義兄のものをなんでも欲しがる義弟に転生したので清く正しく媚びていくことにしようと思う

縫(ぬい)

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二章

嫉妬ではない、嫉妬ではないですよ

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 マシュに課題を与えられてから三日後、ついに解決策を思いついた俺は小躍りしていた。

(全属性の魔力を込めて、魔力を感知した瞬間それを相殺させるよう術を組めばいい! 撃たれた魔法を消すには同属性の魔力をぶつけるのが一般的だからね!)

 てっきり精神魔法だけ弾くように組み込んだり高等な魔法かなんかであれこれするのかと思い込んで魔法書も読み漁っていたけど、思ったより単純な話だった。

 精神魔法は大きな括りとしては水属性の魔法のひとつだ。
 治癒魔法も水属性なのを考えると分かりやすいと思う。光魔法の治癒は欠損を蘇らせたり荒唐無稽なことをしてのけるが、水属性の治癒はあくまで本人の血流に干渉したり自然治癒力を活性化させて治るまでの速度を上げる魔法である。一瞬で治るわけじゃない。
 一方精神魔法は他人の神経を弄る。治癒魔法よりも綿密な体内の操作が必要になるため、習得している人がかなり少ないのだ。
 そもそも犯罪に使われやすい魔法なので習得が禁止されている国も多い。うちの国は習得が禁止というより、精神魔法のことが書かれている魔法書が禁書扱いされている。
 なので俺も水属性を持っているけど、精神魔法なんて使えない。ていうか仮にも使えても怖くて使えないだろ。

 だから精神魔法のみを抽出して弾くようなものは作れないけど、大きなカテゴリーとして水属性の魔法を感知させるようにすれば問題ない。

 いやあ、思考ロックって良くないなあ!

 そもそも最初からマシュも「撃たれた魔法を無力化する」って言ってたな。精神魔法に注目しすぎて難しく考えすぎた。全部なら、全属性さえ確保できるなら簡単だ。

(しかも俺には、五大属性……つまり全属性使える友人がいる!)

 持つべきものは友だ!! 明日学園でどうにか話してみよう。


 さてあとは肝心の魔道具部分だけど、俺は職人でもなんでもないから一から部品を作るなんて芸当はできない。

 魔道具……つまり、魔力を原動力にしている道具のこと。例えば電動自転車の電動部分が魔力に置き換えられたら、それは魔道具になる。

 例の店のお爺さんのところには行けてないけど、本を読んで魔道具の歴史を追ったりはしていた記憶からすると、思ったよりこの世界の魔道具は発達していないみたいだった。
 さっき言った電動自転車魔道具バージョンなんてものも勿論無いし、お爺さんのお店に置いてあったのも生活がちょっとだけ便利になる小物みたいなのが多かった。商売というよりは趣味が高じて作ったものみたいな。冷蔵庫とかドライヤーとか、そういうのって存在していない。

 もしかして、テディが俺なら出来るだろって言ったのってこういうこと?

(……いやいや、完成形は知ってても俺がいちから作れるわけないだろ!)

 というかそれはテディが俺が人生これが初めてじゃないってことを知ってるってことになる。誰にも言ったことないのに。
 精霊ならもしかしてそういうの気付くのかもしれないけど……。
 いや待て、今はそんなこと考えてる暇はない。

 ふと、以前買ったボールペン……もとい魔力ペンが視界に入る。

 こういう風に既存のものを一部取り替える、とかなら俺にもできるかもしれない?



「シャノンっ」

「うわっ!? あ、おかえりなさい!」

 突如急いだ足音が聞こえたと思えば背後からがばりと抱きしめられた。
 ここ二日、リアムはどうやら随分ストレスが溜まっているようである。そんなに例の女子生徒に会うのが嫌なんだろうか。

「僕、魔道具のヒントを思いついたのですぐにでも制作に取り掛かります! またすぐ一緒に帰れるようになりますからね」

 よしよしするように義兄の背中を撫でる。甘えられてるみたいでちょっと嬉しいのは内緒だ。

「……ム」

「ん?」

「リアムと呼んでくれ」

 きゅーん……。

 いつもよりちょっと弱々しく聞こえる声色に萌えゲージが上がった。
 名前を呼ぶだけなんて造作もない! いつも心中では呼んでたし、それでリアムが元気になるなら何回でも呼んでやろう。

「はいっ。リ、リ、リ……」

 あ、思ったより恥ずかしい。

 即落ち二コマをキメてしまいスムーズに言葉が口から出なくなってしまった。
 幸いなのは背中から抱え込まれているお陰で彼の顔が見えないところだろうか。

「リ、リ……リアム、お兄様? 様? リアム兄上?」

 照れが全面に出てしまったがなんとか名前を紡ぐ。
 ぱっと背後の体温が離れたと思えば今度は俺の目の前に周り込みおかわりをリクエストするみたいにじっと見つめてきた。
 ……義兄の後ろにでっかい犬が見える! でっかい犬が尻尾振って期待に満ちた目でこっちを見ている!!

「……リアム兄上?」

「呼び捨てかお兄様がいい」

「お、おお……リアムお兄様っ」

 随分食い気味にリクエストされたな。
 どことなく満足げな顔になったリアムの頭を撫でていると、マシュがひょいっとその後ろから顔を出す。

「リアム、あの女にご執心されてる上にシャノンたんといずれ別れるみたいなこと言われて落ち込んでるらしいよ」

「! マシュ、それは」

「いいだろ? 他のやつから変に噂されるよりおまえから何言われたか全部言っといた方がいいと思うけど」

 ご執心? 別れる?

 リアムは俺を気遣うように視線をよこしてきたけど、大丈夫だという意味を込めて手を握る。

「マシュ、その人に兄上はなんて言われてたの?」

「えーと、ああ、見てもらった方が早いかなあ。おでこ貸して」

 何をするの、と問う前に額と額をくっつけられる。と同時に映像が脳内に流れ込んできた。
 これも光魔法か、便利だな……。

 マシュと顔が離れ、映像を咀嚼するために黙っているとぐいっと肩を引き寄せられる。

「は~、おまえマジ? 僕にまで嫉妬するなよ。精霊は人間と恋なんてしないって」

「……すまない」

 嫉妬したのか!? あ、顔近かったから!?
 可愛いリアムに思わず口元がにやけてしまう。マシュは砂糖を吐きそうな顔をしていた。

(……この人が言ってる婚約者って、多分俺じゃなくて漫画のリアムが婚約してた人のことだ。シャノンが寝取るのを分かってるから言ってるんだ)

 じゃあやっぱり、この人は俺と同じ漫画を読んだことのある転生者で間違い無いだろう。
 ただ、ルートとかなんとか言ってる意味がよくわからない。なにかとごっちゃにしているんだろうか。

 ていうか転生者なら俺が直接タイマンで色々聞き出した方が早い気がする。というより俺じゃないと話が通じないと思う。

 ……それに、明らかにリアムを狙ってるのがなにより一番いただけない。義兄は俺の婚約者だぞ!

「兄上……リアムお兄様、僕がこの人に会うことって可能ですか?」

「何を言っている、ダメだ。見ただろう? 彼女は何故か君に明確な敵意を抱いている」

 そりゃあシャノンをリアムのものなんでも盗るクソ義弟だって思ってるならそうだろう。
 ただそれはあくまで原作のシャノンだ。俺は全く別の人生を歩んでる。

「いえ、でもなんか、多分僕が話した方が早いと思います」

「……シャノン、君は元々この件に関係してないんだ。もしこの令嬢が君に危害を加えたらと思うと俺は……。すまない、分かってくれ」

 うーん、そりゃそうか!
 とりあえず納得した顔をして引き下がる。

 ひとまず俺がやることは早く魔道具を作ってそれを殿下に見せることだ。
 よーし、頑張るぞ! 長引けば長引くほどリアムはあの転生者と接触が増えちゃうからね!
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