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第六話 冷徹公爵の訪問
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第六話 冷徹公爵の訪問
翌朝、フェルベルク侯爵邸は奇妙な静けさに包まれていた。
嵐の前ではない。
嵐が一度通り過ぎたあと、壊れた窓や曲がった扉を見て、人がようやく青ざめ始めるときの静けさだった。
使用人たちはいつも以上に足音を殺して歩き、廊下では低い声のやり取りだけが交わされる。応接間へ出入りする者の数も増えていた。王宮からの使い、交易関係の書簡、急な面会希望、断りの返答。昨日のうちに噴き出した小さな綻びが、夜のあいだにもっと増えていたのだろう。
エレノアは窓辺でその空気を眺めながら、ゆっくりと茶を口に運んだ。
昨夜はよく眠れた。
完全に気が晴れたわけではない。まだ胸の奥には、長年積もった疲れのようなものが残っている。けれど、以前のように“明日も誰かの失敗を埋めに行かなければ”という重苦しさがないだけで、呼吸はずいぶん楽だった。
「お嬢様」
侍女が入室し、控えめに一礼する。
「何かしら」
「旦那様より、本日は外出を控えるようにとのお言葉です」
エレノアはカップを置いた。
「理由は?」
「王都で昨夜の件が予想以上に広まっているため、とのことでした」
「そう」
予想以上、という言葉に少しだけ笑いたくなる。
予想できなかったのだろうか。王太子が卒業舞踏会の場で婚約破棄を宣言し、隣に義妹を立たせたのだ。これ以上ないほど社交界向きの話題だというのに。
「ほかには?」
「できる限り部屋で静かに過ごすように、と」
「まるで病人ね」
「……申し訳ございません」
侍女が恐縮したので、エレノアは首を振った。
「あなたに言ったわけではないの。気にしないで」
つまり父は、自分を一時的に“見えない場所”へ置いておきたいのだろう。表へ出されると困る。だが完全に追い立てるにはまだ早い。だから部屋に置いておく。
ずいぶんと分かりやすい。
もっとも、エレノアにとってはそれほど不都合でもなかった。無理に表へ出る気もなかったし、今はまだ周囲が勝手に騒いでくれたほうが都合がいい。
「分かったわ。今日は出ないでおく」
そう答えると、侍女はほっとしたように頭を下げた。
午前中は静かに本を読んで過ごした。
だが文字を追いながらも、耳には屋敷のざわめきが薄く届いていた。廊下を行く早足。扉の開閉。ときおり遠くで上がる、ヴィオラの高い声。何かが思い通りに進んでいない証拠だ。
正午を少し過ぎた頃、執事が訪ねてきた。
「お嬢様、おくつろぎのところ失礼いたします」
「どうぞ」
執事は入室すると、いつも通りきっちりと一礼した。だが今日の彼は、わずかに緊張して見えた。
「何かあったのね」
「……はい」
やはり、と思う。
「旦那様がお呼びです。至急、正面応接間へとのこと」
「お父様が?」
「はい。先ほど、急な来客がございまして」
来客。
その一言だけで、少し空気が変わった。
王宮からの使いなら、執事はもっと事務的に伝えるはずだ。急な来客、とわざわざ言うからには、予想外の相手なのだろう。
「どなたがお見えなの」
執事はほんの一瞬間を置いてから答えた。
「クラウゼン公爵閣下にございます」
エレノアは思わずまばたきをした。
レオンハルトが。
このフェルベルク侯爵邸へ。
「……突然ですのね」
「旦那様もそのようで、かなり驚かれております」
それはそうだろう。
クラウゼン公爵家ほどの家格の者が、事前の十分な打診もなく侯爵家を訪れるのは異例だ。しかも今の侯爵家は、婚約破棄騒動のど真ん中にある。好意的な訪問とは限らないと誰もが身構える。
けれど、エレノアには妙な確信があった。
あの人は無意味なことはしない。
来たなら、来た理由がある。
「分かったわ。すぐに向かいます」
支度を整えながら、鏡の前で自分の表情を確認する。
驚きはある。だが不安はなかった。
むしろ、少しだけ胸が落ち着くのを感じる。
昨日の図書館で交わした言葉が、思いのほか心の中に残っていたのかもしれない。誰にも見られていないと思っていた自分を見ていた人。しかも、そのことを綺麗ごとではなく、必要な言葉だけで伝えてくれた人。
正面応接間の前まで来ると、中から父の妙に張り詰めた声が聞こえた。
「……ですから、昨夜の件は誠に遺憾ではございますが、家としても今後慎重に……」
その声を遮るような低い男の声。
「慎重に、ですか」
レオンハルトだ。
静かなのに、不思議と空気を奪う声だった。
執事が扉を開ける。
「エレノアお嬢様をお連れいたしました」
室内の空気がぴんと張った。
侯爵、ヴィオラ、そしてミレイユまでいた。ミレイユはなぜここにいるのかと言いたくなるが、きっと“家の大事なお客様”の前で可憐な娘を演じるつもりなのだろう。
その正面、長椅子に腰かけていたレオンハルトがこちらを見る。
濃い灰色の礼装に身を包み、手袋を外した片手を杖の頭に軽く置いている。姿勢は崩れていない。愛想よく笑ってもいない。けれど彼がそこにいるだけで、応接間の主導権が誰のものかは明らかだった。
「突然の訪問にもかかわらず、お時間をいただき感謝いたします」
彼は立ち上がり、まずエレノアに向かってそう言った。
侯爵家当主ではなく、エレノアに。
その時点で、父の顔がさらに硬くなる。
「公爵様」
エレノアは一礼した。
「お招きもしていないのにお越しいただくことになるとは思いませんでした」
「招かれなければ来てはいけない状況でもないと判断しました」
真顔でそんなことを言うものだから、少しだけおかしい。
もちろん声に出して笑ったりはしないが、エレノアの口元はわずかに緩んだらしい。レオンハルトの目がほんの少しだけやわらいだ。
侯爵が咳払いをして割って入る。
「クラウゼン公爵閣下。本日はどのようなご用件で」
レオンハルトはようやく侯爵のほうを向いた。
「単刀直入に申し上げます」
その一言で、室内の空気がさらに張る。
「エレノア嬢に、我が領の運営について助力をお願いしたいと思い、参りました」
侯爵が固まった。
ヴィオラも口を開けたまま止まる。
ミレイユに至っては、目を見開いてレオンハルトとエレノアを交互に見ていた。
当然だろう。
婚約破棄されたばかりの令嬢に、公爵家当主が直々に仕事を依頼しに来る。しかも家ではなく、本人に。
それはほとんど、“あなたには価値がある”と公言するに等しい。
「助力……ですか」
侯爵がようやく絞り出すように言った。
「ええ」
レオンハルトは淡々としていた。
「以前より、エレノア嬢の調整能力と事務処理の正確さは目にしておりました。我が領でも、春からいくつか再編を進めており、その補佐としてぜひ力をお借りしたい」
補佐。
控えめな言い方だったが、わざとだろう。
レオンハルトほどの男が、ただの気まぐれでこんな場へ来るはずがない。しかも“以前より目にしていた”とまで言った。父や継母の前で、エレノアの能力を明言しているのだ。
侯爵は露骨に動揺していた。
「い、いや、しかし……エレノアはまだ家の娘でして」
「存じています」
「それに、昨夜の件もあって心身ともに疲れている時期です。とても今すぐそのような……」
「それは本人が決めることでは?」
静かな声だった。
だが侯爵はその一言で押し黙った。
レオンハルトは続ける。
「私はフェルベルク侯爵家に、娘を譲れと申しているわけではありません。エレノア嬢本人に、依頼をしているのです」
エレノアはその言葉を聞きながら、胸の奥が少しずつ熱を帯びるのを感じた。
本人に、依頼している。
家ではなく。
父ではなく。
“侯爵家の娘だから”でもなく。
自分という個人に。
ヴィオラが慌てたように口を挟んだ。
「でも、エレノアはその……まだ立場も不安定で……社交上も色々と難しいのでは……」
「社交上、ですか」
レオンハルトがごく薄く目を細める。
「王太子殿下に公開の場で婚約破棄され、その翌日には家の中で表に出るなとでも言われているような状況より、我が公爵家の仕事に関わるほうがよほど健全かと思いますが」
空気が凍った。
侯爵もヴィオラも顔色を失う。
図星を刺されたからだ。
しかも“言われているような”という形を取りながら、ほとんど確信している言い方だった。
ミレイユが小さな声を上げる。
「公爵様……それは少し、誤解が……」
「誤解でしょうか」
レオンハルトは初めてミレイユを見た。
その視線には、温度がなかった。
昨日図書館で見せたような静かなやわらぎもなければ、社交用の上辺の優しさもない。まさに噂通りの冷徹さが、そこにはあった。
「では、義妹殿は、昨夜の件でエレノア嬢の名誉が傷つかなかったとお考えで?」
ミレイユが言葉に詰まる。
「そ、それは……傷ついたとは思います。でも、殿下と私が……」
「真実の愛、ですか」
淡々とした声音なのに、切れ味が鋭すぎる。
ミレイユは顔を赤くした。羞恥ではない。苛立ちと焦りだろう。自分の得意な“可哀想で無垢な少女”の演技が、この男には一切効いていない。
「……殿下は、お姉様より私を選んでくださっただけです」
ようやくそう返すと、レオンハルトはほんの一拍沈黙した。
そして、容赦なく言う。
「それを誇るのは、少々早いかと」
応接間がしんと静まり返った。
ミレイユの目が大きく見開かれる。
ヴィオラが青ざめ、侯爵は何か言おうとして言葉を失った。
あまりに直截だった。
だが、誰も反論できない。
王太子に選ばれたことだけでは、まだ何ひとつ成し遂げていないのだから。
エレノアは、少しだけ息を整えた。
この人は本当に容赦がない。
けれど、不思議と不快ではなかった。
むしろ、誰も言わなかったことを、誰にも媚びずに言い切る姿は見事ですらあった。
レオンハルトは再びエレノアへ向き直る。
「話を戻します」
まるで今のやり取りなど、ただの余談だったと言わんばかりだった。
「もちろん、すぐに返答を求めるつもりはありません。ですが、我が領で新たに整える必要のある部分は多い。人員配置、会計の整理、取引先との折衝、招待客の選定。あなたなら十分に力を発揮できると考えています」
一つ一つの語が、きちんと職務として並べられている。
慰めのための居場所ではない。
可哀想だから保護するのでもない。
できるから頼む。
その明確さが、ひどくエレノアの胸に響いた。
「なぜ、私に」
そう尋ねると、レオンハルトは当然のように答えた。
「できる方に頼むのは当然でしょう」
その一言で、ヴィオラがあからさまに息を呑んだ。
ミレイユも、父でさえも、何も言えない顔をしている。
この屋敷でエレノアは、長い間“いて当然の娘”だった。多少有能でも、我慢強くても、それは評価されるものではなく、ただ便利に使われるだけのものだった。
けれど今、王国有数の公爵が、それを真正面から価値として扱っている。
その事実は、何より雄弁だった。
侯爵がようやく低い声で言った。
「……エレノアは、まだ婚約破棄の余波の中におります。軽々しく外の仕事に出すわけには」
「外の仕事、ですか」
レオンハルトはかすかに眉を上げた。
「侯爵閣下。失礼ながら、エレノア嬢はすでに“外の仕事”どころか、王太子殿下の周辺を長らく実務で支えてこられたようですが」
父の顔が、今度こそはっきりと強張った。
やはりそこまで把握しているのだ。
エレノアは内心で小さく息をつく。
父にとって最も痛いのは、エレノアの価値を他家の、それも格上の公爵が理解していることだろう。そして自分は、今の今までそれを正面から認めもしなかった。
「私は」
レオンハルトは静かに言った。
「人を“誰の娘か”より、“何ができるか”で見ます」
その言葉は、応接間の空気をまっすぐ裂いた。
ミレイユが唇を噛む。
侯爵は返す言葉を探しているが見つからない。
ヴィオラは明らかに、この場が自分たちに不利だと気づいて怯えている。
その中で、エレノアだけが不思議と落ち着いていた。
目の前の男は、味方ですらないのかもしれない。少なくとも、甘やかしてくれる人ではない。けれど、信じていい言葉だけを置いていく。
それがどれほど稀なことか、今のエレノアにはよく分かった。
「公爵様」
エレノアはようやく口を開いた。
「ありがたいお話です」
レオンハルトの視線が、まっすぐこちらへ向けられる。
「ただ、今すぐお受けするかどうかは、少しだけ考える時間をいただけますか」
「もちろんです」
彼の返答は早かった。
「私は急かすために来たのではありません」
「では、どうしてわざわざ屋敷まで?」
エレノアがそう問うと、レオンハルトはごく自然に答えた。
「この家の中で、あなたの価値が正当に扱われていないように見えたので」
ヴィオラが顔を引きつらせ、侯爵は露骨に目を逸らした。
あまりにも真っ直ぐすぎる。
けれど、嘘ではない。
エレノアは少しだけ目を伏せ、それから顔を上げた。
「……そうですか」
「ええ」
そこでようやく、レオンハルトの声音がほんの少しだけやわらいだ。
「それに、昨日の返事だけでは足りないと思った」
「昨日の?」
「あなたに、仕事として声をかける価値があると、言葉だけでなく形で示したかった」
その一言に、胸の奥が静かに揺れる。
言葉だけでなく、形で。
たしかに彼はそうした。
図書館で励ますだけで終わらず、今日こうして侯爵家へ来て、父たちの目の前で、自分の能力を評価し、依頼という形にして見せた。
それがどれほど強い意味を持つか、この場にいる全員が分かっている。
エレノアはゆっくりと一礼した。
「……ありがとうございます」
レオンハルトはわずかに頷く。
それ以上のやり取りは不要だというように。
やがて彼は退出のため立ち上がった。
侯爵も慌ててそれに続くが、もう場の主導権が戻ることはなかった。見送りの挨拶までのすべてが、レオンハルトの空気で進んでいく。
扉の前で、彼はふと足を止めた。
そして振り返り、エレノアへだけ聞こえるような絶妙な声量で言う。
「焦らずに考えてください」
「はい」
「ただし、遠慮は不要です」
その言葉を残して、彼は去った。
扉が閉まった瞬間、応接間に重い沈黙が落ちる。
最初にその静けさを破ったのは、ミレイユだった。
「……どういうことなの」
か細い声だったが、昨日までの甘い響きとは違った。そこには明らかな苛立ちと焦りが混じっている。
「お姉様、いつの間に公爵様とそんなふうに……」
“そんなふうに”。
つまり、自分に向けられたあの明確な評価と関心が気に入らないのだろう。
エレノアは義妹を見た。
「昨日、図書館でお会いしました」
「昨日!?」
ヴィオラが鋭く反応する。
侯爵も目を剥いた。
どうやら本当に知らなかったらしい。昨日、図書館で誰に会ったのかまでは問い詰めなかったのだろう。外へ出すなと言ったくせに、その先の管理は雑なものだ。
「クラウゼン公爵様から書簡をいただいておりましたので」
「どうしてそれをもっと詳しく……!」
侯爵が怒気を含んで言いかけるが、エレノアは静かに返す。
「申し上げましたわ。お父様は“侍女を伴え、長居はするな”とだけおっしゃいました」
侯爵が詰まる。
事実だからだ。
エレノアは続ける。
「それとも、どなたに会うかまで細かく管理なさるおつもりでしたか」
「そういうことではない!」
「でしたら、私に非はないかと」
ミレイユは悔しげに唇を噛んでいた。
昨日までなら、“婚約破棄された可哀想なお姉様”として見下ろせたはずの相手に、今日は冷徹公爵がわざわざ訪ねてきた。しかも仕事を依頼し、価値を認め、父母の前でそれを明言した。
面白いはずがない。
ヴィオラもまた、動揺を隠せないままだった。
「まさか……婚約破棄された翌日に、こんな……」
「翌日だからではありません」
エレノアは言った。
「私にできることがあるから、お声をかけていただいたのでしょう」
その言葉に、侯爵もヴィオラも黙る。
否定しにくいからだ。
目の前で公爵本人がそう言ったばかりなのだから。
エレノアは一度だけ父を見た。
「お父様」
「……何だ」
「昨日、私は家の火消しはもうしないと申し上げました」
侯爵の顔が険しくなる。
「今日もその考えは変わりません」
「エレノア」
「ですが、少なくとも一つだけ、はっきりしたことがあります」
エレノアは静かな声で言った。
「私のしてきたことには、価値があったのです」
それは父たちへの宣告でもあり、自分自身への確認でもあった。
今までこの家で便利に使われ、当たり前のように消費されてきたもの。それが、外から見ればちゃんと価値として通用する。しかも公爵家当主が、自分の名と足を使ってまで示した。
もう疑う必要はなかった。
侯爵は何も言えなかった。
ヴィオラも、ミレイユも。
言えば言うほど、自分たちがエレノアを正当に扱ってこなかったことを認めるだけになると分かってしまったのだろう。
エレノアは深く一礼した。
「失礼いたします」
今度は誰も止めなかった。
応接間を出て、長い廊下を歩く。
胸の奥が不思議と温かかった。
恋だとか、ときめきだとか、そういう甘いものとは少し違う。もっと静かで、もっと深いところがあたたまる感覚だった。
見てもらえた。
正しく。
しかも、ただ慰められたのではない。必要だと、頼みたいと、きちんと形で示された。
それがこんなにも心を支えるとは、昨日までの自分は知らなかった。
窓の外では、春の光が庭を明るく照らしていた。
エレノアは歩みを止めず、そのまま自室へ向かう。
冷徹公爵の訪問。
たったそれだけで、侯爵家の空気はまた変わった。
王太子に捨てられた娘ではない。
格上の公爵が価値を認める令嬢。
その見え方の変化は、これからもっと大きく響いていくはずだ。
そしてエレノア自身も、もう後戻りする気はなかった。
ここから先は、誰かに選ばれるために耐える人生ではない。
自分の価値を、自分の足で取り戻していく番なのだ。
翌朝、フェルベルク侯爵邸は奇妙な静けさに包まれていた。
嵐の前ではない。
嵐が一度通り過ぎたあと、壊れた窓や曲がった扉を見て、人がようやく青ざめ始めるときの静けさだった。
使用人たちはいつも以上に足音を殺して歩き、廊下では低い声のやり取りだけが交わされる。応接間へ出入りする者の数も増えていた。王宮からの使い、交易関係の書簡、急な面会希望、断りの返答。昨日のうちに噴き出した小さな綻びが、夜のあいだにもっと増えていたのだろう。
エレノアは窓辺でその空気を眺めながら、ゆっくりと茶を口に運んだ。
昨夜はよく眠れた。
完全に気が晴れたわけではない。まだ胸の奥には、長年積もった疲れのようなものが残っている。けれど、以前のように“明日も誰かの失敗を埋めに行かなければ”という重苦しさがないだけで、呼吸はずいぶん楽だった。
「お嬢様」
侍女が入室し、控えめに一礼する。
「何かしら」
「旦那様より、本日は外出を控えるようにとのお言葉です」
エレノアはカップを置いた。
「理由は?」
「王都で昨夜の件が予想以上に広まっているため、とのことでした」
「そう」
予想以上、という言葉に少しだけ笑いたくなる。
予想できなかったのだろうか。王太子が卒業舞踏会の場で婚約破棄を宣言し、隣に義妹を立たせたのだ。これ以上ないほど社交界向きの話題だというのに。
「ほかには?」
「できる限り部屋で静かに過ごすように、と」
「まるで病人ね」
「……申し訳ございません」
侍女が恐縮したので、エレノアは首を振った。
「あなたに言ったわけではないの。気にしないで」
つまり父は、自分を一時的に“見えない場所”へ置いておきたいのだろう。表へ出されると困る。だが完全に追い立てるにはまだ早い。だから部屋に置いておく。
ずいぶんと分かりやすい。
もっとも、エレノアにとってはそれほど不都合でもなかった。無理に表へ出る気もなかったし、今はまだ周囲が勝手に騒いでくれたほうが都合がいい。
「分かったわ。今日は出ないでおく」
そう答えると、侍女はほっとしたように頭を下げた。
午前中は静かに本を読んで過ごした。
だが文字を追いながらも、耳には屋敷のざわめきが薄く届いていた。廊下を行く早足。扉の開閉。ときおり遠くで上がる、ヴィオラの高い声。何かが思い通りに進んでいない証拠だ。
正午を少し過ぎた頃、執事が訪ねてきた。
「お嬢様、おくつろぎのところ失礼いたします」
「どうぞ」
執事は入室すると、いつも通りきっちりと一礼した。だが今日の彼は、わずかに緊張して見えた。
「何かあったのね」
「……はい」
やはり、と思う。
「旦那様がお呼びです。至急、正面応接間へとのこと」
「お父様が?」
「はい。先ほど、急な来客がございまして」
来客。
その一言だけで、少し空気が変わった。
王宮からの使いなら、執事はもっと事務的に伝えるはずだ。急な来客、とわざわざ言うからには、予想外の相手なのだろう。
「どなたがお見えなの」
執事はほんの一瞬間を置いてから答えた。
「クラウゼン公爵閣下にございます」
エレノアは思わずまばたきをした。
レオンハルトが。
このフェルベルク侯爵邸へ。
「……突然ですのね」
「旦那様もそのようで、かなり驚かれております」
それはそうだろう。
クラウゼン公爵家ほどの家格の者が、事前の十分な打診もなく侯爵家を訪れるのは異例だ。しかも今の侯爵家は、婚約破棄騒動のど真ん中にある。好意的な訪問とは限らないと誰もが身構える。
けれど、エレノアには妙な確信があった。
あの人は無意味なことはしない。
来たなら、来た理由がある。
「分かったわ。すぐに向かいます」
支度を整えながら、鏡の前で自分の表情を確認する。
驚きはある。だが不安はなかった。
むしろ、少しだけ胸が落ち着くのを感じる。
昨日の図書館で交わした言葉が、思いのほか心の中に残っていたのかもしれない。誰にも見られていないと思っていた自分を見ていた人。しかも、そのことを綺麗ごとではなく、必要な言葉だけで伝えてくれた人。
正面応接間の前まで来ると、中から父の妙に張り詰めた声が聞こえた。
「……ですから、昨夜の件は誠に遺憾ではございますが、家としても今後慎重に……」
その声を遮るような低い男の声。
「慎重に、ですか」
レオンハルトだ。
静かなのに、不思議と空気を奪う声だった。
執事が扉を開ける。
「エレノアお嬢様をお連れいたしました」
室内の空気がぴんと張った。
侯爵、ヴィオラ、そしてミレイユまでいた。ミレイユはなぜここにいるのかと言いたくなるが、きっと“家の大事なお客様”の前で可憐な娘を演じるつもりなのだろう。
その正面、長椅子に腰かけていたレオンハルトがこちらを見る。
濃い灰色の礼装に身を包み、手袋を外した片手を杖の頭に軽く置いている。姿勢は崩れていない。愛想よく笑ってもいない。けれど彼がそこにいるだけで、応接間の主導権が誰のものかは明らかだった。
「突然の訪問にもかかわらず、お時間をいただき感謝いたします」
彼は立ち上がり、まずエレノアに向かってそう言った。
侯爵家当主ではなく、エレノアに。
その時点で、父の顔がさらに硬くなる。
「公爵様」
エレノアは一礼した。
「お招きもしていないのにお越しいただくことになるとは思いませんでした」
「招かれなければ来てはいけない状況でもないと判断しました」
真顔でそんなことを言うものだから、少しだけおかしい。
もちろん声に出して笑ったりはしないが、エレノアの口元はわずかに緩んだらしい。レオンハルトの目がほんの少しだけやわらいだ。
侯爵が咳払いをして割って入る。
「クラウゼン公爵閣下。本日はどのようなご用件で」
レオンハルトはようやく侯爵のほうを向いた。
「単刀直入に申し上げます」
その一言で、室内の空気がさらに張る。
「エレノア嬢に、我が領の運営について助力をお願いしたいと思い、参りました」
侯爵が固まった。
ヴィオラも口を開けたまま止まる。
ミレイユに至っては、目を見開いてレオンハルトとエレノアを交互に見ていた。
当然だろう。
婚約破棄されたばかりの令嬢に、公爵家当主が直々に仕事を依頼しに来る。しかも家ではなく、本人に。
それはほとんど、“あなたには価値がある”と公言するに等しい。
「助力……ですか」
侯爵がようやく絞り出すように言った。
「ええ」
レオンハルトは淡々としていた。
「以前より、エレノア嬢の調整能力と事務処理の正確さは目にしておりました。我が領でも、春からいくつか再編を進めており、その補佐としてぜひ力をお借りしたい」
補佐。
控えめな言い方だったが、わざとだろう。
レオンハルトほどの男が、ただの気まぐれでこんな場へ来るはずがない。しかも“以前より目にしていた”とまで言った。父や継母の前で、エレノアの能力を明言しているのだ。
侯爵は露骨に動揺していた。
「い、いや、しかし……エレノアはまだ家の娘でして」
「存じています」
「それに、昨夜の件もあって心身ともに疲れている時期です。とても今すぐそのような……」
「それは本人が決めることでは?」
静かな声だった。
だが侯爵はその一言で押し黙った。
レオンハルトは続ける。
「私はフェルベルク侯爵家に、娘を譲れと申しているわけではありません。エレノア嬢本人に、依頼をしているのです」
エレノアはその言葉を聞きながら、胸の奥が少しずつ熱を帯びるのを感じた。
本人に、依頼している。
家ではなく。
父ではなく。
“侯爵家の娘だから”でもなく。
自分という個人に。
ヴィオラが慌てたように口を挟んだ。
「でも、エレノアはその……まだ立場も不安定で……社交上も色々と難しいのでは……」
「社交上、ですか」
レオンハルトがごく薄く目を細める。
「王太子殿下に公開の場で婚約破棄され、その翌日には家の中で表に出るなとでも言われているような状況より、我が公爵家の仕事に関わるほうがよほど健全かと思いますが」
空気が凍った。
侯爵もヴィオラも顔色を失う。
図星を刺されたからだ。
しかも“言われているような”という形を取りながら、ほとんど確信している言い方だった。
ミレイユが小さな声を上げる。
「公爵様……それは少し、誤解が……」
「誤解でしょうか」
レオンハルトは初めてミレイユを見た。
その視線には、温度がなかった。
昨日図書館で見せたような静かなやわらぎもなければ、社交用の上辺の優しさもない。まさに噂通りの冷徹さが、そこにはあった。
「では、義妹殿は、昨夜の件でエレノア嬢の名誉が傷つかなかったとお考えで?」
ミレイユが言葉に詰まる。
「そ、それは……傷ついたとは思います。でも、殿下と私が……」
「真実の愛、ですか」
淡々とした声音なのに、切れ味が鋭すぎる。
ミレイユは顔を赤くした。羞恥ではない。苛立ちと焦りだろう。自分の得意な“可哀想で無垢な少女”の演技が、この男には一切効いていない。
「……殿下は、お姉様より私を選んでくださっただけです」
ようやくそう返すと、レオンハルトはほんの一拍沈黙した。
そして、容赦なく言う。
「それを誇るのは、少々早いかと」
応接間がしんと静まり返った。
ミレイユの目が大きく見開かれる。
ヴィオラが青ざめ、侯爵は何か言おうとして言葉を失った。
あまりに直截だった。
だが、誰も反論できない。
王太子に選ばれたことだけでは、まだ何ひとつ成し遂げていないのだから。
エレノアは、少しだけ息を整えた。
この人は本当に容赦がない。
けれど、不思議と不快ではなかった。
むしろ、誰も言わなかったことを、誰にも媚びずに言い切る姿は見事ですらあった。
レオンハルトは再びエレノアへ向き直る。
「話を戻します」
まるで今のやり取りなど、ただの余談だったと言わんばかりだった。
「もちろん、すぐに返答を求めるつもりはありません。ですが、我が領で新たに整える必要のある部分は多い。人員配置、会計の整理、取引先との折衝、招待客の選定。あなたなら十分に力を発揮できると考えています」
一つ一つの語が、きちんと職務として並べられている。
慰めのための居場所ではない。
可哀想だから保護するのでもない。
できるから頼む。
その明確さが、ひどくエレノアの胸に響いた。
「なぜ、私に」
そう尋ねると、レオンハルトは当然のように答えた。
「できる方に頼むのは当然でしょう」
その一言で、ヴィオラがあからさまに息を呑んだ。
ミレイユも、父でさえも、何も言えない顔をしている。
この屋敷でエレノアは、長い間“いて当然の娘”だった。多少有能でも、我慢強くても、それは評価されるものではなく、ただ便利に使われるだけのものだった。
けれど今、王国有数の公爵が、それを真正面から価値として扱っている。
その事実は、何より雄弁だった。
侯爵がようやく低い声で言った。
「……エレノアは、まだ婚約破棄の余波の中におります。軽々しく外の仕事に出すわけには」
「外の仕事、ですか」
レオンハルトはかすかに眉を上げた。
「侯爵閣下。失礼ながら、エレノア嬢はすでに“外の仕事”どころか、王太子殿下の周辺を長らく実務で支えてこられたようですが」
父の顔が、今度こそはっきりと強張った。
やはりそこまで把握しているのだ。
エレノアは内心で小さく息をつく。
父にとって最も痛いのは、エレノアの価値を他家の、それも格上の公爵が理解していることだろう。そして自分は、今の今までそれを正面から認めもしなかった。
「私は」
レオンハルトは静かに言った。
「人を“誰の娘か”より、“何ができるか”で見ます」
その言葉は、応接間の空気をまっすぐ裂いた。
ミレイユが唇を噛む。
侯爵は返す言葉を探しているが見つからない。
ヴィオラは明らかに、この場が自分たちに不利だと気づいて怯えている。
その中で、エレノアだけが不思議と落ち着いていた。
目の前の男は、味方ですらないのかもしれない。少なくとも、甘やかしてくれる人ではない。けれど、信じていい言葉だけを置いていく。
それがどれほど稀なことか、今のエレノアにはよく分かった。
「公爵様」
エレノアはようやく口を開いた。
「ありがたいお話です」
レオンハルトの視線が、まっすぐこちらへ向けられる。
「ただ、今すぐお受けするかどうかは、少しだけ考える時間をいただけますか」
「もちろんです」
彼の返答は早かった。
「私は急かすために来たのではありません」
「では、どうしてわざわざ屋敷まで?」
エレノアがそう問うと、レオンハルトはごく自然に答えた。
「この家の中で、あなたの価値が正当に扱われていないように見えたので」
ヴィオラが顔を引きつらせ、侯爵は露骨に目を逸らした。
あまりにも真っ直ぐすぎる。
けれど、嘘ではない。
エレノアは少しだけ目を伏せ、それから顔を上げた。
「……そうですか」
「ええ」
そこでようやく、レオンハルトの声音がほんの少しだけやわらいだ。
「それに、昨日の返事だけでは足りないと思った」
「昨日の?」
「あなたに、仕事として声をかける価値があると、言葉だけでなく形で示したかった」
その一言に、胸の奥が静かに揺れる。
言葉だけでなく、形で。
たしかに彼はそうした。
図書館で励ますだけで終わらず、今日こうして侯爵家へ来て、父たちの目の前で、自分の能力を評価し、依頼という形にして見せた。
それがどれほど強い意味を持つか、この場にいる全員が分かっている。
エレノアはゆっくりと一礼した。
「……ありがとうございます」
レオンハルトはわずかに頷く。
それ以上のやり取りは不要だというように。
やがて彼は退出のため立ち上がった。
侯爵も慌ててそれに続くが、もう場の主導権が戻ることはなかった。見送りの挨拶までのすべてが、レオンハルトの空気で進んでいく。
扉の前で、彼はふと足を止めた。
そして振り返り、エレノアへだけ聞こえるような絶妙な声量で言う。
「焦らずに考えてください」
「はい」
「ただし、遠慮は不要です」
その言葉を残して、彼は去った。
扉が閉まった瞬間、応接間に重い沈黙が落ちる。
最初にその静けさを破ったのは、ミレイユだった。
「……どういうことなの」
か細い声だったが、昨日までの甘い響きとは違った。そこには明らかな苛立ちと焦りが混じっている。
「お姉様、いつの間に公爵様とそんなふうに……」
“そんなふうに”。
つまり、自分に向けられたあの明確な評価と関心が気に入らないのだろう。
エレノアは義妹を見た。
「昨日、図書館でお会いしました」
「昨日!?」
ヴィオラが鋭く反応する。
侯爵も目を剥いた。
どうやら本当に知らなかったらしい。昨日、図書館で誰に会ったのかまでは問い詰めなかったのだろう。外へ出すなと言ったくせに、その先の管理は雑なものだ。
「クラウゼン公爵様から書簡をいただいておりましたので」
「どうしてそれをもっと詳しく……!」
侯爵が怒気を含んで言いかけるが、エレノアは静かに返す。
「申し上げましたわ。お父様は“侍女を伴え、長居はするな”とだけおっしゃいました」
侯爵が詰まる。
事実だからだ。
エレノアは続ける。
「それとも、どなたに会うかまで細かく管理なさるおつもりでしたか」
「そういうことではない!」
「でしたら、私に非はないかと」
ミレイユは悔しげに唇を噛んでいた。
昨日までなら、“婚約破棄された可哀想なお姉様”として見下ろせたはずの相手に、今日は冷徹公爵がわざわざ訪ねてきた。しかも仕事を依頼し、価値を認め、父母の前でそれを明言した。
面白いはずがない。
ヴィオラもまた、動揺を隠せないままだった。
「まさか……婚約破棄された翌日に、こんな……」
「翌日だからではありません」
エレノアは言った。
「私にできることがあるから、お声をかけていただいたのでしょう」
その言葉に、侯爵もヴィオラも黙る。
否定しにくいからだ。
目の前で公爵本人がそう言ったばかりなのだから。
エレノアは一度だけ父を見た。
「お父様」
「……何だ」
「昨日、私は家の火消しはもうしないと申し上げました」
侯爵の顔が険しくなる。
「今日もその考えは変わりません」
「エレノア」
「ですが、少なくとも一つだけ、はっきりしたことがあります」
エレノアは静かな声で言った。
「私のしてきたことには、価値があったのです」
それは父たちへの宣告でもあり、自分自身への確認でもあった。
今までこの家で便利に使われ、当たり前のように消費されてきたもの。それが、外から見ればちゃんと価値として通用する。しかも公爵家当主が、自分の名と足を使ってまで示した。
もう疑う必要はなかった。
侯爵は何も言えなかった。
ヴィオラも、ミレイユも。
言えば言うほど、自分たちがエレノアを正当に扱ってこなかったことを認めるだけになると分かってしまったのだろう。
エレノアは深く一礼した。
「失礼いたします」
今度は誰も止めなかった。
応接間を出て、長い廊下を歩く。
胸の奥が不思議と温かかった。
恋だとか、ときめきだとか、そういう甘いものとは少し違う。もっと静かで、もっと深いところがあたたまる感覚だった。
見てもらえた。
正しく。
しかも、ただ慰められたのではない。必要だと、頼みたいと、きちんと形で示された。
それがこんなにも心を支えるとは、昨日までの自分は知らなかった。
窓の外では、春の光が庭を明るく照らしていた。
エレノアは歩みを止めず、そのまま自室へ向かう。
冷徹公爵の訪問。
たったそれだけで、侯爵家の空気はまた変わった。
王太子に捨てられた娘ではない。
格上の公爵が価値を認める令嬢。
その見え方の変化は、これからもっと大きく響いていくはずだ。
そしてエレノア自身も、もう後戻りする気はなかった。
ここから先は、誰かに選ばれるために耐える人生ではない。
自分の価値を、自分の足で取り戻していく番なのだ。
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