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13 異端
しおりを挟む我は、悪魔と呼ばれる存在だ。悪魔と呼ばれる存在は、我の他にも多くいて、それらは人の魂を好んで食べた。おいしいらしい。我は食べたことがないのでわからないが、悪魔はそれを食べることが生きがいのようだ。
悪魔は、魂を得るために人間と契約をする。魂を頂く代わりに、その人間の願いを叶えるのだ。時に人間は、願いのために魂を喜んで差し出す。
我には、そんな人間も悪魔も理解できなかった。
捕食者にすがる人間も、その魂を食べて人間を終わらせる悪魔も。
未来を失ってまで、なぜ望みを叶えたいのか。
生かしているからこそ、滑稽で面白い人間を、どうして食べて終わらせてしまうのか。
我は、人間を見ているのが好きだった。人間が苦しみ、悲しむのを見て、愚かな生き物だと感じて、堕ちていく姿を見るのが好きだ。
特にお気に入りなのは、神を見限った、否定した人間だ。
そして、その人間を愛す人間。
面白いから、しばらくそれで遊ぶことにした。
彼らの絶望、行き違いが面白い。どちらも互いに愛し合うのに、どちらも互いを恐れていた。失うことを恐れているのに、誰かのものになるのが嫌で、自ら失わせる人間。何度も再会を喜び、何度も別れに絶望する。
面白い。でも、さすがに飽きてきた。
人間の絶望を見るのは好きだ。でも、そればかりでは飽きてくる。
なら、反対のものを見るとしよう。
最後の最後に、我は2つの魂を解放した。
別に、食べる目的で縛っていたわけではない。縛ったほうが面白いから縛っていただけだ。それに飽きたのなら、解放すればいい。
解放された人間は、一方は幸せに、もう一方は不幸に生きた。
不幸に生きたのには訳がある。その人間は神を足蹴にしたのだ。神の加護はなく、そんなものが幸せになるのは難しい。
最初はただ、解放した人間たちを見ていたが、やはりそれだけではつまらなかった。これなら縛っていたほうが面白い。
平凡な幸せを享受する人間とちょっとした不幸せな日々を過ごす人間。見ていて面白いものではない、そんな人間はそこら中にいる。これでは、解放した意味がなかった。
だから、手を加えることにした。
解放した人間に解放前の我に縛られていた時の記憶を与え、日常を壊してやったのだ。
平凡な幸せを享受していた人間は、唐突に不幸になった。その落差は笑いを誘う。
そして、わずかな希望にすがる様も笑いを誘った。
ちょっとした不幸せな日々を過ごす人間は、絶望に突き落とされていた。
あまりの絶望に、我に力を借りたことを後悔していたはずなのに、我の助力を乞おうとする姿は、滑稽だった。
そんな人間共が、再び出会った。
さて、どんな劇を見せてくれるのか?
再会を喜び合う2人。いつもは理不尽な別れが2人を襲うが、今回はそれがない。さて、どれほど幸せに浸れるのか?
我は、人間たちの周りが見えぬほどの感情をぶつけ合う姿を見るのが好きだ。自身すら捨て去ってしまってもよいと思うほど、一人の人間に感情を抱く姿は面白い。
人間たちの強い感情は、我の望む劇に必要不可欠のものだ。
悲劇は飽きた。今度は喜劇を見せてもらおう、かわいいおもちゃたち。
遠目で、2つの魂を悪魔は最後まで見守って、満足した。
異端の悪魔は、新しいおもちゃを探すため、その世界を去り新たな世界へと渡った。
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