新創生戦記「休学ニートのチートでハーレムな異世界ファンタジー」

川嶋マサヒロ

文字の大きさ
24 / 39

第二十二話「暗殺者」

しおりを挟む
 シンジはネオゴッデス社長室でサヴェリオと会っていた。今は店に来たら、まずは顔を出すように指示を受けていたからだ。

「ここでの仕事には慣れましたか? シンジ」

「はい、慣れるも何も、たいして仕事はしていません、ガラの悪い客を追い出す事も時々有るだけですし……、それに……」

「それに?」

「だいたい対峙するだけで、なぜ皆引きさがってくれるのですかね? 用心棒と言えば、実際に相手を叩きのめすとか想像していましたが……」

「そうですね、この世界では持っている剣で相手の値踏みをしますから、シンジの剣が素晴らしく、自分の剣が鉄屑に毛が生えた程度に思えたのでしょう」

 今までの迷惑客はシンジが出て行くとおとなしく帰って行った。時には表に出て一戦交える場合があると聞いてはいたが、幸い今までそれは無かった。
 剣を抜いて切り合うのだが、お互い急所は避けて痛めつける程度の戦い、致命傷は負わせず、翌日、またこの世界に戻って来られる程度の戦い。
 実際、この夢の世界での怪我はよほど重症で無い限り、翌日転移して来た時には全快している。魔が入りこんだ時は別だ。
 客も多少は争いを期待しているとサヴェリオは言っていたが……。

「そんな事より、奴隷を狩り集めている連中の情報が入りましたよ、昔この街にあった組織の残党ではないですね、シンジの言っていた集団かもしれません」

「そこまで分かるのですか?」

「ええ、結界で調べましたから間違いありません」

「俺が行きますよ……」

「いえ、私も行きます、今夜、聖女としてアリーチャともう一人連れて行きます」

「アリーチャを? 彼女は聖女なのですか?」

「はい、なかなか才能がありますよ、彼女と組んで下さい、私はもう一人と組みます。子供の保護に聖女は必要です」

「そうですか、アリーチャには聖女の才能が……」

「私は今もですが夜の街を、剣を下げて時々歩いているのですよ、その時に……、二年ほど前ですが、アリーチャが小さな子供の手を引いて夜の街を歩いていたのです。もちろん二人に血のつながりはありません、アリーチャもその男の子も離れたくないと……」

 組合の託児施設に預かってもらっている弟とは、その子供の事のようだった。

「こちらに転移して偶然出会った男の子と三日三晩、私が潰した組織の残党たちから逃げ回っていたそうです。ボロボロになっていたのに眼だけは美しく光っていましてね、それでこの店に保護したのです。誤解しないで頂きたいが、あの娘からここで働きたいと言い始めたのです」

「そんな事があったんですか……」

「今回の件、何か物的な手掛かりでも見つかれば良いのですがね」

 シンジは廃山荘で野盗を全員始末した時の事を思い出した。

「一人ぐらいは生かして情報を聞き出しますか?」

「いえ、結界で記憶まで調べましたが大した情報になりませんでした。彼らは末端の下っ端で、大きな組織の下で仕事をしているとの自覚すらありません」

 西地区の怪物騒ぎの時はベテラン聖女がレイチェルの中から、シンジが魔王と戦った時の記憶すら読み取っていた。


 閉店したネオゴッデスから、フードを深くかぶった四人が静まりかえる夜の街に滑り出る。四人は押し黙ったまま足音も立てずに道を進み、ある路地裏の薄汚れた建物の前で止まった。

「ここですね……、アリーチャ」

「はい、一階に人は居ません、全員二階で二部屋に三人ずつ、子供はそれぞれの部屋に一人です」

 アリーチャが建物の中を読む。

「じゃあ俺が……」

 シンジが玄関扉の前に歩み出た。

「何をするつもりなのですか?」

「いや、ドアを蹴破ろうかと……」

 サヴェリオはため息をついた。

「マフィアの抗争じゃないんですよ、今夜の我々は暗殺者なのです。私がやりますから」

 サヴェリオは剣を抜きシンジと交代した。切っ先をドアノブの根元に音も無く突き刺し、捻ると解錠の音が聞こえた。
 シンジも剣を抜き、四人は中に入って階段を二階に上がった。

「シンジとアリーチャは右の部屋に、私たちは左をやりますから」

「部屋の中を読んであなたに見せるから配置を確認して、子供を巻き込まないように、鍵は掛かっていないから静かにドアを開けて……」

 アリーチャは声を押し殺し、シンジにささやく。

「分かった……」

 アリーチャの結界に同調して部屋の中が見えた時、シンジは髪の毛が逆立つような感覚に襲われた。改めて落着くように自分に言い聞かせ、ゆっくりとドアを開ける。
 中に居た男たちは三名、シンジは剣の一振りで三つの首を飛ばした。ベッドで男に組み伏せられていた子供に流れ出た血が降り注ぐ、アリーチャは素早く子供に近づき、持ってきたハンカチで顔の血を拭って抱きしめた。女の子だった。

 シンジは脱ぎ散らされた男たちの服のポケットを探る。続いてクローゼットの中と下の引き出しを開けた。何枚かのメモを見つけてポケットに押し込み、続いて男たちの剣を確認する。ごく普通の剣だった。
 サヴェリオたちが入った部屋に移動すると、こちらはもっと凄惨だった。縦に真っ二つに割られた裸の死体が床に三つ転がっていた。

「メモが幾つかありました」

「この部屋も調べましょうか……」

 シンジは男たちの服を調べる。剣はやはり普通の剣だ、この程度の人間が戦士用の剣を使うはずはない、サヴェリオはクローゼットの中を調べる。
 アリーチャがやって来た。

「サヴェリオ、こちらの子供は現実に帰ったわ」

「そうですか、こちらももうすぐでしょう……」

 ベッドの上でもう一人聖女に抱かれた子供が消えて行った。男の子だった。

「ここには手掛かりはなしですか、さて、一階も調べましょうか」

 四人は下に降りて、手分けして家具を調べる。
 アリーチャが机の引き出しから書類のような紙を見つけてサヴェリオに渡す。シンジも先ほど見つけた何枚かのメモを渡した。

「終わりですね、帰りましょう。シンジはいつものようにアリーチャを送ってあげて下さい」

 外に出て四人は通りを無言で歩いた。サヴェリオと聖女は店への道を曲がり、シンジとアリーチャは託児所の方角へ進んだ。

「随分と手慣れているな、こんな事よくやるのか?」

「時々ね、昔、私が来る前はあの二人でいくつもの組織を壊滅させたそうよ」

「暗殺者か……」

「悪さをする人は最近この街には近づかないみたいね、ここは死の街って呼ばれているんですって、お店で時々噂を聞くわ」

 二人は託児所前で別れ、アリーチャは二階の部屋に上がって行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

『下着の禁書庫(ランジェリー・アーカイブ)』 〜1日1枚だけ地球のコレクションを召喚したら、異世界の女たちが僕なしでは生きられない体になった

遊鷹太
ファンタジー
「パンツを愛でるだけの無能など、我が国には不要だ!」 勇者として異世界に召喚された佐藤零助(サトウレイスケ)に与えられたのは、前世で愛用していた下着コレクションを脳内で鑑賞できるだけのスキル『下着の禁書庫』だった。 王から「変態」の烙印を押され、魔物が蔓延る『死の森』へと追放されたレイスケ。しかし、そのスキルには王国の鑑定士すら見抜けなかった、神の領域の「循環強化(サイクル)」が隠されていた。 ■システム1:現物取り寄せ(コレクション・コール) 1日1回1枚、地球の自室にある1000枚以上のコレクションから現物を召喚。現代の最先端素材と技術を異世界に持ち込む。 ■システム2:真髄抽出(エキス・エキストラクト) 取り寄せた下着から「概念」を抽出。 「加圧式スポーツブラ」からは物理耐性スキル『剛体』を。 「シルクのネグリジェ」からは精神沈静スキル『明鏡止水』を。 下着が持つ特性をそのまま、レイスケ自身の強力なスキルとして永続獲得する。 ■システム3:魔導再構築(リビルド・テーラー) エキスを抜いた下着を分解し、レイスケの魔力で再構成。着用者に特定のスキルを付与する『魔導下着』へと造り変える。 死の淵にいた獣人の少女や、魔力暴走に苦しむ聖女にこれを与えると、彼女たちは一騎当千の力を得て覚醒する。ただし――その力は「着用している間」しか発揮されず、脱いだ瞬間に激しい喪失感が彼女たちを襲う。 ■システム4:深淵還元(フィードバック・エキス) これがこのスキルの最も恐ろしい真価。 一定期間着用された下着を回収し、そこに染み付いた「着用者の魔力・汗・感情」から高純度エキスを抽出。 それをレイスケが取り込むことで、彼のステータスは指数関数的に跳ね上がっていく。 「君を一番美しく、そして最強にできるのは僕だけだ」 レイスケが至高の一枚を仕立てるたびに、最強の女性たちが彼の腕の中で陶酔し、さらなる「エキス」を捧げるために戦場へと赴く。 追放した者たちが後悔してももう遅い。下着を通じて魂まで繋がった「下着軍団(ランジェリーズ)」を引き連れ、レイスケは異世界の理を書き換えていく。 【本作の見どころ】 毎日更新の累積型チート: 1日1回の下着取り寄せが、確実にレイスケを最強へと近づけます。 独自の強化ロジック: 「ただのバフ」ではなく、着用者の頑張りがレイスケに還元される共生システム。 深まる共依存: 下着を脱げないヒロインたちの葛藤と、レイスケへの異常な執着が描く背徳的ハーレム。 「パンツを制する者は、世界を制す――」 変態と蔑まれた男による、至高の異世界再編ファンタジー、ここに開幕!

私、魅了魔法なんて使ってません! なのに冷徹魔道士様の視線が熱すぎるんですけど

紗幸
恋愛
社畜女子だったユイは、気づけば異世界に召喚されていた。 慣れない魔法の世界と貴族社会の中で右往左往しながらも、なんとか穏やかに暮らし始めたある日。 なぜか王立魔道士団の団長カイルが、やたらと家に顔を出すようになる。 氷のように冷静で、美しく、周囲の誰もが一目置く男。 そんな彼が、ある日突然ユイの前で言い放った。 「……俺にかけた魅了魔法を解け」 私、そんな魔法かけてないんですけど!? 穏やかなはずの日々に彼の存在が、ユイの心を少しずつ波立たせていく。 まったりとした日常の中に、時折起こる小さな事件。 人との絆、魔法の力、そして胸の奥に芽生え始めた“想い” 異世界で、ユイは少しずつ——この世界で生きる力と、誰かを想う心を知っていく。 ※タイトルのシーンは7話辺りからになります。 ゆったりと話が進みますが、よろしければお付き合いください。 ※カクヨム様にも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...