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第39話 示された行動と、動き出す世界
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第39話 示された行動と、動き出す世界
対話から三日。
王都は、奇妙なほど静かだった。
噂が止んだわけではない。
むしろ、その逆だ。
人々は皆、次の動きを待っている。
(……言葉の後は、行動)
それが、あの場で私が突きつけた条件だった。
別邸の朝。
私は書斎で紅茶を飲みながら、
王城から届いた報告書に目を通していた。
「お嬢様」
マルタが、珍しく歩調を速めて入ってくる。
「動きがございました」
私は、顔を上げた。
「殿下ですか」
「はい。
本日早朝、
王太子殿下は――
ご自身の名で、
三つの決定を下されました」
三つ。
その数に、私は小さく息を整えた。
「一つ目。
バロワ子爵家に対する、
正式な調査命令です」
私は、黙って頷いた。
(……逃げませんでしたわね)
これまでなら、
誰かに任せ、
誰かの責任にしていた案件。
それを、
自分の名で切り出した。
「二つ目。
過去の婚約破棄に関する経緯を、
王城記録として整理し、
公文書として残す決定」
私は、思わず目を伏せた。
(……これは)
忘却ではなく、
記録。
誰かを守るために
曖昧にされてきた出来事を、
歴史として残すという選択。
「そして三つ目」
マルタは、
一瞬だけ言葉を切った。
「殿下は、
“今後、婚姻に関する判断は、
すべて自身の責任において行う”
と、
明文化されました」
私は、静かに目を閉じた。
(……重いですわ)
王太子という立場で、
それを言葉にし、
文書に残す。
それは、
周囲の助言を否定することではない。
だが――
最終責任から逃げない、
という宣言だ。
「王都の反応は?」
「混乱と……
驚きが大きいようです」
当然だろう。
沈黙に慣れ、
曖昧さに身を委ねていた世界が、
突然、
“決断”という現実を突きつけられたのだから。
昼前、父の書斎に呼ばれた。
父は、
いつもより背筋を伸ばし、
書類を読み込んでいた。
「やったな、王太子」
「はい」
「三つとも、
簡単な決定ではない」
私は、静かに答える。
「だからこそ、
意味があります」
父は、
こちらをじっと見つめた。
「……お前は、
これをどう見る」
私は、
少し考えてから言った。
「条件は、
満たされ始めています」
「“始めている”、か」
「ええ」
覚悟は、
一度示して終わりではない。
続かなければ、
意味を持たない。
午後、王都から一通の書簡が届いた。
差出人は、
王太子ユージェーヌ。
簡潔な文面だった。
> あなたが示した条件を、
私は行動で応える。
評価も、返答も、
急がなくていい。
ただ、
見ていてほしい。
私は、
その書簡をそっと閉じた。
(……見ていますわ)
だからこそ、
軽々しく頷けない。
夕方、別邸の庭を歩きながら、
私は空を見上げた。
雲は流れ、
空気は動いている。
沈黙の時代は、
確実に終わりつつあった。
だが――
新しい時代は、
まだ形を持たない。
夜。
寝室のランプの下で、
私は今日一日を振り返る。
言葉の次に、
行動が示された。
それは、
約束を果たすための、
第一歩。
だが、
世界はすでに動き始めている。
王太子の行動により、
沈黙を利用していた者たちは、
居場所を失い始めた。
同時に、
覚悟を持つ者だけが、
前に出られる。
私は、
まだ何も決めていない。
だが――
決めないままでいられる時間は、
確実に減っている。
(……最後は)
選ぶのは、
私自身だ。
誰かのためでも、
流れのためでもない。
世界が動き出した今、
私もまた、
自分の一歩を選ぶ時が、
近づいていた。
対話から三日。
王都は、奇妙なほど静かだった。
噂が止んだわけではない。
むしろ、その逆だ。
人々は皆、次の動きを待っている。
(……言葉の後は、行動)
それが、あの場で私が突きつけた条件だった。
別邸の朝。
私は書斎で紅茶を飲みながら、
王城から届いた報告書に目を通していた。
「お嬢様」
マルタが、珍しく歩調を速めて入ってくる。
「動きがございました」
私は、顔を上げた。
「殿下ですか」
「はい。
本日早朝、
王太子殿下は――
ご自身の名で、
三つの決定を下されました」
三つ。
その数に、私は小さく息を整えた。
「一つ目。
バロワ子爵家に対する、
正式な調査命令です」
私は、黙って頷いた。
(……逃げませんでしたわね)
これまでなら、
誰かに任せ、
誰かの責任にしていた案件。
それを、
自分の名で切り出した。
「二つ目。
過去の婚約破棄に関する経緯を、
王城記録として整理し、
公文書として残す決定」
私は、思わず目を伏せた。
(……これは)
忘却ではなく、
記録。
誰かを守るために
曖昧にされてきた出来事を、
歴史として残すという選択。
「そして三つ目」
マルタは、
一瞬だけ言葉を切った。
「殿下は、
“今後、婚姻に関する判断は、
すべて自身の責任において行う”
と、
明文化されました」
私は、静かに目を閉じた。
(……重いですわ)
王太子という立場で、
それを言葉にし、
文書に残す。
それは、
周囲の助言を否定することではない。
だが――
最終責任から逃げない、
という宣言だ。
「王都の反応は?」
「混乱と……
驚きが大きいようです」
当然だろう。
沈黙に慣れ、
曖昧さに身を委ねていた世界が、
突然、
“決断”という現実を突きつけられたのだから。
昼前、父の書斎に呼ばれた。
父は、
いつもより背筋を伸ばし、
書類を読み込んでいた。
「やったな、王太子」
「はい」
「三つとも、
簡単な決定ではない」
私は、静かに答える。
「だからこそ、
意味があります」
父は、
こちらをじっと見つめた。
「……お前は、
これをどう見る」
私は、
少し考えてから言った。
「条件は、
満たされ始めています」
「“始めている”、か」
「ええ」
覚悟は、
一度示して終わりではない。
続かなければ、
意味を持たない。
午後、王都から一通の書簡が届いた。
差出人は、
王太子ユージェーヌ。
簡潔な文面だった。
> あなたが示した条件を、
私は行動で応える。
評価も、返答も、
急がなくていい。
ただ、
見ていてほしい。
私は、
その書簡をそっと閉じた。
(……見ていますわ)
だからこそ、
軽々しく頷けない。
夕方、別邸の庭を歩きながら、
私は空を見上げた。
雲は流れ、
空気は動いている。
沈黙の時代は、
確実に終わりつつあった。
だが――
新しい時代は、
まだ形を持たない。
夜。
寝室のランプの下で、
私は今日一日を振り返る。
言葉の次に、
行動が示された。
それは、
約束を果たすための、
第一歩。
だが、
世界はすでに動き始めている。
王太子の行動により、
沈黙を利用していた者たちは、
居場所を失い始めた。
同時に、
覚悟を持つ者だけが、
前に出られる。
私は、
まだ何も決めていない。
だが――
決めないままでいられる時間は、
確実に減っている。
(……最後は)
選ぶのは、
私自身だ。
誰かのためでも、
流れのためでもない。
世界が動き出した今、
私もまた、
自分の一歩を選ぶ時が、
近づいていた。
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