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第1章「0(ゼロ)」
二十二話「少女の『蕾初め』①」
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その少女の『御披露目』は期間中、希望した会員全てに順番に行われ、終了した。
少女と面会した会員達は、年齢も職業も性格もバラバラだった。
共通するのは、裕福な大人の男性。
しかし誰と会っても、その少女の状態に変化は無かった。
だが、少女の評判は上々だった。
やがて少女を『お気に入り』登録した会員達が待ち侘びた、少女の『初夜権』をかけたオークションが『黒薔薇の遊宴』倶楽部のHPで開催された。
入札者は、多かった。
ダイヤモンド会員だけでなく、プラチナ会員やゴールド会員の中にも手数料を支払って参加する者達がいた。
予想以上に額は上がっていき、最後の方は接戦となった。
そして落札者が決まった後は、『蕾初めの儀式』と銘打った、倶楽部会員達の罪悪感や背徳感を薄くさせる呼び名の準備が、淡々と進められた。
HPには落札した会員のための期間限定掲示板が設けられ、お祝いコメントが続々と寄せられた。
落札できなかった会員の中には、羨望や誹謗中傷のコメントを書き込みする者もいたが、不適切なコメントは倶楽部側がチェックし削除した。
HP内で『お友だち』登録している会員達からは、落札会員のHN宛で御祝儀や贈答品が贈られた。
それらは『倉庫』に送られ、『蕾初めの儀式』の日まで倶楽部側が保管する。そして当日、熨斗で飾られた品々が落札会員の宿泊する客室に用意される。
その少女には、落札会員から『蕾初め』の日に着用する衣装が贈られた。
『蕾初めの儀式』では、落札された子供は必ず純白の衣装を着用することが、この『黒薔薇の遊宴』倶楽部の決め事となっている。
その衣装は全身純白でさえあれば、どのようなタイプでも好みは問われない。
少女に贈られたのは、純白の着物だった。同色の帯と足袋、草履も同梱されていた。
贈られてきた箱の中身を見た子供達は、皆一様に表情が曇る。
それは『倉庫』の先住者である子供達全てが、何を意味する色なのか理解しているから。誰一人、決して避けることが許されなかった通過儀礼なのだ。
『儀式』の当日までに、倶楽部側が贈られた純白の衣装を落札された子供に試着させて、サイズ調整を済ませておく。
「…うん、大丈夫そうね」
全身を映す大きな鏡にはルーシーと、贈られた純白の着物一式を身に纏った少女が立っていた。
「はぁい、もう良いわよぉ。ドールちゃん、お着替えしましょうねぇ」
ルーシーが少女の体から着物を脱がせて、パジャマに着替えさせる。
その後、着物を着物用ハンガーに掛けた。
「…昔は…この色の花嫁衣装着るの憧れてたのにぃ…。此処に来てからはもう、あんまり好きじゃなくなっちゃったわぁ…」
ルーシーが純白の着物を眺めながら、溜め息を吐いた。
ーある日、ユキが少女を自分の部屋に連れて来た。
少女の体を抱えて机の上に座らせ、自分はキャスター付の椅子に座ると、少女と向かい合う。
「…ちょっとゴメンな。痛かったら、ちゃんと抵抗しろよ?」
ユキが少女の左手を取ると、手の甲をつねった。
始めは軽く、だんだん強くつねる。
普通ならば咄嗟に手を引っ込めるなり、声や表情に痛がる言動が表れるものだろう。
だが少女は、つねられても無反応だ。
つねるのを止めて、ユキは少女の手の甲を擦った。
「う~ん?」
ユキが、自分の右手の甲をつねる。
「いってぇ!」
ユキは痛みを分散させるように、パタパタと右手を振った。
今度は、ユキが自分の両頬を摘まんで引っ張る。
「…いでえ」
ユキは眉間に皺を寄せる。そのポーズのまま、少女に話しかける。
「…いいか?次はコレと同じことするぞ?イヤだったら俺の手を叩いてイイからな?」
ユキは少女の両頬を摘まんで、引っ張る。
しかし、少女の表情には少しの変化も無い。
「お前…、痛くないのかよ?」
「……」
ユキは少女の瞳を見詰める。
少女から何らかの感情や反応を微量でも探ろうとしたが、何も発見することはできなかった。
「…ゴメンな」
ユキは手を離すと、感じていないかもしれない痛みを和らげるように少女の両頬を擦った。
「…ま、その方がお前のためには良いのかもな」
ユキが机に置かれた卓上カレンダーを見る。
「…明日だな」
ユキは、少女の頭を優しく撫でた。
* * *
翌日、とうとう少女の『蕾初めの儀式』当日となった。
その少女は、お昼過ぎに起こされた。
ルーシーに連れられてダイニングルームへ行くと、他の子供達が先にランチを始めているところだった。
この日は早瀬が休みのため、別の男性従業員が給士していた。
ランチの時間帯は、ダイニングルームに一番多く子供達が集まる。
倶楽部会員が夜に予約を入れることが多いからだ。
此処では、子供達が健全な朝を迎えることが当たり前ではなかった。
少女が此処の子供達と生活するようになってから、一ヶ月以上は経っていたので皆、少女の状態や接し方にも慣れてきていた。
だから生活する毎日で、少女が自分でできないことは皆で手助けはしたが、最近は会ったばかりの時ほど少女を特別視することはなくなっていた。
しかし今日に限っては、少女に視線が集中していた。
その少女以外の子供達は皆、今日が少女にとって何の日かを把握していたからだ。
少女は普段と変わりなく、与えられたランチの料理を完食した。
ランチが終わると各々、会員との予約時間が迫っている子供達から順番に、ルーシーがヘアメイクを進めていった。
その間、少女はリビングルームの自分のベッドに座り、パジャマ姿のまま大人しく過ごしていた。
準備を済ませた子供達は、迎えに来た男性従業員に連れられて、リビングルームの外に次々と出て行った。
その子供達の中には出て行く時に、気になるのか最後まで少女に視線を残していく子もいた。
夕方になり陽も落ちてくると、ディナーの料理が運ばれてきた。
会員の予約時間は深夜近くになることもあり、会員と一緒に食事する子供以外は、『お仕事』の子もお休みの子もダイニングルームに集まり、残った子供達で食事する。
少女を落札した会員は、すでに保養所の客室にチェックインしていた。
ディナーは別々に済ませた後、夜10時頃に少女と落札会員が会う約束だ。
ディナーのダイニングテーブルには、ルーシーと数人の子供しか居なかった。少女も加わり、一緒に食べる。
そこにはユキの姿もあった。ユキも少女と同じ時間に予約が入っていた。すでにヘアメイクを済ませ、派手な刺繍が施された赤いチャイナドレスを着ている。
ユキは会員と遅めのディナーをするため、食事はせずにミルクティーだけを飲んでいた。
ランチの時はまだ会話もあったが、ディナーではユキも他の子供達も、ルーシーさえもほとんど無言だった。
少女は、ディナーの料理も完食した。
ディナーを終えると、少女を入浴させる。
少女が入浴する時は、いつも年上の女の子達が交代で一緒に入浴し、髪や体を洗うのを手伝っていた。
そのため、少女も少しずつ自分で体を洗えるようになってきていた。
今日は少女の準備を手伝うため、女の子では一番年上の柚子がお休みをもらっていた。
柚子が少女と一緒に入浴し、頭から足の爪先まで全身を丁寧に洗う。
全て洗い清潔になった少女にバスローブを着せ、柚子がリビングルームへ連れて戻る。
ルーシーが少女をドレッサーの椅子に座らせて、少女の肌を基礎化粧品で整え、長い髪を乾かした。
続いて少女の顔に薄化粧を施し、髪も真っ直ぐにスタイリングしていく。
ヘアメイクが一通り出来上がると、ルーシーは少女を立たせてバスローブを脱がせた。
一糸纏わぬ少女の体に、そのまま純白の着物を羽織らせる。
残った子供達はその様子を何も言わず、ただ静かに見守っていた。
(続)
少女と面会した会員達は、年齢も職業も性格もバラバラだった。
共通するのは、裕福な大人の男性。
しかし誰と会っても、その少女の状態に変化は無かった。
だが、少女の評判は上々だった。
やがて少女を『お気に入り』登録した会員達が待ち侘びた、少女の『初夜権』をかけたオークションが『黒薔薇の遊宴』倶楽部のHPで開催された。
入札者は、多かった。
ダイヤモンド会員だけでなく、プラチナ会員やゴールド会員の中にも手数料を支払って参加する者達がいた。
予想以上に額は上がっていき、最後の方は接戦となった。
そして落札者が決まった後は、『蕾初めの儀式』と銘打った、倶楽部会員達の罪悪感や背徳感を薄くさせる呼び名の準備が、淡々と進められた。
HPには落札した会員のための期間限定掲示板が設けられ、お祝いコメントが続々と寄せられた。
落札できなかった会員の中には、羨望や誹謗中傷のコメントを書き込みする者もいたが、不適切なコメントは倶楽部側がチェックし削除した。
HP内で『お友だち』登録している会員達からは、落札会員のHN宛で御祝儀や贈答品が贈られた。
それらは『倉庫』に送られ、『蕾初めの儀式』の日まで倶楽部側が保管する。そして当日、熨斗で飾られた品々が落札会員の宿泊する客室に用意される。
その少女には、落札会員から『蕾初め』の日に着用する衣装が贈られた。
『蕾初めの儀式』では、落札された子供は必ず純白の衣装を着用することが、この『黒薔薇の遊宴』倶楽部の決め事となっている。
その衣装は全身純白でさえあれば、どのようなタイプでも好みは問われない。
少女に贈られたのは、純白の着物だった。同色の帯と足袋、草履も同梱されていた。
贈られてきた箱の中身を見た子供達は、皆一様に表情が曇る。
それは『倉庫』の先住者である子供達全てが、何を意味する色なのか理解しているから。誰一人、決して避けることが許されなかった通過儀礼なのだ。
『儀式』の当日までに、倶楽部側が贈られた純白の衣装を落札された子供に試着させて、サイズ調整を済ませておく。
「…うん、大丈夫そうね」
全身を映す大きな鏡にはルーシーと、贈られた純白の着物一式を身に纏った少女が立っていた。
「はぁい、もう良いわよぉ。ドールちゃん、お着替えしましょうねぇ」
ルーシーが少女の体から着物を脱がせて、パジャマに着替えさせる。
その後、着物を着物用ハンガーに掛けた。
「…昔は…この色の花嫁衣装着るの憧れてたのにぃ…。此処に来てからはもう、あんまり好きじゃなくなっちゃったわぁ…」
ルーシーが純白の着物を眺めながら、溜め息を吐いた。
ーある日、ユキが少女を自分の部屋に連れて来た。
少女の体を抱えて机の上に座らせ、自分はキャスター付の椅子に座ると、少女と向かい合う。
「…ちょっとゴメンな。痛かったら、ちゃんと抵抗しろよ?」
ユキが少女の左手を取ると、手の甲をつねった。
始めは軽く、だんだん強くつねる。
普通ならば咄嗟に手を引っ込めるなり、声や表情に痛がる言動が表れるものだろう。
だが少女は、つねられても無反応だ。
つねるのを止めて、ユキは少女の手の甲を擦った。
「う~ん?」
ユキが、自分の右手の甲をつねる。
「いってぇ!」
ユキは痛みを分散させるように、パタパタと右手を振った。
今度は、ユキが自分の両頬を摘まんで引っ張る。
「…いでえ」
ユキは眉間に皺を寄せる。そのポーズのまま、少女に話しかける。
「…いいか?次はコレと同じことするぞ?イヤだったら俺の手を叩いてイイからな?」
ユキは少女の両頬を摘まんで、引っ張る。
しかし、少女の表情には少しの変化も無い。
「お前…、痛くないのかよ?」
「……」
ユキは少女の瞳を見詰める。
少女から何らかの感情や反応を微量でも探ろうとしたが、何も発見することはできなかった。
「…ゴメンな」
ユキは手を離すと、感じていないかもしれない痛みを和らげるように少女の両頬を擦った。
「…ま、その方がお前のためには良いのかもな」
ユキが机に置かれた卓上カレンダーを見る。
「…明日だな」
ユキは、少女の頭を優しく撫でた。
* * *
翌日、とうとう少女の『蕾初めの儀式』当日となった。
その少女は、お昼過ぎに起こされた。
ルーシーに連れられてダイニングルームへ行くと、他の子供達が先にランチを始めているところだった。
この日は早瀬が休みのため、別の男性従業員が給士していた。
ランチの時間帯は、ダイニングルームに一番多く子供達が集まる。
倶楽部会員が夜に予約を入れることが多いからだ。
此処では、子供達が健全な朝を迎えることが当たり前ではなかった。
少女が此処の子供達と生活するようになってから、一ヶ月以上は経っていたので皆、少女の状態や接し方にも慣れてきていた。
だから生活する毎日で、少女が自分でできないことは皆で手助けはしたが、最近は会ったばかりの時ほど少女を特別視することはなくなっていた。
しかし今日に限っては、少女に視線が集中していた。
その少女以外の子供達は皆、今日が少女にとって何の日かを把握していたからだ。
少女は普段と変わりなく、与えられたランチの料理を完食した。
ランチが終わると各々、会員との予約時間が迫っている子供達から順番に、ルーシーがヘアメイクを進めていった。
その間、少女はリビングルームの自分のベッドに座り、パジャマ姿のまま大人しく過ごしていた。
準備を済ませた子供達は、迎えに来た男性従業員に連れられて、リビングルームの外に次々と出て行った。
その子供達の中には出て行く時に、気になるのか最後まで少女に視線を残していく子もいた。
夕方になり陽も落ちてくると、ディナーの料理が運ばれてきた。
会員の予約時間は深夜近くになることもあり、会員と一緒に食事する子供以外は、『お仕事』の子もお休みの子もダイニングルームに集まり、残った子供達で食事する。
少女を落札した会員は、すでに保養所の客室にチェックインしていた。
ディナーは別々に済ませた後、夜10時頃に少女と落札会員が会う約束だ。
ディナーのダイニングテーブルには、ルーシーと数人の子供しか居なかった。少女も加わり、一緒に食べる。
そこにはユキの姿もあった。ユキも少女と同じ時間に予約が入っていた。すでにヘアメイクを済ませ、派手な刺繍が施された赤いチャイナドレスを着ている。
ユキは会員と遅めのディナーをするため、食事はせずにミルクティーだけを飲んでいた。
ランチの時はまだ会話もあったが、ディナーではユキも他の子供達も、ルーシーさえもほとんど無言だった。
少女は、ディナーの料理も完食した。
ディナーを終えると、少女を入浴させる。
少女が入浴する時は、いつも年上の女の子達が交代で一緒に入浴し、髪や体を洗うのを手伝っていた。
そのため、少女も少しずつ自分で体を洗えるようになってきていた。
今日は少女の準備を手伝うため、女の子では一番年上の柚子がお休みをもらっていた。
柚子が少女と一緒に入浴し、頭から足の爪先まで全身を丁寧に洗う。
全て洗い清潔になった少女にバスローブを着せ、柚子がリビングルームへ連れて戻る。
ルーシーが少女をドレッサーの椅子に座らせて、少女の肌を基礎化粧品で整え、長い髪を乾かした。
続いて少女の顔に薄化粧を施し、髪も真っ直ぐにスタイリングしていく。
ヘアメイクが一通り出来上がると、ルーシーは少女を立たせてバスローブを脱がせた。
一糸纏わぬ少女の体に、そのまま純白の着物を羽織らせる。
残った子供達はその様子を何も言わず、ただ静かに見守っていた。
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