婚約破棄されましたが、辺境公爵に溺愛されて自由まで手に入れました

ふわふわ

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38話 公爵の嫉妬と、ひそやかな誓い

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 正式に気持ちを伝え合った夜、領主館は静まり返っていた。
 だがエレノアの胸の中は、静寂とは正反対――ときめきで騒がしい。

(わたくし……公爵様と、本当に夫婦になるのね……)

 思い返すたび頬が熱くなる。
 寝台の上で枕を抱きしめたまま悶えていると、扉がノックされた。

「エレノア、お邪魔してもいいか?」

「――っ!? こ、公爵様!?」

 思考が瞬時に飛ぶ。
 夜に男が訪ねてくるなど、心臓に悪すぎる。

 エレノアは慌てて姿勢を整えた。

「ど、どうぞ……!」

 扉が開き、ライナルトが入ってくる。
 その表情は穏やかながら、どこか落ち着かない。

「寝ていたならすまない。少しだけ話したくて」

「い、いえ……!」

(ああ、近い……。昨日の抱擁を思い出してしまいますわ……!)

 

◆ 婚約指輪と、公爵のやきもち ◆

「これを……渡しておこうと思って」

 差し出された小箱。
 そっと開くと、淡い金細工の美しい指輪が現れた。

「この領では、婚約の証として互いに指輪を贈る習わしがある。
 女性側が受け取った時点で、正式な婚約として扱われる」

「まぁ……!」

 エレノアは思わず目を潤ませる。

「君のことを誰にも奪われたくない。
 これを着けていれば、誰も軽々しく近づけなくなる」

(……あら? いま、少し嫉妬してませんでした?)

「奪われるだなんて……そんな心配なさる必要、ございませんのに」

「ある」

 即答だった。

 エレノアは思わず目を瞬く。

「君は魅力的だ。
 優しくて、知性があり、美しい。
 この領に来た頃とは比べ物にならないほど、たくさんの者が君を尊敬している」

「そ、それは公爵様のご指導があってこそで――」

「それに、昨日も見ただろう」

「?」

「商業組合の若造が、君に花を贈ろうとしていた件だ」

「あっ……」

 確かに、若い商人が真っ赤になりながら花束を差し出してきた。

(あれを……見ていらしたのね)

 エレノアが苦笑する。

「公爵様……ひょっとして、やきもちを?」

「……さあ、どうだろうな」

 公爵はそっぽを向いた。
 だが耳がわずかに赤い。

(可愛い……!)

 胸がきゅっとなる。

 

◆ 指輪をはめる瞬間 ◆

「……着けてくれるか?」

 ライナルトが指輪を手に取り、エレノアの左手をそっと取った。
 温かい掌に触れただけで、心臓が跳ねる。

「はい……喜んで」

 指輪が薬指に滑り込む瞬間――
 二人の視線が重なった。

 近い。
 息がかかるほどの距離。

「エレノア」

「……はい」

「私はまだ、夫になる資格があるのか不安に思う時もある。
 だが……君が笑ってくれるなら、どんな努力でもすると誓う」

 静かな声なのに、胸に深く響いた。

「わたくしも……公爵様の隣で成長していきたいと、心から思っています」

 そっと見つめ返すと、ライナルトが微笑む。

「では……一つだけわがままを聞いてほしい」

「わがまま、ですか?」

「今日は……このまま、少し一緒にいていいか?」

 エレノアの顔が一気に熱くなる。

「え、えっと……その……!」

「もちろん無理はさせない。ただ……君と話していたい」

(き、急に甘い……!!)

 だが断る理由もなかった。

「……わ、わたくしでよろしければ」

 その答えに、ライナルトの瞳が柔らかく揺れた。

「ありがとう、エレノア」

 二人は並んで腰掛け、ゆっくりと語り合った。
 指輪の輝きが、二人の距離をそっと近づけていく。

 

◆ 公爵のひそやかな誓い ◆

 エレノアがうつむいた瞬間、
 ライナルトは小さく、誰にも聞こえない声でつぶやいた。

(君を自由にしてあげたい。
 だが同時に……誰にも渡したくない)

 夜は更けていく。
 婚約したばかりの二人の距離は、ますます甘く、近くなっていった。


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