婚約破棄されましたが、辺境公爵に溺愛されて自由まで手に入れました

ふわふわ

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39話 婚約発表と、ざわめく領内

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 翌朝。
 エレノアは鏡の前で、指輪をそっと見つめていた。

 薬指にきらめく金細工の指輪――
 それは夢ではない証。

(……公爵様と、婚約したのですね……わたくし)

 何度見ても頬が熱くなる。
 昨夜は眠れたのかどうか記憶があいまいだ。

 そんなところへ、侍女のマリーデが勢いよく扉を開けた。

「お、お嬢様ぁぁぁぁ!!」

「きゃっ!? ど、どうしたのですか?」

「領内が……もう大変なことになっておりまして!!」

「……え?」

◆ 領主館前、大混乱 ◆

 エレノアが外へ出ると――
 広場の前には、驚くほどの人だかりができていた。

「公爵様が婚約だって!? 本当に!?」 「しかもお相手は、あのエレノア様だってよ!」 「やっぱり……あの落ち着きと気品は只者じゃなかったんだ!」

「うちの娘にもあんな立派な淑女になってほしいねぇ」 「わしが若けりゃ求婚してたところじゃ……」

 好き勝手な声が飛び交っている。

(ちょ、ちょっと待ってくださいません!?)

 エレノアは必死にマントで顔を隠した。
 だが、人々の熱気は収まりそうにない。

「お嬢様ーー!!おめでとうございます!!」

 市場のパン屋の娘から、鍛冶屋の主人、孤児院の子どもたちまで、
 次々に祝福が飛んでくる。

 手を振りかえしながら、エレノアは内心で震えていた。

(公爵様……いつの間に発表を……?)

 そして広場の中心に、堂々たる姿が現れた。

◆ 公爵の公式宣言 ◆

 ライナルト公爵その人だった。

 領民たちが一斉に沈黙し、空気が張り詰める。

「皆、静まれ」

 その声だけで、ざわめきが止まった。

 ライナルトは堂々と胸を張り、よく通る声で宣言した。

「本日、私ライナルト・ヴァンスは――
 エレノア・クリステル嬢と正式に婚約した」

 その瞬間、
 広場は爆発したように歓声に包まれた。

「うおおおおおお!!」 「おめでとうございます、公爵様!!」 「エレノア様なら大歓迎だ!」 「ずっと支えてきた方だしな!」

 中には涙ぐむ者までいる。

(……うう、恥ずかしい……でも、嬉しい……!)

 エレノアの胸がじんわり温かくなる。

 そんな彼女のもとへ、公爵がまっすぐ歩み寄ってきた。

「エレノア」

「……はい?」

 公爵は自然に彼女の手を取り、
 みんなの前で、指輪がよく見えるように掲げた。

「この人を、私の妻として迎える。
 ――誰にも文句は言わせない」

 領民たちがどよめく。

 力強い言葉。
 それはエレノアの心に深く染み込んだ。

(公爵様……こんなにも、堂々と……わたくしを)

 胸が熱くなり、目が潤む。

◆ ざまぁ、じわじわと広がる ◆

 その日の午後。

 領主館には、なぜか一部の上級貴族から連絡が殺到した。

「まさか、あのエレノア嬢が……?」 「彼女は控えめで地味だと思っていたが……」 「ヴァンス公爵が選ぶほどの女性だったのか」 「――あの王太子殿下、見る目が無さすぎでは?」

(……出た、噂話……)

 エレノアは苦笑した。

 だが侍女たちは大喜びだ。

「お嬢様! 昔お嬢様を冷遇していた連中、悔しがってますわ!」 「“エレノアは無能で地味”と決めつけてた奴らが手のひら返ししてます!」

「ざまぁです!」

(……あら、意図せずともざまぁが生まれましたわね)

 胸にほんの少しだけ、スカッとした風が吹く。

◆ ふたりきりになれた夜 ◆

 夜。
 ようやく騒ぎが落ち着き、エレノアは自室で紅茶を飲んでいた。

(今日は……本当に、人生で一番大騒ぎでしたわ)

 するとノックが。

「入るぞ、エレノア」

「公爵様……!」

 ライナルトは静かに近づき、紅茶のカップを受け取った。

「一日中、よく頑張ったな。疲れただろう?」

「……ええ、でも、少しだけ嬉しくもありました」

「そうか」

 公爵はほっと息をつくと、
 エレノアの髪にそっと触れた。

「今日、私は何度も思った。
 ――君を妻にできることは、私の誇りだとな」

 言葉が甘く胸にしみる。

「公爵様……」

「遠慮せず甘えていい。君はもう、私の婚約者なのだから」

 エレノアの心臓が跳ねた。

(……公爵様、今日だけ甘すぎでは!?)

 自覚なくやきもちを焼き、
 誰よりも堂々と守ってくれる男――

 そんな彼に愛されているのだと思うと、
 胸が熱くなり、自然と微笑みがこぼれた。

「……はい。これからも、よろしくお願いいたします」

「こちらこそ、エレノア」

 その夜、
 静かな部屋には、
 婚約者たちだけが知る甘い時間が流れていた。


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