余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

藤森フクロウ

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9巻

9-3

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「手伝います」

 しれっとシンがそう答えたものだから、三人も道連れ決定だ。
 レニは「やっぱりか」という顔しかしなかったが、カミーユとビャクヤは露骨ろこつなくらいショックを受けている。

「そんなぁ、シン殿ぉ~!」
「先生に任せておけばええやん!」

 カミーユとビャクヤが肩を揺するが、シンは頑として譲らない。
 騎士科の二人には、魔法系の学科はほとんど関係ない。望むなら取れるが、二人はそこまで余裕のある学生生活を送っていない。学力も時間も結構ギリギリで、現状維持が精一杯なのだ。
 正直に言えば、白マンドレイク掃除をやりたくなかった。二人とも奴らにはろくな思い出がない。
 そんな二人の思いは届かず、シンはばっさり彼らの希望を切り捨てた。

「いや、だってマンドレイクをさっさと処分しないと、素材の育成や小遣い稼ぎができないし」

 この温室は趣味の家庭菜園的な意味だけでなく、ポーションや美容品の材料を育てるためのものでもあるから、早めに片付けてしまいたかった。
 シンには頼めば空き地どころか農場を用意してくれそうな後見人がいるが、学生の領分内でできるだけやっていきたいと考えていた。

(そろそろミリア様への入浴剤とか、秋冬向けの素材を調達しなきゃだし)

 ミリアはシンお手製の美容品の大ファンだ。
 宰相夫人であり、ティンパイン王国の社交界でも強い発言権を持つ美魔女である。その美貌を保つための研鑽けんさんおこたらない。
 彼女はシンが過ごしやすいように色々配慮はいりょしてくれているので、シンとしてもぜひとも良好な関係を続けたかった。

(うん、やっぱり温室は必要だよな)

 薬草や香草は外でも調達できるが、量や質にムラが出る。安定供給にはポーションを肥料に使った栽培が一番だ。温室ならば露地栽培ろじさいばいと違って人目につきにくく、たくさんの素材を持っていても不審がられないので、種やなえを入手できれば量産できる。

「でも……」
「このままマンドレイクを放置したら、次の大豆を植えるところがなくなるぞ」

 いまだに渋っていたビャクヤだったが、シンの言葉を聞いた途端とたん、落雷を受けたように硬直した。耳と尻尾が一気にぴーんとなって、毛並みがぼわっとふくらむ。

「さーて、サクサクブチ抜かんとなー」

 お揚げの奴隷どれいビャクヤは、大豆をちらつかせるとあっさり意見をひるがえした。
 カミーユは仲間の裏切りにショックを受けたものの、この状況でねばっても不利と判断して、がっくりと項垂れるしかなかった。
 一人の教師と四人の生徒に対し、温室にいる白マンドレイクは目算だけでも百オーバーである。最低でも、一人当たり二十匹は捕まえなければならない。
 何も対策せず闇雲に突っ込んでも返り討ちにされるので、五人は作戦会議を始める。
 三人寄れば文殊の知恵。五人集まれば、さらなる叡智えいちが期待できるはず。
 しかしそれは期待と希望を込めた予想であり、楽観以外の何ものでもなかった。

「小さいのはともかく、あの大きい白マンドレイクは危ないですよね。思い切り叩かれたら、こちらが吹っ飛んじゃいます」
「そうだな。私の助手たちもアレのビンタには何人もやられた」

 レニの憂慮ゆうりょに、グレゴリオは頷いた。
 彼には助手が数人いたが、書物とお友達なデスクワーク系が多かったのもあり、フィジカルは弱かった。
 そのため、全員マンドレイクに負けたそうだ。
 命の危険があるというレベルではないが、マンドレイクにトラウマを持った者や、ぎっくり腰でしばらく動けなくなった者など、負傷者が多い。

「いっそ飛び道具で仕留めるとか……飛び道具なら持っていますよ」

 シンの愛用武器は対獣や魔物でも通用する魔弓グローブだ。
 多数を占める小さいマンドレイクの狙いを定めるのは難しいが、大物だけに絞ればそこまで難しくない。

「ダメだ! あの大物は大事な実験サンプルとして、必ず捕まえねばならない!」
「せやかて、先生? 実害出とるんやし、サクッとシン君に射てもろた方が安全やと思うんですけど」

 クワッと眼光鋭く、なんなら眼球が飛び出そうなほど目を見開いて抗議するグレゴリオに、ビャクヤが冷静なツッコミを入れた。
 過去に規格外にでかい白マンドレイクとやり合った経験者としては、近づきたくないのだ。

「せめて植物らしく静かにしていたのなら、捕まえるのも楽なのでござるが」

 カミーユがしみじみと呟くが、残念ながら白マンドレイクは植物にあるまじき俊敏しゅんびんさと柔軟さでぬるぬる動く連中なのだ。
 その時、カミーユがふと何かに気づいた表情になる。

「動くということは、麻痺まひや睡眠のような状態にもなるのでござるか?」

 それは純粋な疑問だったのだろう。
 その言葉に、皆は顔を見合わせた。
 相手は植物だが、あそこまで動くなら、何かしらの状態異常が効く可能性はある。

「薬……いや、動物とは肉体構造が違う。あくまで植物だから、魔法の方が効果はあるだろう」

 グレゴリオは自分の経験や知識をもとに色々想像する。魔法植物に状態異常系の魔法をかけた前例はないが、悪い発想ではないと頷いた。
 植物系の魔物に対してその手の魔法を使うことはあるので、魔法植物にも有効かもしれない。
 体が動かない状態なら、白マンドレイクを安全に収穫できるだろう。

「動かなくさせる魔法……となると、麻痺や睡眠なら私も使える。これでもフィールドワークで戦うことがあるからな。この中で使える者はいるか?」

 グレゴリオはダメ元といった様子で四人に尋ねた。
 すると驚くことに、シンとレニが挙手をした。
 シンはオウル伯爵家からおびでもらった魔導書で習得し、レニは聖騎士として少しでも実力をつけようと、かたぱしから覚えていたからだ。
 デバフ系の魔法は派手さがないため不人気で、ほとんどの生徒は習得しない。
 だが、実践においてはかなり有用な手段だ。圧倒的格上や、人数で不利な集団戦にも使える。

「二人も使えるのか」

 期待していなかった分、グレゴリオの声が弾む。
 旧温室はそれなりの広さがある。グレゴリオ一人で満遍まんべんなく魔法をかけるとなると苦労すると思っていたが、これならなんとかなりそうだった。
 中には効きが悪い個体もいるかもしれないので、取りこぼしに対応できる人数は多い方が良い。
 グレゴリオが薬による作戦をとらなかったのは、マンドレイクを採りに行く時の危険も考えてのことだ。
 自分自身が薬の影響を受けて温室の中で倒れてしまっては、とても危険である。白マンドレイクは凶暴な魔法植物ではないが、大きな個体に踏まれたら大怪我をする可能性もある。

「まずは温室を覆う補助の魔法陣を描こう。範囲を指定して魔力を循環じゅんかんさせれば、魔力の消耗しょうもうを抑えながら重複効果が期待できる」

 グレゴリオが地面に簡易な図を描く。
 温室を覆うサイズの魔法陣を作り、その中の対象に魔法をかけるのだと説明した。
 レニは頷きながら聞いていたが、随分大掛かりになりそうだと不安を覚えた。

「まずは魔法陣の基盤となる円ですか。かなり広範囲になりますね」

 基本、魔法陣は円形の中に術式を織り込みながら図案を描くことが多い。円形は安定しており、魔力の循環を良くする性質があるので、ムラなく術を展開できるのだ。
 多角形の魔法陣も不可能ではないが、一部に力がかたよりやすいので注意が必要だ。
 温室の周囲には木や建物が多いので、地面に綺麗きれいな円形を描くのも一苦労だ。
 レニは早速、難問にぶち当たったように顔をしかめていた。
 グレゴリオはレニがちゃんと学んでいることに教師として喜ばしさを感じつつも、首を横に振る。

「いいや? 紙とペンを使い、魔法陣を描く。それを拡大し、空から覆う」
「「「「空から?」」」」

 生徒たちの目を丸くした表情が、予想以上の反応で面白かったのだろう。グレゴリオはにっこり笑った。

「地上に描くのが一般的だが、何せここは障害物が多い。円がいびつになると術がほころびやすいからな」
「あ、あの空に浮かべるとなると消費魔力は……」

 レニの疑問に、グレゴリオは丁寧に答えていく。

「それは増えるが、状態異常系は攻撃魔法に比べて魔力消費が少ない。浮かべる魔法陣も、大きさこそあるが、大気は生物でないし質量も大したことないから、意外と簡単なんだ」

 そう言って、グレゴリオは白紙を一枚取り出し、さらさらと魔法陣を描いていく。
 レニは頷きながら、熱心にその説明を聞いていた。

「魔法陣を描く途中に遮蔽物しゃへいぶつが多いと失敗しやすいのだ。魔力を通し、術式を起動する際の異物となる。意思のある生物、魔力を帯びた物は特に障害となりやすい」

 これがなくても魔法の行使はできるが、魔法陣による補助があった方がずっと扱いやすい。
 特に複数人で魔法を発動させる時は、魔法陣がガイドラインの役割を果たすので暴発しにくくなる。
 さすが長年教師をしているだけあって、グレゴリオの魔法関係の知識は豊富だった。教えるのだって得意中の得意だ。
 彼は説明する間にも、慣れた手つきでペンを動かして、さらさらと魔法陣を紙の上に描いていく。
 教わる側のレニも、新しい知識に前のめり気味に聞いていた。

「では、早速実践してみようか」

 四人の生徒たちが興味津々きょうみしんしんのぞんでくる中、グレゴリオは用紙に描き起こした魔法陣に魔力を通し、拡大させながら一気に浮かせた。
 温室をすっぽり覆う巨大魔法陣が、あっという間に空中に完成した。

「麻痺、眠り、幻惑げんわく……と、まあ色々な魔法に対応するようになっている。シンとレニは使える魔法を流してみなさい。まずはシンから」
「はい!」

 最初に指定されたシンは、魔法陣を見上げながら魔力を練り上げる。

「魔法陣に向かって魔法を放つんだ。真ん中あたりが一番良いが、ここからならよっぽど変な方向に飛ばさない限り大丈夫だろう」
「わかりました。では、僕は麻痺の状態異常魔法を使います」

 シンが魔法を放つ。
 魔力の粒子がキラキラと銀粉のように輝きながら魔法陣に吸い込まれていく。
 その時点で、温室からガタゴトと音が鳴っている。早速魔法の効果が現れたようだ。

「では、私は眠りの魔法を!」

 レニも魔法を放つと、さらに温室から物音が響く。効果は抜群だ。
 白マンドレイクたちが文字通りバタバタと倒れていく気配に、魔法を使えない騎士科の二人は顔を見合わせた。

「おっかなー……」
「デバフ使いが敵にいたら厄介でござるな」

 ビャクヤの率直な感想に、カミーユがうんうんと頷く。
 状態異常魔法は攻撃魔法とは違って爆音や破壊音も出ないので、距離があると周囲から気付かれにくい。
 魔法をかける側ではなく、かけられる側になる可能性の方が高い二人は、改めてその有用性を思い知らされて身震いする。
 油断していたら、一網打尽だ。

「これを見ると、状態異常耐性って大事でござるな」
「道具屋の耐性系の装飾品や装備が高い理由がわかるわ」

 カミーユとビャクヤはティンパイン公式神子の専属護衛でもある。どんな刺客しかくが差し向けられるかわからないから、今後、無関係とはいえない。
 最近だって、『魅了』スキルを持った危険人物が捕縛されたばかりである。
 あんなのがしょっちゅう湧いて出たら困るが、警戒するに越したことはない。
 一方、シンとレニの魔法を見たグレゴリオは、満足げに頷く。

「二人とも良い魔法だ。これなら私が補助をしなくても十分だ」

 生徒がどれだけできるか未知数な部分もあったが、これならグレゴリオが魔法陣で範囲を指定するだけで十分効果は行き届きそうだ。
 魔法が不安定だったり魔力不足だったりすると、範囲を拡張する際に魔法自体が崩れてしまうことがある。
 最悪、自分一人で全てやることも想定していたグレゴリオとしては、うれしい誤算だった。
 グレゴリオは温室の扉に耳をくっつけて、中の様子をうかがう。
 実に静かで、魔法の効果は上々だ。

「……ふむ、もう良さそうだな」

 物音がなくなったのを確認してから、グレゴリオは魔法を解除する。
 あまり長く展開していると、近くに来た無関係の者が巻き込まれる可能性がある。白マンドレイクには十分行き渡ったと思われるので、魔法を解除しても問題ない。

「では行くぞ。多少の物音では起きないし、麻痺で簡単には動けないはずだが、気をつけて進むように」

 グレゴリオの言葉に、四人の生徒たちが頷く。
 温室の中は敵の真っただ中だ。音を立てないように慎重しんちょうに扉を開くと、中では土の上に無数のマンドレイクたちが転がっていた。
 畝の中にお行儀よく収まっているマンドレイクもいるが、それは少数派だ。数が多すぎて地中に潜れなかったマンドレイクが、好き勝手な場所にいる。
 さっきはあんなにうるさかったのに、今は魔法の効果で大人しいものだ。
 それを確認した後、グレゴリオはふところから白い布袋のようなものを取り出した。

「先生、それは?」

 レニが質問すると、グレゴリオは頷く。

「これは魔法科で使われている、魔法植物専用の収穫袋だ。マジックバッグだから、見かけより容量がずっと大きい。配布するから、片っ端からマンドレイクを入れるように。とにかく収穫優先で、分別は後だ。では、ここからは別行動! とにかくとるぞ!」

 それを合図に、シンたちは一斉に駆け出す。
 全然楽しくない白マンドレイク狩りの始まりだ。
 目についた白マンドレイクから掴んでは入れて、掴んでは入れて。
 少し移動すれば新たな白マンドレイクがこんにちは状態なので、最初は闘志を燃やしていたシンたちも、だんだんと目が死んでいく。

「お、終わりが見えない……!」

 予想以上の数に、シンの口から弱音よわねが出る。
 確かに数は減っている。
 それなのに、時間が経つにつれて疲労と絶望が増えていく。

あきらめんなやー! シン君がやるって言ったんやでええー!!」

 カミーユと協力しながら、自分より大きな白マンドレイクを袋詰めしているビャクヤがたける。
 将来有望なイケメン二人は、白マンドレイクの豊満ボディに大苦戦。重さに汗だくだ。
 二人で白マンドレイクを押していると、袋まで動いてしまうので上手く入らない。
 それに気づいたレニが、自分の作業を止めて袋の口を広げて、二人をフォローする。

「思ったより大変ですね……」

 レニも美少女フェイスを土で汚しながら、眉根を寄せる。
 それでも手は素早く動かして、片っ端から白マンドレイクを捕まえていた。

「これ、五人でなんとかなるのでござるかー!?」

 カミーユが半べそで叫ぶ。
 この場の誰しもが思っていたことだが、誰も言わなかった。
 温室に入った時点で、薄々感じつつも作業に没頭して現実逃避していた。
 言ったらなんかダメな気がする――と、変に空気を読んでしまったのがこの結果。
 今日中にけりをつけるのは無理かもしれない。戦略的撤退も大事だと、諦めムードがただよいはじめる。

「……そういや、グレゴリオ先生は?」

 ふと、シンが近くにいたレニに尋ねた。

「どこいったんでしょうか」

 ついさっきまで、鬼気迫る勢いで共にマンドレイク狩りをしていた初老教師の姿がなかった。
 ビャクヤとカミーユも顔を見合わせる。

「まさか白マンドレイクに襲われとったりはせんやろな」
「いやいや、まさかそんなわけない……で、ござる?」

 普通サイズの白マンドレイクならともかく、成人男性サイズを超える個体もごろごろしている。回収作業を開始してからそれなりに時間も経ったし、魔法が切れはじめたのかもしれない。
 規格外サイズが収穫に抵抗したら、もしものコトもあり得えるかも――と、皆が不安に駆られる。
 生徒四人がそろっているのだから、当然グレゴリオはソロ作業である。
 そんな中、一体の白マンドレイクがぼけまなこでのそりと起き上がる。
 まだ眠いのか、麻痺が残っているのか、動きはぎこちない。

「や、やばいでござるよ! 魔法の効果が……!」
「撤収! 先生回収して撤収や!」

 白マンドレイクが動き出しつつあることを察知して、カミーユがなげく。ビャクヤは周囲に知らせるように声を上げる。

「先生捜せ! 最後どこで見た!?」
「あ、あっちの倉庫や堆肥たいひのある方へ移動していたような?」

 シンとレニも手にしていた白マンドレイクを袋に詰めて脱出しようと思ったが、グレゴリオが見つからない。
 もう収穫どころではなく、パニック蔓延まんえん。四人ともてんやわんやだ。
 白マンドレイク再起動のカウントダウンは始まっている。このまま温室にいたら、数の暴力で袋叩きにされるだろう。
 四人は一斉にグレゴリオが向かったと思われる方へと走り出す。
 すると、そこには堆肥に塗れるのもお構いなしにいつくばるグレゴリオの姿があった。
 夏休み前に落ち葉と馬糞ばふんを積んで作った堆肥は、魔法で発酵はっこう促進そくしんしていたのでそれほど臭わないとはいえ、普通は腹這はらばいになるような真似まねはしない。
 グレゴリオはハアハアと呼吸も荒く、独り言を口にしていた。

「なんだこれは……! 普通のマンドレイクとも、白マンドレイクとも違う……! 突然変異か? こんな真っ黒なマンドレイクは見たことがない」

 グレゴリオが夢中になっているのは、人参ほどのサイズのマンドレイクだった。
 葉っぱこそは深緑だが、根っこであるマンドレイク本体の部分は墨でも塗ったように真っ黒である。迫りくるグレゴリオの熱狂的な視線に、黒いマンドレイクは悪夢でも見ているように時折うねっている。
 グレゴリオを心配して走ってきた四人は、それを冷めた目で見ている。タニキ村の真冬より凍える眼差しだ。
 軍手をめたシンが無言で近づき、黒マンドレイク(仮)を引っこ抜いて収穫袋に入れる。

「先生、魔法の効果が切れはじめたので、いったん出ましょう」
「こほん! んんっ! そうだな!」

 グレゴリオはよだれを垂らさんばかりの熱狂から切り替え、いつもの冷静な姿に戻った。
 冷ややかな生徒たちの視線から、自分がさらした醜態しゅうたいに気づいたのもあるだろう。
 とりあえず、五人は全員無事に温室から脱出できた。

「魔法の効力は約二時間か。実質作業時間は一時間半くらい……あの数を全てとなると、五人だけでやるのは現実的ではないな」

 小さい白マンドレイクまでとるとなると、かなり大変だ。
 旧温室の面積に比して、白マンドレイクの数が想定より多かった。
 シンたちはこの人数でやるのは無理ではないかと思っている。

「細かいのは土魔法でこねて大地に還してしまえばいいと思います」
「白マンドレイクは稀少素材だぞ! なんてもったいない!」

 シンが現実的な処理を提案するが、グレゴリオはそれに反対した。
 彼は先ほど見た黒マンドレイク(仮)のような突然変異がまだいるかもしれないと考えていた。
 それを知らず知らずに土に還すなんて、骨頂こっちょうだ。
 そこで、レニが口を開く。

「あの、先生」
「なんだね、レニ・ハチワレ」
「夏休み残り時間もですが、その……学園にバレる前になんとかした方がいいと思います」

 レニのもっともな意見に、グレゴリオは舌でもりそうなほどに渋い顔をする。
 白マンドレイクはやたら動くが、人を昏倒こんとうさせるような絶叫はしない。だが、先ほどの突然変異みたいなのがまだまだいたら対処法がないのだ。
 今回のマンドレイクたちは睡眠や麻痺で動けない状態だったからよかった。
 しかし、もしもその突然変異が普通のマンドレイクよりも危険な絶叫をする個体だったら、どうなっていたかわからない。

「……知り合いに声をかけて、応援を呼ぼう」

 グレゴリオは自らの伝手つてを使って、手伝ってくれそうな人員をつのったのだった。

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