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第3章
青い燕
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リベルテと一緒に来たユリウスを見て、シンジュは申し訳なさそうに声を掛けた。
「あ、あの……ゆ、ユリウスさま……あの時は、その……」
シンジュはユリウスを殺す為に、この城へやって来た。それが仲間達の理不尽な命令だったとしても、罪悪感が消える事はない。姉を蘇らせる為にと、王子を殺すまで海に戻るなと、家族も居場所も失ってしまったシンジュは、仲間の命令に従うしかなかった。
リベルテは「お前のせいじゃない」と言ってくれたが、ユリウスはそう思ってないだろうと、シンジュは考えていた。ユリウスを殺そうとした事実は何をしても消えない。
リベルテは許してくれても、ユリウスは許してくれない。きっと、今でも自分の事を恨んでいると、そう思い込んでいた。
「済まなかった」
「え?」
ユリウスが謝罪するのは、予想外の反応だった。優しく頭を撫でられ、シンジュは酷く困惑した。
「どう、して……ユリウスさまが、謝るんですか? 謝るべきなのは……」
「お前の姉を救えなかった。救える筈だったのに、俺は、彼女を死なせてしまった。俺があの時、救えていたなら、お前が仲間に俺を殺せと命令される事も、仲間達から迫害を受ける事もなかった」
「…………」
「お前やリベルを苦しめる原因を作ったのは俺だ。本当に、済まなかった」
深々と頭を下げるユリウスに、シンジュは慌てて「頭を上げて下さい」と言った。
「お姉ちゃんが死んだのは、ユリウスさまのせいじゃ、ありません。お姉ちゃんが死んだ時は、辛い事ばかりだったけど、その、リベルさまと、出会えたし、ユリウスさまも、クラウスさまも、すごく、優しくて、温かかった。本当の家族みたいに、心配してくれて、とても、嬉しかったです。だから、えっと、その……自分のせいだと、思わないで下さい」
あぁ、やはり、この子は彼女の弟なんだな。
他人を責めない所も、誰かを恨んだり憎んだりしない所も、誰かの為に行動出来る所も。
シンジュの姉と話した時の事を思い出し、シンジュの言った言葉を頭の中で復唱し、ユリウスは心が軽くなった気がした。シンジュと同様、ユリウスもシンジュは許してくれないと思っていた。姉を死なせてしまった事や、自ら命を絶つ切っ掛けを作ってしまった事、二人を苦しめてしまった事。
しかし、シンジュはユリウスを責めなかった。ジンジュはユリウスを「優しい」と言うが、本当に優しいのはシンジュの方だと思った。
「兄上は何でも一人で考え過ぎなんだよ」
「リベル」
「誰かに頼る事も、時には必要だと思いますよ? 一人で何でもしてたら疲れるじゃないですか」
「…………」
「頼むからいい加減くっ付いてくれ。いっそ襲って喰ってしまえ。俺の為に……」
「喰うって、何をだ?」
「……鈍い」
鈴の発言には少し動揺したが、彼等の優しさは嫌と言う程ユリウスに伝わった。誰かに大切だと思われる事も、誰かから「頼ってもいい」と言われる事も、今迄一度としてなかった。
夕と出会ったあの時を除き、夕達と再会するまでの間、ユリウスが誰かに心を許して誰かを頼ったり、甘えたりした事はなかった。
長年従者として傍に居るクラウスにさえ、ユリウスは心を許していなかった。
誰かに頼ってはならない。
助けを求めてはならない。
弱さを見せてはならない。
感情を悟られてはならない。
それが当たり前だった。全て一人でこなす事が当然だと思っていた。けれど、彼等は違った。
「一人じゃない」と、夕は言ってくれた。「自分のせいじゃない」と、シンジュは言ってくれた。「一人で抱えすぎだ」と、リベルテは言ってくれた。鈴の言葉は辛辣だったり、自分の為だと思われたりもするが、彼がユリウスの恋を応援している事も、嫌と言う程伝わってきた。
「誰かに優しくされるのは、こんなにも、嬉しい事なんだな」
ふわりと、ユリウスは嬉しそうに微笑んだ。作り笑いではなく、無理に笑っているのではなく、心から嬉しいと感じている事が分かる、とても綺麗な笑顔だった。
ユリウスが心から笑っている顔を見るのは初めてで全員一瞬驚きはしたものの、笑っている事が嬉しくてお互いがお互いの顔を見て笑い合った。
それからと言うもの、リベルテはシンジュに愛を囁き続け、ユリウスは夕の手を握り、色々と話している姿を見るようになった。
お互いに頬を赤く染め、照れたように笑いながら食事をしたり「可愛い」と連呼したり、彼等の雰囲気は兎に角甘かった。短い間だったとは言え、夕と会えなかった事が余程不安だったのか、ユリウスは以前よりも夕の傍に居るようになった。夕が何度も「何処にも行きませんよ?」と言っても、ユリウスは納得しなかった。
あの出来事以降、夕はユリウスの部屋で過ごす事になった。それは鈴が提案した事だったが、今の状況を目の当たりにし、深い溜め息を吐く。何時まで経っても進展しない事に痺れを切らし「そんなに不安なら、同じ部屋で過ごせばいい」と鈴は助言した。
これで少しは自覚するだろう。
どんなに鈍い夕でも、流石に気付くだろう。
そう思っての助言だった。しかし、結果は以前とあまり変わっていなかった。相思相愛の癖に、お互いに恋をしているにも関わらず、夕は相変わらず何も気付かず、ユリウスも本当の事を言えず、行動だけが先走っていた。
それでも彼等の雰囲気は砂糖を吐き出しそうな程甘く、間近でその光景を眺めていた鈴は不機嫌な顔をして「リア充爆発しろ」と小さく呟いた。
「ピィ!」
彼等に視線を向けていた時、鳥の鳴く声が聞こえ、鈴はそちらへ視線を向けた。純白を纏った逞しく大きな躰。バサリ、と広げた白い翼。白の中に一際目立つ緋。キラリと輝く緋が捉えているのは、鈴が飼っている燕だった。
体格差もあり端から見れば、白い大きな鳥が燕を襲っているように見える。白い鳥を視界に入れた鈴はピキッと青筋を立て、「いい加減にしろ! こんの馬鹿鳥が!」と叫ぶ。近くにあった石を投げ、投げた石は見事に白い鳥に命中し「ギャッ」と痛そうに呻く。
その瞬間、自分の所へ一目散に飛んで来る燕を見て、鈴は深い溜息を零す。手を伸ばすと燕は鈴の指に止まり、何度も鈴の手に自分の躰を摺り寄せた。
青い躰と目をした燕。
鈴がこの燕と初めて出会ったのは、パーティーが終わった後だった。初めて会った時から、燕は鈴にとても懐いていた。最初は野生に帰そうと試みたが、燕は鈴の傍を離れようとはしなかった。
何故この燕はこんなにも懐いているか。
どうして傍を離れようとしないのか。
何度も何度も疑問に思いながらも燕と過ごす内に、鈴はある事に気付いた。パーティーでナイフを投げられた時、頭に何かがコツンと当たり、振り向いたお陰で、鈴はほぼ無傷で済んだ。あの時、『何か』が当たらなければ、鈴は死んでいたかもしれない。
あの時は、会場内に居た誰かが危険を察知して何かを投げて気付かせようとしたんだろう、と思っていた。しかし、実際は違っていた。あの時、鈴の頭に当たったのは、この燕だった。何処から入ってきたのか、どうやって会場内に入ったのか、それは分からない。けれど、燕は何度も何度も鈴の後頭部を軽く小突く行為を続けていた。
悪戯か、嫌がらせだと思っていたその行為は、「あの時貴方を助けたのは私だよ」と燕が気付いて欲しくてしていた行為だと鈴は理解した。その事に鈴が気付くと、燕が鈴の頭を小突く事は無くなった。
命の恩人である燕を無下に扱う事は出来ず、鈴は燕が傍に居ても何も言わなくなり、気付くと燕が傍に居る事が当たり前になっていた。
燕と一緒に過ごすようになって暫く経った頃、白い大きな鳥が姿を現わすようになった。最初は気のせいかと思っていたが、白い鳥が来る頻度は日に日に増し、気が付くと白い鳥は燕の隣に居座っていた。
見ているだけだった白い鳥は、少しずつ行動するようになった。燕の頭を大きな嘴でそっと小突いたり、綺麗な花を咥えて来たり、小さな燕の体に自分の体を摺り寄せたり。
まるで好きな人に振り向いてほしくてアプローチしているようだ。
ようではなく、実際にそうだと確信したのは、白い鳥がいきなり燕を襲ったからだ。
怯えていた燕は少しずつ白い鳥への警戒を解き、今では自分から擦り寄っている。安心しているような雰囲気の燕とは対照的に、白い鳥の目はギラついていた。燕から視線を逸らさず、無防備な燕の姿を眺め続けていた。
まずい、と鈴が思った時には既に遅かった。理性を失った獣のように、白い鳥はいきなり燕に襲いかかった。当然燕は驚き、白い鳥からサッと離れた。ギャイギャイピィピィと鳥の鳴き声が響き続け、鈴はハッとして燕を助けなければと思った。
近くにあった手頃な石を手に持ち、白い鳥に投げた。石は見事に白い鳥に当たり、バサリと地に落ちた。それでも白い鳥は懲りずに何度も何度も燕を襲った。その度に鈴が燕を助け白い鳥を怒鳴る。
白い鳥は恨めしげに鈴を睨み、燕を見た。鈴の傍に居る時はとても安心した様子の燕を眺めていると、白い鳥の表情がフニャリと緩む。
この白い鳥は燕が好き。
その事に気付いたのは何時だっただろうか。夕とユリウスの事だけでも頭が痛いと言うのに、それに加え鳥達の恋愛事情にも首を突っ込まなければならない鈴は、「勘弁してくれ」と小さく呟き、頭を抱えた。
「あ、あの……ゆ、ユリウスさま……あの時は、その……」
シンジュはユリウスを殺す為に、この城へやって来た。それが仲間達の理不尽な命令だったとしても、罪悪感が消える事はない。姉を蘇らせる為にと、王子を殺すまで海に戻るなと、家族も居場所も失ってしまったシンジュは、仲間の命令に従うしかなかった。
リベルテは「お前のせいじゃない」と言ってくれたが、ユリウスはそう思ってないだろうと、シンジュは考えていた。ユリウスを殺そうとした事実は何をしても消えない。
リベルテは許してくれても、ユリウスは許してくれない。きっと、今でも自分の事を恨んでいると、そう思い込んでいた。
「済まなかった」
「え?」
ユリウスが謝罪するのは、予想外の反応だった。優しく頭を撫でられ、シンジュは酷く困惑した。
「どう、して……ユリウスさまが、謝るんですか? 謝るべきなのは……」
「お前の姉を救えなかった。救える筈だったのに、俺は、彼女を死なせてしまった。俺があの時、救えていたなら、お前が仲間に俺を殺せと命令される事も、仲間達から迫害を受ける事もなかった」
「…………」
「お前やリベルを苦しめる原因を作ったのは俺だ。本当に、済まなかった」
深々と頭を下げるユリウスに、シンジュは慌てて「頭を上げて下さい」と言った。
「お姉ちゃんが死んだのは、ユリウスさまのせいじゃ、ありません。お姉ちゃんが死んだ時は、辛い事ばかりだったけど、その、リベルさまと、出会えたし、ユリウスさまも、クラウスさまも、すごく、優しくて、温かかった。本当の家族みたいに、心配してくれて、とても、嬉しかったです。だから、えっと、その……自分のせいだと、思わないで下さい」
あぁ、やはり、この子は彼女の弟なんだな。
他人を責めない所も、誰かを恨んだり憎んだりしない所も、誰かの為に行動出来る所も。
シンジュの姉と話した時の事を思い出し、シンジュの言った言葉を頭の中で復唱し、ユリウスは心が軽くなった気がした。シンジュと同様、ユリウスもシンジュは許してくれないと思っていた。姉を死なせてしまった事や、自ら命を絶つ切っ掛けを作ってしまった事、二人を苦しめてしまった事。
しかし、シンジュはユリウスを責めなかった。ジンジュはユリウスを「優しい」と言うが、本当に優しいのはシンジュの方だと思った。
「兄上は何でも一人で考え過ぎなんだよ」
「リベル」
「誰かに頼る事も、時には必要だと思いますよ? 一人で何でもしてたら疲れるじゃないですか」
「…………」
「頼むからいい加減くっ付いてくれ。いっそ襲って喰ってしまえ。俺の為に……」
「喰うって、何をだ?」
「……鈍い」
鈴の発言には少し動揺したが、彼等の優しさは嫌と言う程ユリウスに伝わった。誰かに大切だと思われる事も、誰かから「頼ってもいい」と言われる事も、今迄一度としてなかった。
夕と出会ったあの時を除き、夕達と再会するまでの間、ユリウスが誰かに心を許して誰かを頼ったり、甘えたりした事はなかった。
長年従者として傍に居るクラウスにさえ、ユリウスは心を許していなかった。
誰かに頼ってはならない。
助けを求めてはならない。
弱さを見せてはならない。
感情を悟られてはならない。
それが当たり前だった。全て一人でこなす事が当然だと思っていた。けれど、彼等は違った。
「一人じゃない」と、夕は言ってくれた。「自分のせいじゃない」と、シンジュは言ってくれた。「一人で抱えすぎだ」と、リベルテは言ってくれた。鈴の言葉は辛辣だったり、自分の為だと思われたりもするが、彼がユリウスの恋を応援している事も、嫌と言う程伝わってきた。
「誰かに優しくされるのは、こんなにも、嬉しい事なんだな」
ふわりと、ユリウスは嬉しそうに微笑んだ。作り笑いではなく、無理に笑っているのではなく、心から嬉しいと感じている事が分かる、とても綺麗な笑顔だった。
ユリウスが心から笑っている顔を見るのは初めてで全員一瞬驚きはしたものの、笑っている事が嬉しくてお互いがお互いの顔を見て笑い合った。
それからと言うもの、リベルテはシンジュに愛を囁き続け、ユリウスは夕の手を握り、色々と話している姿を見るようになった。
お互いに頬を赤く染め、照れたように笑いながら食事をしたり「可愛い」と連呼したり、彼等の雰囲気は兎に角甘かった。短い間だったとは言え、夕と会えなかった事が余程不安だったのか、ユリウスは以前よりも夕の傍に居るようになった。夕が何度も「何処にも行きませんよ?」と言っても、ユリウスは納得しなかった。
あの出来事以降、夕はユリウスの部屋で過ごす事になった。それは鈴が提案した事だったが、今の状況を目の当たりにし、深い溜め息を吐く。何時まで経っても進展しない事に痺れを切らし「そんなに不安なら、同じ部屋で過ごせばいい」と鈴は助言した。
これで少しは自覚するだろう。
どんなに鈍い夕でも、流石に気付くだろう。
そう思っての助言だった。しかし、結果は以前とあまり変わっていなかった。相思相愛の癖に、お互いに恋をしているにも関わらず、夕は相変わらず何も気付かず、ユリウスも本当の事を言えず、行動だけが先走っていた。
それでも彼等の雰囲気は砂糖を吐き出しそうな程甘く、間近でその光景を眺めていた鈴は不機嫌な顔をして「リア充爆発しろ」と小さく呟いた。
「ピィ!」
彼等に視線を向けていた時、鳥の鳴く声が聞こえ、鈴はそちらへ視線を向けた。純白を纏った逞しく大きな躰。バサリ、と広げた白い翼。白の中に一際目立つ緋。キラリと輝く緋が捉えているのは、鈴が飼っている燕だった。
体格差もあり端から見れば、白い大きな鳥が燕を襲っているように見える。白い鳥を視界に入れた鈴はピキッと青筋を立て、「いい加減にしろ! こんの馬鹿鳥が!」と叫ぶ。近くにあった石を投げ、投げた石は見事に白い鳥に命中し「ギャッ」と痛そうに呻く。
その瞬間、自分の所へ一目散に飛んで来る燕を見て、鈴は深い溜息を零す。手を伸ばすと燕は鈴の指に止まり、何度も鈴の手に自分の躰を摺り寄せた。
青い躰と目をした燕。
鈴がこの燕と初めて出会ったのは、パーティーが終わった後だった。初めて会った時から、燕は鈴にとても懐いていた。最初は野生に帰そうと試みたが、燕は鈴の傍を離れようとはしなかった。
何故この燕はこんなにも懐いているか。
どうして傍を離れようとしないのか。
何度も何度も疑問に思いながらも燕と過ごす内に、鈴はある事に気付いた。パーティーでナイフを投げられた時、頭に何かがコツンと当たり、振り向いたお陰で、鈴はほぼ無傷で済んだ。あの時、『何か』が当たらなければ、鈴は死んでいたかもしれない。
あの時は、会場内に居た誰かが危険を察知して何かを投げて気付かせようとしたんだろう、と思っていた。しかし、実際は違っていた。あの時、鈴の頭に当たったのは、この燕だった。何処から入ってきたのか、どうやって会場内に入ったのか、それは分からない。けれど、燕は何度も何度も鈴の後頭部を軽く小突く行為を続けていた。
悪戯か、嫌がらせだと思っていたその行為は、「あの時貴方を助けたのは私だよ」と燕が気付いて欲しくてしていた行為だと鈴は理解した。その事に鈴が気付くと、燕が鈴の頭を小突く事は無くなった。
命の恩人である燕を無下に扱う事は出来ず、鈴は燕が傍に居ても何も言わなくなり、気付くと燕が傍に居る事が当たり前になっていた。
燕と一緒に過ごすようになって暫く経った頃、白い大きな鳥が姿を現わすようになった。最初は気のせいかと思っていたが、白い鳥が来る頻度は日に日に増し、気が付くと白い鳥は燕の隣に居座っていた。
見ているだけだった白い鳥は、少しずつ行動するようになった。燕の頭を大きな嘴でそっと小突いたり、綺麗な花を咥えて来たり、小さな燕の体に自分の体を摺り寄せたり。
まるで好きな人に振り向いてほしくてアプローチしているようだ。
ようではなく、実際にそうだと確信したのは、白い鳥がいきなり燕を襲ったからだ。
怯えていた燕は少しずつ白い鳥への警戒を解き、今では自分から擦り寄っている。安心しているような雰囲気の燕とは対照的に、白い鳥の目はギラついていた。燕から視線を逸らさず、無防備な燕の姿を眺め続けていた。
まずい、と鈴が思った時には既に遅かった。理性を失った獣のように、白い鳥はいきなり燕に襲いかかった。当然燕は驚き、白い鳥からサッと離れた。ギャイギャイピィピィと鳥の鳴き声が響き続け、鈴はハッとして燕を助けなければと思った。
近くにあった手頃な石を手に持ち、白い鳥に投げた。石は見事に白い鳥に当たり、バサリと地に落ちた。それでも白い鳥は懲りずに何度も何度も燕を襲った。その度に鈴が燕を助け白い鳥を怒鳴る。
白い鳥は恨めしげに鈴を睨み、燕を見た。鈴の傍に居る時はとても安心した様子の燕を眺めていると、白い鳥の表情がフニャリと緩む。
この白い鳥は燕が好き。
その事に気付いたのは何時だっただろうか。夕とユリウスの事だけでも頭が痛いと言うのに、それに加え鳥達の恋愛事情にも首を突っ込まなければならない鈴は、「勘弁してくれ」と小さく呟き、頭を抱えた。
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