ものぐさがうぬぼれを救う

栗山 丈

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第十一話

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 落胆の色を隠せない周也は再び自宅に引きこもってしまった。

和希はしきりに励まそうとメールを送っていた。

(これからのことについては相談に乗りたい。できることがあれば微力だが全力を尽くしていきたい)

 こう申し出たが、しばらくは何もない状況が続いた。

返信がないので、前回よりも事態が深刻なので、一層気がかりであった。

なんとか立ち直ってもらいたいと励まそうと、度々LINEで連絡を取ってみた。

もっと、自分の心にポジティブに、自然に、そして自由に生きていくことを訴えた。

そして、自分も特にこの先のライフプランがあるわけではないので、全面的なバックアップを申し出た。

しかし、意気消沈の周也の心情はなかなか上向きにならないのか一週間が経とうとしていた。

 いつしか、和希のものぐさは少しずつ消えていき、他人を思いやる気持ちが現れていた。

前向きで外に目を向ける精神が周也との付き合いで自然と養われていったのが今後の二人の生き方に大きく影響していくなどとは、このときは何も知る由もなかった。

その後も支援を強く申し出た。

ようやく周也はいつまでもくよくよしていてはいけないと思い始めるようになり、少しずつであるが、この先の事を考え、そして悩みながらでも前に進んでいきたいと気を取り戻すまでになった。

剽窃のことはまったくの偶然であり、意識したことではない。

重ね合わさった不運だと主張した。そして和希はその言葉を信用した。

 その後は、以前に書いたテレビドラマ用のシナリオに少しずつ手を入れ直そうと思い始める周也だった。

それは「思い出の残る街」というドラマで、今は東京で動画クリエイターの仕事をしている青年が高校三年まで長い間住み続けた広島の尾道の魅力を見つめ、伝える活動を描いたものである。

いずれは放送作家として出発をしたいという想いはまだ捨てきれなかった。今まで酷評を受けたり、

人間関係のトラブルなどが続き、精神面での克服という壁を乗り越えなければならなかった。
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