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第12話 踏み越えられた一線
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第12話 踏み越えられた一線
「……やはり、来ましたか」
朝の報告を聞いたカグラは、深く息を吐いた。
サクラ共同体憲章が配布されてから五日。
表立った反発はなかったが、沈黙が長すぎた。
そして、その沈黙を破る知らせが届いた。
「西側の交易路で、物資運搬中の荷車が止められました」
「止められた?」
「はい。武装した者たちに囲まれ、“通行税”を要求されたと」
室内の空気が、一気に冷えた。
「どこの所属ですの?」
「名乗りません。ただ……」
報告役は言葉を選びながら続ける。
「装備、統制、指示の出し方。
どう見ても、正規軍の訓練を受けた者たちです」
「……なるほど」
カグラは、机に置いた憲章の写しを指で押さえた。
「“自己責任”という言葉を、
都合よく解釈しましたのね」
通行を禁じない。
だが、守らない。
だから、守らない者を襲う。
(あくまで“事故”として処理するつもり……)
「被害は?」
「物資は没収。人命被害はありません」
「それは……向こうも計算していますわね」
殺せば問題になる。
奪うだけなら、様子見で済む。
「これは――」
側近の一人が口を開く。
「……明確な挑発です」
「ええ」
カグラは、頷いた。
「そして、一線を越えています」
ここまでは、言葉と文書のやり取りだった。
だが、実力行使が始まった以上、同じ対応はできない。
「では、どうなさいますか」
カグラは、少しだけ考えた後、答えた。
「まず、報復はしません」
ざわめき。
「しかし、見逃しもしません」
「……?」
「“守れなかった”のではなく、
“守らなかった”のは誰か――それを明確にします」
彼女は、立ち上がった。
「襲われた商人を、正式に招きます」
「交渉の場に?」
「はい。
公開で」
国王が、低く笑った。
「これは……効くぞ」
「責任の所在を、“事件”として可視化します」
隠れて殴るなら、
明るい場所に引きずり出す。
「そして――」
カグラは、静かに言った。
「私たちは、“守れる”ことを示します」
その日の午後。
政庁前の広場に、人が集められた。
商人、村人、共同体の構成員。
中央には、襲撃された商人が立っている。
「この方は、交易中に武装集団に襲われました」
ざわめき。
「彼は、我々の憲章を守りました。
通行税を拒否し、武器を持たず、抵抗もしなかった」
「それでも、奪われました」
カグラは、はっきりと告げる。
「これは、“自己責任”ではありません」
人々の視線が、集まる。
「これは、明確な侵害行為です」
沈黙。
「そして――」
彼女は、一歩前に出た。
「今後、この地を通る者は、
サクラ共同体が護衛を提供します」
どよめき。
「無料、ではありません」
(おや?)という空気。
「“約束を守る”という対価を支払っていただきます」
憲章を掲げる。
「通行の安全は、我々が守る。
代わりに、奪われたときは、
奪った者を、必ず表に引きずり出す」
その言葉に、誰かが息を呑んだ。
「剣を抜くのは、最後です」
「ですが、逃げ場は与えません」
国王が、小さく頷いた。
(……覚悟、決まったな)
その日の夜。
見張り台から、報告が入る。
「周辺で、不審な動きがあります」
「武装集団ですか?」
「いえ……撤退の兆候です」
カグラは、静かに目を閉じた。
「踏み越えた一線は、戻れません」
姿を消しても、
記録は残る。
証言も、噂も。
「世界はもう、
私たちを“無視できる集団”としては扱わない」
剣を抜かず、
だが引かず。
サクラ王国――
いや、サクラ共同体は、
守る覚悟を、世界に示したのだった。
そして次に来るのは――
撤退ではない。
正面からの介入だ。
「……やはり、来ましたか」
朝の報告を聞いたカグラは、深く息を吐いた。
サクラ共同体憲章が配布されてから五日。
表立った反発はなかったが、沈黙が長すぎた。
そして、その沈黙を破る知らせが届いた。
「西側の交易路で、物資運搬中の荷車が止められました」
「止められた?」
「はい。武装した者たちに囲まれ、“通行税”を要求されたと」
室内の空気が、一気に冷えた。
「どこの所属ですの?」
「名乗りません。ただ……」
報告役は言葉を選びながら続ける。
「装備、統制、指示の出し方。
どう見ても、正規軍の訓練を受けた者たちです」
「……なるほど」
カグラは、机に置いた憲章の写しを指で押さえた。
「“自己責任”という言葉を、
都合よく解釈しましたのね」
通行を禁じない。
だが、守らない。
だから、守らない者を襲う。
(あくまで“事故”として処理するつもり……)
「被害は?」
「物資は没収。人命被害はありません」
「それは……向こうも計算していますわね」
殺せば問題になる。
奪うだけなら、様子見で済む。
「これは――」
側近の一人が口を開く。
「……明確な挑発です」
「ええ」
カグラは、頷いた。
「そして、一線を越えています」
ここまでは、言葉と文書のやり取りだった。
だが、実力行使が始まった以上、同じ対応はできない。
「では、どうなさいますか」
カグラは、少しだけ考えた後、答えた。
「まず、報復はしません」
ざわめき。
「しかし、見逃しもしません」
「……?」
「“守れなかった”のではなく、
“守らなかった”のは誰か――それを明確にします」
彼女は、立ち上がった。
「襲われた商人を、正式に招きます」
「交渉の場に?」
「はい。
公開で」
国王が、低く笑った。
「これは……効くぞ」
「責任の所在を、“事件”として可視化します」
隠れて殴るなら、
明るい場所に引きずり出す。
「そして――」
カグラは、静かに言った。
「私たちは、“守れる”ことを示します」
その日の午後。
政庁前の広場に、人が集められた。
商人、村人、共同体の構成員。
中央には、襲撃された商人が立っている。
「この方は、交易中に武装集団に襲われました」
ざわめき。
「彼は、我々の憲章を守りました。
通行税を拒否し、武器を持たず、抵抗もしなかった」
「それでも、奪われました」
カグラは、はっきりと告げる。
「これは、“自己責任”ではありません」
人々の視線が、集まる。
「これは、明確な侵害行為です」
沈黙。
「そして――」
彼女は、一歩前に出た。
「今後、この地を通る者は、
サクラ共同体が護衛を提供します」
どよめき。
「無料、ではありません」
(おや?)という空気。
「“約束を守る”という対価を支払っていただきます」
憲章を掲げる。
「通行の安全は、我々が守る。
代わりに、奪われたときは、
奪った者を、必ず表に引きずり出す」
その言葉に、誰かが息を呑んだ。
「剣を抜くのは、最後です」
「ですが、逃げ場は与えません」
国王が、小さく頷いた。
(……覚悟、決まったな)
その日の夜。
見張り台から、報告が入る。
「周辺で、不審な動きがあります」
「武装集団ですか?」
「いえ……撤退の兆候です」
カグラは、静かに目を閉じた。
「踏み越えた一線は、戻れません」
姿を消しても、
記録は残る。
証言も、噂も。
「世界はもう、
私たちを“無視できる集団”としては扱わない」
剣を抜かず、
だが引かず。
サクラ王国――
いや、サクラ共同体は、
守る覚悟を、世界に示したのだった。
そして次に来るのは――
撤退ではない。
正面からの介入だ。
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