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第二十九話 変わらぬ忠誠
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第二十九話 変わらぬ忠誠
王都近郊の演習場に、軍旗が並んでいた。
夏の終わりの空の下、騎士団と常備軍が整列している。
本日は定例の閲兵。
だが、今年は意味が違う。
退位示唆の後、軍が誰に忠誠を示すか。
それは明言されずとも、注目される。
国王は壇上に立ち、簡潔に言葉を述べる。
「王国の安寧は、諸君らの働きによる」
拍手。
次いで王太子女ルシアが前に出る。
「国境の守りに感謝します。今後も兵站整備を進めます」
軍務卿が具体的な予算配分を説明する。
兵士たちの間から、小さなざわめきが起こる。
内容が具体的だからだ。
待遇改善、装備更新、家族支援。
言葉が現実と結びついている。
第一王子レオンも壇上に立つ。
「国は諸君らの誇りを忘れぬ」
言葉は正しい。
だが抽象的。
兵士たちは礼をする。
整然と。
だが視線は長く留まらない。
閲兵が終わる。
軍務卿が王太子女へ報告する。
「各団長より、継続忠誠の誓約書が提出されました」
形式は王家全体。
だが文面には、明確な一文がある。
“王太子女殿下の政務継続を支持する”。
第一王子はその写しを受け取る。
文面は丁寧。
礼を欠かない。
だが核心は明白。
彼は静かに読む。
「私は否定されていない」
事実だ。
軍は彼を拒絶していない。
だが優先順位は示された。
午後、若い騎士が仲間に言う。
「王太子女殿下は補給を理解している」
「現場を見ている」
第一王子の名は出ない。
悪くも言われない。
ただ、比較されない。
王宮へ戻る馬車の中。
レオンは窓の外を見る。
旗が風に揺れている。
軍は動かない。
反乱もない。
裏切りもない。
それでも流れは定まる。
夜、王宮の回廊で、軍務卿がわたくしに言う。
「殿下、軍は揺らぎません」
「それは陛下の御徳です」
「いえ、成果です」
短い言葉。
だが重い。
第一王子は遠くからそれを見る。
軍務卿は彼にも礼をする。
形式は保たれる。
だが忠誠の重心は移っている。
制度は変わらない。
王子の地位もそのまま。
剥奪はない。
追放もない。
だが軍は未来を見ている。
そして未来に彼の名はない。
夜更け。
レオンは机に向かう。
閲兵の光景が脳裏に浮かぶ。
自分は間違っていない。
慎重であること。
兵を無駄に動かさぬこと。
それも守り。
だが王国は、今、進む者を守りと呼ぶ。
彼はまだ王子だ。
部屋もある。
旗もある。
名もある。
だが旗が向く先は、もう変わっている。
王宮は静かだ。
軍は動かない。
それでも忠誠は示された。
そして彼は今日も、まだ終わっていないと信じている。
王都近郊の演習場に、軍旗が並んでいた。
夏の終わりの空の下、騎士団と常備軍が整列している。
本日は定例の閲兵。
だが、今年は意味が違う。
退位示唆の後、軍が誰に忠誠を示すか。
それは明言されずとも、注目される。
国王は壇上に立ち、簡潔に言葉を述べる。
「王国の安寧は、諸君らの働きによる」
拍手。
次いで王太子女ルシアが前に出る。
「国境の守りに感謝します。今後も兵站整備を進めます」
軍務卿が具体的な予算配分を説明する。
兵士たちの間から、小さなざわめきが起こる。
内容が具体的だからだ。
待遇改善、装備更新、家族支援。
言葉が現実と結びついている。
第一王子レオンも壇上に立つ。
「国は諸君らの誇りを忘れぬ」
言葉は正しい。
だが抽象的。
兵士たちは礼をする。
整然と。
だが視線は長く留まらない。
閲兵が終わる。
軍務卿が王太子女へ報告する。
「各団長より、継続忠誠の誓約書が提出されました」
形式は王家全体。
だが文面には、明確な一文がある。
“王太子女殿下の政務継続を支持する”。
第一王子はその写しを受け取る。
文面は丁寧。
礼を欠かない。
だが核心は明白。
彼は静かに読む。
「私は否定されていない」
事実だ。
軍は彼を拒絶していない。
だが優先順位は示された。
午後、若い騎士が仲間に言う。
「王太子女殿下は補給を理解している」
「現場を見ている」
第一王子の名は出ない。
悪くも言われない。
ただ、比較されない。
王宮へ戻る馬車の中。
レオンは窓の外を見る。
旗が風に揺れている。
軍は動かない。
反乱もない。
裏切りもない。
それでも流れは定まる。
夜、王宮の回廊で、軍務卿がわたくしに言う。
「殿下、軍は揺らぎません」
「それは陛下の御徳です」
「いえ、成果です」
短い言葉。
だが重い。
第一王子は遠くからそれを見る。
軍務卿は彼にも礼をする。
形式は保たれる。
だが忠誠の重心は移っている。
制度は変わらない。
王子の地位もそのまま。
剥奪はない。
追放もない。
だが軍は未来を見ている。
そして未来に彼の名はない。
夜更け。
レオンは机に向かう。
閲兵の光景が脳裏に浮かぶ。
自分は間違っていない。
慎重であること。
兵を無駄に動かさぬこと。
それも守り。
だが王国は、今、進む者を守りと呼ぶ。
彼はまだ王子だ。
部屋もある。
旗もある。
名もある。
だが旗が向く先は、もう変わっている。
王宮は静かだ。
軍は動かない。
それでも忠誠は示された。
そして彼は今日も、まだ終わっていないと信じている。
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