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参、波乱の幕開け 茨の鳥籠―其の参―

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 華奢な若菜を自分の膝の上に後向きに乗せると、晴明は帯で彼女の目を塞いだ。触手達が彼の意思に沿うように、彼女の細い手首に絡み付いて拘束する。
 晴明は、両脚を抱えて愛妻の極上の名器に挿入した。
 待っていたかのように細い触手達が、愛らしい花弁に現れた蕾に吸い付き、それを我先にと嬲るように愛撫されると、また若菜の頭の中が真っ白になっていく。

「あはっ、はぁっ、んんっ、ん~~~~ッ♡ はっ、はぁ、あっ、~~~~ッッ♡んあぁっ♡ あっ、晴明さまっ、あっ、あんんっ、許して、もぅ、あっあっ♡ 私、何回もっ……ふぁっ……もぅぅ、あっ、あぁあっ♡」

 愛妻の両脚を腕に掛け、背後から柔らかな乳房を下から持ち上げた。晴明はその感触に酔いしれる。柔らかく優しく甘い彼女は、この世界で一番美しいとさえ思えた。
 極上の花弁は、入口も奥も晴明の理性を簡単に壊せるほどで、これ以上魅力的で、堕ちていくような快楽には巡り合わないだろう。
 晴明はまるで獣にでもなったかのように、理性を失って腰を動かした。ぱちゅ、ぱちゅと擦れる音がし、畳に愛液が飛び散る。
 陰茎に細い触手が絡み付き、ミミズ千匹が這うように蠕動する腟内なかを、勢い良く押し進むと、愛液がとろとろと臀部に垂れるほど感じた若菜が、ビクビクと体を震わて達した。

「はっ、はぁっ……今日は、何時にもまして良く、締まるっ……はぁ、やはり、若菜よ。夫である私にこうして、仕置きされる……事をっ、望んでおるのだなっ……ん? はぁ、んっ」 
「あっ、んあぁっ♡ あっあっあっあ、はぁ、違う、のぉっ……、んぁぁ、やぁっ、ひっぁ♡ そこ、やぁ、擦れたら、だめ、そんなに攻められたらっ、あ、ああ、またイクっ、~~~~ッッ♡」

 いつの間にか、後穴を犯す触手と共にリズミカルに動く陰茎のせいで、若菜は再び追い詰められていく。清楚な女神が淫らに快感に堕ちゆく姿は彼の嗜虐心と、仄暗い執着心を刺激した。
 どちゅ、どちゅ、と粘着音の感覚が短くなり、彼女を貫く触手に寄生された陰茎が素早く、若菜が一番感じる奥の場所を刺激した。
 小さな半透明の触手達は、若菜の体を知り尽くしており、さらに快楽を開発するように乳頭を優しく吸い、花弁に集まって花芽や充血した梅花色の媚肉を撫で、吸い付く。

「はぁっ、若菜は悪い子だ……ちゃんと、お主の口で告げる、がよい……っ」
「ゃ、やぁっ……もぅ、むりですっ、ん~~~♡ はぁっ、あっ、ぁあ♡ 若菜は悪い子ですっ、せいめい様と、さくちゃんがいるのにっ! はぅ、あっあっあ♡」
「んっ……はぁっ、よしよし……大丈夫だ。ちゃんとっ、私が……っ、若菜の腟内なかに射精してやろう」 

 今日だけで、何度目かの絶頂に達した若菜は、ぎゅっと絞り取るように、陰茎を締め付ける。若菜の腟内が蠕動ぜんどうし、彼女の乳房を掴みながら、晴明は腟内なかに白濁した欲望を放つと、溢れた。

「はぁっ………はっ、はぁ………はぁ……晴明さま……」
「はぁ……まだ、お主も足りぬだろうが……ここで止めておこうな。私の事がっ、欲しくて堪らなくなるまで、お預けにしておきたい……」

 ようやく、愛妻の無垢な花弁から陰茎を抜くと晴明は目隠しの紐を解いた。若菜の濡れた瞳は快楽に震えて、何度も激しく呼吸を乱していた。仄暗く冷たい雰囲気の晴明は形を潜め、いつもの温和で優しい表情に戻ると、華奢な若菜を、まるで宝物でも取り扱うように抱擁した。

「愛している……若菜」
「はい……私も愛しています」

 晴明の僅かな変化は、若菜を少し不安にさせた。優しく知的な晴明の本音。それはすなわち自分の愛情が足りず、彼を不安にさせているのではないかと思ったからだ。

 ✤✤✤

 天帝は、待ちくたびれたように玉座の上で足を組んでいた。高天原から戻って来た若菜は、どこか陰陽寮に居た時のように空元気であるし、晴明は相変わらず飄々ひょうひょうとしている。
 この銀河の管理者にして、創造主の朔にとって、若菜の行動を天界から監視する事はもちろん可能だった。けれども、彼女が自由に友人や眷属達と過ごせる時間を、大切にしてやりたいと考えていた。

「朔ちゃん、帰りが遅くなってしまって、御免なさい。ちょっと、気になるお話しを月読尊様から聞いたの。それで、朔ちゃんに確かめたい事があって……」
「――――心配はするが、怒ってねぇーから。帰ってくれればそれで良い。んな事より、お前らなにかあったのか」

 頬杖を付きながら、朔は二人を気怠そうに見つめる。もしくは、高天原で何かあったのだろう。若菜の肩が分かりやすくビクリと揺れた。
 彼女は自分の感情に嘘をついたり、悲しい事があると、周囲に心配を掛けないように、明るく振る舞う悪い癖があった。
 子供の頃からさくは、そんな義姉を何度も見てきたし、魂の融合した天帝のサクにも、それを見抜く能力は受け継がれていた。無理強いして、聞くつもりはないが、帰る場所になってやるのが夫の務めだと思っている。

「さ、朔ちゃ……」
「なんでもない、我が君よ。夫の務めを果たしただけだ」

 若菜の言葉を遮るようにして、晴明は穏やかな表情で返した。彼の能力を持ってすれば若菜と晴明のやり取りや、須佐之男の暴挙など、簡単に知れる。
 しかし、晴明も彼が敢えてそれをせずに、晴明に問い掛けた理由も良く分かっている。右腕として、また若菜の伴侶の片翼として彼を信頼しているからだ。
 それにも関わらず子供じみた解答をしてしまった事に、晴明は内心苦笑する。

「あまり拗らせるなよ、晴明。若菜が悲しむぞ」
「――――御意。お主の信頼を裏切るつもりはないが、私もたまには愛妻に意地悪をしたくなる」
「ったく……お前、本当は温和な陰陽師のふりして性悪だろ?」

 ふ、と笑みを零す晴明に呆れつつ、朔は若菜を招いた。二人を心配そうにして見ていたが、朔に招かれると、若菜は安堵したように彼の膝に乗った。
 義弟だと言うのに、若菜よりも遥かに背が高く体格の良い朔の膝に居ると、どちらが年上なのか分からなくなる。
 童顔の愛らしい若菜は、まるで妹のように見えた。
 
「それで、義姉さん。俺に確かめたい事ってなんだよ?」
「高天原に、須佐之男様が天照大神様に会いに来られたの。その……私、少しお話しを聞いて。黄泉国に関して、お伝えしたい事があったみたいなんだよ。それから、月読尊様のお話しだと、黄泉国は天魔界の真下にあるらしいって聞いたの」

 言葉を濁しながら若菜は説明する。
 須佐之男事を、どう朔に説明すれば良いか分からなかったからだ。朔は若菜の背中を撫でながら、黒曜石の瞳を細めた。

「霧雨から文が届いておったな。近況や藍雅殿と夫婦になった事以外で、異変などは書かれていたのか」
「地表で、雷のような音が鳴り響いて調査中だと書かれていた。俺が第六天魔王だった頃は、そんな現象は一度もねぇから、古狸共が騒いでいるようだったな。正統な者が、天魔界を統治してないからだと抜かしやがって」

 まつりごとが乱れると、天変地異てんぺんちいが起きる。若菜もそんな事を聞いた事があった。だが、霧雨の復興作業は天魔の民に寄り添っていたし、権力が欲しい者達の嫉妬だろうと感じた。
 あの二人だからこそ、平和に天魔界を治められる。若菜はそう確信していたので、ふつふつと疑問が湧き上がってくる。

「地表から雷の音なんて、なんか変だね……凄く嫌な予感がする。二人は大丈夫かな」
「――――その嫌な予感、どうやら当たってるぜ。天魔界を監視させていたんだが、泉国の扉が開いたようだ。死の国の者が二人に接触したらしい」

 朔の言葉に、若菜は目を見開いた。冷静さを装いながら、朔も神妙な面持ちである。
 彼にとっては二人共、古くからの友人であり幼馴染だ。どれほど、心配だろうと思うと若菜の胸は張り裂けそうだった。

「――――どうやら、藍雅が囚われの身になってしまった。天界人を通じて、俺に助けて欲しいとな。厄介な事に、黄泉国を初めとした、死の世界というのは扱いが難しいんだぜ。この銀河、いや宇宙の全ての万物は死から逃れられない、この俺さえも」

 神々も死を迎える。
 朔の父親である前帝さえも、気が遠くなるようなほどの時を経て、死を迎えた。だからこそ、死の世界の片鱗である黄泉国に干渉する事は難しい。

「どうして……藍雅ちゃんが囚われてしまったの? 亡くなった訳でもないのに」
「分からねぇな。他の世界なら俺の能力で視られるんだが。まだ、天帝として俺が未熟なせいか、それとも干渉を良しとしねぇからか」

 だが、明らかに銀河の均等を崩すような行為だ。死と生、破壊と再生は隣り合わせであるから、死の世界はまず自ら均等を崩すような行動に出るような事はない。
 死の世界はただ魂を受け入れ、次の生へと送り出すだけだ。そこは天界のような銀河の管理者もおらず、ただのシステムなだけだと考えられている。
 その中に天国と同じだけ死の国があり、死者が生まれ変わる一時の間のみ、仮住まいさせる主が存在していた。

「――――それでは、私が天魔界に降り、話を聞こう」
「私も心配だな。一緒に行ってもいい?」

 若菜がそう言うと、二人共が『駄目だ』と口を揃えて言った。まだ混乱期にある天魔界に顔の知れた若菜が行くのは、危険が伴う。彼女のせいで、第六天魔王である朔が捕らえられたのだと、逆恨みをする輩がいるかもしれない。
 そしてなにより、美しい若菜が放つ神聖な性愛の女神の気は、種族性別問わずに惑わせてしまう。若菜はしゅん、と残念そうに肩を落とした。

「やっぱり駄目だよね。でも……藍雅ちゃんが心配だよ。酷い目に合っていないと良いけど」

 朔も同じ気持ちだろう。
 ふと、晴明の方を見ると深く頷いた。よほどの事がない限り天帝は、干渉して銀河の均衡を崩すおそれのある、朔が自ら動ける筈もない。
 彼が動くその時は最後の切り札である。
 そうならない為に、晴明がいるのだ。

「――――心配をしなくても良い。藍雅殿は私がなんとかする」
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