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マーシャル沖海戦
第13話 新型艦の懸念
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「日本海軍はマル三計画において二隻の戦艦とそれに二隻の空母の建造を企図しています。もし、これら四隻がすでに戦力化されているようなことがあれば、状況は大きく変わってきます」
レイトン中佐の懸念を聞いたキンメル長官は、脳内で米日の戦力を比較する。
現状、太平洋正面における双方の戦艦の数については、こちらが八隻に対して日本のそれは六隻。
だが、もしマル三計画で建造された戦艦がすでに戦列に加わっていたとするならば、その数は八対八となり、太平洋艦隊の数的アドバンテージは霧散する。
むしろ、日本側のほうが質的アドバンテージを得た分だけ有利となるだろう。
もちろん、これは仮定の話であって、日本の新型戦艦がすでに戦力化されているという確証は無い。
だが、最悪を考慮し、これに備えておくのは指揮官の務めだ。
敵が六隻の前提で計画したのが実際には八隻でした、といった状況はシャレにならないにも程がある。
それに、米海軍もまたすでに「ノースカロライナ」と「ワシントン」の二隻の新型戦艦を就役させているのだ。
米海軍で出来たことが、一方の日本海軍に出来ないと考えるのは楽観が過ぎる。
「日本の新型戦艦はすでに就役しているという前提で考えたほうが無難だな。そこで、だ。もし仮に日本の新型戦艦が完成していたとして、その戦力はどの程度のものか分かるか」
日本の新型戦艦については、情報部門も正確な諸元を把握するには至っておらず、憶測交じりの数字が飛び交っていた。
中には二〇インチ砲を装備しているのではないかという意見もあったが、キンメル長官もさすがにこれは有り得ないだろうと思っている。
「日本の議会に通告された数字を信じるのであれば、新型戦艦一隻当たりの建造費は九八〇〇万円となっています。日本の物価等を考慮した場合、その排水量は三万トン台後半から四万トン台前半に達するものと思われます。それと速力、それに主砲口径とその門数については、正直なところまったく分かりません」
戦艦は攻撃力や防御力、それに機動力のいずれに重点を置くかによってその性格がずいぶんと変わってくる。
戦艦については「金剛」型という例外を除き、日米ともに攻撃力を重視しているが、残る機動力と防御力に関しては日本海軍は中速中防御、米海軍のほうは低速重防御とその志向が分かれている。
その傾向が続くとみた場合、日本の新型戦艦は一六インチ砲を九門乃至一〇門程度を備えていると考えてよかった。
速度性能もまた、それなりのものを有しているだろう。
いずれにせよ、新型戦艦である以上は旧式の「長門」型戦艦を上回る戦力を持つことは間違いない。
場合によっては「ノースカロライナ」級を凌ぐ可能性さえあった。
キンメル長官は、いまさらながらにレイトン中佐の懸念が理解できた。
だが、それはそれとして、キンメル長官としては問題を解決する方策を考えなければならない。
だから、戦艦の劣勢を覆すことができる戦力にその注意を向ける。
日米の戦争が始まって、にわかに脚光を浴びている艦種に。
「マル三計画で建造されているという空母について分かっていることはあるか」
五隻の空母を基幹とする日本の機動部隊は現在、フィリピン戦線で猛威を振るっている。
そうなると、太平洋艦隊がマーシャルに進攻した場合、それに立ちはだかるのは二隻の新型空母となるはずだ。
「マル三計画で建造されている空母については、その予算が一隻あたり八一〇〇万円となっています。その建造費から推測すれば、おそらくは二万トンから二万五〇〇〇トンといったあたりでしょう」
排水量で言えば、日本の新型空母は「ヨークタウン」級空母と同等かあるいはそれ以上のボリュームを持っている。
搭載機数については、はっきりしたことは分からないが、それでも決して少なくはないだろう。
あるいは「ヨークタウン」級や「レキシントン」級に匹敵するだけのものを持っているかもしれない。
ただ、空母とその艦上機は数がものを言う兵器だ。
そして、日本側が二隻なのに対し、太平洋艦隊には「エンタープライズ」と「レキシントン」それに「サラトガ」の三隻がある。
数で言えば相手の五割増しだ。
そう考えた時にはキンメル長官の脳内で勝利の方程式が完成していた。
空母の数を考えれば、こと洋上航空戦についてはこちらが圧倒的に有利だ。
そのストロングポイントを徹底的に活用する。
まずは急降下爆撃機で敵の空母を叩き、雷撃機については戦艦を狙わせるのだ。
「エンタープライズ」と「レキシントン」それに「サラトガ」には合わせて一〇〇機を超えるSBDドーントレス急降下爆撃機が配備されている。
二隻の空母を沈めるには、十分過ぎるほどの数だ。
一方、TBDデバステーター雷撃機のほうはSBDの半分程度の数しか無いが、それでも複数の戦艦を撃破することは容易だろう。
そして、半身不随となった日本の戦艦部隊に対し、こちらの戦艦部隊が殴り込みをかけてこれにとどめを刺す。
(いずれにせよ、鍵を握るのは空母だな)
大艦巨砲主義を信奉するキンメル長官としては、正面からの堂々たる砲撃戦で日本の戦艦を仕留めたいというのが本音だ。
しかし、状況がそれを許さない。
もし、日本海軍が秘密裏に新型戦艦を戦列に加えていたとしたら、いかに太平洋艦隊の戦艦部隊が精強だとはいえども相応の損害を覚悟しなければならない。
なにより、戦いはマーシャルだけに終わらない。
フィリピンで孤軍奮闘する友軍を救援するためには、マーシャル以外にもトラックやパラオといった日本軍の要衝を次々に撃ち破っていく必要がある。
こういった事情から、キンメル長官としてはたとえ駆逐艦であろうとも可能な限りこれを傷つけたくなかった。
(まずは太平洋正面を守る日本の戦艦部隊を叩く。もし連中が出てこないようであれば、そのときはマーシャルを占領すればいい)
そう結論づけた時には、あれほど陰鬱だった気分は嘘のように雲散霧消していた。
レイトン中佐の懸念を聞いたキンメル長官は、脳内で米日の戦力を比較する。
現状、太平洋正面における双方の戦艦の数については、こちらが八隻に対して日本のそれは六隻。
だが、もしマル三計画で建造された戦艦がすでに戦列に加わっていたとするならば、その数は八対八となり、太平洋艦隊の数的アドバンテージは霧散する。
むしろ、日本側のほうが質的アドバンテージを得た分だけ有利となるだろう。
もちろん、これは仮定の話であって、日本の新型戦艦がすでに戦力化されているという確証は無い。
だが、最悪を考慮し、これに備えておくのは指揮官の務めだ。
敵が六隻の前提で計画したのが実際には八隻でした、といった状況はシャレにならないにも程がある。
それに、米海軍もまたすでに「ノースカロライナ」と「ワシントン」の二隻の新型戦艦を就役させているのだ。
米海軍で出来たことが、一方の日本海軍に出来ないと考えるのは楽観が過ぎる。
「日本の新型戦艦はすでに就役しているという前提で考えたほうが無難だな。そこで、だ。もし仮に日本の新型戦艦が完成していたとして、その戦力はどの程度のものか分かるか」
日本の新型戦艦については、情報部門も正確な諸元を把握するには至っておらず、憶測交じりの数字が飛び交っていた。
中には二〇インチ砲を装備しているのではないかという意見もあったが、キンメル長官もさすがにこれは有り得ないだろうと思っている。
「日本の議会に通告された数字を信じるのであれば、新型戦艦一隻当たりの建造費は九八〇〇万円となっています。日本の物価等を考慮した場合、その排水量は三万トン台後半から四万トン台前半に達するものと思われます。それと速力、それに主砲口径とその門数については、正直なところまったく分かりません」
戦艦は攻撃力や防御力、それに機動力のいずれに重点を置くかによってその性格がずいぶんと変わってくる。
戦艦については「金剛」型という例外を除き、日米ともに攻撃力を重視しているが、残る機動力と防御力に関しては日本海軍は中速中防御、米海軍のほうは低速重防御とその志向が分かれている。
その傾向が続くとみた場合、日本の新型戦艦は一六インチ砲を九門乃至一〇門程度を備えていると考えてよかった。
速度性能もまた、それなりのものを有しているだろう。
いずれにせよ、新型戦艦である以上は旧式の「長門」型戦艦を上回る戦力を持つことは間違いない。
場合によっては「ノースカロライナ」級を凌ぐ可能性さえあった。
キンメル長官は、いまさらながらにレイトン中佐の懸念が理解できた。
だが、それはそれとして、キンメル長官としては問題を解決する方策を考えなければならない。
だから、戦艦の劣勢を覆すことができる戦力にその注意を向ける。
日米の戦争が始まって、にわかに脚光を浴びている艦種に。
「マル三計画で建造されているという空母について分かっていることはあるか」
五隻の空母を基幹とする日本の機動部隊は現在、フィリピン戦線で猛威を振るっている。
そうなると、太平洋艦隊がマーシャルに進攻した場合、それに立ちはだかるのは二隻の新型空母となるはずだ。
「マル三計画で建造されている空母については、その予算が一隻あたり八一〇〇万円となっています。その建造費から推測すれば、おそらくは二万トンから二万五〇〇〇トンといったあたりでしょう」
排水量で言えば、日本の新型空母は「ヨークタウン」級空母と同等かあるいはそれ以上のボリュームを持っている。
搭載機数については、はっきりしたことは分からないが、それでも決して少なくはないだろう。
あるいは「ヨークタウン」級や「レキシントン」級に匹敵するだけのものを持っているかもしれない。
ただ、空母とその艦上機は数がものを言う兵器だ。
そして、日本側が二隻なのに対し、太平洋艦隊には「エンタープライズ」と「レキシントン」それに「サラトガ」の三隻がある。
数で言えば相手の五割増しだ。
そう考えた時にはキンメル長官の脳内で勝利の方程式が完成していた。
空母の数を考えれば、こと洋上航空戦についてはこちらが圧倒的に有利だ。
そのストロングポイントを徹底的に活用する。
まずは急降下爆撃機で敵の空母を叩き、雷撃機については戦艦を狙わせるのだ。
「エンタープライズ」と「レキシントン」それに「サラトガ」には合わせて一〇〇機を超えるSBDドーントレス急降下爆撃機が配備されている。
二隻の空母を沈めるには、十分過ぎるほどの数だ。
一方、TBDデバステーター雷撃機のほうはSBDの半分程度の数しか無いが、それでも複数の戦艦を撃破することは容易だろう。
そして、半身不随となった日本の戦艦部隊に対し、こちらの戦艦部隊が殴り込みをかけてこれにとどめを刺す。
(いずれにせよ、鍵を握るのは空母だな)
大艦巨砲主義を信奉するキンメル長官としては、正面からの堂々たる砲撃戦で日本の戦艦を仕留めたいというのが本音だ。
しかし、状況がそれを許さない。
もし、日本海軍が秘密裏に新型戦艦を戦列に加えていたとしたら、いかに太平洋艦隊の戦艦部隊が精強だとはいえども相応の損害を覚悟しなければならない。
なにより、戦いはマーシャルだけに終わらない。
フィリピンで孤軍奮闘する友軍を救援するためには、マーシャル以外にもトラックやパラオといった日本軍の要衝を次々に撃ち破っていく必要がある。
こういった事情から、キンメル長官としてはたとえ駆逐艦であろうとも可能な限りこれを傷つけたくなかった。
(まずは太平洋正面を守る日本の戦艦部隊を叩く。もし連中が出てこないようであれば、そのときはマーシャルを占領すればいい)
そう結論づけた時には、あれほど陰鬱だった気分は嘘のように雲散霧消していた。
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