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9巻
9-2
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「あ、あのミリア様。このお金をタニキ村の復興に回してもらえませんか?」
この夏、タニキ村と隣のバーチェ村は、人の血肉を好む狼の魔物――ブラッドウルフの巨大な群れに襲われた。
ヴァンパイアウルフという特殊な魔物がこの群れを統率し、村に襲い掛かったのだ。
特にバーチェ村は廃村となるほど甚大な被害を受けた。タニキ村まで逃げられた村民は助かったのだが、元の半分の人数になっている。
タニキ村には元騎士のハレッシュや、王都と直通でやり取りのできるルクス、加護持ちで魔力の多いシン、そして壊れ性能のチート魔馬が二頭いたので、なんとかなった。
ミリアもこの襲撃やその後の対応について知っていた。
「できるけれど、あそこには国からの補助金も出ているわよ?」
「はい。でも、村人の中には家や家族を失った元バーチェ村の人たちもいます。家畜や田畑を失い、これから冬に備えるのは大変でしょう。それに、今年は援助があっても、来年、再来年は難しいと思います」
タニキ村には人的損失はなかったけれど、家畜と田畑の被害はあった。
もともと酪農より狩りで生計を立てている村人が多いが、卵や乳製品の大半は家畜によって賄われている。
また、怪我はなくとも心に大きな傷を受け、精神的不調に見舞われた村人も多くいる。
「そうね……では教会を建てるのはどうかしら? 怪我などの後遺症があって働くのも難しい人や、孤児の受け入れもできるわ。ヴァンパイアウルフを追い払うのに、神々も手を貸してくださったと聞くし、ちょうどいいと思うの。今までは小規模な祭壇だけでしょう? 正式な施設として建設する案はあったのよ」
この世界において、神々を祀る施設には、主に神殿と教会がある。
神殿は純粋に宗教色が強い施設だが、教会は孤児院や医療施設と併設するなど、民間に寄り添う慈善事業的な側面が大きい。
神殿は規律が厳しく階級も決まっており、組織として強いのだ。時には国とも渡り合うほど権力を有している。
一方、教会は神殿と国の両方から支援を受けつつ、質素に経営していることが多い。
重傷や難病の治療、解呪などは教会では難しいが、大金を支払ってもなんとかしてほしいなら神殿に行く。逆にちょっとした怪我や解毒なら教会でもやってくれる。それぞれにニーズがあるのだ。
タニキ村は超ド田舎の小規模集落なので、今のところそのどちらもなかった。
「シン君は神殿を敬遠しているでしょ? だから神殿を建てるのは論外として、教会も建てていいものか迷っていたのよ。でも、シン君は神託を受けやすい神子のようだし、教会くらいあった方が神々にも面目が立つと思うわ」
「なるほど……」
「それに、先にティンパイン王家の方で教会を建ててこっちの人材を詰めておけば、神殿側が新しく建てにくくなるもの。しっかり建てた方が、干渉を減らす口実にもなるわ」
「建てましょう」
うふふ、とちょっと含みのある笑みを浮かべるミリアに、シンは即答した。
シンの脳裏には、以前神殿で絡まれた紫色の変態神官ことアイザックの顔が浮かんでいた。
初対面でシンの体臭を吸ってきた、大変アブノーマルな性癖を疑いたくなる人物だった。
神殿の息がかかった施設ができて、万が一にもアレや同系統の人間が派遣されてきたら、地獄である。
(絶対嫌だ。悪夢すぎる……)
アイザックがあそこまで反応するのは稀な事例なのだが、あの吸引インパクトは未だに色褪せず、シンの中でトラウマとして残っていた。
あんなのがタニキ村の神官に赴任してきたら、シンは安心して村に帰れなくなる。
長閑なタニキ村に溶け込む気がしない。穏やかなスローライフが粉々だ。
「教会建設以外にも、定期収入の使い道があるといいのですけど」
シンの相談に、ミリアが首を傾げて思案する。
「うーん、それなら街道整備でもする? 本来なら国の仕事だから、シン君のお金は使わなくていいと思うけれど……タニキ村の規模に合わせた教会だと、すぐに足りてしまいそうなのよね」
(どれだけ収益上げているんだ、美容系レシピ!)
シンの美容品は貴族をはじめとした富裕層がメインターゲットだから、当然単価はお高めだ。
利益率が高いだろうとは思っていたが、シンの想像を超えていた。
「今の化粧水も大人気だし、シン君には今後もレシピについて交渉したいのよ。取引が増えれば、もっと利益も増えるでしょう?」
シンのお手製の美容品を愛用するミリアとしては、積極的な研究や開発をしてほしいのだろう。
それを聞いて、シンはぎょっとする。
「まだ増えるんですか!?」
あの額面だけでも心臓に悪かったというのに、小市民の心を縊り殺す気だろうか……と、シンは引きつった笑みを浮かべる。
お金がないのはストレスだが、大量にありすぎても同じである。
あればあるほど良いと言う人間もいるとはいえ、金銭感覚が一度壊れたら一生戻らない可能性もある。
さすがに全額寄付などと、善行の塊みたいなことをするほど、シンは無欲ではない。
でも、一人で使い切る度胸もなかった。
煩悶するシンを楽しそうに眺め、ミリアは微笑ましさを覚えるのだった。
◆
シンはレニたちを伴って久々に学園に足を運んでいた。
夏休み中でもしっかり整備されていて、草が生い茂るなんてことはない。石畳に落ち葉やごみも落ちておらず、いつでも始業できそうだった。
少しだけ懐かしさを感じる門構え。シンは制服を着ていないので学生証を持っていき、守衛に通過の許可をもらう。
農具はマジックバッグに入れているから身軽だ。
日差しがきついので、麦わら帽子を被っていて正解である。
シンはちょっと古びた外観の温室を見つける。
遠目からも、中に緑色の何かが茂っているのがわかる。
「やっぱり雑草は出てきちゃうよな」
シンは眉を下げて、がっかりしたように呟く。
ガラス越しのぼやけた状態でもわかるくらいだから、相当繁茂しているだろう。予想していた通り、草取りからやり直しである。
「大丈夫ですよ。四人でやれば、新学期までには戻せますよ」
レニがフォローを入れると、シンも頷く。
それこそ、最初にここに手を入れた時よりはマシなはずだ。
一方、後ろにいたカミーユとビャクヤは、何か微妙そうな顔をしてひそひそ話している。
「どうしたんだよ?」
シンの質問に、騎士科の二人は顔を見合わせて口籠もる。
しかし、覚悟を決めたのか、口を開いた。
「いや、なんか温室の中で動いてへん?」
「某の気のせいかと思ったでござるが、ビャクヤも見たでござるか」
ビャクヤとカミーユの言葉に、シンは温室を改めて見るが、特に何かが動く様子は見えない。
古い温室は結露と汚れがあるので、中の様子ははっきりとは見えない。視界で判別できたのなら、それなりに大きな何かがいる可能性がある。
レニもシンの隣で目を凝らすが、わからなくて首を傾げる。
「野生動物でもいるのでしょうか? ネズミや兎は穴を掘って下から侵入することがありますが」
タニキ村で農作物を作っていた時も、獣避けに作った囲いを搔い潜って畑に侵入する動物がいた。
鹿や猪のような大きさのある獣は、柵を跳び越えたり壊したりと力業でなんとかしようとするが、小さい生き物はせっせと穴を掘って入ってくる。
野山に行けば食べ物が落ちているのに、果敢に野菜泥棒チャレンジを続けていた。
(エルビアは都会だから、あっちより食べ物は落ちてなさそうだしなー)
ゴミの中には残飯などもあるが、人の生活圏と近すぎる。
その点、夏休み中の温室なら人は滅多に来ないし、多少は食べ物が手に入る可能性がある。
夏休み前に収穫した大豆、トマトなどの夏野菜。それらのこぼれ種や、採り残しがお目当てなのかもしれない。
「うーん……人の気配を感じれば、動物は逃げると思う。草取りしつつ、温室に破損がないか確認だな」
そう言いながら、シンは温室の扉を開けて――スッと閉めた。
あまりにスムーズな動作だったので、後ろの三人は一瞬何か間違えたかと思ってしまった。
シンは真顔になった後、目頭を揉み解して唸る。
「なんか……あるはずのない? いるはずのない? いてほしくないものが、大量にあったような」
「なんでござるか、それは。煮え切らないでござるなぁ」
いつになく歯切れの悪いシンに、カミーユが首を傾げた。
立ち尽くすシンに代わって、カミーユがノブを掴んで扉を開け放ち――閉めた。
「……なんか白昼夢? うーむ、白い悪夢が見えたような」
「そうか、お前も同じモノが見えたか」
やはりなのかとシンが諦観を込めて呟き、項垂れた。
「いやいやいや! まだ同じものが見えたと決まったわけじゃないでござるぅうう!」
現実を受け入れたくないカミーユが、ヒステリックというより、縋りつくように否定した。
頭をぶんぶん振り、紺色のポニーテールの先がビャクヤにびしばし当たっている。
まだ温室の中身を見ていないレニとビャクヤは、何が何だかわからない。
「二人ともどうしたんですか? 中に何があるんですか?」
異様な空気を察したレニが困惑気味に問うと、シンとカミーユは素早く目配せした。そして、無言で扉を指し示す。自分の目で確認してくれということだ。
「もう、なんなんですか?」
カミーユだけだったらレニは突っぱねていたけれど、シンまでそんな態度なので、仕方なく扉を開く――そして素早く閉めた。
「……そっちですか。そうきましたか……」
ジーザスとばかりに頭を抱える才女レニ。賢い彼女までもシンとカミーユと同じような反応だ。
シメというかオチを任されるように、最後に順番が回ってきたのはビャクヤだった。
「え、めっちゃ嫌なんやけど」
「そう拒否るなよ、ビャクヤ。一緒に地獄を見よう」
いつになく良い笑顔のシンが、くいっと指で温室の扉を指し示す。
逃げるのは許さないし、お前も見ろと、その笑顔から繰り出されるハイプレッシャー。
「さらに怖いんやけど」
ビャクヤは嫌々と恐々が半分半分といった様子で扉のノブに触れた。
後ろ姿だけでも、テンションが低いのがよくわかる。自慢の狐耳も尻尾もペっちゃんこに萎れている。
三人が確認して、三人とも中身を黙秘するのだ。良い状況でないのは確かである。
覚悟したビャクヤは、そうっと息を殺して温室の扉をゆっくり開く。
温室独特のもわりとした湿度と温度が、隙間から漏れてくる。
土、植物、空気の臭いが濃密だ。
思ったより雑草は生い茂ってはいない――けれど、絶望的にいてほしくない〝ブツ〟が跳梁跋扈している。
畝も通路も関係なく、土に埋まってまったりしている聖護院系わがままボディ。
その間を遊び盛りの子供か砂浜で追いかけっこする恋人たちのように颯爽と駆け抜けていく白いナニカ。
そこには、蕪サイズから、人の背丈に匹敵するものまで、無数の白マンドレイクがいた。
その光景にビャクヤの目からスッと光が消えた。そして彼は、白マンドレイクに気づかれないように扉を閉める。
「アイツら、夏休み前に全部ぶち抜いたはずやーん!」
憐れな狐の絶叫が木霊する。
怒号にも聞こえるが、どこか悲哀に満ちている。
白マンドレイクは本来なら稀少な魔法植物だ。それに食べても美味しい高級食材でもある。
だが、四人は知っている。この温室で生まれるマンドレイクは普通のマンドレイクと違って、少しどころかぬるぬる動く。油断すると勝手に移住するし、増殖するし、倉庫に保管していた栄養剤まで盗んで使う、トンチキ極まりない厄介者なのだ。
つまり、下手な雑草より性質が悪いのが群生していた。
「あー、どうしたもんか。燃やすのは温室のダメージが心配だよな……かといって、風魔法もなー」
「土魔法も同様ですね。学園の温室ですので、多少の耐久性はありますけど、あの数を一網打尽にするには……」
シンとレニはかなりの魔力持ちなので、温室その他の損害を考えなければなんとかできる。そんな魔法使いの二人が、頭を抱える。
普通の植物なら地道に抜けばいいが、奴らに常識は通じない。油断すると移動するから、一気にやらねばいたちごっこになる。
シンたちの言葉を聞いて、カミーユは難色を示した。
「しかし、あの数を地道に抜くと? かなりデカいのもいたので、こちらも怪我するかもしれないでござる」
温泉につかるように土の中でリラックスしていたデカブツは、一匹や二匹ではない。
シンたちより大きいサイズを人力で引っこ抜くとなると、かなりの労働だ。それに、白マンドレイクが大人しくしているとは限らないので、カミーユが言うように負傷するリスクがある。
ビャクヤが腕組みしながら呟く。
「せやけど、どないしてあんなん増えたんや? 夏休み前に一通りぶち抜いたはずなのに、マンドレイク祭り状態やん」
三人寄れば文殊の知恵という諺がある。四人集まればもっと良い案が出るかもしれないと、額を突き合わせているものの、なかなか妙案は出ない。
四人とも、まだ最初のインパクトを引きずって動揺していた。
「あ、そや。グラスゴーやピコちゃんも白マンドレイク好きやろ? 食べてもらうとか」
ビャクヤが思いついたアイデアを口にするが、シンは首を横に振る。
「いや、あの量は無理だろう。フードファイターでも無理だよ。それに、食べきる前にグラスゴーがキレたら、温室が吹き飛ぶ」
あんなのが足元をちょろちょろしていたら、鬱陶しいことこの上ない。
美味しいのは確かだし土産に多少持って帰るのは良いかとシンも一考するが、これは根本的な解決にならないのもわかっていた。
レニが小さく挙手したので、シンが頷いて発言を促す。
「あの、マンドレイクを抜いたとして、その後はどうしますか? 高級な魔法植物ですけれど、あの量をギルドやお店に卸したら、価値が暴落してしまうかも……」
レニが言う通り、下手に大量放出すれば市場価格に影響が出るだろうし、出所がシンたちだと割れたら厄介だ。
「僕のマジックバッグで小出しするよ。あの数を捨てるのももったいないし、可哀想だしね」
白マンドレイクは、土から離せばそれなりに大人しくなるから、収納できる。
シンたちにとってはニュータイプ雑草という認識になりつつあるが、白マンドレイクは一般的には激レア高級魔法植物だ。せめて有効に活用するべきだろう。
それに、粉砕して畑の肥やしにするのはちょっと怖い。何せあれは上級魔法薬の材料になるから、土壌にどんな影響が出るかわからないのだ。
四人がマンドレイク対策を考えていると、背後に背の曲がった人影が近づいてきた。
「使用人――ではなく学園の生徒か。何をして……あ」
振り返った四人の顔を――特にシンの顔を見て「やべっ」という表情になったのは、ロマンスグレーことグレゴリオ・プテラであった。彼はティンパイン国立学園の魔法学や錬金術などを担当している教師で、シンたちの学年主任でもある。
意外な人物の登場に、四人は目を丸くする。
「グレゴリオ先生?」
怪訝そうなシンの声に、グレゴリオは心なしかしょんぼりしている。
「そうか、もう少しいけると思ったんだがなぁ……」
「もしや、この温室の惨状は先生がやったでござるか?」
「惨状とは何事だ! 稀少な白マンドレイクの人工栽培の研究に大いに貢献したのだぞ! この夏でどれだけ論文が進んだと思っている!」
カミーユの質問に逆ギレの勢いで言い返してくるグレゴリオ。
しかしこの発言は、温室をこんな状態にしたと自白したも同然である。
白けた周囲の視線をものともせず、グレゴリオは白マンドレイクの栽培法の大切さを力説する。
「深い山林や龍脈の通る場所にしかできないとされた白マンドレイクが、何故かこの温室では見事に成長するのだ! 土壌、水質、温度、湿度、魔力のあらゆる環境を調べ上げ、量産の目途が立てば、どれほど魔法薬や錬金術の研究が進むことか……! ゆくゆくは多くの傷病に良薬が行き渡ることになるだろう」
今までにない力強さで、グレゴリオは熱弁する。
誰かのために行動する信念はとても立派だが、いざ温室で自由奔放に過ごす白マンドレイクたちを前にすると、苛立ちが増すシンたちだった。
「他の場所でも試したが、ここほど良い結果が得られた場所はない」
急激に勢いを失ったグレゴリオが、項垂れて言った。
彼以外の面子はこの温室だけ育つ理由に心当たりがある。
レニ、カミーユ、ビャクヤは何も言わなかったが、一人の人物に視線を向けてしまう。
たくさんの神々から激重感情を向けられて手厚く加護を受けている神子が、気まずそうにしていた。
きっとその辺の事情が、白マンドレイクの生育にも関係しているに違いない。
あるいは、ポーションによる液肥栽培もしていたので、その効力が土壌に残っていた可能性もある。
「しかし、ここ最近は少し増えすぎてしまってな。白マンドレイクを採取しようにも返り討ちにされる始末……助手たちも怪我をしてしまい、かといって私だけでは採取は難しい」
グレゴリオも繁殖しすぎているという自覚はあったようだ。
「手に負えんくなっとるやん」
呆れた目つきのビャクヤが鋭く突っ込むが、グレゴリオはめげない。
「学術の進歩には多くの知識人の努力と犠牲が付き物なのだ」
やりたくてやっているグレゴリオが自業自得で犠牲になるならともかく、それで苦労して整備した温室を侵略されては、シンとしては堪らない。
「でも、あのままじゃまずくないですか?」
冷静なシンの一言を受け、グレゴリオはちょっと居た堪れなくなった。
大人しくて優等生――それがシンの教員たちからの評価だ。そんな生徒からの冷たい眼差しは応える。
「夏休みが終わる前には戻そうと思ったのだ……」
グレゴリオは蚊の鳴くような声で呟いた。
彼も温室を返す気はあったのだ。元に戻そうと努力はしたが失敗し、その結果が現在の有様である。今や温室はマンドレイク帝国と化していた。
「そ、そうだ! マンドレイクの採取に協力したら、特別単位を出そう! 君たちは過去にマンドレイクの栽培をしていただろう?」
グレゴリオの提案に、シンは少し心が揺らいだ。
一つ単位が取れると、その分だけ時間に余裕が生まれる。
講義の内容によっては単位取得の難度が高く、中には一定の基礎単位を取得していないと受講すらできないものもある。
たとえば錬金術も、基礎や初級に相当する単位を取らなければ、応用の講義が受けられない。
シンの学びたい授業の中には、錬金術や魔法系統を複数単位取得することが受講条件になっているものもある。
そうした条件を満たす意味でも、グレゴリオの提案は魅力的だった。
シンの中で欲望の天秤が動く。皿が傾き、コーンと床を叩いた。
この夏、タニキ村と隣のバーチェ村は、人の血肉を好む狼の魔物――ブラッドウルフの巨大な群れに襲われた。
ヴァンパイアウルフという特殊な魔物がこの群れを統率し、村に襲い掛かったのだ。
特にバーチェ村は廃村となるほど甚大な被害を受けた。タニキ村まで逃げられた村民は助かったのだが、元の半分の人数になっている。
タニキ村には元騎士のハレッシュや、王都と直通でやり取りのできるルクス、加護持ちで魔力の多いシン、そして壊れ性能のチート魔馬が二頭いたので、なんとかなった。
ミリアもこの襲撃やその後の対応について知っていた。
「できるけれど、あそこには国からの補助金も出ているわよ?」
「はい。でも、村人の中には家や家族を失った元バーチェ村の人たちもいます。家畜や田畑を失い、これから冬に備えるのは大変でしょう。それに、今年は援助があっても、来年、再来年は難しいと思います」
タニキ村には人的損失はなかったけれど、家畜と田畑の被害はあった。
もともと酪農より狩りで生計を立てている村人が多いが、卵や乳製品の大半は家畜によって賄われている。
また、怪我はなくとも心に大きな傷を受け、精神的不調に見舞われた村人も多くいる。
「そうね……では教会を建てるのはどうかしら? 怪我などの後遺症があって働くのも難しい人や、孤児の受け入れもできるわ。ヴァンパイアウルフを追い払うのに、神々も手を貸してくださったと聞くし、ちょうどいいと思うの。今までは小規模な祭壇だけでしょう? 正式な施設として建設する案はあったのよ」
この世界において、神々を祀る施設には、主に神殿と教会がある。
神殿は純粋に宗教色が強い施設だが、教会は孤児院や医療施設と併設するなど、民間に寄り添う慈善事業的な側面が大きい。
神殿は規律が厳しく階級も決まっており、組織として強いのだ。時には国とも渡り合うほど権力を有している。
一方、教会は神殿と国の両方から支援を受けつつ、質素に経営していることが多い。
重傷や難病の治療、解呪などは教会では難しいが、大金を支払ってもなんとかしてほしいなら神殿に行く。逆にちょっとした怪我や解毒なら教会でもやってくれる。それぞれにニーズがあるのだ。
タニキ村は超ド田舎の小規模集落なので、今のところそのどちらもなかった。
「シン君は神殿を敬遠しているでしょ? だから神殿を建てるのは論外として、教会も建てていいものか迷っていたのよ。でも、シン君は神託を受けやすい神子のようだし、教会くらいあった方が神々にも面目が立つと思うわ」
「なるほど……」
「それに、先にティンパイン王家の方で教会を建ててこっちの人材を詰めておけば、神殿側が新しく建てにくくなるもの。しっかり建てた方が、干渉を減らす口実にもなるわ」
「建てましょう」
うふふ、とちょっと含みのある笑みを浮かべるミリアに、シンは即答した。
シンの脳裏には、以前神殿で絡まれた紫色の変態神官ことアイザックの顔が浮かんでいた。
初対面でシンの体臭を吸ってきた、大変アブノーマルな性癖を疑いたくなる人物だった。
神殿の息がかかった施設ができて、万が一にもアレや同系統の人間が派遣されてきたら、地獄である。
(絶対嫌だ。悪夢すぎる……)
アイザックがあそこまで反応するのは稀な事例なのだが、あの吸引インパクトは未だに色褪せず、シンの中でトラウマとして残っていた。
あんなのがタニキ村の神官に赴任してきたら、シンは安心して村に帰れなくなる。
長閑なタニキ村に溶け込む気がしない。穏やかなスローライフが粉々だ。
「教会建設以外にも、定期収入の使い道があるといいのですけど」
シンの相談に、ミリアが首を傾げて思案する。
「うーん、それなら街道整備でもする? 本来なら国の仕事だから、シン君のお金は使わなくていいと思うけれど……タニキ村の規模に合わせた教会だと、すぐに足りてしまいそうなのよね」
(どれだけ収益上げているんだ、美容系レシピ!)
シンの美容品は貴族をはじめとした富裕層がメインターゲットだから、当然単価はお高めだ。
利益率が高いだろうとは思っていたが、シンの想像を超えていた。
「今の化粧水も大人気だし、シン君には今後もレシピについて交渉したいのよ。取引が増えれば、もっと利益も増えるでしょう?」
シンのお手製の美容品を愛用するミリアとしては、積極的な研究や開発をしてほしいのだろう。
それを聞いて、シンはぎょっとする。
「まだ増えるんですか!?」
あの額面だけでも心臓に悪かったというのに、小市民の心を縊り殺す気だろうか……と、シンは引きつった笑みを浮かべる。
お金がないのはストレスだが、大量にありすぎても同じである。
あればあるほど良いと言う人間もいるとはいえ、金銭感覚が一度壊れたら一生戻らない可能性もある。
さすがに全額寄付などと、善行の塊みたいなことをするほど、シンは無欲ではない。
でも、一人で使い切る度胸もなかった。
煩悶するシンを楽しそうに眺め、ミリアは微笑ましさを覚えるのだった。
◆
シンはレニたちを伴って久々に学園に足を運んでいた。
夏休み中でもしっかり整備されていて、草が生い茂るなんてことはない。石畳に落ち葉やごみも落ちておらず、いつでも始業できそうだった。
少しだけ懐かしさを感じる門構え。シンは制服を着ていないので学生証を持っていき、守衛に通過の許可をもらう。
農具はマジックバッグに入れているから身軽だ。
日差しがきついので、麦わら帽子を被っていて正解である。
シンはちょっと古びた外観の温室を見つける。
遠目からも、中に緑色の何かが茂っているのがわかる。
「やっぱり雑草は出てきちゃうよな」
シンは眉を下げて、がっかりしたように呟く。
ガラス越しのぼやけた状態でもわかるくらいだから、相当繁茂しているだろう。予想していた通り、草取りからやり直しである。
「大丈夫ですよ。四人でやれば、新学期までには戻せますよ」
レニがフォローを入れると、シンも頷く。
それこそ、最初にここに手を入れた時よりはマシなはずだ。
一方、後ろにいたカミーユとビャクヤは、何か微妙そうな顔をしてひそひそ話している。
「どうしたんだよ?」
シンの質問に、騎士科の二人は顔を見合わせて口籠もる。
しかし、覚悟を決めたのか、口を開いた。
「いや、なんか温室の中で動いてへん?」
「某の気のせいかと思ったでござるが、ビャクヤも見たでござるか」
ビャクヤとカミーユの言葉に、シンは温室を改めて見るが、特に何かが動く様子は見えない。
古い温室は結露と汚れがあるので、中の様子ははっきりとは見えない。視界で判別できたのなら、それなりに大きな何かがいる可能性がある。
レニもシンの隣で目を凝らすが、わからなくて首を傾げる。
「野生動物でもいるのでしょうか? ネズミや兎は穴を掘って下から侵入することがありますが」
タニキ村で農作物を作っていた時も、獣避けに作った囲いを搔い潜って畑に侵入する動物がいた。
鹿や猪のような大きさのある獣は、柵を跳び越えたり壊したりと力業でなんとかしようとするが、小さい生き物はせっせと穴を掘って入ってくる。
野山に行けば食べ物が落ちているのに、果敢に野菜泥棒チャレンジを続けていた。
(エルビアは都会だから、あっちより食べ物は落ちてなさそうだしなー)
ゴミの中には残飯などもあるが、人の生活圏と近すぎる。
その点、夏休み中の温室なら人は滅多に来ないし、多少は食べ物が手に入る可能性がある。
夏休み前に収穫した大豆、トマトなどの夏野菜。それらのこぼれ種や、採り残しがお目当てなのかもしれない。
「うーん……人の気配を感じれば、動物は逃げると思う。草取りしつつ、温室に破損がないか確認だな」
そう言いながら、シンは温室の扉を開けて――スッと閉めた。
あまりにスムーズな動作だったので、後ろの三人は一瞬何か間違えたかと思ってしまった。
シンは真顔になった後、目頭を揉み解して唸る。
「なんか……あるはずのない? いるはずのない? いてほしくないものが、大量にあったような」
「なんでござるか、それは。煮え切らないでござるなぁ」
いつになく歯切れの悪いシンに、カミーユが首を傾げた。
立ち尽くすシンに代わって、カミーユがノブを掴んで扉を開け放ち――閉めた。
「……なんか白昼夢? うーむ、白い悪夢が見えたような」
「そうか、お前も同じモノが見えたか」
やはりなのかとシンが諦観を込めて呟き、項垂れた。
「いやいやいや! まだ同じものが見えたと決まったわけじゃないでござるぅうう!」
現実を受け入れたくないカミーユが、ヒステリックというより、縋りつくように否定した。
頭をぶんぶん振り、紺色のポニーテールの先がビャクヤにびしばし当たっている。
まだ温室の中身を見ていないレニとビャクヤは、何が何だかわからない。
「二人ともどうしたんですか? 中に何があるんですか?」
異様な空気を察したレニが困惑気味に問うと、シンとカミーユは素早く目配せした。そして、無言で扉を指し示す。自分の目で確認してくれということだ。
「もう、なんなんですか?」
カミーユだけだったらレニは突っぱねていたけれど、シンまでそんな態度なので、仕方なく扉を開く――そして素早く閉めた。
「……そっちですか。そうきましたか……」
ジーザスとばかりに頭を抱える才女レニ。賢い彼女までもシンとカミーユと同じような反応だ。
シメというかオチを任されるように、最後に順番が回ってきたのはビャクヤだった。
「え、めっちゃ嫌なんやけど」
「そう拒否るなよ、ビャクヤ。一緒に地獄を見よう」
いつになく良い笑顔のシンが、くいっと指で温室の扉を指し示す。
逃げるのは許さないし、お前も見ろと、その笑顔から繰り出されるハイプレッシャー。
「さらに怖いんやけど」
ビャクヤは嫌々と恐々が半分半分といった様子で扉のノブに触れた。
後ろ姿だけでも、テンションが低いのがよくわかる。自慢の狐耳も尻尾もペっちゃんこに萎れている。
三人が確認して、三人とも中身を黙秘するのだ。良い状況でないのは確かである。
覚悟したビャクヤは、そうっと息を殺して温室の扉をゆっくり開く。
温室独特のもわりとした湿度と温度が、隙間から漏れてくる。
土、植物、空気の臭いが濃密だ。
思ったより雑草は生い茂ってはいない――けれど、絶望的にいてほしくない〝ブツ〟が跳梁跋扈している。
畝も通路も関係なく、土に埋まってまったりしている聖護院系わがままボディ。
その間を遊び盛りの子供か砂浜で追いかけっこする恋人たちのように颯爽と駆け抜けていく白いナニカ。
そこには、蕪サイズから、人の背丈に匹敵するものまで、無数の白マンドレイクがいた。
その光景にビャクヤの目からスッと光が消えた。そして彼は、白マンドレイクに気づかれないように扉を閉める。
「アイツら、夏休み前に全部ぶち抜いたはずやーん!」
憐れな狐の絶叫が木霊する。
怒号にも聞こえるが、どこか悲哀に満ちている。
白マンドレイクは本来なら稀少な魔法植物だ。それに食べても美味しい高級食材でもある。
だが、四人は知っている。この温室で生まれるマンドレイクは普通のマンドレイクと違って、少しどころかぬるぬる動く。油断すると勝手に移住するし、増殖するし、倉庫に保管していた栄養剤まで盗んで使う、トンチキ極まりない厄介者なのだ。
つまり、下手な雑草より性質が悪いのが群生していた。
「あー、どうしたもんか。燃やすのは温室のダメージが心配だよな……かといって、風魔法もなー」
「土魔法も同様ですね。学園の温室ですので、多少の耐久性はありますけど、あの数を一網打尽にするには……」
シンとレニはかなりの魔力持ちなので、温室その他の損害を考えなければなんとかできる。そんな魔法使いの二人が、頭を抱える。
普通の植物なら地道に抜けばいいが、奴らに常識は通じない。油断すると移動するから、一気にやらねばいたちごっこになる。
シンたちの言葉を聞いて、カミーユは難色を示した。
「しかし、あの数を地道に抜くと? かなりデカいのもいたので、こちらも怪我するかもしれないでござる」
温泉につかるように土の中でリラックスしていたデカブツは、一匹や二匹ではない。
シンたちより大きいサイズを人力で引っこ抜くとなると、かなりの労働だ。それに、白マンドレイクが大人しくしているとは限らないので、カミーユが言うように負傷するリスクがある。
ビャクヤが腕組みしながら呟く。
「せやけど、どないしてあんなん増えたんや? 夏休み前に一通りぶち抜いたはずなのに、マンドレイク祭り状態やん」
三人寄れば文殊の知恵という諺がある。四人集まればもっと良い案が出るかもしれないと、額を突き合わせているものの、なかなか妙案は出ない。
四人とも、まだ最初のインパクトを引きずって動揺していた。
「あ、そや。グラスゴーやピコちゃんも白マンドレイク好きやろ? 食べてもらうとか」
ビャクヤが思いついたアイデアを口にするが、シンは首を横に振る。
「いや、あの量は無理だろう。フードファイターでも無理だよ。それに、食べきる前にグラスゴーがキレたら、温室が吹き飛ぶ」
あんなのが足元をちょろちょろしていたら、鬱陶しいことこの上ない。
美味しいのは確かだし土産に多少持って帰るのは良いかとシンも一考するが、これは根本的な解決にならないのもわかっていた。
レニが小さく挙手したので、シンが頷いて発言を促す。
「あの、マンドレイクを抜いたとして、その後はどうしますか? 高級な魔法植物ですけれど、あの量をギルドやお店に卸したら、価値が暴落してしまうかも……」
レニが言う通り、下手に大量放出すれば市場価格に影響が出るだろうし、出所がシンたちだと割れたら厄介だ。
「僕のマジックバッグで小出しするよ。あの数を捨てるのももったいないし、可哀想だしね」
白マンドレイクは、土から離せばそれなりに大人しくなるから、収納できる。
シンたちにとってはニュータイプ雑草という認識になりつつあるが、白マンドレイクは一般的には激レア高級魔法植物だ。せめて有効に活用するべきだろう。
それに、粉砕して畑の肥やしにするのはちょっと怖い。何せあれは上級魔法薬の材料になるから、土壌にどんな影響が出るかわからないのだ。
四人がマンドレイク対策を考えていると、背後に背の曲がった人影が近づいてきた。
「使用人――ではなく学園の生徒か。何をして……あ」
振り返った四人の顔を――特にシンの顔を見て「やべっ」という表情になったのは、ロマンスグレーことグレゴリオ・プテラであった。彼はティンパイン国立学園の魔法学や錬金術などを担当している教師で、シンたちの学年主任でもある。
意外な人物の登場に、四人は目を丸くする。
「グレゴリオ先生?」
怪訝そうなシンの声に、グレゴリオは心なしかしょんぼりしている。
「そうか、もう少しいけると思ったんだがなぁ……」
「もしや、この温室の惨状は先生がやったでござるか?」
「惨状とは何事だ! 稀少な白マンドレイクの人工栽培の研究に大いに貢献したのだぞ! この夏でどれだけ論文が進んだと思っている!」
カミーユの質問に逆ギレの勢いで言い返してくるグレゴリオ。
しかしこの発言は、温室をこんな状態にしたと自白したも同然である。
白けた周囲の視線をものともせず、グレゴリオは白マンドレイクの栽培法の大切さを力説する。
「深い山林や龍脈の通る場所にしかできないとされた白マンドレイクが、何故かこの温室では見事に成長するのだ! 土壌、水質、温度、湿度、魔力のあらゆる環境を調べ上げ、量産の目途が立てば、どれほど魔法薬や錬金術の研究が進むことか……! ゆくゆくは多くの傷病に良薬が行き渡ることになるだろう」
今までにない力強さで、グレゴリオは熱弁する。
誰かのために行動する信念はとても立派だが、いざ温室で自由奔放に過ごす白マンドレイクたちを前にすると、苛立ちが増すシンたちだった。
「他の場所でも試したが、ここほど良い結果が得られた場所はない」
急激に勢いを失ったグレゴリオが、項垂れて言った。
彼以外の面子はこの温室だけ育つ理由に心当たりがある。
レニ、カミーユ、ビャクヤは何も言わなかったが、一人の人物に視線を向けてしまう。
たくさんの神々から激重感情を向けられて手厚く加護を受けている神子が、気まずそうにしていた。
きっとその辺の事情が、白マンドレイクの生育にも関係しているに違いない。
あるいは、ポーションによる液肥栽培もしていたので、その効力が土壌に残っていた可能性もある。
「しかし、ここ最近は少し増えすぎてしまってな。白マンドレイクを採取しようにも返り討ちにされる始末……助手たちも怪我をしてしまい、かといって私だけでは採取は難しい」
グレゴリオも繁殖しすぎているという自覚はあったようだ。
「手に負えんくなっとるやん」
呆れた目つきのビャクヤが鋭く突っ込むが、グレゴリオはめげない。
「学術の進歩には多くの知識人の努力と犠牲が付き物なのだ」
やりたくてやっているグレゴリオが自業自得で犠牲になるならともかく、それで苦労して整備した温室を侵略されては、シンとしては堪らない。
「でも、あのままじゃまずくないですか?」
冷静なシンの一言を受け、グレゴリオはちょっと居た堪れなくなった。
大人しくて優等生――それがシンの教員たちからの評価だ。そんな生徒からの冷たい眼差しは応える。
「夏休みが終わる前には戻そうと思ったのだ……」
グレゴリオは蚊の鳴くような声で呟いた。
彼も温室を返す気はあったのだ。元に戻そうと努力はしたが失敗し、その結果が現在の有様である。今や温室はマンドレイク帝国と化していた。
「そ、そうだ! マンドレイクの採取に協力したら、特別単位を出そう! 君たちは過去にマンドレイクの栽培をしていただろう?」
グレゴリオの提案に、シンは少し心が揺らいだ。
一つ単位が取れると、その分だけ時間に余裕が生まれる。
講義の内容によっては単位取得の難度が高く、中には一定の基礎単位を取得していないと受講すらできないものもある。
たとえば錬金術も、基礎や初級に相当する単位を取らなければ、応用の講義が受けられない。
シンの学びたい授業の中には、錬金術や魔法系統を複数単位取得することが受講条件になっているものもある。
そうした条件を満たす意味でも、グレゴリオの提案は魅力的だった。
シンの中で欲望の天秤が動く。皿が傾き、コーンと床を叩いた。
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