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第三十六話「二つのチーム」
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レイチェルとアランは二人で廃屋敷の調査を続けていた。近場から進められたこの調査は終盤に差し掛かっていて、今まで他の地区でも問題は発見されていなかった。
今はわりあいと遠くの場所、一日二カ所程度を確認して回っている。
午前中の調査場所は問題なしで、今日は殆ど使用されていない旧街道の奥まで来ていた。
「この辺りのはずですよね?」
「ええ」
アランがゆっくりと馬を歩かせながら藪の中を覗きこむ。
「あっ、ありましたね、ここです」
草の下には、まだ道と辛うじて認識できる程度の跡が残っている。
二人は馬を進め、奥へと進んだ。今回の場所は昔の領主の屋敷で、もう百年ほど放置されている、との事だった。
後ろに着いていたレイチェルが叫ぶ。
「アラン、そろそろ結界を張るわね」
「はい!」
レイチェルは意識を集中し結界を道の先、奥までと進める。大きな屋敷が見え、建物の中に入ると数人の人、人間が見えた。
「アラン、人がいるわ!」
「えっ、人? 魔人ではなくて?」
「ええ、人よ、人数は……」
一階、二階と探り、三階までの人数を数える。
「十人も……、魔人はいないわ」
「帰りましょう。そいつらが使っていたから、ここへの分かれ道も簡単に見つけられたんだ」
二人はそのまま西地区の組合出張事務所に戻り、内容を報告した。
人間にせよ魔人にせよ廃棄された屋敷、調査対象で何かが発見された場合、排除行動は別途対策を考える事になっている。
その日の夕方、シンジはネオゴッデスの社長室でサヴェリオと向き合っていた。
「シンジ、明日は空いていますか?」
「はい、こちらで仕事をする日は、組合の事務所に顔を出すくらいですから」
「そうですか、実は組合から頼まれ事がありましてね……」
「仕事ですか……」
今回の件は西地区の旧街道奥の案件についてである。過去に廃棄された屋敷の調査で十人程度の人間が確認されたそうだ。
犯罪がらみの可能性が高いと判断されたが、人間相手の場合は組合としてもどう扱って良いか判断しかねているようだ。
娼館のネオゴッデスが、戦士組合から頼まれ事とは意外だが、以前の怪物騒ぎの時にも打診があったと聞いた。人間相手の厄介事だから押し付けられる、いや、こちらに頼まれるのだろう。
「シンジの判断で殺すなり対処して下さい。まあ、街の若者がサマーキャンプ気分で楽しんでいたら、注意するぐらいですかね」
組合の戦士や剣士には人を処分せよ、などと依頼は出せないのだろう。
「俺一人でですか?」
「人里離れた場所で昼間の仕事です。暗殺ではありませんから私は必要ないでしょう。聖女は付けますよ。アリーチャに行ってもらいます」
「奴隷がらみの連中ですかね?」
「さあ、どうでしょうか? アリーチャには私から伝えてありますから」
店が始まり、いつもの指定席でビールをすすっているとアリーチャが隣に座った。
「サヴェリオから聞いたわ。明日は昼も夜も一緒ね」
アリーチャはシンジの腕をつかみ、しな垂れる。
「冗談はよせよ、殺し合いだぜ」
「まあね」
アリーチャは一応、居住いを直す。
「でも、殺気立って乗り込んだら、街の男の子と女の子が、皆で楽しんでるだけだったりして」
笑いながら舌を少し出し、おどけて見せる。
「私たちも参加しちゃう?」
「よせよ」
「朝の九時に組合の前で待っているから。馬も組合で手配したって。私は乗れないのでシンジの後ろね」
アリーチャはノリノリでこんな仕事も楽しんでいるようだった。
今はわりあいと遠くの場所、一日二カ所程度を確認して回っている。
午前中の調査場所は問題なしで、今日は殆ど使用されていない旧街道の奥まで来ていた。
「この辺りのはずですよね?」
「ええ」
アランがゆっくりと馬を歩かせながら藪の中を覗きこむ。
「あっ、ありましたね、ここです」
草の下には、まだ道と辛うじて認識できる程度の跡が残っている。
二人は馬を進め、奥へと進んだ。今回の場所は昔の領主の屋敷で、もう百年ほど放置されている、との事だった。
後ろに着いていたレイチェルが叫ぶ。
「アラン、そろそろ結界を張るわね」
「はい!」
レイチェルは意識を集中し結界を道の先、奥までと進める。大きな屋敷が見え、建物の中に入ると数人の人、人間が見えた。
「アラン、人がいるわ!」
「えっ、人? 魔人ではなくて?」
「ええ、人よ、人数は……」
一階、二階と探り、三階までの人数を数える。
「十人も……、魔人はいないわ」
「帰りましょう。そいつらが使っていたから、ここへの分かれ道も簡単に見つけられたんだ」
二人はそのまま西地区の組合出張事務所に戻り、内容を報告した。
人間にせよ魔人にせよ廃棄された屋敷、調査対象で何かが発見された場合、排除行動は別途対策を考える事になっている。
その日の夕方、シンジはネオゴッデスの社長室でサヴェリオと向き合っていた。
「シンジ、明日は空いていますか?」
「はい、こちらで仕事をする日は、組合の事務所に顔を出すくらいですから」
「そうですか、実は組合から頼まれ事がありましてね……」
「仕事ですか……」
今回の件は西地区の旧街道奥の案件についてである。過去に廃棄された屋敷の調査で十人程度の人間が確認されたそうだ。
犯罪がらみの可能性が高いと判断されたが、人間相手の場合は組合としてもどう扱って良いか判断しかねているようだ。
娼館のネオゴッデスが、戦士組合から頼まれ事とは意外だが、以前の怪物騒ぎの時にも打診があったと聞いた。人間相手の厄介事だから押し付けられる、いや、こちらに頼まれるのだろう。
「シンジの判断で殺すなり対処して下さい。まあ、街の若者がサマーキャンプ気分で楽しんでいたら、注意するぐらいですかね」
組合の戦士や剣士には人を処分せよ、などと依頼は出せないのだろう。
「俺一人でですか?」
「人里離れた場所で昼間の仕事です。暗殺ではありませんから私は必要ないでしょう。聖女は付けますよ。アリーチャに行ってもらいます」
「奴隷がらみの連中ですかね?」
「さあ、どうでしょうか? アリーチャには私から伝えてありますから」
店が始まり、いつもの指定席でビールをすすっているとアリーチャが隣に座った。
「サヴェリオから聞いたわ。明日は昼も夜も一緒ね」
アリーチャはシンジの腕をつかみ、しな垂れる。
「冗談はよせよ、殺し合いだぜ」
「まあね」
アリーチャは一応、居住いを直す。
「でも、殺気立って乗り込んだら、街の男の子と女の子が、皆で楽しんでるだけだったりして」
笑いながら舌を少し出し、おどけて見せる。
「私たちも参加しちゃう?」
「よせよ」
「朝の九時に組合の前で待っているから。馬も組合で手配したって。私は乗れないのでシンジの後ろね」
アリーチャはノリノリでこんな仕事も楽しんでいるようだった。
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