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ミッドウェー海戦
第24話 二度目の洋上航空戦
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太平洋艦隊は連合艦隊の側背を突くことができる海域に潜んでいた。
さらに、ミッドウェー島を盾にでき、そのうえ戦況が不利な場合にはハワイへ避退することが容易なポジションでもあった。
「奇襲を仕掛けるには絶好の位置にも思えるが、しかしその分だけこちらもまたこれを予想することが容易だった。そういった意味では、米軍は我々に対して本気で伏撃ができると思い込んでいたのだろうな」
太平洋艦隊発見という索敵機からの第一報に、第一航空艦隊を指揮する南雲長官が苦笑する。
一大情報に慌てることもなく、悠然とした態度で続報を待っている。
一方で、南雲長官は「利根」それに「筑摩」に対して接触維持のための機体を速やかに準備するよう指示している。
初陣だったマーシャル沖海戦に比べると、その態度には余裕のようなものが感じられた。
「太平洋艦隊が発見された場所から考えて、米軍はかなり正確に我々の配置を知っていたものと考えられます。何の事前情報も無しに、このような位置取りはまず不可能です」
もともと、米軍は連合艦隊がミッドウェー島を狙っていることは承知していた。
日本側が事前予告をしていたのだから、それは当然のことだ。
しかし、いかほどの戦力で、さらにどのコースで同島に接近するかといった細かいことまでは知らなかったはずだ。
しかし、実際には米軍はMI作戦における攻撃発起点を、しかも極めて高い精度でこれを掴んでいた。
このことを指摘する吉岡航空乙参謀の見解を否定する者は、「赤城」艦橋には誰一人として居なかった。
「考えたくはありませんが、帝国海軍あるいは日本政府の上層部に間諜が紛れ込んでいるか、あるいは暗号が解読されているのでしょう。これからは、こちらの手の内がある程度相手に漏れているという前提で事に当たらないと、それこそ足元を救われかねません」
草鹿参謀長の指摘に、南雲長官がその表情に苦いものを浮かべながら首肯する。
インド洋海戦のときもそうだったが、今回もまた敵に待ち伏せされた。
しかも、ただの待ち伏せではなく、こちらの所在をあらかじめ知ったうえでのピンポイントによるそれだ。
帝国海軍の情報管理がいかに甘かったのかを自分たちは理解していなかった。
もっと言えば、情報や通信に対してあまりにも無頓着だった。
一航艦司令部員らがそのような反省を胸中に抱いた時、索敵機から続報が入ってくる。
「発見した敵は空母二隻を伴う。他に十数隻の巡洋艦それに駆逐艦。戦艦は見当たらず」
まごうことなき敵機動部隊だ。
南雲長官は航海参謀の雀部中佐に彼我の距離を尋ねる。
「約二〇〇浬です」
零戦はもちろん、九九艦爆や九七艦攻も十分に航続距離内だ。
当然のこととして、南雲長官は出撃命令を下そうとする。
機動部隊同士の戦いは、その展開が速い。
一分一秒が貴重だ。
だが、そこへ別の索敵機からの緊急電が飛び込んでくる。
「敵艦隊発見。二隻の空母のほか護衛艦艇多数」
これで発見された敵艦隊は二群、そして空母の数は四隻となった。
現在、米海軍が保有している正規空母は二隻の「ヨークタウン」級と「サラトガ」それに「ワスプ」と「レンジャー」の五隻だ。
このうち、「レンジャー」は大西洋にあることが分かっている。
つまり、米海軍は太平洋艦隊に配備されている空母をすべてこの戦域に投入、その全力をもって伏撃を狙っていたのだ。
それと、南雲長官は米海軍は正規空母以外にも複数の特設空母を擁している可能性があるとの事前情報を得ている。
しかし、機動部隊同士の戦いに脚が遅くて防御が脆弱な特設空母を投入してくるとはとても考えられなかった。
実際、帝国海軍の「春日丸」は艦隊戦に使われることはなく、もっぱら航空機輸送に従事していた。
同艦は今回の作戦では攻略部隊に随伴し、第六航空隊の零戦を輸送する任務にあたっている。
だから、南雲長官は発見された空母は正規空母で間違いないと判断していた。
「先に発見された機動部隊を甲一、後に発見されたそれを甲二と呼称する。一航艦は甲一、二航艦は甲二をその目標とする。攻撃隊は準備が完了次第、ただちに発進せよ」
南雲長官の命令に異を唱える者はいなかった。
誰もが納得の表情でそれぞれの役割を全うすべく動きはじめる。
その命令からほどなく、旗艦「赤城」が風上にその艦首を向ける。
そして、必要な合成風力を得るべく加速を開始する。
後続する「加賀」と「瑞鳳」それに「祥鳳」と「龍鳳」もまた「赤城」に続く。
真っ先に零戦が飛行甲板を蹴ってミッドウェーの空へと舞い上がっていく。
第一次攻撃隊は「赤城」と「加賀」からそれぞれ零戦が九機に九九艦爆が一八機、それに九七艦攻が九機。
「瑞鳳」と「祥鳳」それに「龍鳳」からそれぞれ零戦九機に九七艦攻が六機。
九九艦爆は二五番通常爆弾を、九七艦攻のほうは九一式航空魚雷をその腹に抱いている。
同じ頃、二航艦もまた五隻の空母から艦上機を次々に発進させていた。
旗艦「飛龍」それに「蒼龍」からそれぞれ零戦九機に九九艦爆が一八機、それに九七艦攻が九機。
「千歳」と「千代田」それに「瑞穂」からそれぞれ零戦九機に九七艦攻が六機。
こちらもまた、一航艦と同様に九九艦爆は二五番通常爆弾を、九七艦攻のほうは九一式航空魚雷を搭載していた。
一航艦と二航艦から発艦したそれぞれ一一七機からなる攻撃隊は短時間で空中集合を終え、そして米機動部隊を目指すべくその機首を東へと向ける。
昨年のマーシャル沖海戦に続く、日米の機動部隊同士の戦い。
その第二ラウンドが始まったのだ。
さらに、ミッドウェー島を盾にでき、そのうえ戦況が不利な場合にはハワイへ避退することが容易なポジションでもあった。
「奇襲を仕掛けるには絶好の位置にも思えるが、しかしその分だけこちらもまたこれを予想することが容易だった。そういった意味では、米軍は我々に対して本気で伏撃ができると思い込んでいたのだろうな」
太平洋艦隊発見という索敵機からの第一報に、第一航空艦隊を指揮する南雲長官が苦笑する。
一大情報に慌てることもなく、悠然とした態度で続報を待っている。
一方で、南雲長官は「利根」それに「筑摩」に対して接触維持のための機体を速やかに準備するよう指示している。
初陣だったマーシャル沖海戦に比べると、その態度には余裕のようなものが感じられた。
「太平洋艦隊が発見された場所から考えて、米軍はかなり正確に我々の配置を知っていたものと考えられます。何の事前情報も無しに、このような位置取りはまず不可能です」
もともと、米軍は連合艦隊がミッドウェー島を狙っていることは承知していた。
日本側が事前予告をしていたのだから、それは当然のことだ。
しかし、いかほどの戦力で、さらにどのコースで同島に接近するかといった細かいことまでは知らなかったはずだ。
しかし、実際には米軍はMI作戦における攻撃発起点を、しかも極めて高い精度でこれを掴んでいた。
このことを指摘する吉岡航空乙参謀の見解を否定する者は、「赤城」艦橋には誰一人として居なかった。
「考えたくはありませんが、帝国海軍あるいは日本政府の上層部に間諜が紛れ込んでいるか、あるいは暗号が解読されているのでしょう。これからは、こちらの手の内がある程度相手に漏れているという前提で事に当たらないと、それこそ足元を救われかねません」
草鹿参謀長の指摘に、南雲長官がその表情に苦いものを浮かべながら首肯する。
インド洋海戦のときもそうだったが、今回もまた敵に待ち伏せされた。
しかも、ただの待ち伏せではなく、こちらの所在をあらかじめ知ったうえでのピンポイントによるそれだ。
帝国海軍の情報管理がいかに甘かったのかを自分たちは理解していなかった。
もっと言えば、情報や通信に対してあまりにも無頓着だった。
一航艦司令部員らがそのような反省を胸中に抱いた時、索敵機から続報が入ってくる。
「発見した敵は空母二隻を伴う。他に十数隻の巡洋艦それに駆逐艦。戦艦は見当たらず」
まごうことなき敵機動部隊だ。
南雲長官は航海参謀の雀部中佐に彼我の距離を尋ねる。
「約二〇〇浬です」
零戦はもちろん、九九艦爆や九七艦攻も十分に航続距離内だ。
当然のこととして、南雲長官は出撃命令を下そうとする。
機動部隊同士の戦いは、その展開が速い。
一分一秒が貴重だ。
だが、そこへ別の索敵機からの緊急電が飛び込んでくる。
「敵艦隊発見。二隻の空母のほか護衛艦艇多数」
これで発見された敵艦隊は二群、そして空母の数は四隻となった。
現在、米海軍が保有している正規空母は二隻の「ヨークタウン」級と「サラトガ」それに「ワスプ」と「レンジャー」の五隻だ。
このうち、「レンジャー」は大西洋にあることが分かっている。
つまり、米海軍は太平洋艦隊に配備されている空母をすべてこの戦域に投入、その全力をもって伏撃を狙っていたのだ。
それと、南雲長官は米海軍は正規空母以外にも複数の特設空母を擁している可能性があるとの事前情報を得ている。
しかし、機動部隊同士の戦いに脚が遅くて防御が脆弱な特設空母を投入してくるとはとても考えられなかった。
実際、帝国海軍の「春日丸」は艦隊戦に使われることはなく、もっぱら航空機輸送に従事していた。
同艦は今回の作戦では攻略部隊に随伴し、第六航空隊の零戦を輸送する任務にあたっている。
だから、南雲長官は発見された空母は正規空母で間違いないと判断していた。
「先に発見された機動部隊を甲一、後に発見されたそれを甲二と呼称する。一航艦は甲一、二航艦は甲二をその目標とする。攻撃隊は準備が完了次第、ただちに発進せよ」
南雲長官の命令に異を唱える者はいなかった。
誰もが納得の表情でそれぞれの役割を全うすべく動きはじめる。
その命令からほどなく、旗艦「赤城」が風上にその艦首を向ける。
そして、必要な合成風力を得るべく加速を開始する。
後続する「加賀」と「瑞鳳」それに「祥鳳」と「龍鳳」もまた「赤城」に続く。
真っ先に零戦が飛行甲板を蹴ってミッドウェーの空へと舞い上がっていく。
第一次攻撃隊は「赤城」と「加賀」からそれぞれ零戦が九機に九九艦爆が一八機、それに九七艦攻が九機。
「瑞鳳」と「祥鳳」それに「龍鳳」からそれぞれ零戦九機に九七艦攻が六機。
九九艦爆は二五番通常爆弾を、九七艦攻のほうは九一式航空魚雷をその腹に抱いている。
同じ頃、二航艦もまた五隻の空母から艦上機を次々に発進させていた。
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「千歳」と「千代田」それに「瑞穂」からそれぞれ零戦九機に九七艦攻が六機。
こちらもまた、一航艦と同様に九九艦爆は二五番通常爆弾を、九七艦攻のほうは九一式航空魚雷を搭載していた。
一航艦と二航艦から発艦したそれぞれ一一七機からなる攻撃隊は短時間で空中集合を終え、そして米機動部隊を目指すべくその機首を東へと向ける。
昨年のマーシャル沖海戦に続く、日米の機動部隊同士の戦い。
その第二ラウンドが始まったのだ。
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