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第三十九話 最後の確認
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第三十九話 最後の確認
王国に、久しぶりに「確認」の書簡が届いた。
決定ではない。
通知でもない。
確認だ。
「……珍しいですね」
外務局の官僚が、
慎重に封を切る。
「帝国主導の新協定について、
“異議がある場合は、
五日以内に明示せよ”……とあります」
五日。
これまでに比べれば、
十分すぎる時間だった。
王太子のもとへ、
すぐに報告が上がる。
「内容は?」
「既定路線の確認です。
大枠は、
すでに帝国と周辺国で合意済み」
「王国の立場は?」
「“異議がなければ、
参加国として扱う”と」
王太子は、
しばらく黙り込んだ。
参加国。
久しく聞いていなかった言葉だ。
「……これは、
最後の確認だな」
小さく呟く。
会議は、
これまでにない緊張感で始まった。
「異議を出すべきでしょうか」
「内容は、
王国にとって不利ではありません」
「だが、
発言権は限定されています」
「今さら、
全面的な修正は不可能です」
意見は出る。
だが、
結論は、
なかなか出ない。
王太子は、
全員の顔を見渡した。
「異議を出す、
という選択肢の意味を、
分かっているか?」
沈黙。
「今ここで異議を出すなら、
我々は、
“決める側に戻りたい”と
宣言することになる」
「その覚悟は、
あるのか」
官僚の一人が、
震える声で言う。
「……もし、
異議を出して、
退けられたら」
「その時は」
王太子は、
はっきりと言った。
「退けられた事実を、
受け止める」
「だが、
何も言わなかった場合は、
退けられたことすら
分からなくなる」
その言葉が、
会議室に落ちる。
誰も、
すぐには口を開けない。
一方、帝国。
宰相府では、
同じ案件が、
淡々と整理されていた。
「王国からの反応待ちです」
「期限は?」
「五日後」
ネフェリアは、
短く頷く。
「十分です」
「異議が出た場合は?」
「検討します」
「出なかった場合は?」
「予定通り進めます」
それだけだ。
脅しも、
誘導もない。
確認は、
本当に確認でしかない。
王国の夜。
王太子は、
一人で書簡を読み返していた。
行間に、
何も書かれていない。
圧力もない。
譲歩の匂いもない。
ただ――
選べ、
とだけ書いてある。
「……最後の確認、か」
呟きは、
重く、静かだった。
ここで黙れば、
王国は、
完全に“対応する国”になる。
ここで異議を出せば、
結果がどうあれ、
“選ぶ国”として
名前が残る。
同じ夜、帝国。
ネフェリアは、
窓辺に立っていた。
街は静かで、
明日の予定は詰まっている。
「……確認とは」
誰もいない空間に、
小さく言葉を落とす。
「相手に、
最後の意思を
委ねる行為です」
帝国は、
待っている。
だが、
待つのは、
期限までだ。
王国は、
今、
久しぶりに
選択肢を与えられている。
それは、
救済ではない。
判断できるかどうかを
試されているだけだ。
五日後、
返事が届いた時。
そこに残るのは、
結果ではなく――
王国が、
最後に何を選んだか
という記録だけになる。
王国に、久しぶりに「確認」の書簡が届いた。
決定ではない。
通知でもない。
確認だ。
「……珍しいですね」
外務局の官僚が、
慎重に封を切る。
「帝国主導の新協定について、
“異議がある場合は、
五日以内に明示せよ”……とあります」
五日。
これまでに比べれば、
十分すぎる時間だった。
王太子のもとへ、
すぐに報告が上がる。
「内容は?」
「既定路線の確認です。
大枠は、
すでに帝国と周辺国で合意済み」
「王国の立場は?」
「“異議がなければ、
参加国として扱う”と」
王太子は、
しばらく黙り込んだ。
参加国。
久しく聞いていなかった言葉だ。
「……これは、
最後の確認だな」
小さく呟く。
会議は、
これまでにない緊張感で始まった。
「異議を出すべきでしょうか」
「内容は、
王国にとって不利ではありません」
「だが、
発言権は限定されています」
「今さら、
全面的な修正は不可能です」
意見は出る。
だが、
結論は、
なかなか出ない。
王太子は、
全員の顔を見渡した。
「異議を出す、
という選択肢の意味を、
分かっているか?」
沈黙。
「今ここで異議を出すなら、
我々は、
“決める側に戻りたい”と
宣言することになる」
「その覚悟は、
あるのか」
官僚の一人が、
震える声で言う。
「……もし、
異議を出して、
退けられたら」
「その時は」
王太子は、
はっきりと言った。
「退けられた事実を、
受け止める」
「だが、
何も言わなかった場合は、
退けられたことすら
分からなくなる」
その言葉が、
会議室に落ちる。
誰も、
すぐには口を開けない。
一方、帝国。
宰相府では、
同じ案件が、
淡々と整理されていた。
「王国からの反応待ちです」
「期限は?」
「五日後」
ネフェリアは、
短く頷く。
「十分です」
「異議が出た場合は?」
「検討します」
「出なかった場合は?」
「予定通り進めます」
それだけだ。
脅しも、
誘導もない。
確認は、
本当に確認でしかない。
王国の夜。
王太子は、
一人で書簡を読み返していた。
行間に、
何も書かれていない。
圧力もない。
譲歩の匂いもない。
ただ――
選べ、
とだけ書いてある。
「……最後の確認、か」
呟きは、
重く、静かだった。
ここで黙れば、
王国は、
完全に“対応する国”になる。
ここで異議を出せば、
結果がどうあれ、
“選ぶ国”として
名前が残る。
同じ夜、帝国。
ネフェリアは、
窓辺に立っていた。
街は静かで、
明日の予定は詰まっている。
「……確認とは」
誰もいない空間に、
小さく言葉を落とす。
「相手に、
最後の意思を
委ねる行為です」
帝国は、
待っている。
だが、
待つのは、
期限までだ。
王国は、
今、
久しぶりに
選択肢を与えられている。
それは、
救済ではない。
判断できるかどうかを
試されているだけだ。
五日後、
返事が届いた時。
そこに残るのは、
結果ではなく――
王国が、
最後に何を選んだか
という記録だけになる。
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