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第二十七話「遠乗り」
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まどろみの中、シンジはベッドで寝がえりを打つ、目を開けると目の前に寝息を立てているレイチェルの顔が見えた。扉が二度ノックされてレイチェルも目を覚ます。
「昨日お茶を運ぶとか言ってたな……」
シンジは寝ぼけたまま、ソファーに脱ぎ棄てていたガウンを羽織って、扉を開けると世話をしてくれている黒髪のメイドが居た。
「あの……お茶を……お持ちしました……」
メイドが目を伏せ、顔を赤くしている。
「ああ、ありがとう……」
シンジはワゴンを受け取り、扉を閉めた。ベッドの脇までワゴンを押して行く。
「お茶を持って来てくれたよ」
「シンジ、その格好じゃあ……」
「しまった、寝ぼけていたな」
裸の上に着たガウンは、はだけたままだ。
朝七時に予定通り全員がダイニングに集合した。軽い朝食を済ませた後、ユーカが改めて作戦予定を説明する。
「私とレイチェルの二人は竜騎兵で魔人出現地の上空まで行き、結界を使って索敵を行います。シンジたち三人は馬で山荘まで移動して下さい」
空から結界を使い地上を探るのは、レイチェルにとっても良い経験になるはずだ。
「馬は何頭出してくれる?」
「三頭出します。エミリーとリリィは竜騎兵の行先をよく確認して下さい、先に山荘の上空に行きますので、一応、地図も用意しました。最悪迷子になった時は、私の方から結界で接触して誘導します」
ユーカが地図を差し出しシンジが受け取る。
「本日は索敵と移動だけです。戦いは明日、魔人の状況を見てから作戦を立案します」
六人は屋敷の裏手にある馬小屋にまわる。あらかじめ三頭の馬が用意されていた。
「今日は移動だけだから、ゆっくりでいいわ」
「了解だ、ユーカ」
シンジとエミリー、リリィの三人は馬用の裏門を出て、山岳地域へ向け走りだした。
一方のユーカとレイチェルは裏庭の奥の広場に移動する。二人とも風圧を想定して長い髪は三つ編みにしていた。
レイチェルが空を見上げると上空を竜騎兵が旋回していた。
「最初に目的地の山荘上空まで行ってから、更に奥に行って魔人を探します」
「はい、あの、ユーカさん、竜騎兵はどのように操るのですか?」
「うん、馬とは違うわね、どちらかと言えば戦士を扱うように接するの」
「戦士ですか?」
「そう、あなたの場合ならシンジにしているように、思いっきり愛して、お返ししてもらう感じ?」
「え~~と……」
「冗談よ、同調と同じね、竜騎兵と繋がって言う事を聞いてもらうのよ」
竜騎兵が地上に降下して来た。
「やってみる?」
「いえ、まだ私には……、シンジで練習してみます」
「アハハハ、そうそう、何事も練習よ」
翼を羽かせて着地した竜騎兵に二人が歩み寄る。ユーカが鞍に飛び乗り、レイチェルもそれに続く、ここは馬に乗る要領と同じだった。
「持ち手が有るけど私の腰に抱きついて同調して、その方が竜騎兵の扱い方や、索敵の仕方が分かるから」
「はい」
レイチェルが手綱を持つユーカの背中に抱きついた。
「お~~、シンジはこの感触にハマっているのね~~、さあ、行くわよ」
竜騎兵は周辺に風を巻き起こしながら飛び立つ、三階の窓からクリストフと執事が見守っていた。
シンジたちは山岳部に続く道を、山荘に向かって馬を走らせていた。ここの歴代の領主たちが想像して作り上げてきた道だった。
「シンジっ、ゆっくりでいいの、ペースを落としましょう!」
先頭を走るシンジの横にエミリーが並びかけ声を上げる。
「そうだった。つい!」
三人はペースを落とした。
「地図を読む限り、ゆっくりでも昼過ぎには着くわ、乗馬を楽しみましょうよ」
「そうそう、遠乗りよ、競争じゃないんだしね」
乗馬経験豊富な二人は馬の楽しみ方も心得ていた。
「俺は駄目だな、何事もついつい急いでしまう……」
シンジは三人に出会ったばかりの頃、気ままに戦ってのんびり過ごし、この世界を楽しんでみると考えたのに、最近また以前のように、戦いにのめり込んでしまいそうになっている自分を戒めた。
三人は川に差し掛かると豪快に水の中に馬を乗り入れ、道の横に草原を見つけたら少し走らせたり、日差しが当る道端に咲き乱れる花を楽しみ、森の奥から出てきた狼のような獣と睨み合った。
「この世界にはあんな動物もいるのか」
その獣はしばらくこちらを見た後、興味を無くしたとばかりに首を振り、森の奥に帰って行った。
「面白い、この世界は面白いよ、なんて楽しいんだ」
シンジはそう言って馬を先に進める。エミリーとリリィは顔を見合わせた。
「まるで子供ねえ」
「ほんと、でも私も最初はあんな感じだったよ」
二人はシンジを追いかけた。
魔人が居ると思しき場所の上空、竜騎兵はゆっくりと旋回しながら高度を落とす。レイチェルにはまるで分からなかったが、ユーカなりに場所の見当がついているようだ。
高度が下がってくると、ユーカの背中を通じてレイチェルも朧げながら魔の気配を感じ始めた。左旋回をしながらまた高度が下がる。
ユーカの目線の先を追うと木々の間に黒い点が見えた。あれが魔人なのだろうか? 竜騎兵は高度を上げて別の方向を目指した。
同じような動きを後三回繰り返してから、竜騎兵は山荘の方向に向かう。
「どう、魔人は感じた?」
後ろを向いたユーカが怒鳴る。
「はい、なんとなくですが……、最初のやつは黒い点で実際に見えました」
「他は森の中だったから見えなかったわねえ」
暫らくすると徐々に高度が下がり始めた。索敵を終えた竜騎兵は山荘前の空き地に降り立つ、二人が草地に飛び降りると、竜騎兵はまた空に飛び立った。
二人は巻き上がる風を避け小走りで山荘に向かう。
「竜騎兵はいつも何処にいるのですか?」
「空を飛んで飽きたらここに戻って来るわ、飛ぶ事は苦にならないみたい」
二人は山荘の玄関まで話しながら歩く。
「どの魔人が一番強く感じた?」
「そうですね、三番目のやつですね」
「当たりよ、それが三メートルくらいの魔人、他は普通の人間サイズね、感覚を憶えておいて」
「はい」
「昨日お茶を運ぶとか言ってたな……」
シンジは寝ぼけたまま、ソファーに脱ぎ棄てていたガウンを羽織って、扉を開けると世話をしてくれている黒髪のメイドが居た。
「あの……お茶を……お持ちしました……」
メイドが目を伏せ、顔を赤くしている。
「ああ、ありがとう……」
シンジはワゴンを受け取り、扉を閉めた。ベッドの脇までワゴンを押して行く。
「お茶を持って来てくれたよ」
「シンジ、その格好じゃあ……」
「しまった、寝ぼけていたな」
裸の上に着たガウンは、はだけたままだ。
朝七時に予定通り全員がダイニングに集合した。軽い朝食を済ませた後、ユーカが改めて作戦予定を説明する。
「私とレイチェルの二人は竜騎兵で魔人出現地の上空まで行き、結界を使って索敵を行います。シンジたち三人は馬で山荘まで移動して下さい」
空から結界を使い地上を探るのは、レイチェルにとっても良い経験になるはずだ。
「馬は何頭出してくれる?」
「三頭出します。エミリーとリリィは竜騎兵の行先をよく確認して下さい、先に山荘の上空に行きますので、一応、地図も用意しました。最悪迷子になった時は、私の方から結界で接触して誘導します」
ユーカが地図を差し出しシンジが受け取る。
「本日は索敵と移動だけです。戦いは明日、魔人の状況を見てから作戦を立案します」
六人は屋敷の裏手にある馬小屋にまわる。あらかじめ三頭の馬が用意されていた。
「今日は移動だけだから、ゆっくりでいいわ」
「了解だ、ユーカ」
シンジとエミリー、リリィの三人は馬用の裏門を出て、山岳地域へ向け走りだした。
一方のユーカとレイチェルは裏庭の奥の広場に移動する。二人とも風圧を想定して長い髪は三つ編みにしていた。
レイチェルが空を見上げると上空を竜騎兵が旋回していた。
「最初に目的地の山荘上空まで行ってから、更に奥に行って魔人を探します」
「はい、あの、ユーカさん、竜騎兵はどのように操るのですか?」
「うん、馬とは違うわね、どちらかと言えば戦士を扱うように接するの」
「戦士ですか?」
「そう、あなたの場合ならシンジにしているように、思いっきり愛して、お返ししてもらう感じ?」
「え~~と……」
「冗談よ、同調と同じね、竜騎兵と繋がって言う事を聞いてもらうのよ」
竜騎兵が地上に降下して来た。
「やってみる?」
「いえ、まだ私には……、シンジで練習してみます」
「アハハハ、そうそう、何事も練習よ」
翼を羽かせて着地した竜騎兵に二人が歩み寄る。ユーカが鞍に飛び乗り、レイチェルもそれに続く、ここは馬に乗る要領と同じだった。
「持ち手が有るけど私の腰に抱きついて同調して、その方が竜騎兵の扱い方や、索敵の仕方が分かるから」
「はい」
レイチェルが手綱を持つユーカの背中に抱きついた。
「お~~、シンジはこの感触にハマっているのね~~、さあ、行くわよ」
竜騎兵は周辺に風を巻き起こしながら飛び立つ、三階の窓からクリストフと執事が見守っていた。
シンジたちは山岳部に続く道を、山荘に向かって馬を走らせていた。ここの歴代の領主たちが想像して作り上げてきた道だった。
「シンジっ、ゆっくりでいいの、ペースを落としましょう!」
先頭を走るシンジの横にエミリーが並びかけ声を上げる。
「そうだった。つい!」
三人はペースを落とした。
「地図を読む限り、ゆっくりでも昼過ぎには着くわ、乗馬を楽しみましょうよ」
「そうそう、遠乗りよ、競争じゃないんだしね」
乗馬経験豊富な二人は馬の楽しみ方も心得ていた。
「俺は駄目だな、何事もついつい急いでしまう……」
シンジは三人に出会ったばかりの頃、気ままに戦ってのんびり過ごし、この世界を楽しんでみると考えたのに、最近また以前のように、戦いにのめり込んでしまいそうになっている自分を戒めた。
三人は川に差し掛かると豪快に水の中に馬を乗り入れ、道の横に草原を見つけたら少し走らせたり、日差しが当る道端に咲き乱れる花を楽しみ、森の奥から出てきた狼のような獣と睨み合った。
「この世界にはあんな動物もいるのか」
その獣はしばらくこちらを見た後、興味を無くしたとばかりに首を振り、森の奥に帰って行った。
「面白い、この世界は面白いよ、なんて楽しいんだ」
シンジはそう言って馬を先に進める。エミリーとリリィは顔を見合わせた。
「まるで子供ねえ」
「ほんと、でも私も最初はあんな感じだったよ」
二人はシンジを追いかけた。
魔人が居ると思しき場所の上空、竜騎兵はゆっくりと旋回しながら高度を落とす。レイチェルにはまるで分からなかったが、ユーカなりに場所の見当がついているようだ。
高度が下がってくると、ユーカの背中を通じてレイチェルも朧げながら魔の気配を感じ始めた。左旋回をしながらまた高度が下がる。
ユーカの目線の先を追うと木々の間に黒い点が見えた。あれが魔人なのだろうか? 竜騎兵は高度を上げて別の方向を目指した。
同じような動きを後三回繰り返してから、竜騎兵は山荘の方向に向かう。
「どう、魔人は感じた?」
後ろを向いたユーカが怒鳴る。
「はい、なんとなくですが……、最初のやつは黒い点で実際に見えました」
「他は森の中だったから見えなかったわねえ」
暫らくすると徐々に高度が下がり始めた。索敵を終えた竜騎兵は山荘前の空き地に降り立つ、二人が草地に飛び降りると、竜騎兵はまた空に飛び立った。
二人は巻き上がる風を避け小走りで山荘に向かう。
「竜騎兵はいつも何処にいるのですか?」
「空を飛んで飽きたらここに戻って来るわ、飛ぶ事は苦にならないみたい」
二人は山荘の玄関まで話しながら歩く。
「どの魔人が一番強く感じた?」
「そうですね、三番目のやつですね」
「当たりよ、それが三メートルくらいの魔人、他は普通の人間サイズね、感覚を憶えておいて」
「はい」
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