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28話 王子、破滅へ一直線
しおりを挟む王宮の空気は、ここ数日で目に見えて重くなった。
原因はただ一つ――リリィ失踪後の第一王子アレクシオンである。
「殿下、本日の政務のご説明ですが……」
「そんなもの、あとでいい!」
側近の言葉を遮り、アレクシオンは机を拳で叩いた。
書類が跳ね上がり、侍従たちは一斉に顔を強ばらせる。
「リリィを捜せ! 王国内だけでは不十分だ。隣国にも捜索を――」
「殿下、それは……陛下の許可が必要かと……」
「うるさい! 彼女は私の運命の人だ! 必ず戻ってくる!」
アレクシオンの焦りは日に日に増し、
政務は滞り、貴族からの嘆願書は山積みになりつつあった。
その一方で、側近たちは次々と辞任を申し出ている。
「殿下の責任転嫁にもう耐えられません」
「無断でリリィ嬢への資金を流用した件で、私まで疑われるなど……」
王宮中の視線が冷たくなるにつれ、
アレクシオンの孤独は際立っていった。
そして――とうとう国王が動いた。
「アレクシオン。そなたの行動は目に余る」
「父上、私はただ、リリィを――」
「黙れ。国を省みず女を追い回す王太子など聞いたことがない」
国王の声は鋭く、王宮中に響き渡った。
「本日より、そなたは当面の間“謹慎”とする。
政務もすべて取り上げる」
「な……何を言っているのですか!? 私は王太子ですよ!」
「王太子である前に、一人の愚か者だ。
このままでは国が傾く」
アレクシオンは呆然と立ちつくす。
その姿を、遠巻きに見る貴族たちがひそひそと囁いた。
「殿下は完全に堕ちたな……」
「エレノア様を捨てた罰だ。あの方なら立派な王妃になれたのに」
「自ら宝石を捨て、石ころを拾った結果がこれよ」
誰も味方しない。
誰も庇わない。
アレクシオンはその場に崩れ落ちるように座り込んだ。
「……エレノア……なぜ、私を見捨てた……?」
その呟きは、自分が捨てた相手に向けられるにはあまりに弱く、頼りなかった。
――破滅の道は、もう止まらない。
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