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逃亡先の安らぎ
生姜焼きでごはん
しおりを挟む「どうですアニキ?」
繁華街の寂れた定食屋で、漫画飯のごとく盛られた米を書き込みながら、チンピラ然とした男は問いかけた。
「どうとは?」
行儀よく盛られた米に、飯に合いそうな生姜焼き定食を前に鬼怒川は手を合わせる。
「竜児さんの事です」
「ああ、鳥の世話もしっかりやってるし。――多分、そろそろ犬も手懐ける頃だろうよ」
「犬?犬なんて手配しましたっけ?」
口の中を米でいっぱいにして、聞き取りにくい。それでも旧知の仲だからか、察しが良い鬼怒川はしっかりと聞き取った。
「野犬も、飼い犬も一緒や。坊の手にかかれば、みーんな坊の犬や。ワシもな」
箸で自身を指さした。ごくんと、チンピラは口の中の米を嚥下した。口の端には、米粒が三粒ついている。
「じゃあアニキの犬の俺は竜児さんから見たらなんなんでしょう?」
「お前の存在なんか、坊はしらんよ」
「ええー!?頑張ってええ鳥仕入れたのに!?」
「うるさい、デカい図体でデカい声出すな」
とは言ったが、ピーク時間を過ぎた店内の客は彼らしかいない。厨房の奥で、テレビを見ている店主も耳が遠いようで、こちらを見る事も無い。
「俺が声でかくて誰に迷惑かかります?」
「あほ、ワシが煩いんじゃ」
「なるほど、さすがアニキ」
納得した様子でチンピラは再び米を掻きこみ始めた。大盛ごはんが見る見る減っていく様子を見るだけで、鬼怒川の腹がいっぱいになった。半分残した生姜焼きも、チンピラに譲ると、鬼怒川は何かを手渡して店を出た。
自宅へと戻る鬼怒川の後ろで「ごちそうさまっす」と、チンピラの元気な声がおいかけた。
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