おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ

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番外編 健太の話

身体強化2

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「コネって言うなら、ここに入社した人はコネが多いよ。俺等もそうだし」パーティーメンバーの佐藤さんが新人に言った。

 新人は「しまった」という顔をして、うつむいた。
佐藤さんは、新人の肩をポンと叩いて「気にするな、でも健太は実力でリーダーだから、安心してて大丈夫だからね」と声をかけた。


 案の定、ダンジョンでしくじった新人社員を、健太が助け担いで帰ることになった。

「じっとしてろよ 暴れると落とすから」と片手で新人を肩に担いだ健太は、そのままダンジョンの出口までメンバーと一緒に走った。新人は、ポーションでケガを治したものの、ぐったりと肩の上で動かなかった。

「流石にこれ以上デカい奴は担いでも引きずるから無理だな」と健太が言うと、サイズ感で無理って、重さは大丈夫なんですか?とパーティメンバーのタケルが聞いてきた。

「ダンジョンの中でなら、重さはあんまり気にならないけど、退ダンしたらさすがに重いよ」

「身体強化ってすごいですね」メンバー達はそう言って笑った。

「使えるようになるまで大変だったけどね」

 実際、健太が身体強化を使えるようになったのは、入社して3年くらい経ってからだった。

 入社したのは高校を卒業し、施設を退所した春だった。
「浜崎健太です。よろしくお願いします」そう言って頭を下げた健太を迎えてくれたのが社長の田中さんだった。

 身体が小さくて、同世代の激しい外遊びについて行けなかった健太は、周りから薬草採取やポーション作りの、4桁ダイバー向きの人材と思われていた。
 
 田中さんは健太を気に入って、良くダンジョンに連れて行かれ、2人でスライム狩りをした。

 2ヶ月から3ヶ月くらいして、健太がレベルアップして水魔法を使えるようになった頃から、田中さんの指導が何となくダンジョン寄りになった。

「ほら、もうちょっとウォーターボールを圧縮して、そのまま保って…」「風も範囲を狭めていって~圧力かけるよ~」

 会社で一番の電撃使いとなったのは、入社一年を過ぎた頃だった。リアル◯カチュウと言われ、ふざけた康太さんに肩車でダンジョンに連れて行かれそうになった。必死で抵抗したが。

 それからも田中さんに「自分なりにこうしたいとかあそこでこう出来たら、と思うことを形にして練習してみて」と言われた。
 
 健太がこうなりたい、と思うのは、守られるだけじゃなくて、誰かを守る人になること。

 仲間のために効き目の高いポーションを作ることや、ダンジョンの中で荷物を管理したり、疲れた仲間が休んでる間に周囲を警戒することは、健太にも出来る地味だけど、大事な仕事だった。

 でも、やっぱり健太もモンスターを倒して、スゴイな、さすがだな!って言われてみたかった。もっと本音を言うならいつか出会う女の子に、カッコいいねって言われる未来が欲しかった。

 全部を言うのは無理だったので、前半部分を田中さんに言っていた。とてもじゃないが、顔なんて上げられなかった。自分のつま先を見つめつつ言った本音に、田中さんは笑って言った。

「やればいいじゃない、ダンジョンの中なら出来るわよ」


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