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第6話 入学試験、衝撃の開幕
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第6話 入学試験、衝撃の開幕
王立魔導アカデミーの試験会場は、異様な熱気に包まれていた。
広大な円形競技場のような実技試験場。
周囲を高い観覧席が取り囲み、試験官や上級生、さらには貴族の観覧者たちが数百人詰めかけている。
普段は静かなアカデミーだが、年に一度の入学試験は、王都の大きなイベントでもあった。
アリーナは、受験生の列に並びながら、深呼吸を繰り返していた。
銀色の髪をシンプルにまとめ、黒基調のローブを着用。
エルドリア家の紋章は、控えめに胸元にだけ刺繍されている。
周囲の受験生たちが、ちらちらとこちらを見ている。
「あれが、エルドリア家の……」
「王太子殿下に婚約破棄された子よね」
「魔法の才能がないって聞いたけど、本当かしら」
囁きが、風に乗って届く。
アリーナは顔を上げ、静かに前を見据えた。
もう、慣れた。
そんな視線に、怯まない。
試験は二部構成。
まず筆記試験、そして実技試験。
筆記試験はすでに終了していた。
魔法理論、魔素の性質、歴史、呪文構造――。
アリーナは魔導書のおかげで、古代魔法の知識まで深く理解していた。
問題のほとんどが、簡単に感じられた。
手応えは、満点に近い。
だが、本番はこれから。
実技試験だ。
試験官の声が、魔法拡声器で響く。
「これより、王立魔導アカデミー入学試験・実技部門を開始する!
受験生は順番に番号を呼ばれ、中央の試験場へ進むこと。
評価基準は、魔力の量、制御力、創造性、戦闘応用力の四点である!」
観覧席から、拍手が沸き起こる。
アリーナの受験番号は、87番。
まだ少し時間がある。
周囲では、他の受験生が実技を披露していた。
火の魔法で的を燃やす者。
風で浮遊する者。
土を操って壁を作る者。
レベルは様々だが、優秀な者は観覧席から歓声が上がる。
その中でも、特に目立っていたのは――。
「次、12番! ミラン嬢!」
試験官の呼び声に、観覧席がどよめいた。
赤髪の少女が、優雅に中央へ進む。
ミランは、すでに王太子の婚約者として有名人。
平民出身ながら、魔法の才能が認められ、特別に受験を許可されていた。
ミランは微笑みを浮かべ、両手を広げた。
「フレイム・サーキュラー!」
周囲に炎の輪が広がり、的を次々と焼き尽くす。
華麗で、正確。
観覧席から大きな拍手。
「素晴らしい! さすが殿下のお気に入り!」
「平民とは思えないわ!」
ミランは礼儀正しく一礼し、退場しながらアリーナの方をチラリと見た。
その目は、勝ち誇っていた。
アリーナは、無視した。
私の番が来るまで、集中する。
やがて――。
「次、87番! アリーナ・フォン・エルドリア!」
名前が呼ばれた瞬間、会場が静まり返った。
観覧席から、くすくすと笑いが漏れる。
「ついに来たわ」
「どんな惨めな姿を見せてくれるのかしら」
アリーナはゆっくりと中央へ歩み出た。
試験場には、三つの的が設置されている。
近距離、中距離、遠距離。
さらに、模擬魔物(魔法で作られたゴーレム)が三体。
試験内容は、すべての的と魔物を、五分以内に破壊すること。
失敗しても合格はあるが、高得点を取るには完璧が必要だ。
試験官の一人が、冷ややかな声で言った。
「エルドリア嬢、準備はいいか?
時間は五分。開始!」
アリーナは静かに頷き、両手を前に出した。
まずは、基本から。
「アクア・スフィア」
手のひらに、水の玉が現れる。
観覧席から、失笑が漏れた。
「え、水? 弱そう……」
「やっぱり才能ないんじゃない?」
だが、次の瞬間。
水の玉が、急速に膨張した。
直径二メートルを超える巨大な水球。
アリーナはそれを、軽く押し出す。
水球は轟音を立てて転がり、近距離の的を一瞬で粉砕。
続いて、中距離の的へ。
水球は形を変え、槍のように尖る。
「アクア・ランス!」
鋭い水の槍が、的を貫通。
観覧席が、ざわついた。
「え……ちょっと、強すぎない?」
「今のは、中級魔法よ?」
アリーナは止まらない。
次は炎。
「イグニス・ボール!」
五つの火球が同時に出現。
それぞれが、遠距離の的と三体のゴーレムに向かう。
火球は軌道を曲げ、完璧に命中。
ゴーレムが爆発し、的が燃え上がる。
時間経過――わずか三十秒。
すべての標的を、破壊完了。
会場が、静まり返った。
試験官たちが、目を丸くしている。
アリーナは息一つ乱さず、静かに一礼した。
「……終了、です」
観覧席から、遅れて大歓声が沸き起こった。
「すごい! あの子、何者!?」
「エルドリア家の令嬢が、こんなに強いなんて……」
「噂と全然違うわ!」
ミランは、控え室でその様子を見て、唇を噛んでいた。
アリーナは試験場を退場しながら、ほっと息をついた。
魔導書の力は、抑えめに使ったつもりだ。
中級魔法までで、古代魔法の特徴は出さないように注意した。
それでも、この反応。
合格は、確実だろう。
だが、試験はまだ終わっていない。
実技の後、個別面接がある。
アリーナは面接室に呼ばれた。
部屋には、三人の試験官。
中央に座るのは、白髪の老魔導師――アカデミーの理事長だ。
「アリーナ・フォン・エルドリア。
筆記はほぼ満点。実技は……歴代でもトップクラスの成績だ」
理事長が、穏やかに言った。
「ありがとうございます」
アリーナが頭を下げると、理事長は少し困った顔をした。
「しかし……王宮から、連絡が入っている」
アリーナの心臓が、どきりと鳴った。
「王太子殿下が、『彼女の魔力は不自然だ。調査せよ』と」
他の試験官が、冷たい視線を向ける。
「突然強くなった理由を、説明してもらおうか」
アリーナは、静かに息を吸った。
来たか。
レコルトとミランの、妨害。
でも、準備はしていた。
「理由は、シンプルです」
アリーナは、はっきりと答えた。
「これまで、魔力を抑えていたからです」
試験官たちが、眉を寄せる。
「抑えていた?」
「はい。
婚約者であったレコルト殿下に、負担をかけたくなくて。
殿下は、私が魔法で目立つことを嫌がっておられました」
それは、半分本当だった。
レコルトは確かに、アリーナが自分より目立つことを嫌っていた。
「だから、力を隠していたんです。
でも、婚約が解消された今、もう隠す必要はありません」
理事長が、目を細めた。
「……なるほど。
証拠はあるか?」
アリーナは、微笑んだ。
「幼い頃の記録を、エルドリア家の書庫から持ってきました」
実際は、魔導書で後付けした知識だが、完璧に偽装してある。
理事長は、しばらくアリーナを見つめていた。
やがて、ゆっくりと頷いた。
「わかった。
君の成績は、本物だ。
合格を、認めよう」
他の試験官も、渋々頷く。
王宮の圧力はあったが、成績が圧倒的すぎた。
これを不合格にしたら、アカデミーの公正さが疑われる。
アリーナは深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
面接室を出ると、廊下で待っていたエマが駆け寄ってきた。
「お嬢様! 合格ですか!?」
アリーナは、にこりと笑った。
「うん。合格よ」
その夜、合格者発表。
アリーナの名前が、首席で掲示された。
王都が、震撼した。
『婚約破棄された令嬢が、アカデミー首席合格!』
『王太子の判断、間違いだった!?』
噂が、一夜にして逆転した。
王宮では、レコルトが報告を聞いて、顔を歪めた。
ミランが、慌てて取り繕う。
「殿下、そんな……ただのまぐれですわ!」
だが、レコルトの心に、初めて小さな棘が刺さった。
アリーナは、屋敷に戻り、家族に報告した。
父が、珍しく笑った。
「よくやった。アリーナ」
母が、涙を浮かべて抱きしめた。
エリオットが、頭を撫でた。
「さすが俺の妹だ」
アリーナは、みんなに囲まれながら、窓の外を見た。
アカデミーの塔が、月明かりに輝いている。
そこで、私の新しい人生が始まる。
ルクシオ教授との出会い。
さらなる成長。
そして――いつか、本当のザマア。
まだ、始まったばかり。
王立魔導アカデミーの試験会場は、異様な熱気に包まれていた。
広大な円形競技場のような実技試験場。
周囲を高い観覧席が取り囲み、試験官や上級生、さらには貴族の観覧者たちが数百人詰めかけている。
普段は静かなアカデミーだが、年に一度の入学試験は、王都の大きなイベントでもあった。
アリーナは、受験生の列に並びながら、深呼吸を繰り返していた。
銀色の髪をシンプルにまとめ、黒基調のローブを着用。
エルドリア家の紋章は、控えめに胸元にだけ刺繍されている。
周囲の受験生たちが、ちらちらとこちらを見ている。
「あれが、エルドリア家の……」
「王太子殿下に婚約破棄された子よね」
「魔法の才能がないって聞いたけど、本当かしら」
囁きが、風に乗って届く。
アリーナは顔を上げ、静かに前を見据えた。
もう、慣れた。
そんな視線に、怯まない。
試験は二部構成。
まず筆記試験、そして実技試験。
筆記試験はすでに終了していた。
魔法理論、魔素の性質、歴史、呪文構造――。
アリーナは魔導書のおかげで、古代魔法の知識まで深く理解していた。
問題のほとんどが、簡単に感じられた。
手応えは、満点に近い。
だが、本番はこれから。
実技試験だ。
試験官の声が、魔法拡声器で響く。
「これより、王立魔導アカデミー入学試験・実技部門を開始する!
受験生は順番に番号を呼ばれ、中央の試験場へ進むこと。
評価基準は、魔力の量、制御力、創造性、戦闘応用力の四点である!」
観覧席から、拍手が沸き起こる。
アリーナの受験番号は、87番。
まだ少し時間がある。
周囲では、他の受験生が実技を披露していた。
火の魔法で的を燃やす者。
風で浮遊する者。
土を操って壁を作る者。
レベルは様々だが、優秀な者は観覧席から歓声が上がる。
その中でも、特に目立っていたのは――。
「次、12番! ミラン嬢!」
試験官の呼び声に、観覧席がどよめいた。
赤髪の少女が、優雅に中央へ進む。
ミランは、すでに王太子の婚約者として有名人。
平民出身ながら、魔法の才能が認められ、特別に受験を許可されていた。
ミランは微笑みを浮かべ、両手を広げた。
「フレイム・サーキュラー!」
周囲に炎の輪が広がり、的を次々と焼き尽くす。
華麗で、正確。
観覧席から大きな拍手。
「素晴らしい! さすが殿下のお気に入り!」
「平民とは思えないわ!」
ミランは礼儀正しく一礼し、退場しながらアリーナの方をチラリと見た。
その目は、勝ち誇っていた。
アリーナは、無視した。
私の番が来るまで、集中する。
やがて――。
「次、87番! アリーナ・フォン・エルドリア!」
名前が呼ばれた瞬間、会場が静まり返った。
観覧席から、くすくすと笑いが漏れる。
「ついに来たわ」
「どんな惨めな姿を見せてくれるのかしら」
アリーナはゆっくりと中央へ歩み出た。
試験場には、三つの的が設置されている。
近距離、中距離、遠距離。
さらに、模擬魔物(魔法で作られたゴーレム)が三体。
試験内容は、すべての的と魔物を、五分以内に破壊すること。
失敗しても合格はあるが、高得点を取るには完璧が必要だ。
試験官の一人が、冷ややかな声で言った。
「エルドリア嬢、準備はいいか?
時間は五分。開始!」
アリーナは静かに頷き、両手を前に出した。
まずは、基本から。
「アクア・スフィア」
手のひらに、水の玉が現れる。
観覧席から、失笑が漏れた。
「え、水? 弱そう……」
「やっぱり才能ないんじゃない?」
だが、次の瞬間。
水の玉が、急速に膨張した。
直径二メートルを超える巨大な水球。
アリーナはそれを、軽く押し出す。
水球は轟音を立てて転がり、近距離の的を一瞬で粉砕。
続いて、中距離の的へ。
水球は形を変え、槍のように尖る。
「アクア・ランス!」
鋭い水の槍が、的を貫通。
観覧席が、ざわついた。
「え……ちょっと、強すぎない?」
「今のは、中級魔法よ?」
アリーナは止まらない。
次は炎。
「イグニス・ボール!」
五つの火球が同時に出現。
それぞれが、遠距離の的と三体のゴーレムに向かう。
火球は軌道を曲げ、完璧に命中。
ゴーレムが爆発し、的が燃え上がる。
時間経過――わずか三十秒。
すべての標的を、破壊完了。
会場が、静まり返った。
試験官たちが、目を丸くしている。
アリーナは息一つ乱さず、静かに一礼した。
「……終了、です」
観覧席から、遅れて大歓声が沸き起こった。
「すごい! あの子、何者!?」
「エルドリア家の令嬢が、こんなに強いなんて……」
「噂と全然違うわ!」
ミランは、控え室でその様子を見て、唇を噛んでいた。
アリーナは試験場を退場しながら、ほっと息をついた。
魔導書の力は、抑えめに使ったつもりだ。
中級魔法までで、古代魔法の特徴は出さないように注意した。
それでも、この反応。
合格は、確実だろう。
だが、試験はまだ終わっていない。
実技の後、個別面接がある。
アリーナは面接室に呼ばれた。
部屋には、三人の試験官。
中央に座るのは、白髪の老魔導師――アカデミーの理事長だ。
「アリーナ・フォン・エルドリア。
筆記はほぼ満点。実技は……歴代でもトップクラスの成績だ」
理事長が、穏やかに言った。
「ありがとうございます」
アリーナが頭を下げると、理事長は少し困った顔をした。
「しかし……王宮から、連絡が入っている」
アリーナの心臓が、どきりと鳴った。
「王太子殿下が、『彼女の魔力は不自然だ。調査せよ』と」
他の試験官が、冷たい視線を向ける。
「突然強くなった理由を、説明してもらおうか」
アリーナは、静かに息を吸った。
来たか。
レコルトとミランの、妨害。
でも、準備はしていた。
「理由は、シンプルです」
アリーナは、はっきりと答えた。
「これまで、魔力を抑えていたからです」
試験官たちが、眉を寄せる。
「抑えていた?」
「はい。
婚約者であったレコルト殿下に、負担をかけたくなくて。
殿下は、私が魔法で目立つことを嫌がっておられました」
それは、半分本当だった。
レコルトは確かに、アリーナが自分より目立つことを嫌っていた。
「だから、力を隠していたんです。
でも、婚約が解消された今、もう隠す必要はありません」
理事長が、目を細めた。
「……なるほど。
証拠はあるか?」
アリーナは、微笑んだ。
「幼い頃の記録を、エルドリア家の書庫から持ってきました」
実際は、魔導書で後付けした知識だが、完璧に偽装してある。
理事長は、しばらくアリーナを見つめていた。
やがて、ゆっくりと頷いた。
「わかった。
君の成績は、本物だ。
合格を、認めよう」
他の試験官も、渋々頷く。
王宮の圧力はあったが、成績が圧倒的すぎた。
これを不合格にしたら、アカデミーの公正さが疑われる。
アリーナは深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
面接室を出ると、廊下で待っていたエマが駆け寄ってきた。
「お嬢様! 合格ですか!?」
アリーナは、にこりと笑った。
「うん。合格よ」
その夜、合格者発表。
アリーナの名前が、首席で掲示された。
王都が、震撼した。
『婚約破棄された令嬢が、アカデミー首席合格!』
『王太子の判断、間違いだった!?』
噂が、一夜にして逆転した。
王宮では、レコルトが報告を聞いて、顔を歪めた。
ミランが、慌てて取り繕う。
「殿下、そんな……ただのまぐれですわ!」
だが、レコルトの心に、初めて小さな棘が刺さった。
アリーナは、屋敷に戻り、家族に報告した。
父が、珍しく笑った。
「よくやった。アリーナ」
母が、涙を浮かべて抱きしめた。
エリオットが、頭を撫でた。
「さすが俺の妹だ」
アリーナは、みんなに囲まれながら、窓の外を見た。
アカデミーの塔が、月明かりに輝いている。
そこで、私の新しい人生が始まる。
ルクシオ教授との出会い。
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