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西野清貴 サイド
残り3日
しおりを挟む今朝の目覚めは最悪だった。
篠崎に会いに行くことはもう出来ない。
何もやることはなく、広い部屋にたったひとり、寝転がっている。
インターフォンが鳴って弾かれるように飛び起きた。
篠崎が来てくれた!
胸を躍らせて急いで出るが映っているのは知らない顔。
用もないので切るとまたすぐに鳴り出す。
今度も知らない顔が並んでいる。
電話に出ないから直接マンションに来たのだろう。
このマンションはオートロックで、俺のいる最上階はカードキーがないとエレベーターは動かない。
オートロックの玄関を不正に突破しても部屋までは来れない作りになっている。
部屋いっぱいにコール音が鳴り響き途切れなくてイライラする。
「こんなものがあるからいけないんだ。」
煩わしいインターフォンのモニターを壁から引き剥がし、内部コードをカッターナイフで切断するとやっと静寂を手に入れた。
静かになって嬉しいはずなのに、涙が溢れる。
「篠崎…」
あのニュースの日からスマホは使い物にならなくなったから、篠崎に直接会いに行ってた。
電話で謝ろうとスマホの電源を入れてみると、メールやら電話が鳴り出して、かけるどころでは無い。
電源を落とすのも面倒で苛立つ感情のまま、壁に投げつけて黙らせた。
「いらない、みんないらないっ…傍にいて欲しいのは…篠崎だけなのに……」
『馬鹿にするのもいいかげんにしろっ!! 何が羨ましいんだよっ!! もう二度と家に来るなっ!!』
『絶交だって言っているんだ。出ていけーーー!!』
「ごめん、篠崎、ごめん…ううっ…」
篠崎の声が何度も何度も頭の中で繰り返されて、何がいけなかったのかあの日の行動を何度も思い返してはソファにうつ伏せになり反省した。
手近にあったクッションに顔を埋めて目を閉じる。
篠崎に会いたい。
篠崎の傍にいたい。
欲張らずに、一緒に最期を迎えられたら、来世は近くに生まれ変われたかもしれないのに………
後悔とありもしない夢物語を考えているうちに浅い眠りについたらしく、目を開けると外は夕暮れに染まっていた。
瞼は腫れ上がっていて開けるのが重い。
なんとか目をこじ開けてテレビのカウントダウンを見ると、まだ今日だと知らせている。
急いで洗面台で顔を確認すると酷い有様だ。
バシャバシャと顔を洗うと腫れの熱を少し奪ってくれて気持ちがいい。
けれど瞼の腫れ自体がすぐに引くことは無かった。
「酷い顔…こんな顔じゃ篠崎に会えない………!………ははっ…」
二度と来るなって言われているのに、まだ会える気でいるなんてバカだな俺も…
「うっ……くっ……っ…」
女々しく、諦めの悪い俺は篠崎にどうしたら会えるかと、まだ未練たらしく考えを巡らす。
俺が女だったら…許してくれたのかな………。
………女だったら…
!!
女だったら篠崎に会えるかもしれない。
洗面所を飛び出しゲストルームに向かう。
以前、母と姉が泊まりに来たときに持って帰るのが面倒だと置いていった服と化粧品があるのを思い出した。
クローゼットを開けると服はかけたまま、隅にはメイクポックスがある。
開けて中身を確認すると、良かった、ほとんど使ってない状態で残っている。
俺はXデイに向けて念入りのスキンケアを始めた。
地球消滅まで、あと2日
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