婚約破棄されましたが、辺境公爵に溺愛されて自由まで手に入れました

ふわふわ

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40話 エピローグ:もう離さない――本当の夫婦として

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 結婚式当日。

 澄んだ陽光が大聖堂のステンドグラスを照らし、
 七色の光が広く荘厳な空間に満ちていた。

 参列者は辺境の民から国内有力者に至るまでぎっしり。
 その中央通路を、エレノアはゆっくりと歩いていた。

(……胸が、こんなに高鳴るなんて)

 純白のドレスが光を受けて淡く輝き、
 レースのヴェールがふわりと揺れる。

 視線は自然と――
 祭壇の前に立つライナルトへ吸い寄せられた。

 彼は紛れもなく、今日ここで
 彼女の“夫”となる男だった。

 その姿が、ひどく頼もしい。

(公爵様……いえ、これからは“夫”なのですね)

 胸の奥がじんわりと温かくなる。


---

◆ 参列者のざわめき

「エレノア様、とてもお美しいわ……」 「こんなに似合うとは……まるで本物の姫だ」 「ヴァンス公爵、勝ち組にもほどがあるだろう……!」

 周囲は感嘆の声でいっぱいだ。

 ただ一人、青ざめている者を除いて。

 ――王太子アレクシオンである。

「……どうして……俺が捨てたはずの女が……?」

 結婚式に招待はした。
 “公的に関係は清算した”ことを示すためだ。

 だが、アレクシオンは式場のあまりの壮麗さに、
 そしてエレノアの幸福そうな姿に、震えるしかなかった。

「リリィには裏切られ……側近は離れ……
 なのに、エレノアだけが……輝いている……?」

 隣の席では貴族たちがひそひそ声で囁く。

「本当に見る目がなかったのは誰だろうな」 「王太子殿下、ざまぁと言うしか……」 「いや、さすがに言いづらいけど……言うしか……」

 アレクシオンの肩がぷるぷる震える。

(やめて差し上げなさいな……)

 エレノアは心の中で軽くため息をついたが、
 それ以上気にしなかった。

 今日の主役は、ここにいる二人だけなのだから。


---

◆ 永遠の誓い

 エレノアが祭壇に立つと、
 ライナルトが静かに手をとった。

「エレノア……来てくれて、ありがとう」

「わたくしのほうこそ。
 ここに立てることが、夢のようで……」

 ライナルトは深く息を吸い、誓いの言葉を紡いだ。

「私は、エレノア・クリステル。
 君を生涯の伴侶として迎える。
 ――自由も、幸せも、心も、何もかも。
 君が望むものは、すべて守ると誓おう」

 低く落ち着いた声。
 一言一言が、まっすぐに胸へ届く。

(……どうしましょう。涙が出てしまいそう)

 エレノアの視界がかすむ。

 彼女も震える声で返した。

「わたくし、エレノア・クリステルは……
 ライナルト様と共に生きたいと願います。
 あなたの隣で、あなたの笑顔を支えて……
 そして、あなたに愛され続けるわたくしでありたいと……
 心から、そう思いました」

 会場がどよめいた。

「……エレノア様のほうが甘い……!」 「公爵様が溶けてしまう……!」 「尊い……!」

 ライナルトの耳がほんのり赤い。
 大聖堂の空気まで甘く染まる。


---

◆ 口づけ

「誓いの印として――口づけを」

 司祭の声に、エレノアの心臓が跳ねた。

(……公爵様、みんなの前で……?)

 ライナルトはそっと彼女の頬に手を添え、
 優しくヴェールを上げる。

「エレノア……私の愛しい妻」

「……ライナルト様……」

 軽く触れるだけの口づけ――
 だが、その温もりは永遠を思わせるほど深かった。

 参列者は拍手と歓声に包まれた。

「おめでとうございます!!」 「万歳、公爵夫妻!!」 「末永く幸せに……!」

 アレクシオンだけが肩を落とし、
 その場で小さく崩れ落ちていた。

「……俺は……何を間違えたんだ……」

 誰も慰めない。
 それが“ざまぁ”というものだ。


---

◆ 新婚初夜の前に

 式後、エレノアは控室で休んでいた。
 扉が静かに開き、ライナルトが入ってくる。

「エレノア。……本当に綺麗だった」

「そんな……公爵……いえ、ライナルト様のほうこそ」

「名前を呼ばれるだけで嬉しいな」

 彼はそっとエレノアの指を取り、
 新しい結婚指輪に触れる。

「本当に……もう二度と離さない」

「わたくしも……離れませんわ」

 手を重ねると、二人は穏やかに微笑み合った。

 あの日――
 理不尽な婚約破棄で涙を“演じた”少女はもういない。

 今ここにいるのは、
 愛する人と共に未来を歩む女性。

 自由と尊厳と愛を、すべて手にしたエレノアだった。

(わたくし……本当に幸せですわ)

 心からそう思えた瞬間、
 ライナルトがそっと彼女を抱き寄せた。

「エレノア。これからの人生を……共に」

「はい。喜んで」

 二人の影がひとつに重なり、
 物語は静かに幕を閉じた。
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