新創生戦記「休学ニートのチートでハーレムな異世界ファンタジー」

川嶋マサヒロ

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第三十二話「剣士アラン」

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 レイチェルが店の扉を開けると、すでに三人はテーブル席に座り飲み始めていた。

「あれ、アランどうしたの? 二人そろって」
「例の仕事です。今日は二人で廃屋の調査だったんですよ」
「そうか、まあ座れよ。マスター、一人追加です」

 シンジは席を立ってカウンターの椅子を一脚テーブルに移動し、五人はビールで乾杯した。

「ところでアラン。ここでの俺は、弱い剣士って事にしておいてくれ」

 シンジは小声でアランに話す。

「えっ、何ですか? それは」
「いや、強いと色々詮索されるからさ」
「はあ……」

 アランは要領を得ない顔で頷く。

「アラン、この二人はエミリーとリリィよ。一応、私も含めて将来聖女の三人ね」

 エミリーとリリィが挨拶をしてアランをまじまじと見る。

「剣士さんなんですか?」
「はい、僕は補助みたいなものですが」
「まだ若いのに偉いよ~~、魔人と戦ったりするのよね?」
「はい、ただ基本的に単独で魔人と戦う事はありません。最低でも二人で対処するのが組合の方針です」
「それでも凄いよ~~」

 先日結界越しではあるが、魔人との戦いを見ていたリリィは素直に感心している。

 マスターが注文していた料理を運んで来る。

「今日は新顔さんがいるね」
「ええ、マスター、今私と仕事をしている。西地区の剣士様です」

 レイチェルがアランを紹介した。

「おおっ、この若さで剣士なのか。たいしたものだねえ……、ランクはどれぐらいなのかな?」
「剣士ランクAです」
「ほーっ、その若さでもうランクAなのか! 凄いねえ」
「マスター、ランクAになるには剣士になって最低でも一年半はかかるんですよ」

 教授と呼ばれている常連がカウンター席からこちらを向き、話に加わる。

「なるほど。アランは剣士になってどれくらいなのかな?」
「僕は一年ぐらいです」
「そいつは凄い!」
「マスター、彼はエリート剣士ってやつですよ。もうすぐ戦士だ」

 シンジがアランを持ち上げる。

「いえ、そんな簡単に戦士にはなれません」
「そうか、まあゆっくりしていってくれ」

 マスターはそう言ってカウンターの奥に戻って行った。

「なっ、アラン。彼らはランク至上主義なのさ。俺が強いと彼らの夢を壊しちまう」

 シンジはアランに小声で耳打ちする。

「はあ……」
「シンジ、アランは頑張っているわよ」
「うん」

 レイチェルは西地区の組合出張事務所で受付の仕事を手伝うようになって、アランのノートも見たが、小さな依頼をいくつもこなし、仕事のない時は森に入って訓練、時々魔雑魚を見つけては処理をして報告、等々の一年の記録が記載されていた。

「ところで例の調査。何か出たの?」
「ううん、何もなしよ」

 レイチェルが首を横に振った。

「そうか、あんな怪物はそうそういないよ。それより森の奥に入るなら魔雑魚とか、突発的に魔人に遭遇するとか、そっちが心配だな……」
「大丈夫です。結界を張りながら慎重に調べるから。魔人がいた場合は撤退して戦力を立て直す事になっているの。それにアランと一緒だしね」
「私たちも組合の仕事を出来ないかしら? ねえリリィ」
「そうよね。どうなの? レイチェル?」

 エミリーとリリィの話にレイチェルは少し考えた。今回の調査くらいなら二人にも出来るとは思うが、スケジュールと人員の割り振りは決まっていた。人出不足は相変わらずだが、それはそれなりの戦闘が伴う仕事に限られていた。

 組合は近隣の村などへの戦士、聖女の短期派遣と、皇都への長期派遣の遣り繰りに腐心している。

「そうねえ、私たちで出来る事はあまりないわね。この間みたいにシンジとチームを組む仕事とかなら別だけど」
「そっかあ。じゃあシンジにチームの依頼を受けてもらえれば私とエミリーで手伝えるね」
「チーム依頼はあまりないなあ。レイチェルとアランの調査で魔人でも出でくれば、こっちに話があるかもな」

 レイチェルは組合に寄せられている依頼を思い出す。大勢のチームを組んでまで対処する敵はこの街にはそうはいない。

「じゃあその時は、私たち三人で助けに行くからね。アラン」
「はあ……」

 アランはどう答えてよいか困惑顔だ。一応、魔人出現時には、全ての調査を中止して、西地区全体として対応するとの対策が立てられていたので、リリィの出番は確実にないが、それをあえて口にしないアランに、レイチェルは好感を持った。

「アランは剣を何処で手に入れたんだい?」

 シンジが話題を変えた。

「この剣は戦士組合からの提供です。良かったら見ますか?」
「おいおい、無闇に他人に剣を預けちゃいけないな。俺はアランを狙う刺客かもしれないぞ!」
「はあ? シンジは刺客もやっているんですか?」
「いやいや、そうじゃなくてさ。ある人に言われたんだよ。最初はピンと来なかったけどね。最近はちょっと分かってきたって言うかさ。こんな仕事をやっていると俺たちの事を殺したいってやつが、そのうち本当に殺しにやって来るんじゃないかってね」
「そうですか、僕の事を殺しにですか……」
「まあ、剣を見せろ、なんて奴がいたら気を付けた方がいいね」
「シンジ、あまり物騒な話は止めてね」

レイチェルは殺すの単語に反応する。

「ああ、そうだね、レイチェル。ただ俺はレイチェルだって仕事の時には、短剣くらいは持った方がいいと思っている。ユーカだって短い剣を持っていただろう」
「そうよねえ。ユーカさんの剣は装飾も綺麗で、服装は聖女だけど上着を脱げば戦士としても通用する感じだったし、私も持とうかな?」
「うん、私も可愛い短剣が欲しいな」

 エミリーとリリィは乗り気だがレイチェルは渋い顔をする。自分が短剣を持つ姿はなかなか想像できない。

「私はどうかなあ……」
「戦いは最悪を想定しなくちゃ。戦士が倒される場合もあるんだしね。そう言えばこの街に来て武器屋に行った事ないな。アランはあるの?」
「ええ、もちろんです。時間があればしょっちゅう行っています。見ているだけで楽しいですよ」

 アランが目を輝かせ、レイチェルは額を右手で押さえた。なんで男の人はこうも武器類が好きなのだろうか? 

 父親が使いもしない銃器を大量に集めて、ゾンビが来たらどうするんだ? と真顔で言い訳している姿は、ここにいる二人の少年と同じ目だ。

 戦士が倒される? その時は聖女も死ぬ。それでいいではないか。

「そうか、今度、皆で行ってみるか? どう?」

 シンジはレイチェルの悲壮な決意など、気にも留めていないようだ。

「賛成」
「賛成」
「私は……」
「レイチェル、あまり深く考えないで。お守りみたいなものだよ。持っていてもらえれば俺も安心するしさ」
「はい……」
「僕が案内しますよ。店長とも顔なじみですから!」

 アランが身を乗り出して答える。

「そうか、今度、予定を合わせようか」

 ひとしきり飲んで解散し、シンジたちはアランと別れ部屋に戻った。


「武器を持つのは乗り気じゃないみたいだね……」
「分かる?」

 エミリーとリリィが気を利かせたのか早めに現実に戻って行った。二人だけのベッドの上でレイチェルがシンジの胸から少し顔を上げて答える。

 毎晩の、このトークタイムが二人の日課になっていた。

「うん、分かるよ……、でも本当に……」
「分かった、言う事を聞くわ。……なんだか私、シンジの言う事を聞いてばかりね」
「ひどいなあ。じゃあ、これからはレイチェルの言う事はなんでも聞くよ、何かある?」
「うん……、もっとそばにいてくれればそれでいい……」
「もうちょっと近くに来るか?」

 シンジはレイチェルを抱きしめる腕にほんの少しだけ力を入れた。

「うん……、凄く近くなった……」
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