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第八話 王太子の終わり
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第八話 王太子の終わり
王宮は静まり返っていた。
だがそれは、嵐の後の静寂ではない。
嵐の直前の、息を詰めた静けさだった。
腹違いの兄妹であると公に宣言され、王統順位が再計算された翌日。
王都の貴族は一斉に動きを止めている。
誰も祝意を示さない。
誰も抗議しない。
ただ待っている。
王の最終決定を。
玉座の間には、再び重臣たちが集められていた。
教会代表も同席している。
王子レオンは中央に立ち、その顔からは昨日までの自信が消えていた。
だがまだ、完全には折れていない。
「本日、王位継承順位に関する最終決定を下す」
国王の声は低く、重い。
「王統順位第一位はアリアベル」
ざわめきは起きない。
すでに周知の事実だ。
「第二位はレオン」
沈黙。
王子はわずかに拳を握る。
「しかし」
その一語に、空気が張り詰める。
「王位継承順位第一位が王太子位を兼ねる」
広間の空気が止まる。
誰も息をしない。
国王はゆっくりと息子を見る。
「よって、レオン」
静かな断罪。
「本日をもって、王太子の位を解く」
それは絶叫ではなかった。
だが確実に、何かが折れる音がした。
王子は動かない。
「……父上」
「王太子は王統第一位の称号だ。今、その位はお前にない」
事実の確認。
怒鳴らない。
責めない。
ただ、制度を適用する。
「今後は第一王子として遇する」
その差は小さいようで大きい。
王太子は未来。
王子は可能性。
その可能性は、今や二番目。
教会代表が一歩進み出る。
「本決定をもって、王位継承順位は確定」
印章が押される。
音が響く。
それで終わった。
王子レオンは、もう王太子ではない。
わたくしは一礼する。
「陛下のご決定に従います」
それだけ。
勝利の言葉はない。
王宮の視線が変わる。
侍従の態度。
騎士の姿勢。
重臣たちの距離。
すべてが、静かに。
王子は立ったままだ。
まだ理解しきれていない。
「私は……」
言葉が続かない。
「お前は王子だ」
国王の声は冷たい。
「王子であることに変わりはない。だが王太子ではない」
その違いは、未来の違い。
会議は解散となった。
重臣たちは一斉にわたくしへと向く。
挨拶の角度が深い。
言葉遣いが変わる。
それは命令ではない。
流れだ。
王子レオンの側を通り過ぎる。
彼は視線を上げない。
かつての婚約者。
かつての王太子。
今は、第一王子。
だがその差は歴然。
廊下に出ると、侍女が静かに頭を下げる。
「王太子女殿下」
呼称が変わった。
それはまだ正式な叙任ではない。
だが誰もが理解している。
王太子は王統第一位。
そして今、第一位はわたくし。
王子は、気づき始めている。
婚約破棄が引き金だったことを。
男爵令嬢との宣言が、教会を動かしたことを。
そして自らの手で、自らの座を崩したことを。
だが後悔はしていない。
まだ。
彼はまだ、何かが戻ると信じている。
王宮の庭園は静かだ。
冬の風が冷たい。
王統は整えられた。
制度は揺らいでいない。
ただ適用された。
王太子の終わりは、宣告ではなかった。
書類の一行。
印章の音。
それだけ。
だがその一行が、未来を変えた。
王都は静かに息を吐く。
王太子はいない。
第一王子がいる。
そして、王太子女が立つ。
逆転は終わった。
ここからは、固定が始まる。
王宮は静まり返っていた。
だがそれは、嵐の後の静寂ではない。
嵐の直前の、息を詰めた静けさだった。
腹違いの兄妹であると公に宣言され、王統順位が再計算された翌日。
王都の貴族は一斉に動きを止めている。
誰も祝意を示さない。
誰も抗議しない。
ただ待っている。
王の最終決定を。
玉座の間には、再び重臣たちが集められていた。
教会代表も同席している。
王子レオンは中央に立ち、その顔からは昨日までの自信が消えていた。
だがまだ、完全には折れていない。
「本日、王位継承順位に関する最終決定を下す」
国王の声は低く、重い。
「王統順位第一位はアリアベル」
ざわめきは起きない。
すでに周知の事実だ。
「第二位はレオン」
沈黙。
王子はわずかに拳を握る。
「しかし」
その一語に、空気が張り詰める。
「王位継承順位第一位が王太子位を兼ねる」
広間の空気が止まる。
誰も息をしない。
国王はゆっくりと息子を見る。
「よって、レオン」
静かな断罪。
「本日をもって、王太子の位を解く」
それは絶叫ではなかった。
だが確実に、何かが折れる音がした。
王子は動かない。
「……父上」
「王太子は王統第一位の称号だ。今、その位はお前にない」
事実の確認。
怒鳴らない。
責めない。
ただ、制度を適用する。
「今後は第一王子として遇する」
その差は小さいようで大きい。
王太子は未来。
王子は可能性。
その可能性は、今や二番目。
教会代表が一歩進み出る。
「本決定をもって、王位継承順位は確定」
印章が押される。
音が響く。
それで終わった。
王子レオンは、もう王太子ではない。
わたくしは一礼する。
「陛下のご決定に従います」
それだけ。
勝利の言葉はない。
王宮の視線が変わる。
侍従の態度。
騎士の姿勢。
重臣たちの距離。
すべてが、静かに。
王子は立ったままだ。
まだ理解しきれていない。
「私は……」
言葉が続かない。
「お前は王子だ」
国王の声は冷たい。
「王子であることに変わりはない。だが王太子ではない」
その違いは、未来の違い。
会議は解散となった。
重臣たちは一斉にわたくしへと向く。
挨拶の角度が深い。
言葉遣いが変わる。
それは命令ではない。
流れだ。
王子レオンの側を通り過ぎる。
彼は視線を上げない。
かつての婚約者。
かつての王太子。
今は、第一王子。
だがその差は歴然。
廊下に出ると、侍女が静かに頭を下げる。
「王太子女殿下」
呼称が変わった。
それはまだ正式な叙任ではない。
だが誰もが理解している。
王太子は王統第一位。
そして今、第一位はわたくし。
王子は、気づき始めている。
婚約破棄が引き金だったことを。
男爵令嬢との宣言が、教会を動かしたことを。
そして自らの手で、自らの座を崩したことを。
だが後悔はしていない。
まだ。
彼はまだ、何かが戻ると信じている。
王宮の庭園は静かだ。
冬の風が冷たい。
王統は整えられた。
制度は揺らいでいない。
ただ適用された。
王太子の終わりは、宣告ではなかった。
書類の一行。
印章の音。
それだけ。
だがその一行が、未来を変えた。
王都は静かに息を吐く。
王太子はいない。
第一王子がいる。
そして、王太子女が立つ。
逆転は終わった。
ここからは、固定が始まる。
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