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第一章 名無しのゼロプレイヤー
☆★☆カレイドスコープ社からのアンケート調査にご協力ください☆★☆
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Q1 サービス開始からもうすぐ20周年を迎える共振型ネットサービス『バロックミラーズ』について、あなたの自由な意見を聞かせてください。
「人生だね。あっちが本物でこっちが偽物だ」
「難しい質問だわ。無理に答えるなら、あって当然のものかしら。酸素みたいな?」
「変革。文字や通過のように、人類を新しいステージに導いた発明さ」
「ノーコメント」
「私のような年寄りにとっては、孤独を忘れさせてくれる神様みたいな存在だよ」
「どうだろう。良い面もあるが、悪い面もある。月並みな答えだけど」
「人類の管理者だ! みんな騙されてる!」
「ぶっちゃけ、すげぇよな。最初はただのゲームだと思ってたけど、ほら、あれなんつったっけ。ジッタイ……」
「ジッポジ――実体保持事項がなけりゃ最高だよ。あれのせいで勉強したり運動したりしなきゃならない。めんどくさいな、ホント」
「長時間プレイするためには、現実で努力してるって評価を受けなければならない。色々悪く言われるけど、僕自身は世界をより良くしたいっていう、運営者たちの気持ちを感じるね」
「バーチャルで楽しみたきゃ、リアルを蔑ろにしてはいかん……みたいな? 説教くさくて嫌ってコト」
「自殺者減少、肥満者減少、学力上昇、失職率改善……与えた影響は計り知れない」
「うるせー」
「俺の親父は十年前まで芸能関係だったんだけどさ、当時は仕事が一週間単位で減っていってるって嘆いてたよ。あんた、テレビ見てる? 今じゃニュースとドキュメンタリー、動物番組くらいだぜ」
「鏡の中なら何にだってなれる。自分の努力次第で」
「現実は終わったという人も多いですね。自己実現も娯楽も仮想世界、現実は死なないように肉体を維持するだけだ、と」
「世界中の人間と普通に会話ができるって凄い。共通言語ってどういうシステムなの?」
「一番痛手を被ったのはアンダーグラウンドだろう。麻薬も性風俗もアレの前にはクソのついた便所紙。必死であちら側に活路を見出そうとしたマフィアなんかもいたらしいが、果たしてどれほどが……」
「ぼくはね、ナイトをめざしてるんだ。まだ子どもだからあんまりミラー・インできなくて、成長できてないけど……はやく十二さいにならないかなあ」
「彼らは無限に広がり続ける世界を用意しただけ。新世界だよ。そこで何をしろとは言わない。決めるのは一人一人だ」
「今月、ジッポジの評価悪い……学校サボるんじゃなかった」
「人類はあの悪人共――カレイドスコープに支配されている。奴らは悪魔だ。世界中の死刑囚を使って魔術的実験を繰り返している」
「新しいデバイス欲しいんだけどぉ、パパが買ってくれないぃ」
「共振型ネットってものの原理がわからん。あれもカレイドスコープの特許だろ? 接続用デバイスだってカレイドの傘下企業が作ってるわけだしなあ。謎の技術、謎の装置を使って謎の世界に行けるってのは、やっぱり怖いよなあ。やめられないけどさ」
「あちらに鏡はない。だから自分の顔は見えない」
「好きに楽しめる世界で、汚い仕事ばっかりして必死で生きてる連中いるじゃん? ほら、フライだよフライ――蠅って意味だっけ。あんな連中にはなりたくないね。あたしは一生キレイな蝶々、バタフライだから」
「地獄だよ。楽しくなんかない。現実世界で仕事がないから、あっちで金持ちがケツからひり出したクソにたかってる。何がバタフライだクソ食らえ」
「ベターフライ様々さ。おかげで飯が食えてる」
「結局さ、最初は楽しい新世界だったんだろうけど、三年も経てば現実と同じになっちゃうんだ。勝者と敗者。持てる者と、持たざる者」
「名前だ」
「名前が大切だよ」
「どんな名前を名乗り、そこにどんな意味を持たせるか。鏡の中じゃ名刺みたいなもの」
「あれ面白いよね。初めて会った人には必ず言うじゃない? 自分の名前は~名前の意味は~って」
「名付けがしっかりしてないやつは最初から信用してもらえない。後付けでもいいから、一生懸命考えないと」
「意味のない鏡像は影すらもたない」
「哲学的な世界さ、あそこは」
「っくしゅっ! え? 何だって?」
…
……
………
Q7 最後によろしければ、あなたの名前とその意味を聞かせてください。
「俺は」
「僕はね」
「私はですね」
「あたしはぁ」
「わ、わたしは」
「儂はのう」
「ウチは~」
「オレはさ」
「――ボクはハンガァ。名前の意味は、ない」
「人生だね。あっちが本物でこっちが偽物だ」
「難しい質問だわ。無理に答えるなら、あって当然のものかしら。酸素みたいな?」
「変革。文字や通過のように、人類を新しいステージに導いた発明さ」
「ノーコメント」
「私のような年寄りにとっては、孤独を忘れさせてくれる神様みたいな存在だよ」
「どうだろう。良い面もあるが、悪い面もある。月並みな答えだけど」
「人類の管理者だ! みんな騙されてる!」
「ぶっちゃけ、すげぇよな。最初はただのゲームだと思ってたけど、ほら、あれなんつったっけ。ジッタイ……」
「ジッポジ――実体保持事項がなけりゃ最高だよ。あれのせいで勉強したり運動したりしなきゃならない。めんどくさいな、ホント」
「長時間プレイするためには、現実で努力してるって評価を受けなければならない。色々悪く言われるけど、僕自身は世界をより良くしたいっていう、運営者たちの気持ちを感じるね」
「バーチャルで楽しみたきゃ、リアルを蔑ろにしてはいかん……みたいな? 説教くさくて嫌ってコト」
「自殺者減少、肥満者減少、学力上昇、失職率改善……与えた影響は計り知れない」
「うるせー」
「俺の親父は十年前まで芸能関係だったんだけどさ、当時は仕事が一週間単位で減っていってるって嘆いてたよ。あんた、テレビ見てる? 今じゃニュースとドキュメンタリー、動物番組くらいだぜ」
「鏡の中なら何にだってなれる。自分の努力次第で」
「現実は終わったという人も多いですね。自己実現も娯楽も仮想世界、現実は死なないように肉体を維持するだけだ、と」
「世界中の人間と普通に会話ができるって凄い。共通言語ってどういうシステムなの?」
「一番痛手を被ったのはアンダーグラウンドだろう。麻薬も性風俗もアレの前にはクソのついた便所紙。必死であちら側に活路を見出そうとしたマフィアなんかもいたらしいが、果たしてどれほどが……」
「ぼくはね、ナイトをめざしてるんだ。まだ子どもだからあんまりミラー・インできなくて、成長できてないけど……はやく十二さいにならないかなあ」
「彼らは無限に広がり続ける世界を用意しただけ。新世界だよ。そこで何をしろとは言わない。決めるのは一人一人だ」
「今月、ジッポジの評価悪い……学校サボるんじゃなかった」
「人類はあの悪人共――カレイドスコープに支配されている。奴らは悪魔だ。世界中の死刑囚を使って魔術的実験を繰り返している」
「新しいデバイス欲しいんだけどぉ、パパが買ってくれないぃ」
「共振型ネットってものの原理がわからん。あれもカレイドスコープの特許だろ? 接続用デバイスだってカレイドの傘下企業が作ってるわけだしなあ。謎の技術、謎の装置を使って謎の世界に行けるってのは、やっぱり怖いよなあ。やめられないけどさ」
「あちらに鏡はない。だから自分の顔は見えない」
「好きに楽しめる世界で、汚い仕事ばっかりして必死で生きてる連中いるじゃん? ほら、フライだよフライ――蠅って意味だっけ。あんな連中にはなりたくないね。あたしは一生キレイな蝶々、バタフライだから」
「地獄だよ。楽しくなんかない。現実世界で仕事がないから、あっちで金持ちがケツからひり出したクソにたかってる。何がバタフライだクソ食らえ」
「ベターフライ様々さ。おかげで飯が食えてる」
「結局さ、最初は楽しい新世界だったんだろうけど、三年も経てば現実と同じになっちゃうんだ。勝者と敗者。持てる者と、持たざる者」
「名前だ」
「名前が大切だよ」
「どんな名前を名乗り、そこにどんな意味を持たせるか。鏡の中じゃ名刺みたいなもの」
「あれ面白いよね。初めて会った人には必ず言うじゃない? 自分の名前は~名前の意味は~って」
「名付けがしっかりしてないやつは最初から信用してもらえない。後付けでもいいから、一生懸命考えないと」
「意味のない鏡像は影すらもたない」
「哲学的な世界さ、あそこは」
「っくしゅっ! え? 何だって?」
…
……
………
Q7 最後によろしければ、あなたの名前とその意味を聞かせてください。
「俺は」
「僕はね」
「私はですね」
「あたしはぁ」
「わ、わたしは」
「儂はのう」
「ウチは~」
「オレはさ」
「――ボクはハンガァ。名前の意味は、ない」
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