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37話 あなたを自由にしたい、そして――束縛したい
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エレノアが自分の恋心を自覚した翌日。
その朝は、いつもより空気が澄んでいるように感じた。
(昨日のあれは……夢ではなかったのよね)
胸にそっと手を当てると、気持ちがまた熱くなる。
(わたくし、公爵様のことが……好き)
まだ言葉にするのも恥ずかしい。
けれど、認めた瞬間から、世界が少し色づいて見える。
その日の午後。
ライナルト公爵が珍しく「話がある」とエレノアを庭へ呼び出した。
春を思わせる柔らかな日差し。
澄んだ風。
そして、どこか落ち着かない公爵の横顔。
(公爵様……緊張している?)
そう感じた瞬間、胸がざわつく。
「エレノア」
呼ばれた名に、心臓が跳ねた。
「はい……」
ライナルトはしばらく言葉を選ぶように沈黙し、
そして静かに口を開いた。
「君がこの領に来てから……私は毎日、驚かされてばかりだ」
「……わたくしが、ですか?」
「そうだ。
君の知識、思いやり、仕事への誠実さ……
どれをとっても、私は尊敬している」
尊敬――
その言葉だけでも胸が熱くなる。
けれど、公爵はさらに続けた。
「それ以上に……君と過ごす時間は、私にとって安らぎになった」
「……!」
その声は、いつになく柔らかかった。
「君が笑うと、私も嬉しい。
君が困れば、助けたいと思う。
君が危険に晒されれば……許せない」
(っ……!)
エレノアの胸は高鳴り、
息をするのも忘れそうだった。
公爵は一歩、彼女に近づく。
「エレノア。
私は……君を自由にしたいと思っていた。
どこにも縛られず、誰にも強制されず、君自身の人生を歩んでほしいと」
そう言った彼の目は、深く澄んでいた。
「だが……今の私は、君を“束縛したくなるほど”に……君を好きになってしまった」
「――っ」
言葉が胸に刺さる。
嬉しくて、苦しくて、涙が零れそうになる。
「エレノア」
ライナルトはそっと手を差し出した。
「どうか……私の妻になってほしい。
形だけの婚姻ではなく、心を共にする“本当の夫婦”として――
生涯、隣にいてくれ」
完全な、真っ直ぐな求婚だった。
エレノアの視界が滲む。
(ああ……こんなにも、まっすぐに……)
「わたくし……」
声が震える。
けれど、気持ちは確かだった。
「わたくし……ずっと公爵様に守られて、支えられて……
公爵様と過ごす日々が、とても幸せでした」
涙を拭い、エレノアは微笑む。
「わたくしも……公爵様を好きになってしまいました」
公爵の瞳が揺れた。
エレノアは胸に手を当て、はっきりと言う。
「……だから。
はい、よろこんで。
公爵様の妻に、わたくしを選んでくださいませ」
「エレノア……!」
その瞬間、ライナルトは彼女を抱き寄せた。
強く、でも優しく。
安心できる、確かな腕だった。
「ありがとう……エレノア。
私は必ず君を、誰よりも幸せにする」
「……はいっ」
エレノアの世界は、音を立てて満たされていった。
かつて“自由”を求めた彼女が、
今は“この人の隣”で生きる自由を望んでいる。
恋は、完全に結ばれた。
---
その朝は、いつもより空気が澄んでいるように感じた。
(昨日のあれは……夢ではなかったのよね)
胸にそっと手を当てると、気持ちがまた熱くなる。
(わたくし、公爵様のことが……好き)
まだ言葉にするのも恥ずかしい。
けれど、認めた瞬間から、世界が少し色づいて見える。
その日の午後。
ライナルト公爵が珍しく「話がある」とエレノアを庭へ呼び出した。
春を思わせる柔らかな日差し。
澄んだ風。
そして、どこか落ち着かない公爵の横顔。
(公爵様……緊張している?)
そう感じた瞬間、胸がざわつく。
「エレノア」
呼ばれた名に、心臓が跳ねた。
「はい……」
ライナルトはしばらく言葉を選ぶように沈黙し、
そして静かに口を開いた。
「君がこの領に来てから……私は毎日、驚かされてばかりだ」
「……わたくしが、ですか?」
「そうだ。
君の知識、思いやり、仕事への誠実さ……
どれをとっても、私は尊敬している」
尊敬――
その言葉だけでも胸が熱くなる。
けれど、公爵はさらに続けた。
「それ以上に……君と過ごす時間は、私にとって安らぎになった」
「……!」
その声は、いつになく柔らかかった。
「君が笑うと、私も嬉しい。
君が困れば、助けたいと思う。
君が危険に晒されれば……許せない」
(っ……!)
エレノアの胸は高鳴り、
息をするのも忘れそうだった。
公爵は一歩、彼女に近づく。
「エレノア。
私は……君を自由にしたいと思っていた。
どこにも縛られず、誰にも強制されず、君自身の人生を歩んでほしいと」
そう言った彼の目は、深く澄んでいた。
「だが……今の私は、君を“束縛したくなるほど”に……君を好きになってしまった」
「――っ」
言葉が胸に刺さる。
嬉しくて、苦しくて、涙が零れそうになる。
「エレノア」
ライナルトはそっと手を差し出した。
「どうか……私の妻になってほしい。
形だけの婚姻ではなく、心を共にする“本当の夫婦”として――
生涯、隣にいてくれ」
完全な、真っ直ぐな求婚だった。
エレノアの視界が滲む。
(ああ……こんなにも、まっすぐに……)
「わたくし……」
声が震える。
けれど、気持ちは確かだった。
「わたくし……ずっと公爵様に守られて、支えられて……
公爵様と過ごす日々が、とても幸せでした」
涙を拭い、エレノアは微笑む。
「わたくしも……公爵様を好きになってしまいました」
公爵の瞳が揺れた。
エレノアは胸に手を当て、はっきりと言う。
「……だから。
はい、よろこんで。
公爵様の妻に、わたくしを選んでくださいませ」
「エレノア……!」
その瞬間、ライナルトは彼女を抱き寄せた。
強く、でも優しく。
安心できる、確かな腕だった。
「ありがとう……エレノア。
私は必ず君を、誰よりも幸せにする」
「……はいっ」
エレノアの世界は、音を立てて満たされていった。
かつて“自由”を求めた彼女が、
今は“この人の隣”で生きる自由を望んでいる。
恋は、完全に結ばれた。
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