12 / 29
ストーカー、同類を生む③
しおりを挟む奴は恋愛シュミレーション系のゲームが苦手っぽい。
なので、次はクソゲーじゃないけれど恋愛シュミレーションゲーム攻めにすることした。
唸れ、私の前世のゲーム攻略記録!
ちなみに私の前世の名前は綾瀬寧々子。
つまりは女。
必然的にやっていた恋愛ゲームは乙女ゲームが多い。
推しの関わるゲームは出せないけれど、奴はもくもくと乙女ゲームをやっていた。
悪役令嬢のいるとあるゲームは貴族社会とファンタジーミックスの世界は、こっちの世界に似ている。
ずっと一人のせいか、フェリドの独り言はだんだん多く、大きくなっていく。
最近の奴は、せんべい布団に肘をついてだらだらスタイルだ。グレーのだぼついたスウェットの上下にすら抵抗をしない有様だ。幼女なら許せるぴよちゃんボンボンで金髪をちょんまげにしても最近無反応である。
割り切りすぎだろう。順応力高すぎだろ。
時折ヒントメモを部屋に投げ入れるときに、そりゃあもう俊敏に反応するのがめっちゃキモイ。
あと攻略に行き詰まると、クッションに擬態中の私をぎゅうぎゅうだきしめてゴロゴロしだしてうざい。大変うざい。お殴りしてよろしいだろうか。
私の愛想と献身は推しとその弟妹に極振りして完売している。
「……リヴサーラ嬢の意見はもっともなんじゃないか?」
リヴサーラ嬢は王子の婚約者の侯爵令嬢。
王子に近づくヒロインに牽制を掛ける。身分の低いヒロインが、気安く近づくなというのだ。
まあ乙女ゲームをやる庶民からすればうっせーけれど、リアル問題であればごく普通の忠告だろう。不敬罪的なものもあり。
フェリドはロイヤルな視線から釈然としないまま進めていく。
そして王子を攻略においての盛り上がり最高潮、婚約破棄のシーンで呆然としていた。
「なんだ、この腐れ××は。国を壊す気か、この〇〇野郎」
フェリド殿下、ノーブレスなんちゃらを持つ者として受け付けなかったみたい。
ここ一番の不愉快顔。
うえーい、思いがけないところで奴のストレスとヘイトが最高値。
クソゲーをはじめ、色々なゲームをやらせたからか庶民の悪い言葉も覚えた模様。
「リヴサーラが可哀想だ! あんなにお前のような糞〇〇野郎のために、何度も忠告をして、自ら手を煩わせてまでこのイカレ頭女を排除しようとしてくれたんだぞ!」
イカレ頭女とはアンタの操作しているヒロインなんだが。まあ選択肢選んでいるだけだが。
内心ケツポリしながら様子を観察。
その後、フェリドは何度も何度もそのゲームをやり始めた。全ルートクリアしてるし、スチル解放もしたのに。
「なんでリヴサーラルートがないんだ!」
ごめん、そのルートはスピンオフのノベルゲーにちょっとだけある。
でもアヤネコ出さない。精々、公式からの推しの供給の少なさに悶えろ。
「リヴサーラ、なんて可哀そうに。美しく可憐で気高い貴女が、こんな木偶の坊に振られるなんておかしい……っ」
おや? フェリドのようすがおかしいぞ?
「さっき、男が女を攻略するゲームもあった。
男女の視点が逆だった。このゲームにはそれがないのか? リヴサーラたんがこんな惨めな目に遭うなんておかしい……そんなの間違っている」
フェリドがぶつくさいいながら、なにかをさがしているよ。
つーか、テメーがそんなんいえるのかよ。
婚約者のメルローズちゃんとやら上っ面だけの付き合いで、まさに政略結婚同士って感じでかなりドライじゃん。お前まさにさっき言ってたクソ野郎の立場よりだぞ。
……そういえば、メルローズちゃんとリヴサーラの中の人って同じなんだよな。
声優的な意味で。
なんだか見知らぬご令嬢に迷惑が掛かりまくる気配察知。
良い子のアヤネコは黙秘します。
最近では出口を探すより、畳をひっくり返して攻略本や新しいゲームを探すようになったロイヤルゲームオタ殿下。
どこで覚えてきたのか、リヴサーラたんという愛称でライバルの悪役令嬢を呼びまくっている。
夢でのヤツの口癖は「リヴサーラたんに呆れられたい」「リヴサーラたんに叱られたい」「リヴサーラたんの椅子になりたい」である。とんだソフトドエム野郎だ。現実世界では一切の揺ぎ無くロイヤル殿下を突き通している。
だが、夢の世界ではサーラたんを愛で信奉するサーラたん教徒である。
おい、どこでどう間違えた残念王子。
でも、現実世界でメルローズが髪をドリッとした鋭角太巻きロールに変えたら褒めちぎっていた。
そういや、リヴサーラたんもTHE悪役令嬢っぽい縦ロールだよな。
………
よーし☆お掃除がんばるぞぉ!
手始めにムカつく他所の妃たちを螺髪になるおまじないをプレゼントしよう!
相変わらず懲りずに足の引っ張り合いしてんだよな。
悟りの一つでも開いて、少しは大人しく清廉潔白に生きる努力しろよ。
66
あなたにおすすめの小説
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で
重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。
魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。
案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~
玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。
その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは?
ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる