『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』

ふわふわ

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第十話 議会の承認

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第十話 議会の承認

 王太子女の叙任式から三日。

 王宮の空気は、もはや動揺ではなく再配置の気配を帯びていた。

 次に必要なのは、形式の完成。

 王太子女の地位は王の宣言と教会承認で成立する。
 だが王国はそれだけでは動かない。

 貴族議会。

 王統を支える貴族層の明確な承認。

 それがなければ、制度は機能しても統治は機能しない。

 本日、議会が招集された。

 半円状に並ぶ席。
 公爵、侯爵、伯爵、子爵。

 王宮の重厚な議場は、静かな緊張に満ちている。

 わたくしは王太子女席に着く。

 この席は、かつてレオンが座っていた場所。

 第一王子レオンは、二列後方。

 その位置がすべてを物語る。

 議長が立ち上がる。

「本日の議題は、王太子女アリアベル殿下の議会承認について」

 ざわめきはない。

 だが空気は硬い。

「発言を求める者はあるか」

 最初に立ったのは伯爵家代表。

「血統確認、教会承認、王の宣言、いずれも整っている。異論はない」

 明快。

 続いて軍務系貴族。

「王太子女殿下は幼少より公爵家にて教育を受け、統治学、軍制、法制に通じておられると聞く。軍として異論なし」

 支持が積み上がる。

 侯爵家代表が立つ。

 側室マルグリットの実家。

 広間がわずかに緊張する。

「制度に従うことに、侯爵家として異議はない」

 言葉は抑えられている。

 だが不満は隠しきれていない。

 それでも反対はしない。

 反対すれば、教会と王に逆らう形になる。

 議長が確認する。

「異議はあるか」

 沈黙。

 誰も立たない。

 第一王子レオンは動かない。

 視線は前方。

 だが拳は握られている。

 議長が宣言する。

「満場一致をもって、王太子女アリアベル殿下を正式承認する」

 音は小さい。

 だが重い。

 これで王太子女の地位は三重承認となった。

 王。
 教会。
 議会。

 制度は完全に固定された。

 議会終了後、貴族たちが順に挨拶に訪れる。

「殿下」

「今後とも王国の安寧を」

 呼称は確定。

 態度は明確。

 第一王子へ向かう挨拶はない。

 彼は席を立ち、静かに退出した。

 追う者はいない。

 王宮の回廊を歩く。

 外套の重みは変わらない。

 だが周囲の距離は変わった。

 侍従が自然に道を開ける。

 騎士が敬礼する。

 これが序列。

 命令ではない。

 流れ。

 夕刻、国王がわたくしを呼ぶ。

「議会は無事に終わったな」

「はい」

「これで形式は整った」

 国王は窓の外を見る。

「レオンはどうだと思う」

 問いは静か。

「まだ、自分が戻ると信じているように見えます」

「そうか」

 国王は目を閉じる。

「王とは、選ばれる者だ。選ばれなくなった時、気づけぬ者は王になれぬ」

 重い言葉。

 王宮の別棟。

 第一王子の執務室。

 かつて王太子の部屋だった場所。

 今は名称が変わっただけ。

 だが机の上の書類は減っている。

 外交報告は来ない。

 軍事報告も来ない。

 彼はまだ気づいていない。

 権限は剥奪されていない。

 だが流れは移った。

 王太子女は議会承認を得た。

 第一王子は席を持つ。

 だが影響力は違う。

 王都の空は澄んでいる。

 嵐は終わった。

 逆転は完了した。

 ここからは評価の積み上げ。

 王太子女の地位は固定された。

 第一王子は、まだ立っている。

 だが立場は戻らない。

 誰もそれを口にしない。

 だが誰もが理解している。

 未来は、静かに決まった。
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