新創生戦記「休学ニートのチートでハーレムな異世界ファンタジー」

川嶋マサヒロ

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第三十話「神谷家 その一」

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 会社での神谷真治の仕事はこれと言って無い、時々父、社長のカバン持ちでグループ会社の視察、会議にお伴をするくらいだった。
 身内の会社に限った事で、真治のお披露目と取れなくもないが、社長の専用車の助手席にカバン抱えて乗り、現場に着けば父……、社長からは三歩も四歩も下がって後ろを歩く、スケジュールは秘書課の佐伯女史が真治に連絡してくれた。

 それ以外で、会社での真治は基本的にフリーだった。
 幸いグループを含めた会社の情報には自由にアクセスできた。つまり自分で仕事を探し学べと言う事だ。
 真治は現在の会社の情報よりも、まずは過去の資料だと思い、資料室に通ってこの会社成り立ちから調べ始めた。

 資料室には一度定年退職した後、再雇用された佐伯という人物が室長の肩書でいつも在席していた。自ら志願してこの部署に再就職した人物で、佐伯優華とは遠縁にあたるそうだ。
 シンジは毎日、社史等、特に古い資料を借り受け、時間を見つけて読みふけった。神谷家が会社を興したのは戦後だが、それ以前は全国に幾つかの神社を運営していて、それを佐伯家が手伝っていたようだ。
 つまり両家は数百年以上前からの近しい付き合いで、真治の祖母も旧姓は佐伯だった。

 今日の夕方、真治は優華を食事に誘っていた。

「御馳走させてもらうよ」

「あら、神谷さんは、お給料は貰っていたのかしら?」

「無給さ、でもお金はあるから、色々とお世話になってるしね」

 二人は時間差を付けて会社を出た。駅とは反対方向に歩き、指定された道を曲がると優華が待っていた。

「私が時々行く焼鳥屋さんがあるのよ、そこでいいかしら?」

「まかせるよ、俺は未成年だ。この辺のお店はさっぱりだしね」

 二人は少し歩き路地に入って小さな店の暖簾のれんをくぐった。カウンター席の奥に並んで座り、優華は生ビールを注文する。

「真治は?」

「俺は烏龍茶だな、酔って帰ったら母親と祖母が卒倒しちまう」

「偉いのねえ」

「普通だよ」

 優華が適当に焼き鳥を注文する。真治にはメニューがよく分からないので、おまかせだ。ビールのジョッキと烏龍茶が運ばれて来て二人は乾杯した
 優華の飲みっぷりは、なかなかたいしたものだった。

「さて、何か話でもあるのかしら?」

「うん……、まずはこの間の装甲のヤツの話だな、何か分かった?」

 シンジは声をひそめる。他の人間が聞けば異様な話をしているカップルか、もしくはアニメオタクの同士の会話とでも思われるだろうか? どちらにしろ、人に聞かれるのはあまりよろしくない。

「ええ、鎧に家の紋章が入っていたの、剣にもね」

「つまりあの剣も鎧も、クリストフの家の物だったって事か」

「前にも話たけどあの辺りは何度も戦いがあって……」

 優華はビールを一口飲んで話を続けた。

「ただあの鎧も剣も古いのよ、文献を調べたら、二百年以上前、あの辺りのさらに奥で、私兵団と魔人の軍勢が何度も激突しているの」

「昔は領主が騎士や戦士を抱えてたのか?」

「そう、あの辺りは東の防衛の要、アーディーの出城が元々の始まりなのよ」

 シンジたちの前に串焼きが盛られた皿が置かれた。

「食べながら話しましょう、美味おいしいわよ」

 シンジは見た目、なんの変哲もない普通の焼き鳥にかじり付いた。

「うん、確かに美味うまいい、でも何故かな?」

「朝めた鳥を使っているのよ、もちろん冷凍なんてしていない、新鮮な鳥なのね」

 カウンター前の冷ケースには氷が敷き詰められ、その上の敷物には串打ちされた鳥のさまざまな部位が並んでいた。

「うーーん、なるど……」

 シンジは感心しながら焼き鳥を頬張る。

「戦いの後、剣や鎧、武器は回収されたけど、全部ではなかったって事ね」

「事情は大体分かったよ、問題はなぜ魔人がその戦士の装備を見に着けていたかだな」

「昔も時々あんなのが出たらしいわ、文献に載っていた。ただ何故が、出来上がるのかは、昔も今も理由は不明ね」

「そうか時々なら安心だ、が次々湧いてくるかと思って青くなったよ」

「それが皇都周辺、近郊に何体か現れているらしいわ、公式な情報ではないけれどね」

「皇都の連中なら簡単に蹴散らすだろうから問題は無いけれどね」

 優華がビールと烏龍茶のお代りを注文する。

「串、まだいける?」

「もちろん、どんどん注文してくれ」

 優華は普通の焼き鳥と、聞き慣れないメニューを幾つか注文する。希少な部位だそうだ。


「ところで、真治は暇を見つけては会社の歴史のお勉強なのね」

「佐伯さんに聞いたのか、なかなか面白いよ」

「ふーん、普通は会社の業績や新規事業に興味を示すものだけどね、若旦那って」

「業績は株価を見ればいいし、新規事業は社員や株主に見させればいいだろう、俺ぐらいが会社の過去に興味を示さなければね、歴史に学べってよく言うだろう」

「偉いのねえ」

 佐伯優華は感心して真治を褒める。

「俺たちが行っている夢の異世界だって同じだよ、未来がどうなるかより過去に興味がある。なぜ本なりの記録があの世界に無いのかな?」

「印刷技術が無いのね、私の見た本は全て写本だったし、地図や冊子程度なら想像力でなんとか量産できるみたいだけど」

「さっき言っていた文献ってやつか、本はどれくらいあるの?」

「クリストフの屋敷に書庫があるのよ、数えた事はないけど沢山あるわ、倉庫にもあるみたい、当主八代に渡って集めた蔵書ね」

「素晴らしいな、俺も読ませてもらえないかなあ?」

「それは無理ね、私だって昔の聖女の記録ぐらいしか見せてもらえないし……」

「そうなのか、それは残念」

「家訓であまり他人に見せてはいけない事になっているのよ」


「話は変わるけどけど、もう一つ相談事が……」

 二人は串を平らげ、優華は飲み物のお代りを注文した。

「その……優華は沢山の戦士や剣士と同調した事があるんだよね」

「ええ、あるわよ」

「そうか、それで、なんて言うかなあ……まあ」

 真治は珍しく歯切れが悪い。

「どうしたの?」

 優華が真治の顔を覗きこむ。

「同調すると相手の事がよく分かるだろう……、それが原因でそいつを好きになってしまった事ってある?」
 
「ぷっ、何を言い出すかと思ったらそんな話か、相手の事がよく分かったって、好きな人じゃないと好きにはならないわよ、馬鹿ねえ……」

「そうか、やっぱりそうだよなあ……」

「あの金髪のお嬢さんの事ね、大丈夫、切っ掛けは同調でも好き合うのは真実よ、人を好きになる事に理屈なんて無いわ、どこが好きだなんて理由は後付け設定ね、二人がそう思ったら、それが真実よ」

「うん」

「恋の悩みか、羨ましいわね、ただ胸だけにこだわるのはどうかと思うわ」

「それは小さな切っ掛けだよ、全てを愛しているんだ」

「本人に直接言ってよ、私に言ってもねえ、それにしてもそんなセリフをよく素面しらふで言えるわねえ、若いなあ!」

「いや、そうだよな、我ながら恥ずかしいよ……」

「本人は、私は胸だけの女なのよ、とか思って悩んでいるかもよ」

「そうかもなあ……」

 店を出て二人は別れた。

 翌日、仕事が休みのシンジは、探偵社からメールが来たので午後、渋谷まで出かけた。
 家に帰りいつものようにパソコンを起動する。
 今日新たに見つかった小説は五本だった。最初に見た小説は恋愛ネタだ、王宮で王、王妃、王子、王女の人間模様と恋愛が描かれ、物語に絡む騎士が魔人と戦っていた。
 シンジは、これは違うと思った。
 しかし二章からの展開は魔人の攻撃を受け、王族と人々が撤退した皇都が舞台の話となり、物語の内容は一変した。

「これは?……」

 シンジは急いで話の先を読み進む。リーダーの白銀騎士と生き残りの戦士と剣士たちが、廃墟となった皇都で魔人との野戦を繰り広げた。
 主人公は隣町に避難した少年で、自ら志願して騎士や戦士と戦場に赴き、偵察や伝令などの任務をこなしながら、彼の目線で皇都奪還の戦いが描かれている。

「これは当たりだ。最初の恋愛話はわざと入れたフェイクだな」

 リーダーの白銀騎士は、名前は違うがロレンツに違いない、仮の皇都として使用されている隣街に全土から続々と戦士や聖女が終結する。
 少年は彼ら、彼女らを案内して皇都にある根城に向かうが、その一団を魔人が強襲、倒された戦士の剣を少年が取り、自も戦いに加わった。

「この少年は作者なのか?」

 剣士として戦う少年と、白銀騎士、街の少女とのエピソード、そして終わる事のない魔人との戦いの物語が描かれている。

「いや、この少年は架空のキャラだな、戦士としての才能が有れば最初から戦っていたはずだ」

 結末は唐突に訪れた。
 廃墟となった皇都に突如、強力な力を持つ皇女が現れて王宮を創造して復旧、強力な結界で街全体を支配して戦いは終息した。
 その小説には三年前の、もう一人のシンジの戦いのさらに前に起きた、皇都の壊滅から奪還までの数年間の戦いが描かれていのだ。
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