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本編2
龍の加護
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シグレが宣言した通り、二人の体が透け始めた。アレを取り戻していないのに! とギャアギャア喚いても神々が定めた掟には誰であろうと抗うことはできない。シグレは笑顔のまま、世間話でもするかのようにヒサメとアスマについて語り始めた。
「良かったですね。貴方達がこの世界の住人ではなくて。異世界の人間でなければ、貴方達はヒサメ隊長に殺されていましたよ」
「は?」
「何を巫山戯たことを言っているの!? 早くアレを呼んできて!」
「アスマ様を呼び戻して、一体どうするおつもりで? 彼はもう貴方達の家族ではありません。ヒサメ隊長の伴侶です」
「伴侶、って。アレはまだ十六だぞ!?」
「まさか、あの男、アレにもう手を出したの!? 許せない!」
「十六歳の未成年に手を出すとは一体何を考えているんだ!? 俺達の許可も得ず勝手なことを!」
「貴方達はアスマ様を捨てましたよね? 何故、親ですらない貴方達に態々許可を得なければならないのです?」
「当然だろう! アレは俺の息子だぞ!」
「私が産んだんだから、アレは私達のものでしょう!」
「ならば何故アスマ様を捨てたのですか?」
シグレの質問に、二人は答えられなかった。ギリ、と歯軋りをして悔しそうにシグレを睨み返すだけ。常に死と隣り合わせだったシグレにしてみれば、二人の殺気など恐れる価値もない。自分のことしか考えていない二人に呆れ果て、シグレは小さくため息を吐いた。
「とにかく、俺達が消える前に早くアレを……」
「時間の無駄です。貴方達が何度説得しても、アスマ様の意思は変わりません。無理矢理アスマ様を奪うというなら、ヒサメ隊長が絶対に許しませんよ? ヒサメ隊長は雨を司る龍の化身であり、アスマ様はヒサメ隊長が最も愛する伴侶。これは私の憶測ですが、アスマ様も雨を司る龍の加護を受けていたのでしょう。ただ、産まれた世界が違うので、加護の力はかなり弱かったと思います」
「は?」
「加護って……」
「嘘でも冗談でもありませんよ。貴方達の悪事がバレなかったのは、アスマ様が加護を受けていたから。しかし、アスマ様が居なくなった瞬間、貴方達の悪事がバレて全てを失った。アスマ様を虐げていた罰ですね」
「その話が本当だとしたら、やっぱり俺達にはアレが必要ってことだろう!」
「そうよ! アレが戻ってきてくれたら、私達はまた幸せに……」
「なれる訳ないでしょう? 化身の伴侶を売り飛ばそうと企んでいた犯罪者が、今まで通り生きられるとでも?」
「え?」
「な、んで、バレて……」
「あれで隠しているつもりだったんですか? バレバレですよ。口にも出していましたし、アスマ様も最初から知っています。貴方達の思惑を全て知った上で、アスマ様は貴方達と会ったんです。きちんとお別れの挨拶をする為に。貴方達が、本当に心からアスマ様を心配して彼の幸せを願っていたのなら、もう一度幸せになれたかもしれないのに……貴方達はそのチャンスさえも自ら捨ててしまった。元の世界へ帰った貴方達に待ち受けているのは、生き地獄だけです」
あぁ、それと。私達の尊敬するヒサメ隊長を変態扱いしないでくれませんか? ヒサメ隊長はアスマ様のことを心から愛しているんです。愛する人と深く繋がりたいと思うのは当然の感情なのですから、部外者がギャアギャア騒がないでください。
二人は納得しておらず、まだ何かを喚いているがもう何を言っているのか分からない。足先と指先から消え始め、残っているのは顔だけ。醜い二人の顔もすうっと静かに消えていき、アスマの両親はこの世界から完全に消えてしまった。その様子を静かに見届け、シグレは「終わりましたね」と小さく呟き、安堵の息を零した。
「良かったですね。貴方達がこの世界の住人ではなくて。異世界の人間でなければ、貴方達はヒサメ隊長に殺されていましたよ」
「は?」
「何を巫山戯たことを言っているの!? 早くアレを呼んできて!」
「アスマ様を呼び戻して、一体どうするおつもりで? 彼はもう貴方達の家族ではありません。ヒサメ隊長の伴侶です」
「伴侶、って。アレはまだ十六だぞ!?」
「まさか、あの男、アレにもう手を出したの!? 許せない!」
「十六歳の未成年に手を出すとは一体何を考えているんだ!? 俺達の許可も得ず勝手なことを!」
「貴方達はアスマ様を捨てましたよね? 何故、親ですらない貴方達に態々許可を得なければならないのです?」
「当然だろう! アレは俺の息子だぞ!」
「私が産んだんだから、アレは私達のものでしょう!」
「ならば何故アスマ様を捨てたのですか?」
シグレの質問に、二人は答えられなかった。ギリ、と歯軋りをして悔しそうにシグレを睨み返すだけ。常に死と隣り合わせだったシグレにしてみれば、二人の殺気など恐れる価値もない。自分のことしか考えていない二人に呆れ果て、シグレは小さくため息を吐いた。
「とにかく、俺達が消える前に早くアレを……」
「時間の無駄です。貴方達が何度説得しても、アスマ様の意思は変わりません。無理矢理アスマ様を奪うというなら、ヒサメ隊長が絶対に許しませんよ? ヒサメ隊長は雨を司る龍の化身であり、アスマ様はヒサメ隊長が最も愛する伴侶。これは私の憶測ですが、アスマ様も雨を司る龍の加護を受けていたのでしょう。ただ、産まれた世界が違うので、加護の力はかなり弱かったと思います」
「は?」
「加護って……」
「嘘でも冗談でもありませんよ。貴方達の悪事がバレなかったのは、アスマ様が加護を受けていたから。しかし、アスマ様が居なくなった瞬間、貴方達の悪事がバレて全てを失った。アスマ様を虐げていた罰ですね」
「その話が本当だとしたら、やっぱり俺達にはアレが必要ってことだろう!」
「そうよ! アレが戻ってきてくれたら、私達はまた幸せに……」
「なれる訳ないでしょう? 化身の伴侶を売り飛ばそうと企んでいた犯罪者が、今まで通り生きられるとでも?」
「え?」
「な、んで、バレて……」
「あれで隠しているつもりだったんですか? バレバレですよ。口にも出していましたし、アスマ様も最初から知っています。貴方達の思惑を全て知った上で、アスマ様は貴方達と会ったんです。きちんとお別れの挨拶をする為に。貴方達が、本当に心からアスマ様を心配して彼の幸せを願っていたのなら、もう一度幸せになれたかもしれないのに……貴方達はそのチャンスさえも自ら捨ててしまった。元の世界へ帰った貴方達に待ち受けているのは、生き地獄だけです」
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