29 / 40
第二十九話 君は……冷たすぎないか?
しおりを挟む
第二十九話 君は……冷たすぎないか?
その言葉は、
思っていたよりも静かに放たれた。
だからこそ、
アバンダンティアの中で、
はっきりと響いた。
「君は……冷たすぎないか?」
場所は、
マーキュリーの屋敷の応接室だった。
公務の打ち合わせを終え、
必要な書類も片付け、
侍従も下がらせた後。
いわば、
公式でも非公式でもない、
中途半端な時間。
だからこそ、
本音が零れたのだろう。
アバンダンティアは、
すぐには答えなかった。
沈黙は、
彼女にとって防御ではない。
思考の時間だった。
「……どういう意味でしょう」
問い返す声は、
穏やかだった。
感情を煽るための
反問ではない。
純粋な確認。
マーキュリーは、
一瞬だけ視線を逸らし、
それから言葉を選ぶように口を開く。
「君は、
何が起きても、
動じない」
「ええ」
「良いことだ。
それは理解している」
彼はそう前置きした。
だが――
その後に続く言葉が、
本題だった。
「だが、
自分のことですら、
距離を置いて見ているように見える」
アバンダンティアは、
小さく瞬きをする。
なるほど、と
心の中で頷いた。
(そこに、
辿り着きましたのね)
彼女が返事をしないのを、
拒絶だと受け取ったのか、
マーキュリーは続けた。
「婚約してから、
君は変わっていない」
「変わる必要が、
ありますか?」
即答だった。
だが、
攻撃的な響きはない。
事実確認の延長だ。
「……普通は」
マーキュリーは、
言葉に詰まる。
「普通は、
もう少し……」
彼は、
そこで言葉を切った。
代わりに、
息を吐く。
「期待するものが、
あるだろう」
その瞬間、
アバンダンティアは理解した。
彼が口にしたのは、
非難ではない。
不安だ。
「期待、ですか」
「そうだ」
マーキュリーは頷く。
「喜びとか、
怒りとか、
戸惑いとか……」
彼は言葉を探す。
「そういうものを、
共有したいと思うのは、
不自然だろうか」
アバンダンティアは、
少しだけ考えた。
彼の言葉は、
誠実だった。
支配でも、
軽視でもない。
だが――
そこに、
決定的な前提の違いがある。
「不自然ではありませんわ」
彼女は、
静かに答えた。
「ただ、
前提が違うだけです」
「前提?」
「ええ」
アバンダンティアは、
視線を上げる。
「あなたは、
共有することで
関係が深まると考えている」
「違うのか?」
「わたくしは」
彼女は、
一拍置いた。
「関係とは、
共有の量ではなく、
選択の尊重で成り立つと
考えています」
マーキュリーは、
眉をひそめる。
「それは……
少し、冷たく聞こえる」
「そうでしょうね」
アバンダンティアは、
否定しなかった。
「だから、
あなたは今、
そう言ったのですもの」
沈黙が落ちる。
その間に、
アバンダンティアは、
自分の内側を確認する。
怒りはない。
苛立ちもない。
あるのは、
構造の理解だけ。
「あなたは、
わたくしが
当事者になっていないと
感じている」
「……ああ」
「でも」
彼女は続けた。
「当事者になることと、
感情を外に出すことは、
同義ではありません」
マーキュリーは、
黙ったまま聞いている。
「わたくしは、
逃げていません」
「そうは見えない」
「見えないのは、
わたくしが
騒がないからですわ」
彼女は、
淡々と言う。
「泣きませんし、
怒鳴りませんし、
詰め寄りません」
「それが……
距離を感じさせる」
マーキュリーの声は、
少し低くなった。
アバンダンティアは、
その変化を逃さない。
(評価されたい、
理解されたい)
その欲求が、
彼の中で、
形を取り始めている。
「距離があるのではなく」
彼女は、
穏やかに言う。
「距離を
測り続けているだけです」
「測る?」
「はい」
彼女は、
微笑んだ。
「わたくしは、
自分の立ち位置を
曖昧にしたくありませんの」
マーキュリーは、
少し強い口調になる。
「だが、
婚約者だ」
「ええ」
「婚約者なら、
もう少し……」
「踏み込むべき、
と?」
彼女は、
静かに言葉を重ねる。
「それは、
誰の判断ですか?」
マーキュリーは、
言葉に詰まる。
「……世間だ」
彼は、
ようやくそう答えた。
その瞬間、
アバンダンティアの中で、
すべてが繋がる。
(やはり、
そこですわね)
「世間、ですか」
彼女は、
小さく頷いた。
「それなら、
なおさらです」
「なぜだ?」
「世間は、
当事者ではありませんもの」
マーキュリーは、
息を飲む。
アバンダンティアは、
続けた。
「わたくしは、
世間の期待に
振る舞いを合わせるために、
婚約したわけではありません」
「……では、
何のために?」
その問いは、
核心に近かった。
アバンダンティアは、
少しだけ考え、
正直に答える。
「価値観が、
合うと思ったからです」
「今は?」
「今も、
合っています」
彼女は、
はっきり言った。
「ただし」
マーキュリーは、
身構える。
「合っているのは、
観察者としての部分です」
沈黙。
「当事者としての部分は、
今、
ズレ始めている」
それは、
断罪ではない。
報告だった。
マーキュリーは、
苦い表情を浮かべる。
「つまり……
俺が変わったと?」
「変わった、
というより」
アバンダンティアは、
言葉を選ぶ。
「役割を
一つ増やしただけですわ」
「役割?」
「判断する側、
導く側、
正解を示す側」
彼女は、
淡々と列挙する。
「それ自体は、
悪くありません」
「だが」
マーキュリーが、
低く言った。
「それを
拒んでいるように
見える」
アバンダンティアは、
首を横に振る。
「拒んでいません」
そして、
静かに告げる。
「ただ、
わたくしは
従属するつもりが
ないだけです」
その言葉は、
柔らかかった。
だが、
揺るがなかった。
マーキュリーは、
しばらく黙っていた。
やがて、
ぽつりと言う。
「……君は、
本当に冷静だな」
「ええ」
アバンダンティアは、
頷く。
「それが、
わたくしですから」
その返答に、
マーキュリーは
何も言えなかった。
部屋に残ったのは、
解決ではなく、
理解でもない。
ただ、
明確になったズレ。
そして、
それを無視できなくなった
事実だけだった。
アバンダンティアは、
内心で静かに結論づける。
(ここから先は、
選択ですわね)
関係を
調整するのか。
構造を
受け入れるのか。
あるいは――
別の形に
変換するのか。
彼女は、
まだ何も決めていない。
だが、
一つだけ確かなことがある。
この会話で、
歯車は
確実に音を立て始めた。
それが、
どこへ向かう音なのか。
それを見極めるのが、
次の段階だった。
その言葉は、
思っていたよりも静かに放たれた。
だからこそ、
アバンダンティアの中で、
はっきりと響いた。
「君は……冷たすぎないか?」
場所は、
マーキュリーの屋敷の応接室だった。
公務の打ち合わせを終え、
必要な書類も片付け、
侍従も下がらせた後。
いわば、
公式でも非公式でもない、
中途半端な時間。
だからこそ、
本音が零れたのだろう。
アバンダンティアは、
すぐには答えなかった。
沈黙は、
彼女にとって防御ではない。
思考の時間だった。
「……どういう意味でしょう」
問い返す声は、
穏やかだった。
感情を煽るための
反問ではない。
純粋な確認。
マーキュリーは、
一瞬だけ視線を逸らし、
それから言葉を選ぶように口を開く。
「君は、
何が起きても、
動じない」
「ええ」
「良いことだ。
それは理解している」
彼はそう前置きした。
だが――
その後に続く言葉が、
本題だった。
「だが、
自分のことですら、
距離を置いて見ているように見える」
アバンダンティアは、
小さく瞬きをする。
なるほど、と
心の中で頷いた。
(そこに、
辿り着きましたのね)
彼女が返事をしないのを、
拒絶だと受け取ったのか、
マーキュリーは続けた。
「婚約してから、
君は変わっていない」
「変わる必要が、
ありますか?」
即答だった。
だが、
攻撃的な響きはない。
事実確認の延長だ。
「……普通は」
マーキュリーは、
言葉に詰まる。
「普通は、
もう少し……」
彼は、
そこで言葉を切った。
代わりに、
息を吐く。
「期待するものが、
あるだろう」
その瞬間、
アバンダンティアは理解した。
彼が口にしたのは、
非難ではない。
不安だ。
「期待、ですか」
「そうだ」
マーキュリーは頷く。
「喜びとか、
怒りとか、
戸惑いとか……」
彼は言葉を探す。
「そういうものを、
共有したいと思うのは、
不自然だろうか」
アバンダンティアは、
少しだけ考えた。
彼の言葉は、
誠実だった。
支配でも、
軽視でもない。
だが――
そこに、
決定的な前提の違いがある。
「不自然ではありませんわ」
彼女は、
静かに答えた。
「ただ、
前提が違うだけです」
「前提?」
「ええ」
アバンダンティアは、
視線を上げる。
「あなたは、
共有することで
関係が深まると考えている」
「違うのか?」
「わたくしは」
彼女は、
一拍置いた。
「関係とは、
共有の量ではなく、
選択の尊重で成り立つと
考えています」
マーキュリーは、
眉をひそめる。
「それは……
少し、冷たく聞こえる」
「そうでしょうね」
アバンダンティアは、
否定しなかった。
「だから、
あなたは今、
そう言ったのですもの」
沈黙が落ちる。
その間に、
アバンダンティアは、
自分の内側を確認する。
怒りはない。
苛立ちもない。
あるのは、
構造の理解だけ。
「あなたは、
わたくしが
当事者になっていないと
感じている」
「……ああ」
「でも」
彼女は続けた。
「当事者になることと、
感情を外に出すことは、
同義ではありません」
マーキュリーは、
黙ったまま聞いている。
「わたくしは、
逃げていません」
「そうは見えない」
「見えないのは、
わたくしが
騒がないからですわ」
彼女は、
淡々と言う。
「泣きませんし、
怒鳴りませんし、
詰め寄りません」
「それが……
距離を感じさせる」
マーキュリーの声は、
少し低くなった。
アバンダンティアは、
その変化を逃さない。
(評価されたい、
理解されたい)
その欲求が、
彼の中で、
形を取り始めている。
「距離があるのではなく」
彼女は、
穏やかに言う。
「距離を
測り続けているだけです」
「測る?」
「はい」
彼女は、
微笑んだ。
「わたくしは、
自分の立ち位置を
曖昧にしたくありませんの」
マーキュリーは、
少し強い口調になる。
「だが、
婚約者だ」
「ええ」
「婚約者なら、
もう少し……」
「踏み込むべき、
と?」
彼女は、
静かに言葉を重ねる。
「それは、
誰の判断ですか?」
マーキュリーは、
言葉に詰まる。
「……世間だ」
彼は、
ようやくそう答えた。
その瞬間、
アバンダンティアの中で、
すべてが繋がる。
(やはり、
そこですわね)
「世間、ですか」
彼女は、
小さく頷いた。
「それなら、
なおさらです」
「なぜだ?」
「世間は、
当事者ではありませんもの」
マーキュリーは、
息を飲む。
アバンダンティアは、
続けた。
「わたくしは、
世間の期待に
振る舞いを合わせるために、
婚約したわけではありません」
「……では、
何のために?」
その問いは、
核心に近かった。
アバンダンティアは、
少しだけ考え、
正直に答える。
「価値観が、
合うと思ったからです」
「今は?」
「今も、
合っています」
彼女は、
はっきり言った。
「ただし」
マーキュリーは、
身構える。
「合っているのは、
観察者としての部分です」
沈黙。
「当事者としての部分は、
今、
ズレ始めている」
それは、
断罪ではない。
報告だった。
マーキュリーは、
苦い表情を浮かべる。
「つまり……
俺が変わったと?」
「変わった、
というより」
アバンダンティアは、
言葉を選ぶ。
「役割を
一つ増やしただけですわ」
「役割?」
「判断する側、
導く側、
正解を示す側」
彼女は、
淡々と列挙する。
「それ自体は、
悪くありません」
「だが」
マーキュリーが、
低く言った。
「それを
拒んでいるように
見える」
アバンダンティアは、
首を横に振る。
「拒んでいません」
そして、
静かに告げる。
「ただ、
わたくしは
従属するつもりが
ないだけです」
その言葉は、
柔らかかった。
だが、
揺るがなかった。
マーキュリーは、
しばらく黙っていた。
やがて、
ぽつりと言う。
「……君は、
本当に冷静だな」
「ええ」
アバンダンティアは、
頷く。
「それが、
わたくしですから」
その返答に、
マーキュリーは
何も言えなかった。
部屋に残ったのは、
解決ではなく、
理解でもない。
ただ、
明確になったズレ。
そして、
それを無視できなくなった
事実だけだった。
アバンダンティアは、
内心で静かに結論づける。
(ここから先は、
選択ですわね)
関係を
調整するのか。
構造を
受け入れるのか。
あるいは――
別の形に
変換するのか。
彼女は、
まだ何も決めていない。
だが、
一つだけ確かなことがある。
この会話で、
歯車は
確実に音を立て始めた。
それが、
どこへ向かう音なのか。
それを見極めるのが、
次の段階だった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~
村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。
だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。
私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。
……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。
しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。
えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた?
いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?
ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」
華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。
目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。
──あら、デジャヴ?
「……なるほど」
【完結】離縁王妃アデリアは故郷で聖姫と崇められています ~冤罪で捨てられた王妃、地元に戻ったら領民に愛され「聖姫」と呼ばれていました~
猫燕
恋愛
「――そなたとの婚姻を破棄する。即刻、王宮を去れ」
王妃としての5年間、私はただ国を支えていただけだった。
王妃アデリアは、側妃ラウラの嘘と王の独断により、「毒を盛った」という冤罪で突然の離縁を言い渡された。「ただちに城を去れ」と宣告されたアデリアは静かに王宮を去り、生まれ故郷・ターヴァへと向かう。
しかし、領地の国境を越えた彼女を待っていたのは、驚くべき光景だった。
迎えに来たのは何百もの領民、兄、彼女の帰還に歓喜する侍女たち。
かつて王宮で軽んじられ続けたアデリアの政策は、故郷では“奇跡”として受け継がれ、領地を繁栄へ導いていたのだ。実際は薬学・医療・農政・内政の天才で、治癒魔法まで操る超有能王妃だった。
故郷の温かさに癒やされ、彼女の有能さが改めて証明されると、その評判は瞬く間に近隣諸国へ広がり──
“冷徹の皇帝”と恐れられる隣国の若き皇帝・カリオンが現れる。
皇帝は彼女の才覚と優しさに心を奪われ、「私はあなたを守りたい」と静かに誓う。
冷徹と恐れられる彼が、なぜかターヴァ領に何度も通うようになり――「君の価値を、誰よりも私が知っている」「アデリア・ターヴァ。君の全てを、私のものにしたい」
一方その頃――アデリアを失った王国は急速に荒れ、疫病、飢饉、魔物被害が連鎖し、内政は崩壊。国王はようやく“失ったものの価値”を理解し始めるが、もう遅い。
追放された王妃は、故郷で神と崇められ、最強の溺愛皇帝に娶られる!「あなたが望むなら、帝国も全部君のものだ」――これは、誰からも理解されなかった“本物の聖女”が、
ようやく正当に愛され、報われる物語。
※「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる