張り直し、魔雑魚退治のメモを外す。組合の事務所を出て、裏にまわってメモを見せて馬を借りた。
街道を北へ向かって馬を走らせる。大体の場所は分かっていた。街を抜けて農地が続く道をメモ見ながら進むと、目的地らしい農地が見えてきた。
確かに大量の魔雑魚が農地に浮かんでいた。魔人一体分ぐらいか、農家の先に馬をつないで家を訪ね、主の老夫婦に組合から来た旨を伝える。
「魔雑魚退治も板に付いて来たなあ」
剣を抜き構える。浮かぶ魔雑魚を魔人の頭や腹、腕に見たてて剣を振るう、二、三十メートル先の魔雑魚を目がけて剣を振ると剣圧が飛び、魔雑魚は消滅した。
続いてふり向きざまに魔人、いや魔雑魚に向かって剣を振り下ろす。更に右と左に剣圧を飛ばす。
右を牽制して次に左に止め、もう一度右、十五体ほどの魔人を数分で倒した計算だ。
「だいたいこんなもんか……」
剣を鞘に納めると、五十メートルほど先に魔雑魚が浮いているのを見つけた。柄に手をかけて剣を抜くと魔雑魚は消滅する。今のところ、この距離が剣圧の射程ギリギリだった。
後ろから手をたたく音が聞こえたので振り返ってみると、主の老夫婦が二人でこちらを見ていた。シンジは剣を納めて二人の元へ向かう。
「なかなかの腕前ですな、昔はこの辺りも魔人が現れて、あなたのような若い戦士が戦っているのをよく見ましたよ」
「本当ねえ、まるで踊るように、魔人を倒すのを見るのは久しぶりでした。ほら、昔見た金髪の少年戦士と同じ、銀髪で少女の聖女と一緒だった時の事、憶えている? あなた」
「ああ、もちろんだとも、あの時の少年が今や白銀の騎士なんだからなあ、あなたもきっと騎士になれますよ」
「私はただの剣士ですから」
「いや、魔人十五体、たった三分だ。それにその剣、剣は使い手を選ぶものです」
「凄い! よく解りますね」
「ええ、まあ、魔雑魚退治は戦士の基本ですからね」
夫人が手作りのスイーツを、お土産に持たせてくれたので礼を言う。
「聖女見習いが三人も居るので、皆喜びます」
シンジは街に戻る途中から、脇道に逸れてもう一カ所の現場へ向かった。さっきと同様に牧草地の魔雑魚を処理する。こちらの魔雑魚の量はたいした事はなかった。
帰り道、馬を走らせながら、シンジは先ほどの婦人の言葉を思い出していた。
「銀髪の聖女か……」
夕方、組合事務所に戻り、馬を返して受付を訪ねる。
「ずいぶん魔雑魚がいたなあ、もう少しで魔人になる所だったよ」
「御苦労様、ずいぶんポイントが溜まったけど、何か欲しい物はないの?」
クレアはシンジの登録ノートに今日の依頼結果を描き込み、ポイントを加算する。
「竜騎兵が欲しいな」
「それは無理よ、ポイントでやり取りするものじゃないしね」
「魔人三体の依頼主は持っているんじゃないの?」
「それで一人で依頼を受けるなんて言ったのね、時々貸してくれるぐらいなら、交渉次第じゃないかしらね」
「それで充分だ、依頼の件、頼むよ」
シンジは軽く手を上げ組合を出た。
アパートの部屋に帰ると三人とも帰宅していて、レイチェルが出迎えてくれた。
「今日のお仕事はいかがでした?」
「いつもと同じ、農地での魔雑魚退治、それと、これお土産ね」
レイチェルが袋の包みを開けた。
「まあ、懐かしい、ウーピーパイです!」
エミリーとリリィが歓声を上げてやって来る。
「懐かし~~」
「ホント、ホント」
三人は何やら巨大なオ○オみたいな物を頬張った。
「ほら、シンジも食べて」
リリィが口元に差し出す大オ○オに、シンジもかぶり付く。
「甘いな~~、お子様用だね、俺はいいよ」
結局、シンジの食べかけもリリィが平らげる。何やら彼女たちにとっては懐かしの味のようだ。
「話は変わるけど、魔人三体を退治する依頼を受けることにした。まだ決定ではないけどね」
「私たちも行くの?」
リリィが目を輝かせてシンジを見る。
「うん、俺一人でも楽勝な仕事なんだけど、人数を集めなくちゃいけないそうだ。三人の休みも調整しないとね」
「エミリーはすごいんだよ、今日は先に帰って来てて、結界でシンジを見ていたって」
「へーー、そう、何が見えた?」
シンジがのエミリーの方を向き直る。
「金髪の少年と銀髪の少女が、魔人と戦っていたわ」
「そっちか、それはこの何とかパイをくれた、御婦人の昔の記憶だな」
「すごく幸せそうな二人だった……」
「昔の話だよ……」
両脇で寝るレイチェルとエミリーが裸で腕にしがみつき、リリィはシンジの上に裸身を半分乗せて寝息をたてている。
シンジは今日の出来事を考えていた。ロレンツとローゼなら魔王だって倒せるだろうに、あの二人は甘い、いや、あの二人でも魔王には勝てないのだろうか……?。
シンジは今日、二回目の言葉を呟いた。
「銀髪の聖女か……」
「チームメンバーの募集か、大型を含む魔人三体の討伐、戦士級の剣士と聖女を数名募集……、場所は東の領地の先、山岳部付近、報酬は相談か……」
シンジは掲示板からそのメモを取ると受付に持って行った。
「この依頼を受けるよ」
今やお馴染みになった受付嬢のクレアは、差し出されたメモ突き返して言った。
「これはチームメンバーの募集なの、受付はするからメモはまだ張っておいて」
「いや、俺が全て受ける。聖女はいつもの三人を連れていくよ」
「シンジが強いのは知っているけど、あの三人はまだ見習いクラスだしねえ、とりあえず上と相談してみるけど、依頼主の領主に対する対応もあって今回はチーム、つまり大人数を送りたい訳」
「組合の都合か、そんなに力のある領主なのかい? 雑魚を大勢送っても戦士組合の評判が落ちるだけだと思うけどね」
「そう言わないで、とにかく都合が有るのでまだこのメモは張っておいて、それから右上に張ってある依頼を受けて、北の農地で魔雑魚が大量発生したのよ、二カ所あるやつね」
「わかった、わかった」
シンジはメモを掲示板に張り直し、魔雑魚退治のメモを外す。組合の事務所を出て、裏にまわってメモを見せて馬を借りた。
街道を北へ向かって馬を走らせる。大体の場所は分かっていた。街を抜けて農地が続く道をメモ見ながら進むと、目的地らしい農地が見えてきた。
確かに大量の魔雑魚が農地に浮かんでいた。魔人一体分ぐらいか、農家の先に馬をつないで家を訪ね、主の老夫婦に組合から来た旨を伝える。
「魔雑魚退治も板に付いて来たなあ」
剣を抜き構える。浮かぶ魔雑魚を魔人の頭や腹、腕に見たてて剣を振るう、二、三十メートル先の魔雑魚を目がけて剣を振ると剣圧が飛び、魔雑魚は消滅した。
続いてふり向きざまに魔人、いや魔雑魚に向かって剣を振り下ろす。更に右と左に剣圧を飛ばす。
右を牽制して次に左に止め、もう一度右、十五体ほどの魔人を数分で倒した計算だ。
「だいたいこんなもんか……」
剣を鞘に納めると、五十メートルほど先に魔雑魚が浮いているのを見つけた。柄に手をかけて剣を抜くと魔雑魚は消滅する。今のところ、この距離が剣圧の射程ギリギリだった。
後ろから手をたたく音が聞こえたので振り返ってみると、主の老夫婦が二人でこちらを見ていた。シンジは剣を納めて二人の元へ向かう。
「なかなかの腕前ですな、昔はこの辺りも魔人が現れて、あなたのような若い戦士が戦っているのをよく見ましたよ」
「本当ねえ、まるで踊るように、魔人を倒すのを見るのは久しぶりでした。ほら、昔見た金髪の少年戦士と同じ、銀髪で少女の聖女と一緒だった時の事、憶えている? あなた」
「ああ、もちろんだとも、あの時の少年が今や白銀の騎士なんだからなあ、あなたもきっと騎士になれますよ」
「私はただの剣士ですから」
「いや、魔人十五体、たった三分だ。それにその剣、剣は使い手を選ぶものです」
「凄い! よく解りますね」
「ええ、まあ、魔雑魚退治は戦士の基本ですからね」
夫人が手作りのスイーツを、お土産に持たせてくれたので礼を言う。
「聖女見習いが三人も居るので、皆喜びます」
シンジは街に戻る途中から、脇道に逸れてもう一カ所の現場へ向かった。さっきと同様に牧草地の魔雑魚を処理する。こちらの魔雑魚の量はたいした事はなかった。
帰り道、馬を走らせながら、シンジは先ほどの婦人の言葉を思い出していた。
「銀髪の聖女か……」
夕方、組合事務所に戻り、馬を返して受付を訪ねる。
「ずいぶん魔雑魚がいたなあ、もう少しで魔人になる所だったよ」
「御苦労様、ずいぶんポイントが溜まったけど、何か欲しい物はないの?」
クレアはシンジの登録ノートに今日の依頼結果を描き込み、ポイントを加算する。
「竜騎兵が欲しいな」
「それは無理よ、ポイントでやり取りするものじゃないしね」
「魔人三体の依頼主は持っているんじゃないの?」
「それで一人で依頼を受けるなんて言ったのね、時々貸してくれるぐらいなら、交渉次第じゃないかしらね」
「それで充分だ、依頼の件、頼むよ」
シンジは軽く手を上げ組合を出た。
アパートの部屋に帰ると三人とも帰宅していて、レイチェルが出迎えてくれた。
「今日のお仕事はいかがでした?」
「いつもと同じ、農地での魔雑魚退治、それと、これお土産ね」
レイチェルが袋の包みを開けた。
「まあ、懐かしい、ウーピーパイです!」
エミリーとリリィが歓声を上げてやって来る。
「懐かし~~」
「ホント、ホント」
三人は何やら巨大なオ○オみたいな物を頬張った。
「ほら、シンジも食べて」
リリィが口元に差し出す大オ○オに、シンジもかぶり付く。
「甘いな~~、お子様用だね、俺はいいよ」
結局、シンジの食べかけもリリィが平らげる。何やら彼女たちにとっては懐かしの味のようだ。
「話は変わるけど、魔人三体を退治する依頼を受けることにした。まだ決定ではないけどね」
「私たちも行くの?」
リリィが目を輝かせてシンジを見る。
「うん、俺一人でも楽勝な仕事なんだけど、人数を集めなくちゃいけないそうだ。三人の休みも調整しないとね」
「エミリーはすごいんだよ、今日は先に帰って来てて、結界でシンジを見ていたって」
「へーー、そう、何が見えた?」
シンジがのエミリーの方を向き直る。
「金髪の少年と銀髪の少女が、魔人と戦っていたわ」
「そっちか、それはこの何とかパイをくれた、御婦人の昔の記憶だな」
「すごく幸せそうな二人だった……」
「昔の話だよ……」
両脇で寝るレイチェルとエミリーが裸で腕にしがみつき、リリィはシンジの上に裸身を半分乗せて寝息をたてている。
シンジは今日の出来事を考えていた。ロレンツとローゼなら魔王だって倒せるだろうに、あの二人は甘い、いや、あの二人でも魔王には勝てないのだろうか……?。
シンジは今日、二回目の言葉を呟いた。
「銀髪の聖女か……」
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