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一章
水晶割って気まずくなりたかった
しおりを挟む三日経ち、ついに魔力を測ることになった。
両親に代わってリアムが同席してくれるらしい。
「僕、魔力測定って教会に出向いてやるものだと思っていました」
「教会で測るのが普通だが、のっぴきならない事情の時は家に呼ぶことが多いな」
「の……え?」
え? リッチだから聖職者をわざわざ家に呼ぶんだと思ってたけど、俺の魔力ってそんなにヤバい事情が込み入ったものなのか?
ちょっと不安になりリアムを見上げると「え? どうした?」みたいな雰囲気で視線を返され、お互い無言のまま数秒過ぎた。
義兄! 義弟が不安になってるんだぞ!!
真顔の美青年と見つめ合う謎の空間に先に耐えきれなくなった俺が目を伏せる。
するとリアムはちょっと慌てたように俺の頭を撫で始めた。
「ああ、いや、悪い意味ではないよ。平民から魔力持ちが出るのは珍しいから、結果を見て口さがない者に何か言われるかもしれないだろう」
珍しいんだ! 知らなかった。
そりゃあ貴族が引き取るよな。伯爵位を持つ家が手をあげてくれたのはかなり幸運だったのかも。良い意味で、低すぎず高すぎずっていうイメージが俺の中である。
もしもっと上の位の家に引き取られていたら怖すぎて脱走していたかもしれない。
「そうなんですね! 僕、気づいた時には魔法が使えちゃってたから……。そのことで何かやってしまったのかと」
気づいたらも何も、めっちゃ使おうと思って使っていたが嘘も方便だ。この魔力は自分の人生と伯爵家への恩のために使うから許して欲しい。
「きっとシャノンには天賦の才があるんだろう。怖いことはしないから、不安にならなくていい」
優しく頭を撫でられ不安な気持ちがしぼむ。ちらりとリアムの顔を上目で見ると相変わらずの「無」だったが、どことなく優しい目元をしていて思わず頬が緩んだ。
「はいっ、兄上が傍にいてくれたらきっと大丈夫です!」
しばらくして司祭様が到着した。挨拶を交わし、早速魔力を測る。
大きめの水晶を目の前に出され、俺はちょっと興奮していた。すっごいそれっぽい!
「魔力の流し方はもうお分かりとのことですので、こちらの水晶にゆっくり魔力を流していただけますか?」
「はいっ」
ドキドキしながら水晶に手を翳す。
俺の魔力量が無限とかで、水晶割っちゃったらどうしよう!! と内心妄想を繰り広げていたがそんなことはなく、普通に「はい、もう大丈夫です」と言われ手を離した。
「これは……」
面白そうに水晶を見る司祭様をちょっと残念な気持ちで見ていると、突然リアムにぐっと腰を引かれ驚いて顔を上げた。
リアムは小声で「大丈夫だ」と囁く。俺がさっきビビっていたから励ましてくれているのだろうか。良い奴だ。
しかし他人にここまで密着された経験がない俺は気恥ずかしさメーターがぐんぐん上がり、頬が熱くなっていく。いや、仕方ないだろ!!
「シャノン様、結果をお伝えしても?」
「ひっ、ひゃい! お願いします!」
魔力測定で頬を赤くして吃る俺はどう考えてもおかしいと思うけど、司祭様はガンスルーを決めてくれた。
目の前で兄弟が急にいちゃつき始めたら、俺だったら絶対「え?」って顔をしてしまう。さすが聖職者だ。俺は聖職者にはなれない。
「シャノン様も複数属性をお持ちです。水・土、かなり微量ですが火もあります。一番顕著なのは闇属性ですね。魔力量はかなり多いようですが、数値化できるものではございませんのでご自身の感覚で把握していただく必要が……」
闇!?!!
闇!!!!!!!
あ、悪役っぽい!!!
口元がニヤけてしまいそうになる。話を聞きながら、頬の内側を噛んで耐える。
「……それと、貴方様には精霊の加護がついているようです。ご本人様が意識しないと精霊が姿を現すことはありませんので、こちらもご自身で顕在させる必要があります」
「精霊?」
「はい、とても珍しいことですが」
精霊……シャノンにそんな設定あっただろうか。
伝えることはそれで全てらしく、俺がぽかんとしてる間にもリアムと司祭様が会話を交わし、やがて司祭様はお帰りになった。
精霊……精霊……と頭で反芻していると、リアムと視線が交差する。
「シャノンも複数属性持ちなのか。これからが楽しみだな」
「もってことは……兄上もですか?」
「俺は火と風が元からあった属性で、後に光も使えるようになった」
「光!!!!」
主人公格の代名詞じゃないか!!!
「光って……兄上、すごいです!」
「ん? たしかに光も珍しいと言われているが、シャノン、なぜそんな他人事なんだ。君の闇も珍しい」
精霊の衝撃で頭からすっぽり抜けていたけど、そういえば俺には闇属性があるらしいんだった。
……闇と聞くとあんまり良いイメージが浮かばないが、どうなんだろう。
「兄上……あの、闇属性って悪いものなのでしょうか?」
「悪い? いや、属性のひとつなだけで良いも悪いも無いと思う。光同様珍しいからあまり研究の進んでいない分野ではあるが……。どうして?」
「いえっ! ええと、闇ってちょっと暗いイメージがあったので……。えへへ、でも兄上も珍しい属性をお持ちだなんて、他でもない兄上とお揃いで嬉しいです!」
不思議そうなリアムに慌てて言い訳を並べると、眉に皺を寄せてまた心臓を押さえていた。この人はこの若さで心臓病でも患っているのだろうか。
でもそうか、悪役みたいとかは完全に偏見っぽいな。
ひとりでに納得していると、ふいに足元で何か動いた気がした。
そこに視線を向けるが何もなく、首を傾げる。
「シャノン、どうした?」
「……何でもありません、気のせいだったみたいです」
「そうか。……魔力測定はそこそこ魔力を消費するから、疲れたろう。菓子でも持ってこさせよう」
リアムはベルを鳴らすついでと言わんばかりに再度俺の腰を引き寄せ、そのまま頭を撫でられた。
……えっ、なんか、急に距離感バグってない!?
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