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魔王の言い分

人質、魔王と執事と飲みに行く。2

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サイファはすらりとした指を二本立てる。

「目的は最初に言った通り二つ。人質。興味本位で会ってみたかったこと。ここにいるだけで伝家の宝刀なんだよ」

「そおか。私ったら捕まっちゃって、ほんとに間抜けよね」

まぁ、戦いの真っ最中なわけだし、人間側に不利になることをしてしまうというのも……責任を感じるほど落ち度はないと思うけど。


くっくっく。と、ちょっと悪どい忍び笑いをして、サイファは私の顎へそっと指を添える。

「安心してよ、かわいがってあげるから」

だから寄るな。美しい。

私は無言でサイファの肩をトンと押し返す。美しさのあまり顔面に弱い私の自己防衛本能が働くのだ。

そんな扱いを滅多に受けることはないのだろう……まあ、そうだろうな。

「面白い子。久しぶりにぞくぞくするね」

ニマニマと狩人のような目が私を捕らえた。

世の中には難儀な性癖があるなぁ。思い通りにならないものほど手に入れたくなる、というのはわかるけど。

「風邪じゃないの?質が悪いやつ」

「違うな。魔王様の女たらしは先天的な病気であらせられる。治療できない」

私とフェンリルは無闇に冷たい声になってしまった。

「へへへ」と笑ってごまかすサイファ。

「よし、じゃ3人で飲み行こうか。魔王様専用のバーがあるんだよね。人に自慢したくてしょうがないんだ。招待させてよ」

パチン。空気を切り替えるように、格好つけて指を鳴らした。

その横でフェンリルが何やらメモを書き、ポケットから出した小さい蝙蝠のような生き物に持たせて放っていた。なんぞ?



普通に城の中をのこのこ歩いて移動。

途中の雑談で蝙蝠について聞いてみた。連絡手段らしい。なるほど。

バーとやらは階段をずいぶん下ったところにあった。地下かもしれない。



どや顔で扉を開くサイファの説明。

「隠し牢を改造しました」

ずらりと壁一面にお酒のボトルが並ぶ。つやつやしたカウンターに、細長く背もたれのない椅子が並んでいる。

石の壁と、せせこましく息苦しいことをいい意味で利用した、黒と白を基調にした空間だ。

「おしゃれ!」

感想、以上。


「いらっしゃいませ……」

マミみたいなマスターがボトルを拭いてた。

「マミ?」

「いや、こいつはマミの親戚のラミーだ。同じ種族だし、人間には見分けつかないか」

と、フェンリルの説明。

確かに違いがわからない。声も髪型も似てるし……服がバーテンの服。そのせいで雰囲気がしっとり落ち着いて見える。

「ほほー。私はさっきマミさんにお世話になった人質です。よろしくマスター」

「ほんとにこの子、怖がらないねぇ」

サイファに頭をよしよしされた。
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